成人向けワクチンの最新動向

第12回日本ワクチン学会での記事で勉強しました。


わが国における成人向けワクチンの最新動向
ワクチン接種による予防は,小児だけでなく成人においても有用である。
熊本市で開かれた第12回日本ワクチン学会(会長=(財)化学及血清療法研究所・岡徹也常務理事)のシンポジウム「成人ワクチン」(座長=国立病院機構三重病院・神谷齊名誉院長)から,わが国における成人向けワクチンに関する最近の知見を紹介する。

〜新型インフルエンザ〜   ワクチン製造用種ウイルスの供給が可能に
■新型インフルエンザ対策として,各国でH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス弱毒株をもとにしたプレパンデミックワクチンの開発と備蓄が進められている。
国立感染症研究所ウイルス第3部インフルエンザウイルス室の小田切孝人室長は,同研究所内にインフルエンザワクチ ン株作製施設が完成したことで,H5N1型ワクチン製造用種ウイルスの供給が可能になったと報告した。

季節性インフルエンザにも対応可能
■新型インフルエンザに対するワクチンは,流行時に分離される新型ウイルスを用いて製造される。
現行のワクチン製造設備では,ワクチン開発から国民全員への供給量を確保するには最悪で1年半を要すると考えられている。
これを半年以内に短縮するために,ウイルスの発育に鶏卵ではなく組織培養細胞を用いたワクチン製造体制を日本国内に確立することが緊急課題となっている。
 
■プレパンデミックワクチンは現在流行中のH5N1ウイルスをもとにして開発が進められているが,同ウイルスは高病原性であるため,ワクチン製造株はリバースジェネティクス(RG)法で遺伝子改変し,弱毒性にしなければならない。
また,ワクチンの製造は,品質・安全性が検証・承認された細胞バンク由来の細胞を用いたRG法で作製されなければならない。
しかし,RG法に採用できるワクチン株作製用細胞には海外メーカーの知的所有権があり,わが国では入手が不可能であることから,わが国でも新規にRG用の細胞株の開発が求められていた。
 
■小田切室長らは,ヒト用インフルエンザワクチン製造株作製に使用可能であるミドリザル腎臓由来のLLC-MK2細胞(感染研マスター細胞バンク:MCB)の開発に成功した。
この細胞はH5N1型以外でもウイルス回収率に優れており,将来,RG法で季節性インフルエンザワクチン製造株を作製する際にも利用価値が高い。
 
■同室長は「2008年9月,国立感染症研究所にインフルエンザワクチン株作製施設が完成したことで,RG法による弱毒化H5N1型ワクチン製造用種ウイルスの供給,また培養細胞による季節性インフルエンザワクチン製造株開発研究も可能となった。今後はわが国のワクチンメーカーによる培養細胞インフルエンザワクチンの研究開発・製造体制の構築が急務である」と述べた。

〜百日咳〜 思春期・成人に対するワクチンの臨床試験を開始
■2007年の大規模な集団感染など,思春期や成人の百日咳患者が増加傾向にある。
予防にはジフテリア・百日咳・破傷風混合(DTP)ワクチンが有効で,国立病院機構福岡病院小児科の岡田賢司医長は,欧米などでは10歳代を中心に成人用に調整されたTdapワクチンの接種が推奨されており,わが国でも現行DTPワクチンの接種量を調整したワクチンの成人における有効性・安全性に関する検討が進められていると紹介した。

成人のワクチン接種率が低い
■百日咳は乳幼児で流行する疾患とされ,ワクチン接種率の上昇により患者数は大きく減少した。しかし,最近は患者年齢が大きく変化してきている。
2008年第28週までの報告では,成人が36.6 %を占めていた(岡田医長)()。
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■成人における百日咳患者の増加には,ワクチン接種回数が少ないことも関連していると考えられる。米国では百日咳ワクチンを6回(2,4,6,15か月,4歳,11歳)接種することを推奨しているが,わが国ではDTPワクチンの接種回数が米国に比べて2回少ない。

■また,わが国では12歳時には百日咳成分を含まないDTワクチンが接種されているが,欧米ではジフテリアおよび百日咳抗原を減量し思春期・成人用に調整されたTdapワクチンを10歳代に接種することが推奨されている。
 
■Tdapワクチンは,わが国では承認されていないが,安全性・有効性が高く評価されているわが国で開発されたDTPワクチンの接種量を調整すれば,欧米のTdapワクチンと類似した組成となる。
現在,DTワクチン接種時期(11〜13歳,18歳まで可能)におけるDTPワクチン接種の有効性・安全性を検討するための全国的な臨床試験が実施されている。

〜麻疹〜  国内排除に向け接種率向上を
■近年,麻疹は10〜20歳代前半の発病者が多数を占めるようになっている。
2012年までに国内から麻疹を排除することを目的に,厚生労働省を中心に各種の取り組みが実施されているが,課題は山積している。
国立感染症研究所感染症情報センターの安井良則主任研究官は,わが国の麻疹の現状やワクチン接種率向上に向けた取り組みを紹介した。

都道府県により対策に温度差も
■2008年第1〜43週の麻疹患者発生累積報告数は1万871例で,10〜20歳代前半が半数以上であり,未接種または1回実施が3分の2近くを占めた。
なお,重篤な合併症である麻疹脳炎は8例であった。
 
■2008年4月に,麻疹ワクチン接種対象に中学1年生および高校3年生相当の年齢が追加され,また市町村は個別通知などにより確実な接種勧奨を行うことになったが,2008年6月30日現在,第3期(中学1年生相当)ワクチン接種率は全国平均38.8%で,接種率0%の自治体が88もあり,接種率には地域間格差があった。
 
■また,「麻しんに関する特定感染症予防指針」で示されている「麻しん対策会議」を設置している都道府県は33府県で,全市区町村で個別通知を実施しているのは30府県,学校における接種率把握に向けた体制を有する都道府県は29府県にすぎない(2008年7月14日現在)など,対策に地域で温度差が認められる。
 
■現在の国内の麻疹発生に対する効果的な対策および麻疹の国内からの排除を達成するために,第3,4期のワクチン接種率の向上が必要不可欠だ。
第3,4期における接種率向上のためには,保健衛生部局と教育機関との連携の強化や,ワクチンの集団接種も視野に入れたよりいっそうの取り組みが必要である(安井主任研究官は)。


〜帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛〜   水痘ワクチンの定期接種化で予防を
■水痘に罹患した後,潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因で発症する帯状疱疹は,全人口の10〜20%とされ,約半数は60歳以上の高齢者である。また帯状疱疹に罹患した高齢者の約半数は,帯状疱疹後神経痛を合併する。

■江南厚生病院(愛知県)の尾崎隆男副院長/こども医療センター長は,米国における高齢者への水痘ワクチン接種の成績を紹介し,小児だけでなく高齢者に対しても水痘ワクチンの定期接種化を実現すべきと強調した。

半数以上で発症予防
■尾崎副院長によると,1974年に岡株水痘ワクチンが開発され,わが国では87年に任意接種ワクチンとして認可されている。
50〜79歳の健康人127人を対象に実施された検討では,水痘ワクチン接種により細胞性および液性免疫の増強が認められたことから,帯状疱疹の予防が期待される。
 
■水痘ワクチンの効果について,米国の22施設で60歳以上の3万8,546人を対象にプラセボ対照二重盲検試験を実施したところ,帯状疱疹予防におけるワクチン接種の有効率は51.3%,帯状疱疹の症状軽減に対する有効率は61.3%,帯状疱疹後神経痛の予防では66.5%で,副反応として軽い局所反応が認められたのみであったことが報告された。
 
■米国では2006年に60歳以上を接種対象とする水痘ワクチンZOSTA- VAX(Oka/Merck株)が承認された。
現在,わが国で使用されている乾燥弱毒生水痘ワクチンはZOSTAVAXと同等以上の力価を有することから,帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛予防の有効性が示唆される。
なお,69歳男性に水痘ワクチンを接種した報告では,10年後に帯状疱疹発症例において,痛みはなく,実質的に帯状疱疹の発病を予防できたという。
 
■同副院長は,小児および高齢者に対する水痘ワクチンの定期接種化を訴えるとともに,水痘ワクチン接種による帯状疱疹発症頻度への影響を検討するため,全年齢層を対象とした帯状疱疹の発生動向調査の実施が求められると指摘した。

出典 Medical Tribune 2009.2.12
版権 メディカル・トリビューン社


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林武 薔薇 10号
http://www.art-information.ne.jp/youga/takesi_hayasi/

<b><きょうの一曲>
コブクロ  『蕾(つぼみ)』
http://www.youtube.com/watch?v=W49FmsGWYkQ


<自遊時間>
ある日の診察室。
20代の女性が来院しました。
待合室でひどい咳をしています。
診察室に呼び入れると39.5度の高熱です
筋肉痛も関節痛もあることからインフルエンザは確定的ですが、インフルエンザでは最初からはひどい咳は出ません。

マイコプラズマも疑われるので、迅速試験を行いました。

検査結果は両方とも陽性(インフルエンザはA型)。

患者さんには
「両方とも感染力の強い病気です。周囲の人にはどちらか片方または両方ともいっぺんにうつしてしまうかも知れません」
と説明しました。

さすがに
「どのようにうつるか楽しみですね」
とはいえませんでした。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)
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by wellfrog3 | 2009-03-02 00:15 | 感染症
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