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センチネルリンパ節生検


欧米に比肩する高い安全性・同定率

■乳がん診療では,センチネルリンパ節(SLN)に転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略できるため,SLN生検は臨床的にリンパ節転移が認められないN0乳がんの確実な進行度診断可能な手術手技として保険適応のないまま先進医療として行われてきた。
2008年4月から高度医療評価制度に組み込まれ,そのなかで「臨床的腋窩リンパ節転移陰性の原発性乳癌に対するセンチネルリンパ節生検の安全性に関する多施設共同臨床確認試験」が実施されている。
■同学会の特別報告(座長=日本医科大学乳腺科・芳賀駿介教授)では,実行委員長である聖路加国際病院乳腺外科の中村清吾部長が,中間報告として日本でのSLN生検の安全性および同定率が欧米の成績と差がないことを発表した。


欧米の93%を超える同定率
■Tis-T3N0M0,stage0〜III Aの乳がん患者を対象に,色素はインドシアニングリーン,インジゴカルミン,アイソトープ粒子はスズコロイド,フチン酸,ヒト血清アルブミン,アイソトープ核種は99mTcを用い,色素法,ラジオアイソトープ(RI)法および併用法によるSLN生検について安全性および同定率を評価した。
■参加施設は手術前日までにデータセンターに患者登録用紙を提出し,手術終了後7日以内に結果を報告,重篤な有害事象が発生した場合は72時間以内に緊急有害事象報告書を提出することとした。
 
■登録数は2008年8月末時点で当初の目標症例数である1,600例を超え,47施設から1,793例のデータが集積された。その結果,SLN生検は92.3%が入院で,87.7%が乳房手術と同時に実施された。
■原発巣の術前診断は針生検62.1%,穿刺吸引細胞診30.0%などで,非浸潤がんが14.7%含まれていた。原発巣主占拠部位はC領域43.9%,A領域21.9%,腫瘍径はT1c 36.8%,T2 29.2%の順で,臨床病期はstage I 54.0%,II A 28.7%,非浸潤性乳管がん(DCIS)もあったことからstage0が14.5%含まれていた。
 
■生検方法は,色素法とRIの併用61.4%,色素法単独22.9%,RI単独12.2%。色素はインジゴカルミン65.3%,インドシアニングリーン27.9%,併用6.6%であった。
 
■同定率は98.6%,方法別では色素法単独97.1%,色素・RI併用99.0%,RI単独99.1%と欧米の成功率93%を上回った。
■色素およびアイソトープの種類別でもそれぞれ96.6%以上,97.0%以上の高い成功率であった。
■SLN摘出個数は色素法単独が他の 2法より有意に多かったものの1個以内の差であった。


保険収載に向け,研究も継続
■迅速病理診断は85.7%で実施され,多くが入院時,乳房手術と同時に施行された。
■方法は組織診/HEが77.6%を占め,迅速診断の結果83.7%で転移がなく,81.5%で同日の腋窩リンパ節郭清が省略された。
■副作用は調査対象1,709例において色素注入による重篤な副作用をはじめ,全く認められなかった。
 
以上の結果を踏まえ,中村部長は「方法別で見ると,症例数が十分ではない手技があり,今後も試験を継続し症例の集積を図っていく。
また,術前DCIS 264例のうち233例に術中迅速診断を行った結果,9例(3.9%)に転移陽性が認められ,針生検の限界として浸潤がんが含まれていた可能性がある。
したがって,術前DCISの診断ケースにSLN生検を行うかどうかサブセット研究を行う。また,術前薬物療法後が87例,多発腫瘍が76例含まれていたことから,さらに症例を集積し,これらの妥当性についても病理の結果と比較する必要がある」とデータの精度を高めていく方針を示した。
また「2009年2月に適応や手技など詳細についてコンセンサスを得る会を開くとともに,今回の結果をもって保険収載を求めていく予定である」と述べた。

出典 Medical Tribune 2008.1.1,8
版権 メディカル・トリビューン社

by wellfrog3 | 2009-01-18 00:14 | その他
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