急性心筋梗塞患者の死亡率と病院間格差

急性心筋梗塞患者の死亡率と病院間格差、米国で減少
米国の65歳以上の急性心筋梗塞患者2,755,370人の退院データ3,195,672件を分析したところ、患者のリスクの相違を補正した病院単位の入院30日後の総死亡率は、1995年の18.8%から2006年の15.8%に低下し、死亡率の差に病院の違いが占める寄与率は4.4%から2.9%に低下した。
論文はJournal of the American Medical Association 2009年8月19日号に掲載された。

1990年、米国心臓病学会と米国心臓協会は共同で、急性心筋梗塞に関してエビデンスに基づく初めての診療ガイドラインを公表した。
1992年には、現在メディケア・メディケイド・サービスセンターとなっている組織が、急性心筋梗塞に関する病院診療の質の測定を全国規模で開始した。

診療の質の改善に関するこれらの努力が行われてきたが、先行研究は一部の地域等で、患者個人を単位とする調査に限られていた。
著者らによれば、全国規模で、病院を単位とする調査は、今回が初めてという。
今回の調査は、65歳以上の高齢者を対象とする連邦政府の医療保険メディケアのデータを使って行われた。
1995−2006年の全期間を通して、毎年1例以上の急性心筋梗塞患者を診療した病院は3,054施設だった。

1995年には、患者の総死亡率が全国平均より偏差値で10高い病院と比べて、平均より10低い病院の総死亡率は1.63倍だった。
2006年にはこれが1.56倍に低下した。
また、病院間の総死亡率のばらつきを表す変動係数(死亡率の標準偏差を平均値で割った値)は11.2%から10.8%に、四分位範囲(上位25%の病院と下位25%の病院の差)は2.8%から2.1%に減少した。
平均在院日数は、7.9日から7.0日に減少した。

比較のために、急性心筋梗塞以外の全疾患について、患者のリスクの相違を補正した30日後の死亡率を算出したところ、1995年は9.2%、2006年は8.8%と、急性心筋梗塞と比べて低下は小さかった。

著者らによると、1992年に開始された診療の質を改善する動きは、努力の焦点を、個別の診療ミスから、診療全体の質の測定と改善に移してきた。
このことが、今回の診療成績の向上と病院間格差の減少につながったと考察している。


30日死亡率の絶対値の差を見ると、18.8%−15.8%=3.0%で、あまり大きな減少には見えない。
しかしその比を見ると、(18.8%−15.8%)/18.8%=16.0%で、死亡率が約1/6(16.0/100)減少していることになる。
著者らはこれを「著しい減少」(a marked reduction)と評価している。
論文には、横軸に病院ごとの死亡率、縦軸に病院数を示したヒストグラムが表示されているが、1995年と2006年を比べると、全体の分布が大きく左に(低死亡率に)シフトしていることが分かる。

日本ではがん診療の「均てん化」(地域差、施設差の改善)が政策課題となっているが、全国規模できちんと評価しようとすれば、今回のような超大規模なデータを使った分析が必要になることを示している点で、参考になる研究だろう。
http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51685189.html

Reduction in Acute Myocardial Infarction Mortality in the United States
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/302/7/767



<番外編>
ビール愛飲家にとってはドキっとするようなニュースです。

1日1杯のビール、がんになるリスク高める可能性=研究
ビールなどのアルコールを定期的に摂取する男性は、複数のがんになるリスクが高くなる可能性があるという。
カナダ・マギル大学の研究チームが発表した。

同研究チームは、約3600人の35歳から70歳までのカナダ人男性を対象に調査を実施。
少なくとも1日に1杯のアルコールを飲む人は、時々、あるいは全くアルコールを飲まない人に比べて、複数のがんになるリスクが高いことが分かった。

発症リスクが増大するのは、食道や胃、大腸、脾臓(ひぞう)、肝臓、前立腺などのがんだという。
http://www.excite.co.jp/News/odd/E1251106653700.html


<ビールと発がん 関連サイト>
「ビールの発がんプロセス抑制作用」
http://kirin-foodresearch.jp/R&D/a_page_1.html
■最近の疫学的な研究では、アルコールの適量摂取が発がんリスクを低減させるとの報告がされています。
■これまでの研究を通じて、ビールには、アゾキシメタンによって誘発される大腸発がん、肉や魚の焦げに含まれるヘテロサイクリックアミンによる細胞や動物組織のDNA変異及び大腸前がん病変形成を抑える作用があることがあきらかになっています。

ビールに前立腺がん予防効果 1日17本飲めば 米大学
http://www.asahi.com/science/news/JJT200606130002.html

ビールから抗がん成分発見、効果を得るには大量摂取必要。
http://www.narinari.com/Nd/2006066088.html

大腸がんモデルラットにおけるビールの発がん抑制作用
http://kirin-foodresearch.jp/R&D/syousai_a_1_01.html


<コメント>
ビールは発がん、発がん抑制。
いったいどっちなんでしょうか。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-08-25 00:36 | 循環器科
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