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大関節破壊に対する生物学的製剤の効果

第53回日本リウマチ学会(2009.4.23~26 東京)の記事で勉強しました。



大関節破壊に対する生物学的製剤の効果、10枚以上のX線像の変化を多施設で評価
生物学的製剤の関節破壊抑制効果を検証する多施設・前向き研究、ARASHI(Assesment of Rheumatoid Arthritis by systemic histological and radiological imaging)試験が2008年7月に始まった。
2年以上追跡し、関節リウマチ患者の主要関節のX線写真10枚以上を年1回撮影して、生物学的製剤の効果を定量的に評価する。国立病院機構名古屋医療センター整形外科・リウマチ科の金子敦史氏が、4月23日〜26日に東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で試験の概要を報告した。

欧米では既に、従来の抗リウマチ薬(DMARDs)に比べ、生物学的製剤であるTNF阻害薬が手足の小関節の破壊を抑制するというエビデンスが示されている。
しかし、患者のQOLを大きく左右する大関節の破壊に対する効果については、1施設における後ろ向き研究を中心とした小規模な研究報告のみにとどまっているのが現状だ。

そのため、ARASHI試験では、大関節の他覚的所見などの評価項目をそろえ、生物学的製剤による破壊抑制効果の有無を定量的に捉えることを意図している。
試験に参加するのは、プロトコールを立案した10人のリウマチ専門医が所属する施設のほか、リウマチ性疾患の患者データベースであるNinJaに参加する施設などだ。

治療(投薬)についてはオープンラベルとし、治療開始前、開始から1年後、2年後という3回のポイントでそれぞれ、ACRコアセットの各コンポーネントのほか、DAS28、HAQ、関節腫脹、関節可動域、血液生化学検査、単純X線といった所見を記録する。
なお、投与する生物学的製剤の種類については限定しない。

ARASHIの特徴は、大関節を含めた複数の関節の所見の変化を2年以上にわたって記録することだ。関節腫脹については、埼玉医科大学の亀田秀人氏らが開発したスコアであるHRAS38を使って肩、肘、膝、足を評価する。関節可動域については、肩、肘、膝、足に加えて、頸椎も測定する。

なかでも特徴的なのが、複数関節のX線写真を記録することだ。
「整形外科医として特に重視すべき項目として評価項目に加えた」(金子氏)という。
試験開始時から年1回ずつ撮影するX線像は以下の10枚以上だ。
両手指正面、両手関節正面、両肘関節正面・側面、両肩関節正面、頸椎側面機能写、股関節臥位正面、膝関節立位正面・臥位正面、足関節臥位正面、足関節〜足部立位側面、両足正面——。
「『これだけの写真を撮ったら、患者に文句を言われないか』とも指摘されるが、1枚ずつ説明すれば苦情を受けることはない」(金子氏)そうだ。

被験者の登録は08年7月にスタートし、登録数の目標は200例。「2〜3年後から、日本リウマチ学会などで結果を報告していく」(金子氏)予定だ。

NM online 2009.5.28  日経メディカル別冊




Larsenグレード3に至る前に抗TNF薬を開始すれば荷重関節の関節破壊は抑制できる
関節リウマチ(RA)患者の日常生活動作(ADL)を維持、改善するうえで、下肢荷重関節の破壊を抑制することは極めて重要な課題である。
富山大学医学部整形外科の松下功氏は、4月23日から26日まで東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で、抗TNF薬を2年以上投与したRA患者における荷重関節所見の変化について報告した。

対象は、抗TNF薬が2年以上投与されたRA患者39例(男性5例、女性34例)。
平均年齢は59.3歳、平均罹病期間12.9年、評価した関節数は240関節(股関節65、膝関節53、足関節69、距骨下関節53)であった。
抗TNF薬は、インフリキシマブが30例に、エタネルセプトが21例(切替例12例を含む)に投与された。

抗TNF薬投与前、投与1年後と2年後に各関節のX線撮影を施行し、Larsenグレード、新たな骨びらんの発生、骨びらんの大きさの変化(2mm以上)、関節裂隙の変化(2mm以上)、骨破壊修復像の有無を観察した。
なお、骨破壊修復の評価には、既報のRauらの評価基準を用いた。また、臨床症状の改善評価として、DAS28-ESRとEULAR判定基準による有効率を求めた。

検討の結果、抗TNF薬開始前と2年後のX線所見の比較で、関節破壊の進行が認められた関節数とその比率は、股関節6(9.2%)、膝関節11(20.8%)、足関節10(14.5%)、距骨下関節8(15.1%)であった。
一方、関節の修復が認められたのは足関節6(8.7%)、距骨下関節2(3.8%)であった。

また、1年目のX線所見では、抗TNF薬開始前の股関節と膝関節がLarsenグレード3以上の患者では、これらの関節で破壊が進行したが、Larsenグレード2以下の患者では関節破壊は進行せず、関節は温存された。
これに対して足関節と距骨下関節では、開始前のLarsenグレードを問わず、ある程度の関節破壊の進行が認められた一方で、グレード3/4の患者でも関節の修復が認められるなど、股関節や膝関節とは異なる傾向が見られた。
なお、2年目のX線所見を用いた検討でも、結果はほぼ同様であった。

X線所見が変化した足関節の臨床所見を検討したところ、X線所見で修復が認められた関節においては腫脹が消失または軽減していたが、破壊が進行した関節では腫脹が持続していることが多かった。
また、足関節の可動域が狭いことは、X線所見での修復に有利に働く可能性が示唆された。

臨床症状の改善評価との関連では、EULAR判定基準のnon-responderでは、その他の場合に比べて高率に関節破壊の進行が認められた。
なかでもLarsenグレード2以下の患者に限定して解析した場合、goodあるいはmoderate responderにおいては、関節破壊はほとんど進行しなかったが、non-responderでは半数以上で関節破壊が進行することが示された。

以上の検討から松下氏は、荷重関節の破壊進行を抑制するためには、Larsenグレード3に至る前に抗TNF薬など積極的な治療を開始する必要性が示唆されること、さらに、早期からの厳密な疾患活動性コントロールが重要であること、の2点を指摘した。
ADLの維持を見据えたRA治療戦略を考える上で、早期からの積極的な治療介入の必要性が示唆されたことは非常に意義深い。

NM online 2009.4.28  日経メディカル別冊


生物学的製剤は人工関節置換術の減少に寄与するか?
生物学的製剤による治療は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性や関節破壊を抑制することが知られている。
では人工関節置換術の施行数を減少させるだろうか。甲南病院加古川病院リウマチ膠原病センター整形外科の中川夏子氏は、4月23日から開催されている第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で、生物学的製剤が手術に与える影響を多施設で検討した結果を報告した。

中川氏は、インフリキシマブ、エタネルセプトなどの生物学的製剤の投与により、症例によっては関節破壊の抑制や修復が認められることは、自施設でも経験していると語った上で、本研究の目的を、
(1)生物学的製剤が関節破壊を抑制できるのだから、各種の人工関節置換術は減少するはずであるという仮説と、
(2)生物学的製剤によるRA治療の変化は、手術の種類や成績にどのような影響を及ぼすのかという疑問
の2点を検証することだと述べた。

対象は、国内のRA専門4施設(大学病院1、一般病院3)において2004年1月以降に生物学的製剤を投与されたRA患者1122例。
そのうちの484例にはインフリキシマブとメトトレキサート(MTX)が、415例にはエタネルセプトとMTXが、223例にはエタネルセプトが単独で投与されていた。

調査内容は投与期間、継続状況(継続・中止・転院)、その他のRA病変に対する整形外科手術とし、各群間における年間手術発生件数を比較検討した。

これら複数施設で集計を行ったところ、人工関節置換術の100人・年当たりの施行件数は、インフリキシマブ+MTX群で2.86件、エタネルセプト+MTX群で6.39件、エタネルセプト単独群で10.4件と、生物学的製剤の種類やMTX併用の有無により大きく影響を受ける可能性を示唆する結果となった。
また、RA関連手術の100人・年当たりの施行件数についても、それぞれ5.49件、11.2件、14.5件と同様の傾向であった。

また、上述の4施設に別の3施設を加えた7施設において、人工関節置換術以外の上肢・下肢手術件数の2004年から2008年の推移を集計してみた結果、下肢手術は減少傾向にあるのに対し、上肢手術は増加傾向にあった。

周術期合併症に関して、生物学的製剤使用下で人工関節置換術を施行した154例を対象に検討したところ、創治癒の遷延が2例にみられたが、表層感染、深部感染ともに認められず、術後経過に問題はなかったという。

こうした結果を踏まえて中川氏は、生物学的製剤の導入によって人工関節置換術の施行件数は減少する傾向にあると思われるが、今回の検討からは明確な結論にまで至らず、今後も注意深くかつ長期にわたり施行件数の推移を観察し続ける必要があると述べ、講演を締め括った。

NM online 2009.4.28



<番外編>
■セレコックス錠(セレコキシブ)の効能・効果の追加
○従来の関節リウマチ、変形性関節症に「腰痛症・肩関節周囲炎・頚肩腕症候群、腱・腱鞘炎」の効能が追加。
○関節リウマチには1回100-200mgを1日2回。その他は1回100mgを1日2回。
by wellfrog3 | 2009-06-19 00:47 | リハビリテーション科
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