特発性肺線維症(IPF)は、難治性呼吸器疾患の代表例です。
今まで有効性のある薬剤の登場が待たれていました。 最新医学 60巻12号(通巻753号) 特集 特発性肺線維症とその周辺-治療の最前線- http://www.saishin-igaku.co.jp/backnum/2005/m6012.htm さりげない記事ですが、関係者にはビッグニュースと思い取り上げました。 実は、個人的にもこの疾患の方に携わる機会がありました。 悔しい思いをしたのがつい昨日のことのように思い出されます。 世界初の特発性肺線維症向け薬剤が登場 ■特発性肺線維症(IPF)は,診断後の平均生存期間が3〜5年と,著しく予後不良の疾患であり,国の難病指定を受けている。 ■塩野義製薬(株)は,IPFに対する「ピルフェニドン」(製品名:ピレスパ®錠200mg)の製造販売承認を昨年10月,世界で初めて取得し,12月に薬価収載を経て上市した。 ■同薬の薬価収載に先立ち東京都で行われたプレス講演会では,日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍部門の吾妻安良太教授が同薬の臨床試験の経過,およびその有効性や副作用などについて説明した。 肺活量,無増悪率の低下を抑制 ■これまで国内外のIPFの治療は,ステロイドまたはこれに免疫抑制薬を加えた治療が暫定的に推奨されていたが,同薬は線維化自体を抑制するという新しい作用機序で,IPFの進行を抑制することが期待できる。 ■IPFは肺胞に原因不明の傷ができ,その修復のためにコラーゲンなどが増加して間質が厚くなり,肺の線維化が進行していく疾患。 その結果,肺胞から血管への拡散能が低下し,血液中の酸素量は減少していく。 そのため症状としては空咳や坂道・階段での息切れなどが起こり,呼吸困難に陥ることもある。 ■同薬は,炎症性サイトカイン,抗炎症性サイトカインなどの各種サイトカインおよび線維化形成に関与する増殖因子に対する産生調節作用,線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン産生抑制作用など複合的な作用に基づいた抗線維化作用を示し,患者の肺活量と無増悪率の低下を有意に抑制するという。 吾妻教授は同薬の有効性を示すために国内で行われた第III相試験の概要を報告した。 中略 肺活量はP群で160cc,H群で90cc,L群では80ccの減少を示し,無増悪生存期間は,P群に比べH群,L群とも有意に長かった(図1,2)。 ■以上のように、同薬におけるIPFの有効性が認められが,同教授は「H群とL群の肺活量の低下量に有意な差が見られなかったため,製造販売後も調査を継続し,適切な投与量を検討していきたい」と述べた。 副作用に光線過敏症など認める ■従来,IPF治療で投与されているステロイド薬や免疫抑制薬は,免疫抑制作用が強いのが難点であった。 同薬はそれらに比べ免疫抑制作用が弱いため,副作用のリスクは低くなるとされる。 ■しかし,第II,第III相試験で検討された安全性評価では,評価対象となった265例の約50%で光線過敏症の発症が認められた。 この評価はプラセボ群でも20%以上が光線過敏症とされるなど,かなり厳格ではあるが,吾妻教授は「光線過敏症や皮膚発がんのリスクがあることは確かなので,投与に際しては光曝露への防護策としてサンスクリーン剤の使用や衣服の工夫などが必要である」と注意を呼びかけた。 また,光線過敏症の発現時期別の頻度は,投与4週超〜28週以内で67.2%と高く,この時期には特に警戒すべきとした。 ■同薬は軽症,中等症のIPFの進行を遅らせるのみで完治させられない点や,進行病態での有効性は確認できていないことに留意すべきだと強調した。 上市後も,肺がんの合併,急性増悪の発症頻度,生存期間などについて薬剤評価を続けていくことが必要であるという。 出典 Medical Tribune 2009.1.29(一部改変) 版権 メディカル・トリビューン社 <関連サイト> 2008年12月12日 ピレスパR 錠200mg 新発売のお知らせ http://www.shionogi.co.jp/med/houzai/img/pdf/PRS-S-1.pdf 特発性間質性肺炎 http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/076.htm ■特発性間質性肺炎は病態の異なる7つの疾患からなりますが、頻度からすると「特発性肺線維症」、「器質化肺炎」、「非特異性間質性肺炎」の3つの疾患のいずれかに含まれることがほとんどです。 Idiopathic Pulmonary Fibrosis (IPF) an Interstitial Lung Disease http://noairtogo.tripod.com/ild.htm Pulmonary fibrosis (IPF) http://www.lunguk.org/you-and-your-lungs/conditions-and-diseases/pulmonary-fibrosis.htm What is Pulmonary Fibrosis? http://www.pulmonaryfibrosis.org/ipf.htm <番外編> 健診と検診の違い 健診(健康診断、健康診査) 健康であるかどうかを調べるもの 検診(検査診断、検査診察) 特定の疾患を早期に発見し、早期に治療することを目的としたもの 一般的に基本健診に比較しがん検診の受診率は低いのが特徴です。 当市町村でも今年度から始まった「特定健診」のあおりを受けて、例年になくがん検診の受診率が低下しています。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog3
| 2009-02-07 00:25
| 呼吸器科
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