変わる医学雑誌

日経メディカル NM online の北澤 京子氏が書かれた「特集 変わる医学雑誌記事」で勉強しました。

教授選を左右?インパクトファクターの功罪
■日本のある医学部で、教授選に立候補する際、インパクトファクターの“持ち点”が40点以上なければならないという暗黙の了解があるといううわさを聞いた。

■インパクトファクターとは、特許や学術に関する情報サービス会社であるトムソン・ロイター社の学術文献情報データベース「Web of Science(WoS)」に収録されている学術誌を対象に算出され、同社の学術誌評価ツール「Journal Citation Reports」に収録されている指標のこと。一般に、数値が大きいほど評価が高いことを意味する。

■当の医学部では、自分が発表した論文の掲載誌のインパクトファクターを順に足した合計が40点に達しなければ、その研究者は教授に値しないとみなされるらしい。
そこまでいかなくても、これまでの業績を示す論文リストに、掲載された雑誌のインパクトファクターを書いておくことが珍しくなくなっている。インパクトファクターが、研究者のキャリアに大きな影響を及ぼしていることがうかがわれる話だ。

■ところが、雑誌のインパクトファクターの値は知っていても、それが何を意味するのかは意外に知られていない。
医学部・歯学部系の研究者を対象に2005年に実施されたアンケート調査によれば、回答者の約半数(49%)が、インパクトファクターの計算方法を知らなかった(棚橋佳子.薬学図書館2005;50:230-4.)。

■具体的に説明すると、ある雑誌のX年のインパクトファクターは、その雑誌に(X-1)年と(X-2)年に掲載された論文数をa、それらの論文がX年に引用された回数をbとしたときに、b÷aで求められる。
つまり、引用される回数が多いほど、インパクトファクターは高くなる。
ちなみに臨床医学領域でインパクトファクターが最も高い雑誌はNew England Journal of Medicineで、50を超えている。

■しかし、その定義から明らかなように、インパクトファクターは、その雑誌に過去2年間に掲載された論文の平均的な被引用回数を示しているに過ぎない。
一般に、引用される論文は掲載されるうちのごく一部に偏っており、極端に被引用回数の多い論文が1本でもあれば、その雑誌のインパクトファクターは高くなる。
逆に言えば、ある論文がインパクトファクターの高い雑誌に発表されたとしても、その論文の被引用回数が多い保証はない。

■インパクトファクターは、その雑誌が扱う分野の研究者の層の厚さや、引用する文献の数によっても異なる。
筑波大名誉教授(図書館情報学)の小野寺夏生氏は「研究者の評価に、雑誌のインパクトファクターをそのまま使うのは不適切」と指摘している。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t047/200906/511109.html
NM online 2009. 6. 10




個人の論文業績を評価する新指標が登場(2009.6.15補足)
■インパクトファクター以外にも、学術研究を評価するための指標の開発が相次いでいる。
背景には1990年代以降、研究者や研究機関を評価し、その結果を処遇や研究費の配分などに用いる傾向が強まっていることがある。

■トムソン・ロイター社の「Journal Citation Reports」は2009年から、米国ワシントン大学生物学部門のカール・T・ベルグストローム氏らによって開発されたアイゲンファクター(Eigenfactor)という新しい指標を採用した。
インパクトファクターと異なるのは、インパクトファクターでは数値を算出する上でどの雑誌も同等に扱うのに対し、アイゲンファクターはそうでない点だ。

■「重要な学術雑誌から頻繁に引用されている学術雑誌は重要である」との考えに基づき、独自のアルゴリズムで雑誌に重み付けをして、雑誌の影響力を数値化する(Bergstrom C. C&RL News2007;68(5).)。
この方法をウェブサイトのランク付けに応用したのがグーグルだ。

■アイゲンファクターのウェブサイトには、それぞれの雑誌のアイゲンファクターの値が公開されている。試しに「MEDICINE」の「2006年」で検索すると935誌あり、09年5月29日現在でアイゲンファクター値が最も高かったのはNew England Journal of Medicineで0.7183、次いでCirculation(0.54769)、Lancet(0.5002)、JAMA(0.45493)、Journal of Clinical Oncology(0.28292)と続いていた。

■一方、世界有数の学術出版社であるエルゼビア社の学術文献情報データベースである「Scopus」が採用したのはh指数(h-index)。
これは、トムソン・ロイター社の「Web of Science」でも採用している。
h指数は米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校物理学部門のジョージ・E・ハーシュ氏が提唱した指標で、ある研究者が発表した論文のうち、「h回以上引用された論文がh本以上ある」ことを意味する(Hirsch JE. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:16569-72.)。

■h指数の求め方は比較的単純だ。ある研究者の発表した論文の数を横軸にして、被引用回数の多い順に左から右に並べた上で、縦軸をそれぞれの論文の被引用回数としてグラフを描く。そこに、原点を通る右45度の直線を引くと、グラフとの交点がhとなる()。

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図 h指数の求め方 
出典:Hirsch JE. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:16569-72.

■インパクトファクターやアイゲンファクターが雑誌の指標であるのに対し、h指数は基本的に、研究者一人ひとりの学術的貢献度を示す指標だ。
ハーシュ自身は、発表した論文の総数や総被引用回数が同じで、h指数が異なる2人の研究者がいる場合、h指数の高い方が、研究者としてより“完成されている(accomplished)”可能性が高いと主張する。

■実際、東京女子医大心臓血管外科の冨澤康子氏によると、同大学の女性研究者のうち、研究課題が文部科学省科学研究費補助金に5年連続で採択された人(5人)と、5年間のうち4年採択された人(5人)でh指数を比較したところ、5年連続で採択された人の方が高い傾向(p=0.074)にあったという(冨澤康子.東女医大誌2008;78:443-7.)。

■補足 2009年6月15日に以下の点を補足しました。
・h指数(h-index)については、エルゼビア社の学術文献情報データベースである「Scopus」だけでなく、トムソン・ロイター社の学術文献情報データベース「Web of Science(WoS)」でも採用されています。その旨を、1ページ目の第5段落に追加いたしました。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t047/200906/511116.html

NM online 2009. 6. 11


世界に取り残される?日本の医学雑誌の“逆襲”
■学術誌の質の向上は、編集者の果たす役割によって大きく左右される。
臨床医学領域では、New England Journal of Medicine、Lancet、JAMA、BMJ、Annals of Internal Medicineのいわゆる“ビッグ5”を中心とする有力誌の編集者で構成される医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors:ICMJE)が、大きな役割を果たしてきた(日経メディカル2001年11月号および05年11月号に関連記事)。

■ICMJEの功績の一つは、「生物医学雑誌への統一投稿規程:生物医学研究論文の執筆と編集」をまとめ、その普及を図っている点だろう。
統一投稿規程は、医歯薬出版のウェブサイトから、日本語訳(2003年11月改訂版)をダウンロードできる。
だが、日本の雑誌の中には、この統一投稿規程に準拠していないものもある。
このままでは、日本の雑誌が世界標準から取り残されることになりかねない。

■そのような状況を改善するため、2008年に日本医学会の中に日本医学雑誌編集者会議(Japanese Association of Medical Journal Editors:JAMJE)が発足し、初のシンポジウムが開かれた。
現段階では、日本医学会分科会が発行する雑誌(和文誌と英文誌の両方を含む)の編集長が参加している。

■JAMJEの発足には、海外の動きも関係している。
WHO(世界保健機関)の委員会で、医学雑誌の質を高めるために編集者の意見交換の場を設けることが提起されたのを受けて、08年にアジア太平洋医学雑誌編集者会議(APAME)が設立された。
隣の韓国では既に、韓国医学雑誌編集者会議(KAMJE)ができており、雑誌の質を自己点検するためのチェックリストが作成されている。
JAMJE組織委員会の委員長で、東大医学教育国際協力研究センター教授の北村聖氏は、「JAMJEの活動を通じて、わが国の医学雑誌のレベルアップにつなげていきたい」と話す。

■JAMJEは09年に、日本医学会分科会(107学会)が発行する雑誌(和文誌と英文誌の両方)を対象に、編集方針、査読システム、投稿規程、インパクトファクターなどについてアンケート調査を実施した。
学会誌を横断的、かつ詳細に調査したのは初めてのことだ。

■その結果、臨床試験の登録や、ランダム化比較試験の結果を発表する際の国際的な約束事であるCONSORT(コンソート)声明への対応がまだまだ遅れていることが分かった。
特に臨床試験の登録に関しては、09年4月に施行された国の「臨床研究に関する倫理指針」でも、(薬剤などを用いた)介入研究で侵襲を伴う場合は、あらかじめ臨床研究計画を登録することが義務付けられている。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t047/200906/511183.html
 
NM online 2009. 6. 16


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デユフィ 『赤いヴァイオリン』 1946
copyright© Kamakura Otani Memorial Art Museum
www.komam.co.jp/ 1999/april.html

<自遊時間>
昨日の診察終了間際に発熱したという女子高校生が飛び込んできました。
本人の話では夏休みの合宿で発熱しと子は二人いて一人は簡易試験でインフルエンザA型陽性だったとのこと。
調べてみるとまさしく陽性。
本人には新型インフルエンザの可能性が非常に高いと話してリレンザを吸入するように指示して帰っていただきました。
今朝、保健所に電話したら「PCR法の検査の要否は本庁に問い合わせる」という返事でした。
その後、電話があり「本庁に問い合わせたところ、今回は検査せずに(その高校で)4例目が発生したらPCR法で調べるという指示があった」ということでした。


「もし4例目が発生しなければ、この3例は新型インフルエンザとして集計されないのですか?」
保健所予防課
「そういうことです」



<きょうの一曲> Bach - Italian concerto
http://www.youtube.com/watch?v=Lb4A5D6u_KY&feature=related



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-08-07 00:41 | その他
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