「ホルモン受容体陰性」「若年」は対側乳がんの発生率が高い
ホルモン受容体が陽性か陰性かは、まだがんになっていない反対側の乳房でのがん発生率に大きく影響する——。 米国立がん研究所のがん登録データベースを分析したスタンフォード大学医学部のAllison W. Kurian氏らが7月9日、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌電子版に結果を発表した。 一度乳がんになった人のうち、4%の人は反対側の乳房も乳がんになるとされる。 これを「対側乳がん」と呼ぶ。 これまで、対側乳がんの発生率は、ホルモン受容体であるエストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PgR)の陽/陰性に関連するのではないかと指摘されていたが、はっきりしていなかった。 対象は、1992年1月1日から2004年12月末までに乳がんになり、米国立がん研究所のデータベースに登録された4927人。初発の乳がんにおけるホルモン受容体の陽/陰性や、年齢、人種などによって、対側乳がんのリスクに差があるかどうかを調べた。 中略 今回の分析で、対側乳がんの発生率は、最初の乳がんがホルモン受容体陰性か陽性かのほか、年齢、人種によっても変わることがはっきりした。 1回目の乳がんのホルモン受容体陰性の人は、全人口と比較して、対側乳がんもホルモン受容体陰性になる可能性が10倍高い。 Allison W. Kurian氏らは、「これらの結果から、最初の乳がんがホルモン受容体陰性の女性と30歳未満の若年性乳がんの人に対しては、徹底的に対側乳がんの検査を行うべき」と強調している。 http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/post_1142.html 温存乳房内で再発しても8割以上は再切除が可能 「温存乳房内で乳がんが再発しても、8割以上は乳房切除術や再温存手術が可能」とする成果を、7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術集会で、慶應義塾大学の神野浩光氏が報告した。 乳房温存手術は早期乳がんの標準治療として定着しているが、温存乳房内での再発が予後不良因子として指摘される。 しかし、治療法としてまだ定まったものはない。 そこで神野氏らは、温存乳房内での再発に対する治療法とその予後について検討を行った。 対象は、1988年から2005年に慶應義塾大学病院で乳房温存手術が施行された原発性乳がん1372人のうち、平均観察期間73カ月の時点で温存乳房内に局所再発を認めた56人(4.1%)。 対象の再発時の年齢中央値は52歳(28〜76歳)。 85.6%で再切除が可能だった。 内訳としては全体の55.3%が乳房切除術、30.3%が再温存手術。 炎症性再発など、手術適応とならない患者には化学療法が施行された。 再切除後の補助療法として、内分泌療法は39.6%、化学療法は22.9%、内分泌療法と化学療法の併用が8.3%に施行された。 つまり約7割の患者に再切除後の薬物療法が行われたことになる。その他の患者は手術のみだった。 予後については、温存乳房内再発に対し乳房切除と再温存を行った場合で比較すると、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに有意差はみられなかった。 初発腫瘍と再発腫瘍の脈管侵襲の有無に関しては、どちらも陽性の場合にDFSが有意に不良だった。また、最初の手術時のリンパ節転移があると、再発後のDFS、OSともに不良となる傾向がみられた。 http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/8_2.html 乳腺内視鏡手術で「乳房の位置ズレなし」「リンパ浮腫なし」が可能に 乳腺内視鏡手術は、腋窩郭清術施行例においても整容性に対する患者の満足度が高く、良好なQOLが維持できる治療法と考えられる——。 7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会で、駿河台日本大学病院外科の山形基夫氏が発表した。 乳腺内視鏡手術は、術後の上腕浮腫や運動制限がほとんどないため術後リハビリを必要とせず、乳腺部分切除から皮下乳腺全摘術+腋窩郭清術まで連続した術式として一度に施行できることもある。 山形氏の報告によると、乳輪アプローチによる内視鏡下乳房温存術(乳腺部分切除+腋窩リンパ節郭清)の施行後5年以上経過した142人の遠隔成績は、生存率95.1%、再発率4.9%で、通常の手術と同等の成績だった。 上腕浮腫および機能障害は2人(1.4%)、術後に局所疼痛が残存したのは4人(3.6%)のみ。 整容性の向上を目的に山形氏らは「乳腺を縫合しない」方法で良好な治療成績を上げている。 通常、乳腺を縫合すると乳房の位置が上昇し、左右の乳房の位置がずれてしまう。 そこで、腫瘍占拠部位が上部の症例では、切除範囲30%までの場合なら可吸収性止血剤の酸化セルロース(商品名:サージセル・アブソーバブル・ヘモスタット、以下サージセル)を用いて欠損部を充填し、縫合を行わない再建が有用なようだ。 最終的にサージセルは液化するため残存しない。 すでに364人(良性69人、悪性295人)にこの方法が用いられ、ほぼ満足すべき形態を保持している。 ただし、この方法では浸出液漏出が全症例の約10%にみられることにも注意が必要だ。 原因は不明だが炎症反応と考えられ、電気メスで広範囲に皮弁を形成した場合などに多い。 正常乳腺から浸出液を穿刺することで改善する。 切除範囲が30%を超えた場合は、同一の創部から皮下乳腺全摘術を行い、バッグを用いた再建を行う。 通常バッグ再建ができない大胸筋筋膜浸潤例であっても下腹部の皮膚を採取して表皮をメスで剥離し、真皮のみを使用して大胸筋欠損部を修復することで再建が可能になる。 QOLの向上には、術後のリンパ浮腫を防ぐことも大切だ。 山形氏らが行っている内視鏡下腋窩リンパ節郭清術では、PDBバルーンを使用して腋窩腔を剥離し、センチネルリンパ節生検を行い、陽性であれば郭清する。 PDBバルーンを膨らませると、肋間上腕神経より浅い部分が剥離される。この状態で先に浅部を、次いで深部を郭清する。 余分な脂肪組織を郭清することがなく、周囲へのダメージも小さいため、側副のリンパ流が確保でき浮腫はほとんど出現しない。 術後1日目で十分に上腕を挙上することが可能で、疼痛もほとんどない。ほとんどの患者は術後約4日で退院するという。 山形氏は「整容性や機能温存、精神的な侵襲、QOLなどについて、長期的な手術侵襲を小さくできる点が内視鏡手術のメリットではないかと考える」と話している。 http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/post_1137.html 早期乳がんの術後補助療法は分子マーカーで治療を選択、St. Gallenコンセンサスの報告 乳がん治療に大きな影響を与えるSt. Gallen国際会議。2009年3月に開催された第11回会議で議論されたコンセンサスの内容が、Annals of Oncology誌の電子版6月18日号に掲載された。 この報告の中で、早期乳がんの術後補助療法は「リンパ節転移の有無などで規定した従来のリスクカテゴリーではなく、HER2などの分子マーカーによって治療を選択する」という新しい治療アルゴリズムが提示された。 早期乳がんは乳房に限局したがんであるが、患者によって再発リスクや転移リスクが大きく異なる。 そのため報告では、どのようなタイプの早期乳がんなのか、どのような治療法が最適なのかを見極めることが重要と強調。 過去のコンセンサスで盛り込まれていたリスクカテゴリーは、もはや適切ではないと述べている。 新しい治療アルゴリズムでは、エストロゲン受容体が認められた腫瘍をもつ患者に対しては内分泌療法による術後補助療法を、HER2陽性の患者ではトラスツズマブなどの抗HER2療法と化学療法の併用、あるいは化学療法の後に抗HER2療法を行うことを推奨している。 エスロトゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2のどれも発現していない、いわゆるトリプルネガティブの患者では化学療法が治療の中心となる。 著者の1人であるDana-Farber Cancer InstituteのRichard Gelber氏は、「このコンセンサスは、早期乳がんの治療に関して、議論となっている問題に解決策を提示した点で重要である。分子マーカーによって定義されるサブグループごとに術後補助療法を選択することに重点を置き、さらに内分泌療法、抗HER2療法、化学療法といったそれぞれの治療法の適応対象を明らかにすることで治療アルゴリズムを改良した。我々はこの新しいアルゴリズムが診療を変えるものと期待している」と述べている。 また筆頭著者であるEuropean Institute of OncologyのAron Goldhirsch氏は、「(分子マーカーを用いての)病理学的な精密検査は、疾患の生物学的特性を明らかにする上で、特に感受性のマーカーに関して、重要と考えられている」とし、中でもマイクロアレイのように複数の遺伝子を解析する技術は「予後や感受性を見るために、ますます有用になるだろう」としている。 http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/st_gallen.html デュフィ ニースのプロムナード 1926年 watercolor.hix05.com/ artist/Dufy/dufy.html <きょうの一曲> People Time - Stan Getz And Kenny Barron http://www.youtube.com/watch?v=OdiXmO-tO_o&feature=related 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
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| 2009-08-05 00:19
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