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ACE阻害薬と認知症

ACE阻害薬に認知症リスクを下げるタイプ,上げるタイプ
他の降圧薬との比較,中枢神経作用型と非作用型で逆の結果
米ウェイクフォレスト大学のKaycee M. Sink氏らのグループは,ACE阻害薬のうち,血液脳関門を通過して中枢神経に作用するタイプが,他の降圧薬と比べて,認知症のリスクを下げるという研究結果を発表した(Arch Intern Med. 2009; 169: 1195-1202)。
アルツハイマー型認知症に関係する脳の炎症を抑える作用によると見られ,中枢神経に作用しないタイプのACE阻害薬では,逆にリスクを高める結果となっている。

中枢神経作用型のACE阻害薬でMMSEスコアの年あたりの低下が65%少ない
Sink氏らは,Cardiovascular Health StudyのCognition Substudyの参加者のなかから,高血圧治療中でうっ血性の心不全がない1,054人(平均年齢75歳)を追跡し(中央値6年間),認知症の発症,認知機能の低下,手段的日常生活動作(IADLs)障害について調べた。
認知機能の評価には,改変Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いた。

追跡期間中,414人がACE阻害薬を服用しており(平均服用期間3.24年),640人は服用しておらず,認知症を発症したのは158人だった。
ACE阻害薬服用者をほかの降圧薬服用者と比較すると,ハザード比は1.01(95%CI 0.88~1.15),MMSEスコア差は-0.32ポイント/年(P=0.15),IADLs障害のオッズ比は1.06(95%CI 0.99~1.14)となり,差はなかった。補正後の結果もほぼ同様だった(以下は補正後の結果)。

ところが,中枢神経に作用するタイプのACE阻害薬のみ服用していた224人では,ほかの降圧薬を服用した場合(-0.45/年)と比べて,MMSEスコアの年あたりの低下が65%有意に減少していた(-0.16/年, P=0.01)。
認知症を発症するリスクは補正オッズ比0.88(95%CI 0.70~1.09/年,P=0.24),IADLs障害は補正オッズ比1.07(95%CI 0.97~1.18/年,P=0.16)だった。

逆に中枢神経に作用しないACE阻害薬のみ服用していた138人では,ほかの降圧薬を服用した場合と比べて,認知症を発症するリスクが高くなり(補正オッズ比1.20,95%CI 1.00~1.43/年,P=0.05),IADLs障害も補正オッズ比1.16(95%CI 1.03~1.30/年,P=0.01)と有意に増加した。MMSEスコアは,年あたり-0.53と減少したが,ほかの降圧薬を服用した場合との比較では P値は0.60で有意ではなかった。

同氏らは,中枢神経に作用するACE阻害薬に認知症を予防する効果があると見て,ランダム化臨床試験によって確認すべきと提案している。

なお,同氏らによると中枢神経作用型に分類されるACE阻害薬は,カプトプリル, fosinopril,リシノプリル,ペリンドプリル, ramipril,トランドプリルである。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0907/090756.html?ap

出典 MT pro  2009.7.24
版権 メディカル・トリビューン社

<追加番>
中枢活性型ACE阻害薬が認知症予防の助けになる可能性がある
http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/7/29/105090/?Mg=045f49ab8830a2bda50df333cded7b94&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
■非中枢活性型のACE阻害薬としては、ベナゼプリル、エナラプリル、モエキシプリル、キナプリルなどがある。
■この試験はアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)を使用している患者数が十分ではないので、分析結果をARBにまで適用することはできない。
■こうした違いが出るのは、中枢活性型ACE阻害薬の降圧作用ではなく、脳にもともとあって記憶と認知に関与するレニン-アンギオテンシン系(RAS)に対する作用によるものと考えている。
レニン-アンギオテンシン系への刺激によって、神経変性の認知症との関与が言われている炎症性サイトカイン類の活性化も誘発される。
■今回の比較で見られた非中枢活性型のACE阻害薬に伴う認知症リスクの若干の亢進は、認知症とIADL機能障害の防御効果の面でその他の種類の降圧薬全体よりも単に劣っていることを示していると研究グループは考えている。
■介入によって高齢者の認知症リスクが半分以上も小さくなるという知見が公衆衛生で持つ意味はとても大きいので、今回の観察結果をランダム化臨床試験で確認する必要がある。
■患者は薬剤を切り替えるべきか?・・・
ある患者にある降圧薬が選択される際には理由が複数あることが少なくないので、血圧降下薬の切り換えの決定については患者と医療提供者との間で話しあう必要がある。
■患者がACE阻害薬に禁忌でないならば、中枢活性型ACE阻害薬に切り替えるのは合理的な選択の一つだ。
また今回の結果に基づけば、すでにACE阻害薬を使用している患者では、非中枢活性型よりも中枢活性型ACE阻害薬を用いることが支持される


<番外編 その1>
規則第3条の改正に伴う医師の届出対象の変更について
今後のクラスターサーベイランスについて
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/2f/090724taisyou.pdf


<番外編 その2>
医療関係団体
「財源が不明確で不安が大」、日医が民主党マニフェストへ見解
2200億円削減撤回、医療費引き上げ方針については評価
http://www.m3.com/iryoIshin/article/105104/index.html?Mg=f48b77c6f9d56147e4d78668b65e73b3&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
■日本医師会は、7月29日の定例記者会見で、民主党から27日に発表された「民主党の政権政策マニフェスト2009」について見解を発表した。
■診療報酬については「診療報酬(入院)を増額する」との記載のみであることに対し、病院の入院だけでなく、地域医療全体を再生させるための全体的な底上げが必要だと指摘した。
■消費税税収相当分を全額年金の財源とするとある一方で、医療・介護への財源が明確でないことに対し「不安が大きい」とし、年金・医療・介護を公平に検討し、財源を具体化するよう求めた。
■民主党・岡田克也幹事長が、診療報酬の決定に国会が関与する考えを示したこと(編集部注:マニフェストには盛り込まれず)については、「現場の実情を理解している委員だからこそ核心をついた議論ができる。医療現場の実情をつぶさに把握せずに、国会で診療報酬を決定することは現実的ではない」と批判した。
■常任理事・中川俊男氏は、定例記者会見の初めに「日本医師会が今日見解として話すのは、日医の考えと各政党のマニフェストがどのように異なるのかを明らかにするため」と前置きし、民主党・自民党への支持・不支持や選挙活動とは無縁であると説明した。なお、今後、自民党マニフェストについても見解を発表する予定。
<コメント>
民主党のマニフェストに対する医師会の最初のコメントとして興味深く読みました。
財源の具体化を繰り返し求めている点は自民党の論調と同じです。
行間からは、軸足を自民党に置いているように読めました。


<きょうの一曲>
妹尾 美里

http://www.misatosenoo.com/


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

by wellfrog3 | 2009-07-31 00:24
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