血中インスリン測定(IRI)について

「インスリン注射を行っている場合、血中インスリンの測定は内因性と外因性(インスリン注射)の両者を測定してしまうのでしょうか」
という質問に対する

東京女子医科大学 中央検査部   佐藤麻子准教授
         糖尿病センター 岩本安彦センター長
による解説で勉強しました。



膵臓ランゲルハンス島β細胞でインスリンは、前駆物質プレプロインスリンとして作られた後、プロインスリンに転換されます。
プロインスリンはインスリンとCペプチドに切断されて血中に放出されます。
すなわち、インスリンが生物活性を持ち血中に分泌される際は、同じモル数のCペプチドも血中に分泌されます。
Cペプチドの約5%は腎で代謝され尿に排泄されるので、1日尿中のCペプチド測定は内因性インスリン分泌量を見る指標となります。
同様に、腎機能の低下している例では血中Cペプチドは高めに出ますので、その点に留意する必要があります。
血中インスリンの測定は、インスリン抗体に対する免疫活性を見る測定法が中心でありIRI(immunoreactive insulin)といい、正常値は空腹で5〜10μU/mLです。
また、Cペプチドもその免疫活性CPR(C-peptide reactivity)として測定され、その正常値は空腹時血中で1〜3ng/mL、尿中CPRは40〜100μg/dayです。

インスリン治療を行っている患者さんの場合、注射からのインスリンを外因性インスリン、自分自身の膵臓から分泌されたインスリンを内因性インスリンと呼びます。
一般的な臨床検査でIRIを測定する場合、両者を分けることは困難で内因性・外因性両方のインスリン値を合わせて測定することになります。
この場合血清CPRを測定すると、内因性インスリン分泌について評価することが可能になります。

丸1日休薬すれば、注射したインスリンは血中から消失していると思われますが、内因性インスリン分泌を評価するためにわざわざインスリン注射を中断することは一般には行われません。
この場合も、血清CRPの測定によって内因性インスリン分泌を推定することができます。

以前ブタやウシのインスリンを使っていた例、インスリンアナログ製剤を使っている例、まれにはヒトインスリン製剤を使っている例でも、血中にインスリン抗体が産生される場合があります。
その場合IRI値が正確なインスリン値を反映しない場合があるので注意しなければなりません。また、血中CPRもプロインスリンとの関与があるため、インスリン抗体が存在すると抗体と結合したプロインスリンが血中に停滞し測定に用いるCペプチド抗体の特異性によってはCPR値が見かけ上高くなる場合があります。
そのほかIRIとCPRが異常値を示す疾患を表に示します。
インスリン分泌は、食事の量や質、肥満度、血糖コントロールの良否など膵β細胞機能の他にも多くの条件に影響されます。
IRIの評価・解釈にはこうした臨床所見や条件も考慮することが大切です。

出典 CLINICIAN ’09 NO. 581 18
http://www.e-clinician.net/vol56/no581/pdf/sp05_581.pdf(IRI、CPR が異常値を示す疾患・病態が表で説明されています)


<番外編>
腸内細菌、大腸のがん化促進 米グループがマウスで解明
下痢を起こす腸内細菌の一種が、大腸のがん化を促進することを、米ジョンズホプキンス大のグループがマウスの実験で明らかにした。
胃がんでは、胃の中にいるピロリ菌が原因の一つとされているが、この腸内細菌も、似たような役割を果たしている可能性を示している。
23日付米医学誌ネイチャー・メディシンに発表される。

バクテロイデス・フラギリスという、人の腸内に常在している腸内細菌の一種。
人によっては何の症状も示さないが、下痢を起こすことで知られている。
毒素を作るタイプと作らないタイプがあり、グループは大腸がんを自然発生しやすくしたマウスに、それぞれを感染させて観察した。

すると、毒素型を感染させたマウスは下痢になり、大腸に炎症と腫瘍(しゅよう)が1週間以内にでき、がん化が早まった。
非毒素型は下痢を起こさず、大腸の炎症も腫瘍も認められなかった。
菌の毒素が免疫細胞を活性化させて炎症を起こし、がん化を促進しているとみられる。

また、毒素型を感染させたマウスは、炎症反応の引き金となる信号を送るたんぱく質が増えていた。
このたんぱく質が増えると、特定の免疫細胞が活性化されてIL17という因子が作られることが、もともと知られている。
IL17を働かなくさせたマウスで同様の実験をすると、腫瘍ができにくくなったことから、こうした因子を抑えることなどで大腸がんの治療につながる可能性も明らかになった。

今回の成果について、吉村昭彦・慶応大医学部教授(微生物・免疫学)は「人の大腸がんとの関係は今後、疫学調査などがされないと、まだわからないが、人の腸内細菌の毒素ががん化を促進することを実験的に示したことは画期的だ」としている。

http://www.asahi.com/science/update/0824/TKY200908230205.html
出典 asahi.com 2009.8.24
版権 朝日新聞社




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by wellfrog3 | 2009-08-26 00:58 | 糖尿病
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