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新型インフルエンザ・重症化のサイン 

#重症化のサインを見極めるポイントは
「季節性インフルエンザとは違う」。新型インフルエンザの重症例を診た医師は口を合わせる。
国内では、小児を中心に発症早期から呼吸不全を呈する重症例が多いことが分かってきた。
これまでの知見から、重症化のサインを見極めるポイントをまとめた。

大部分の患者が軽症で回復する新型インフルエンザ。
ただし、感染拡大とともに、国内でも重症例が増えている。9月22日までに新型インフルエンザに感染し、入院した患者は1107例。若年者を中心に感染が広がり、入院例の約70%を14歳以下の小児が占めている。これらの重症例のうち、小児を中心に確認されているのが呼吸不全だ。
中には、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症例も報告されている。

#発熱早期の呼吸不全が多発
通常、季節性インフルエンザに伴う呼吸不全は、高齢者や基礎疾患を持つ患者が発症する2次性の細菌性肺炎か、細菌性肺炎とウイルス性肺炎の混合性の肺炎が多い。
特に細菌性肺炎は、発熱後、数日たってから発症する。

一方、国内での新型インフルエンザによる呼吸不全の症例は、早期に発症したという報告が多い(次ページ症例参照)。小児を中心に20症例以上が入院した国立国際医療センター(東京都新宿区)特別疾病征圧班医長の泉信有氏は、「発熱翌日に急変するなど、進行が早い」と呼吸不全の特徴を分析する。

呼吸不全で患児1例に人工呼吸器を装着した中頭病院(沖縄県沖縄市)院長の宮里善次氏は、「人工呼吸器装着には至らなかった例でも、早い場合は1日目に肺炎の症状が出現し、さらに2〜3日目に前触れなく速いスピードで重症化した。季節性インフルエンザでは見られないパターンだ」と話す。

これまでのところ、こういった呼吸不全の多くはウイルス性肺炎によるものとみられている。
東大医科研ウイルス感染分野教授の河岡義裕氏は季節性と新型のウイルスをサルの鼻や気管内に感染させて比較。
季節性インフルエンザウイルスに比べて新型インフルエンザウイルスの方が、肺全体で高度に増殖していた。

「ウイルス性肺炎の特徴として、痰が出ない、胸部X線写真では肺野全体に広がるすりガラス状や網状の陰影、気管支に沿った陰影などが挙げられる」と獨協医大呼吸器・アレルギー内科教授の石井芳樹氏は話す。
白血球数が下がるのもウイルス性肺炎の特徴だが、「細菌性肺炎でも重症化すると白血球数が下がることがあるため、白血球数はあくまで1つの目安にすぎない」(石井氏)。

#酸素飽和度の測定が不可欠
また中矢代氏は、「酸素吸入をしてもなかなかチアノーゼが改善しない重度の低酸素血症の小児が多い」と指摘する。
呼吸不全や低酸素血症は、喘息の既往がある小児だけでなく、健常小児にも認められている。
重症例の治療に当たった医師は「すべての患者で酸素飽和度を測定することが不可欠だ」と口をそろえる。
呼吸不全や低酸素血症がみられる患者は、人工呼吸管理や酸素吸入が可能な病院への搬送が必要だ。

もちろん感染が拡大すれば、状況が変わることも考えられる。
菅谷氏は「米国などではウイルス性肺炎と2次性の細菌性肺炎を合併した症例が増えており、注意が必要だ」と話しており、臨床現場では、ウイルス性肺炎ばかりでなく細菌性肺炎も念頭においた診療が求められる。

#脳症や心筋炎にも注意が必要
脳症や心筋炎にも注意が必要だ。
一般的に脳症はインフルエンザに初めて感染する1〜3歳の低年齢層で多く見られる。
ただし、新型インフルエンザに対してはほとんどの人が免疫を持っていないため、脳症の発症頻度が高まったり、小学生や成人でも脳症が起き、発症の平均年齢が上がるのではないかとの指摘もある。
9月22日までに国内では、26例の脳症が報告され、9月22日に脳症による初の死亡例が確認された。

岡山大大学院小児医科学教授の森島恒雄氏は脳症の発症者数について、「定点当たりの患者数が3〜4の時点にしては多いと思う」と述べた上で、「意識レベルの低下や痙攣重積、意味不明な言動、目線が合わないなど、いつもと違う症状が見られたら注意が必要だ」と話す。

「ごく稀ではあるが、インフルエンザの合併症である心筋炎にも注意が必要だ」とするのは、中矢代氏だ。これまでに国内では南部医療センターを含め、少なくとも2例の小児が新型インフルエンザに伴う心筋炎を発症した。新型インフルエンザによる心筋炎の発症頻度は高くないものの、「呼吸が苦しい、低体温、脱力など様子がおかしい、手足が冷たいなどの症状が出たら、心筋炎を疑うべき」と中矢代氏。

 秋以降の本格流行期、重症例が増えるのは間違いない。
しかし、今のところハイリスク群以外でどのような患者が重症化しやすいか特定することは不可能だ。
そのため中矢代氏は、「軽症の患者でも『大丈夫です』と帰すのではなく、重症化する可能性を踏まえ『いつもと違う症状が見られたらすぐに受診してください』と伝えるべきだ」と注意を促す。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t061/200910/512639.html
出典 日経メディカル 2009. 10. 12
版権 日経BP社

<番外編>
#新型インフルエンザA/H1N1
健常者へのタミフル予防内服で有害事象も
疲労のほか、下痢、傾眠、腹痛、嘔気などを訴え

オセルタミビル(製品名タミフル)を予防内服した健常者には、疲労や下痢、嘔気などの有害事象を訴える人が多い——。
10月11日、日本予防医学リスクマネージメント学会が開催したシンポジウム「医療機関のための新型インフルエンザ対策」で神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科・感染症科医長の林三千雄氏が、同病院で行われた調査の結果を明らかにした。

1日も内服しなかった28人を除く215人のうち、何らかの有害事象があったと回答した人は82人いた。
最も多かったのは30人近くが訴えた疲労で、そのほか、下痢、嘔気、傾眠、腹痛、食欲不振、嗜眠、頭痛、不眠症、発熱などが見られた。
中には、内服中止後、比較的早期に症状が消失した人もいたが、内服を継続して症状が消失したという人もいたため、これらの症状がオセルタミビルの内服によるものかどうかははっきりしていない。
ただし、オセルタミビルを予防内服した際の有害事象について、これだけの規模で行われた調査はこれまでほとんどないため、今後の参考になりそうだ。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200910/512676.html
出典 日経メディカル2009. 10. 13
版権 日経BP社




明日より

井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/

へ引っ越しします。
# by wellfrog3 | 2009-10-15 00:32 | 感染症

ワクチンと新型インフルエンザ罹患

#「ワクチンを打てば新型インフルエンザにかからない」は誤解
東京都が先月実施したアンケート調査によると、ワクチンに関する気がかりな点として、42%もの人が「ワクチンを接種しても新型インフルエンザにかかるのではないか」を挙げていた。
厚生労働省をはじめ専門家らは繰り返し、ワクチンの効果は100%ではないことも説明してきた。が、まだ不十分なようだ。

ワクチンの効果については、季節性インフルエンザの場合について、以下のような効果が示されている。

まず、健常者のインフルエンザの発病割合を70〜90%減少させる効果がある。
たとえば、ワクチン接種者100人とワクチン非接種者100人を比べたとき、ワクチン非接種者100人のうち5人が発病したとすると、ワクチンを打った100人では0.5人から1.5人に発病者を抑えることが期待できるわけだ。
ただし、「100%減少させるわけではない」ことには留意すべきだ。「ワクチンを打ちさえすれば良い」というのではなく、様々な対策の一環としてワクチン接種があることを忘れてはならない。

ではなぜワクチン接種なのか。
その主目的は、重症例や死亡例の発生を限りなく抑えることにある。

季節性インフルエンザワクチンの場合だが、高齢者では、ワクチン接種により一般高齢者の肺炎あるいはインフルエンザによる入院を30〜70%減少させる。
老人施設の入所者のインフルエンザによる死亡を80%減少させるというデータもある。
小児では、1〜6歳の場合で、発熱が20〜30%減少するという効果が確認されている。

これらの出典は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2007 vol 56,CDC。
小児については、日本小児科学会の「乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について‐日本小児科学会見解‐」(2004年10月31日)が根拠となっている。

インフルエンザワクチンの目的は、感染防止あるいは流行阻止ではない。
あくまでも重症化あるいは死亡の防止なのである。
同時に、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすために、必要な医療を確保することもワクチン接種の目的になっている。
医療従事者らが優先接種で上位となっているのは、このためである。

出典 日経メディカル別冊 2009. 10. 13
版権 日経BP社
# by wellfrog3 | 2009-10-14 00:26 | 感染症

抗ウイルス薬の積極投与

##広がる抗ウイルス薬の積極投与
感染力や臨床症状は季節性インフルエンザとほぼ同じ。
重症度は高病原性鳥インフルエンザほどではないものの、季節性インフルエンザより高い可能性が示唆されている。
重症化率や致死率ははっきりしていないが、感染してもほとんどが軽症のまま回復する。
アマンタジン(商品名:シンメトレルなど)には耐性だが、オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)といったノイラミニダーゼ阻害薬には感受性を持つ─。

これが、今明らかになっている新型インフルエンザの実像だ。
ただし、新型インフルエンザに対しては、大半の人が免疫を持っていないため、感染が拡大すれば重症例や死亡例が増えることが予想される。

#ハイリスク群には直ちに投与
5歳以下の小児、65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患や心疾患、腎機能障害などの基礎疾患を持つ患者、妊婦などは重症化しやすいハイリスク群とされる。
中でも妊婦は妊娠後期になるほど重症化しやすい傾向がある。
そのため、ハイリスク群の新型インフルエンザ患者には、インフォームドコンセントを得た上で、直ちにノイラミニダーゼ阻害薬を投与することが推奨されている。

一方、健常成人・小児の患者に対してノイラミニダーゼ阻害薬を投与するかどうか、その方針はまちまちだ。
ノイラミニダーゼ阻害薬の備蓄状況などを勘案し、海外のガイドラインの多くは健常成人・小児への投与を積極的に推奨していない。
国内では季節性インフルエンザに準じて、基本的に患者の希望がなければ投与しないという対応が多い。
医師からは「日本はオセルタミビルの大量消費国と揶揄されてきた」「効果についてエビデンスが乏しい」など、慎重な声も聞こえてくる。

しかし、けいゆう病院(横浜市西区)小児科部長でWHOの新型インフルエンザ治療ガイドライン作成委員でもある菅谷憲夫氏は、「症状や周囲の感染の状況などから、新型インフルエンザを疑ったすべての患者に、ノイラミニダーゼ阻害薬を投与すべきだ」と話す。

理由は、健常成人・小児の患者からも重症例や死亡例が相次いでいるためだ。
米ニューヨークにおいて5月から6月にかけて新型インフルエンザで入院した909例では、大半をハイリスク群が占めたが、非ハイリスク群も21%に上った。
その背景について菅谷氏は、「ニューヨークでは、オセルタミビルによる治療を受けていないか、治療開始が遅れた症例が多かった」と指摘する。

WHOは、8月20日に発表した治療ガイドラインで、ノイラミニダーゼ阻害薬には重症化や死亡を防ぎ、入院を減らす効果があると位置付けた。
菅谷氏は「新型インフルエンザへの投与は、症状消失を早めるという季節性インフルエンザに対する効果とは違う。新型はノイラミニダーゼ阻害薬で治療する意義が大きい」と強調する。

日本感染症学会は9月15日、すべての患者に早期からノイラミニダーゼ阻害薬を投与すべきとする診療ガイドラインを発表。
国内でも新型インフルエンザ患者が多発した地域では、ノイラミニダーゼ阻害薬を積極的に投与している医師が多く、積極投与の動きが広がりつつある。

なお、全般的な治療方針は新型でも季節性インフルエンザと同様だ。
臨床症状に応じて、総合感冒薬や解熱剤などを投与する。小児ではインフルエンザ脳症のリスクを考慮し、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は投与しない。

#流行期はキットなしでも診断
季節性インフルエンザの診断には欠かせないが、新型インフルエンザの場合は、診断を迅速診断キットに頼り切るのは危ない。
症例が増えるに従い、迅速診断キットで疑陰性が多いことが分かってきたためだ。

そもそも迅速診断キットは、発症からの時間が短かったり、検体の採取が十分でない場合は感度が落ちる。
その上、新型インフルエンザに対しては季節性インフルエンザよりも感度が悪く、迅速診断キットの種類によって感度にばらつきがあるといった指摘もある。
実際、国内の新型インフルエンザによる死亡例の中には、発症後1日以上たってもA型陰性だった症例があった。

本格流行を経験した沖縄県で多くの患者を診た南部医療センター小児循環器科医長の中矢代真美氏は、「A型陰性となってしまう患者がかなりいた。外来で院内感染するリスクも考えると、軽症なら医療機関の滞在時間は短い方がいい。流行期には迅速診断キットを使わずに症状と感染の機会で“みなしインフルエンザ”と診断し、ノイラミニダーゼ阻害薬を投与することも多かった」と話す。
出典 NM online 2009.10.11
版権 日経BP社


<きょうの一曲> Toi et moi
Toi et Moi - Celine Dion & Charles Aznavour (Radion Edit)
http://www.youtube.com/watch?v=IcCZxFEmQDQ&feature=related

Charles Aznavour - Toi et moi
http://www.youtube.com/watch?v=HyDZgu5ZtNo&feature=related

Céline Dion & Charles Aznavour - "Toi et moi" @ TV Special
http://www.youtube.com/watch?v=KZIzXXpre8g&feature=related

抗ウイルス薬の積極投与_c0183739_7295330.jpg

2009.10.11撮影
刈り入れの終わった田

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

# by wellfrog3 | 2009-10-13 00:28 | 感染症

リラグルチド

#リラグルチド エキセナチドからの切り替えは有効
ノボ ノルディスクファーマは10月6日、2型糖尿病治療薬のエキセナチド10μg1日2回投与からリラグルチド1.8mg1日1回投与に切り替えると、血糖コントロールが向上すると発表した。GLP-1受容体作動薬のエキセナチドとリラグルチドの効果と安全性を直接比較した「LEAD-6」試験の延長試験の結果から分かった。

「LEAD-6」試験は、経口糖尿病治療薬のメトホルミン、またはSU薬の単独あるいは併用療法を行っても十分治療効果が得られなかった患者を対象に、リラグルチドまたはエキセナチドを26週間追加投与し、有効性と安全性を検討したもの。

延長試験は、この試験を終了した患者389人を対象に実施。すべての患者に、14週間リラグルチドを投与した。
その結果、エキセナチドからリラグルチドに切り替えた186人では、HbA1c値が、エキセナチド投与26週時点の7.2%から平均0.3%減少。
2型糖尿病治療の課題とされる体重も、0.9kg減少したほか、収縮期血圧も低下した。
なお、リラグルチドを継続投与した200人では、HbA1c値は、26週時点の7.0%から平均0.1%減少したという。

一方、安全性については有害事象として多く報告されていた悪心の発現頻度も、治療開始数週間では12~17%だったものの、時間経過とともに減少。延長試験終了時には2%以下だったとしている。
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38023/Default.aspx
出典 ミクスonline


#ノボノルディスク、10年にも日本で糖尿病薬発売
デンマークの製薬会社ノボノルディスクは、けいれんなどの副作用のリスクが少ない糖尿病治療薬を2010年にも日本で発売する。
血液中に糖が過剰にあるときにのみ作用するホルモンの働きを活用した。
血糖値を下げすぎる恐れが少なく低血糖による副作用が抑えられる。
 
新たな糖尿病薬「リラグルチド」は血糖が増えたときにだけ血糖を下げるインスリン分泌を促すホルモンと同じ働きを持つ。
従来の糖尿病薬は血糖値にかかわらずインスリン分泌を促してしまうため、血糖が異常に下がって頭痛や動悸、けいれんを引き起こしてしまうおそれがあった。
これまでの臨床試験では、インスリン分泌を促す既存薬に比べて血糖が以上に下がる症状が起きる頻度が少なかったとしてる。
今夏にはドイツや英国で販売を始めた。
出典 日経新聞・朝刊 2009.10.9
版権 日経新聞社
# by wellfrog3 | 2009-10-11 00:24 | 糖尿病

大腿径と心血管リスク

#大腿が細い中高年は死亡や心血管疾患のリスクが高い
BMIや腹囲、ウエスト・ヒップ比などと死亡リスクの関係はよく知られている。
デンマークCopenhagen大学病院のBerit L Heitmann氏らは、新たに、大腿囲が中高年男女の死亡と心血管疾患、冠疾患の独立した予測因子であることを示唆する結果を得た。
大腿囲60cm前後に閾値が存在し、それより下の値であれば、大腿囲が小さいほど死亡やこれら疾患のリスクは高いという。
詳細は、BMJ誌2009年9月26日号に報告された。

これまでに、下肢の筋肉量と2型糖尿病リスクの関係を示した報告はあった。
しかし、大腿部の周囲径と健康の間の関係は明らかではなかった。
そこで著者らは、大腿周囲径と心血管疾患、冠動脈疾患、総死亡の関係を調べる前向き観察コホート研究を行った。

WHOの後援を受けて行われたDanish MONICA(monitoring trends in and determinants of cardiovascular disease)プロジェクトに参加したデンマーク在住の男性1436人(1987〜88年の平均年齢50.1歳)と、女性1380人(49.7歳)を分析対象とした。
これらの男女は1922年、32年、42年、52年に生まれた人々で、ベースラインでは全員が冠疾患、脳卒中、癌の既往を持っていなかった。

87・88年に、身長、体重、大腿囲(右大腿の殿溝の下を測定)、臀囲(最大値)、腹囲(肋骨弓下縁と前腸骨稜上線の中間点を測定)、体脂肪量(インピーダンス方式による)を測定。
共変数として、身体活動量(4段階)、喫煙歴、学歴(以上は自己申告による)、血圧、総コレステロール値、トリグリセリド値なども調べた。

死亡については2002年12月9日まで12.5年間、心血管疾患と冠疾患については1999年1月まで10年間追跡した。
主要アウトカム評価指標は、12.5年間の総死亡率と10年間の心血管疾患、冠動脈疾患の発生率に設定した。

12.5年のうちに、男性257人、女性155人が死亡した。

男性の生存群では、死亡群に比べてベースラインのBMI、体脂肪量、体脂肪率、臀囲、腹囲、年齢、血圧、総コレステロール値、トリグリセリド値、喫煙量などが有意に低かった。
反対に、ベースラインの除脂肪体重、大腿囲、身長は有意に大きかった。

女性の場合もほぼ同様の結果だったが、BMI、体脂肪量、臀囲、腹囲の差は有意ではなかった。

中略

10年間に男性263人、女性140人が心血管疾患を発症、男性103人、女性34人が冠疾患を発症した。
男女の心血管疾患、冠疾患発生リスクと大腿囲の間にも、死亡の場合と同様の関係が見られた。

心血管疾患と冠疾患、総死亡のリスク上昇と大腿囲の間には、明らかな閾値効果が見られた。
総死亡率では、閾値は男女とも62cm。
男性では心血管疾患、冠疾患ともに閾値は56cm。女性では心血管疾患が68cm、冠疾患が60cmとなった。

大腿囲の測定値が閾値より下の場合には、値が小さいほどリスクは大きかった。
しかし閾値を超えると、大腿囲がより大きくなってもリスクに変化はなかった。
血圧、コレステロール値、飲酒量などで調整しても結果はほとんど変化しなかった。

したがって、大腿囲が小さいことは、腹部肥満や全身肥満、ライフスタイル、心血管危険因子とは無関係な、心疾患または早期死亡の危険因子であると考えられた。

著者らは、大腿囲が小さいことが、その部分の筋肉量が少ないことを意味するとすれば、運動により筋肉をつければリスク低減が可能かもしれない、としている。

さらに研究を行って今回の結果を確認する必要があるが、大腿囲測定は、一般開業医が心疾患リスクまたは早期死亡リスクの高い人を見い出すために使用できる簡便な方法として有用かもしれない、と著者らは述べている。

出典 NM online 2009.10.8
版権 日経BP社 

原著
Thigh circumference and risk of heart disease and premature death: prospective cohort study
http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/sep03_2/b3292


<きょうの一曲>
Nitty Gritty Dirt Band - Mr. Bojangles (STEREO)
http://www.youtube.com/watch?v=6MQYn-GvGOM&hl=ja

Sammy Davis Jr. - Mr. Bojangles
http://www.youtube.com/watch?v=5voM2HExV_Q&feature=related

Sammy Davis Jnr "Mr Bojangles"
http://www.youtube.com/watch?v=SMcfUjIguSs&feature=related

Nina Simone - Mr Bojangles
http://www.youtube.com/watch?v=86wME5d_yZM&feature=related

Mr. Bojangles original song - Mister bojangles Original by John Denver
http://www.youtube.com/watch?v=J5ikgmiQmQo&feature=related

Tom Jones - Mr Bojangles
http://www.youtube.com/watch?v=IFd8ahmLJe8&feature=related

Bob Dylan-Mr Bojangles
http://www.youtube.com/watch?v=RWDutarNigM&feature=related

<ミスター・ボージャングルス 関連サイト>
ミスター・ボージャングルス
http://www.eigo21.com/03/pops/73.htm#song

ミスター・ボージャングルの正体
http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2006/10/post_e01f.html

YouTube 動画で覚えよう英語の歌  Mr. Bojangles
http://dogaeigo.blog118.fc2.com/blog-entry-72.html

ミスター・ボージャングルは実在の人
http://www.ozsons.com/mrbojangles.htm

ミュージカル「オケピ」&ミスター・ボージャングル
http://www.aritearu.com/Life/music/Photo/AkiraFuse.html


大腿径と心血管リスク_c0183739_7583876.jpg

村田省蔵 「パンジー」 油彩 F4
http://www.eonet.ne.jp/~mks/minigallery/0201/minigallery_0201.htm
# by wellfrog3 | 2009-10-10 00:03 | 循環器科