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高齢者と冬季血圧

高齢者では冬季に血圧上昇のリスク
仏国立衛生医学研究所(パリ)のAnnick Alpérovitch博士らは,高齢者では外気温と血圧は相関すると見られ,寒い季節では高血圧の発症率が高いようだとArchives of Internal Medicine(2009; 169: 75-80)に発表した。

高齢になるほど季節変動大きい
■研究の背景情報によると,一般母集団における血圧の季節変動は40年前から認識されていた。
しかし,特に高齢者を対象とした研究はほとんどなかった。Alpérovitch博士らは「高齢者は,気温に関係する血圧変動の影響を特に受けやすいのかもしれない。
血圧調節機序の1つである圧反射は,高齢者において変化する。
また,加齢に伴う血管疾患罹患率の増加は,圧反射の制御不全と末梢血管抵抗性の増加に起因しうると仮定されてきた」と説明している。
 
■同博士らは今回,65歳以上の8,801例を対象に,血圧と気温との関係を評価した。
全例ともフランスの3大都市地域で行われた「3都市試験」の参加者で,研究開始時(1999年)と約2年後に血圧を測定した。測定日の外気温は地元の気象台から得た。
 
■その結果,収縮期血圧(SBP)値と拡張期血圧(DBP)値の両方が,季節や外気温の分布によって異なっていた。
平均SBP値は夏季に比べ冬季で5mmHg高かった。
冬季には被験者の33.4%,夏季には23.8%に高血圧(SBP 160mmHg以上,DBP 95 mmHg以上)が認められた。
 
■全般的に,被験者の血圧は初期測定からフォローアップ測定にかけて低下した。
この低下は,外気温とも強く関連していた。同博士らは「ベースライン時と比べて,フォローアップ時の気温が高いほど血圧の低下が大きかった」と述べている。
これらの経時的な差は,80歳以上の被験者でより大きかった。

血圧の監視と降圧薬の投与が必要
■Alpérovitch博士らは「血圧と気温の関連性を説明する機序はいまだにはっきりしない」と述べ,「ストレス反応など不随意運動の制御を助ける交感神経系は,低い気温に反応して活性化され,カテコールアミンが放出される。このことが心拍数を高め,末梢血管の抵抗性の増大により血圧が上昇する可能性がある」と考察している。
 
■また,同博士らは「われわれの研究は血圧と外気温との因果関係を実証してはいないものの,今回認められた関係は高齢者の血圧管理に重要な結果をもたらしうる」としており,「この関係によって,既に知られている脳卒中,動脈瘤破裂,他の血管疾患に起因する疾患と死亡の季節変動性を説明できるかもしれない。
また,脳卒中または動脈瘤破裂のリスクは高齢者で最も高いため,外気温が非常に低いときの厳密な血圧の監視と降圧薬によって,これら疾患の予防を強化することを考慮してもよいであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2009.3.19
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog3 | 2009-04-01 00:17 | 循環器科
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