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新型インフルエンザ対策 “社会的隔離”は必須

大流行を見据え,全医療機関が新型インフルエンザ対策を
日本感染症学会が緊急提言
日本感染症学会の新型インフルエンザ対策ワーキンググループは昨日(5月21日),「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」と題する緊急提言(http://www.kansensho.or.jp/news/090521soiv_teigen.pdf)をホームページに掲載した。新型インフルエンザ(A/H1N1)について,今秋以降に大流行が起こる可能性を指摘し,すべての医療機関が対策を行うべきだと提言している。

今秋か今冬,香港風邪以来の大流行の可能性高い
ワーキンググループが行った緊急提言は,以下の8項目(原文のまま)。

(1)過去の我が国における新型インフルエンザ流行の実態から学んでください
(2)新型インフルエンザは,いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です
(3)新型が流行すると青壮年層の被害が甚大となるのには理由があります
(4)流行初期から一般医療機関への受診者が激増します
(5)重症例にはウイルス性肺炎よりも細菌性肺炎例や呼吸不全例が多く見られます
(6)一般予防策ではうがい,手洗い,マスクが効果的です
(7)医療従事者の感染予防にはサージカルマスク,手洗い等が効果的です
(8)全ての医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきです

これらの提言を通じてワーキンググループは,20世紀の新型インフルエンザウイルスの流行はすべて2回の流行を起こしていることを踏まえると,今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)は,今年の冬か秋に1968年の香港風邪以来の大きな流行になる可能性が高いとの見方を提示した。

また,感染の流行拡大期においては発熱外来を持つ少数の医療機関では対応しきれなくなり,すべての医療機関で新型インフルエンザ患者を受け入れざるを得なくなることを説明。
診療を忌避することは不可能で,全医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきだと主張した。

激増する患者の受け入れ方法としては,発熱の有無で診療時間を分ける,医師会を中心として近隣の医療機関が時間を分けて分担する,などの方策が効果的ではないかとしている。

ガイドラインに基づいた細菌性肺炎対策の重要性を強調
治療については,インフルエンザの迅速診断と抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビル,ザナミビル)の治療において日本は世界を圧倒的にリードしており,これらを生かすことができれば被害を大幅に制御することも可能だと指摘した。

重症化対策としては,ウイルス性肺炎よりもむしろ細菌性肺炎に注意すべきだが,今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)はこれまで大多数の患者が軽症であり,肺炎を併発しても在宅での治療が可能になると展望。
その際の診療指針として,日本呼吸器学会発行の「成人市中肺炎診療ガイドラインhttp://www.jrs.or.jp/home/modules/glsm/index.php?content_id=16」を挙げた。
なお,細菌性肺炎のなかで頻度が高く重症化しやすい肺炎球菌肺炎については,ハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチンの接種も積極的に考慮すべきだとしている。

痰の吸引などでは,N95マスクやゴーグルの使用も考慮すべき
さらに,医療従事者の感染予防には,サージカルマスクと手洗いで臨むべきだが,重症肺炎を併発した新型インフルエンザ患者に痰の吸引などの医療措置を行う場合は,N95マスクやゴーグルなどの使用も考慮すべきだと指摘。
必要に応じて抗ウイルス薬の予防内服も検討すべきだとしている。

出典 MT pro 2009.5.22
版権 メディカル・トリビューン社



1957年以前生まれは新型インフルエンザへの免疫あり? CDCが見解発表
米疾病管理センター(CDC)は5月20日(日本時間21日)の記者会見で,新型インフルエンザ(A/H1N1)ウイルスに対する免疫を,1957年以前生まれの中高年層がすでに獲得している可能性があることを明かした。
また,21日に開かれた会見では,米国内の感染者で65歳以上の占める割合が全体の1%だったことから,「特に60歳以上,もしくは65歳以上の高齢者は,過去にH1N1ウイルスに感染してある程度の免疫を獲得している可能性がある」との見方も示している。

スペイン風邪への曝露が関与か
新型インフルエンザ(A/H1N1)ウイルスは依然として感染者が拡大しており,世界保健機関(WHO)の5月21日付発表によると,感染確定例は世界41か国1万1,034例(うち死者85例)となっている。
わが国でも21日までに294例の確定例が発生しているが,各国の研究者や保険機関が首をかしげているのが,高齢者の感染者が少ない点だ。
これについて,WHOは5月19日付で,高齢者が新型インフルエンザ(A/H1N1)に対する免疫を獲得しており,血清中に中和抗体を形成していることが示されたと報告した。

この報告に関する質問で,CDCのDaniel Jernigan博士は,20日の会見で「現時点では,1957年以前に新型インフルエンザ(A/H1N1)と同様のウイルスに曝露されていたことが言える」とコメント。
1957年以前,世界では新型インフルエンザと同じH1N1型のスペイン風邪が流行していたことと関連があるという。

また,高齢者が獲得しているとされる抗体が持つ“防御力”については,「断定するまで至っておらず,よりいっそうの研究が必要」としながらも,「現時点での検査結果から判断する限り,一定レベルの予防効果はあると言える」と回答した。

新型インフルエンザへの予防効果は「明らかでない
一方,21日の会見では,米国内の新型インフルエンザ(A/H1N1)ウイルス感染者のうち,5〜24歳が64%だったのに対し,65歳以上が1%だったことを発表。
これについて会見に当たったAnne Schuchat博士は,60歳以上または65歳以上の高齢者がH1N1型のウイルスの免疫を獲得している可能性を示唆し,スペイン風邪の流行時にワクチン接種を受けたことも要因の1つではないかと予想した。

しかし,その免疫が実際に新型インフルエンザ(A/H1N1)を予防するかどうかについては,「明らかでない」とコメントしている。

出典 MT pro 2009.5.22
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
新型インフルエンザ診療マニュアル
第2版 平成21年5月 8日
大阪府健康医療部
大阪府医師会
http://www.pref.osaka.jp/chiiki/ikyokikanhenotuuti/manyuaru0508.pdf

「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」
~㈳日本感染症学会・新型インフルエンザ対策ワーキンググループからの提言~
http://www.kansensho.or.jp/news/090521soiv_teigen.pdf



<医学雑誌斜め読み>
■日本医事新報 No.4439 2009.5.23
(防衛医大 早川正道校長)
○今年のゴールデンウイーク前、新型インフルエンザウイルスの本邦への流入を危惧した厚生労働省の要請に基づき、2週間の検疫業務に従事するため、防衛医科大学校卒の医官が急遽、成田空港に派遣された。
それぞれ家庭の事情や業務予定があったにもかかわらず、国の安全のため、直ちに派遣を命じた。

中略

○いかなる状況でも、今回のように直ちに出向できる医師・看護師集団を抱える公的施設の存在を示せたのでは、と考えている。

(「防衛医科大学校卒の医官」であれば当然とも思えるのですが・・・)

このエッセイの後半は、バイオテロに対する日本人の意識改革が喫緊の課題と述べています。

「科学のDual Use(二重用途)」という言葉(概念)を知りました。


■日本医事新報 No.4439 2009.5.23
(福島県立医大 渡辺 毅教授)
○研究は普遍的な真理を追究するおもしろさ、臨床はパズルを解くような個々の解決法を探るおもしろさがある。
○患者さんによって抱えている状況も病態も違うので、特定の臓器に特化するのではなく、全身を診て個々の錯綜した病態のパズルを解く内科はおもしろい。



<きょうの一曲>    Dave Brubeck - Take Five
Dave Brubeck - Take Five
http://www.youtube.com/watch?v=vmDDOFXSgAs&feature=related
Dave Brubeck - Take Five (1972)
http://www.youtube.com/watch?v=8V9VSxn2F9M&feature=related
by wellfrog3 | 2009-05-26 00:20 | 感染症
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