「ほっ」と。キャンペーン

咽頭炎へのステロイド投与

BMJに掲載された”Corticosteroids for pain relief in sore throat: systematic review and meta-analysis. ”という論文を東札幌病院の平山泰生副院長・化学療法センター長が解説した記事で勉強しました。


#咽頭炎へのステロイド投与,本当に禁じ手か?   英国でのメタ解析を踏まえて
#研究の背景:
#発熱や炎症を抑制すると最終的には患者に不利益もたらす?
感染症にステロイドを投与すると,迅速に解熱し,疼痛などの症状も軽快することが予想される。しかし,発熱や炎症は生体防御機構であり,それを抑制することは病原体の生存に有利となり,最終的には感染症の遷延など患者の不利益になることが想定されるため,一部の例外を除いて感染症に対するステロイド投与は「禁じ手」と考えられてきた。

 今回,咽頭炎患者に抗生物質・鎮痛薬とステロイドを併用投与すると,咽頭痛は早期に軽快し,ほかに明らかな不利益は認められなかったとの結果が英国で報告されたので紹介する(BMJ 2009; 339: b2976
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19661138)。

#研究のポイント:
#ステロイド群で疼痛軽減が早く,明らかな不利益なし
滲出性咽頭炎患者を対象とした8つの臨床試験(総患者数743例,うち小児369例,成人374例)の結果を検討した。330例(44%)はA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)陽性であった。

 全例に抗生物質と鎮痛薬が併用された。8試験において,ステロイドの併用投与(ステロイド群)が行われた。投与の内訳は,経口(デキサメタゾン0.6mg/kg単回など)4試験,筋注(デキサメタゾン10mg単回など)4試験で,全例二重盲検,全試験にプラセボ群が設定された。

 メタ解析の結果,ステロイド群はプラセボ群に比べ,24時間後(4試験で検討,以下同)における疼痛(VASスコアによる評価)の完全寛解率が3倍以上(3.2倍, 95%信頼区間2.0~5.1)で,48時間後の判定(3試験)でも1.7倍であった。また,ステロイド群ではプラセボ群に比べ,疼痛軽減までの中央値が6時間以上短縮された(6試験,95%信頼区間3.4~9.3時間,P<0.001)。

 学童における欠席期間に両群間で有意差はなかった(3試験)。4試験では再発率に有意差は認められなかったが,1試験においてブラセボ群で再発率が有意に高値であった。

 サブグループ解析では,小児あるいは非重症例に対するステロイド投与の優位性が証明されず,成人,重症例では効果が著明であった。細菌性病原体の陽性,陰性における差は認められなかった。

#東札幌病院の平山泰生副院長・化学療法センター長の考察:
#「咽頭炎にステロイド投与」は個々の患者には有用だが,社会全体としてはデメリットが予想される
感染症に対してステロイドの投与が認められるのはどういう疾患か,という問題に関して近年データが蓄積されつつある(Arch Intern Med 2008; 168: 1034-1046
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18504331)。
ステロイド投与により死亡率を下げるのが,細菌性髄膜炎,結核性髄膜炎,中等症以上のニューモシスチス(カリニ)肺炎などであり,これらには適切な抗微生物薬とともにステロイドの投与が推奨される。

今回メタ解析された咽頭炎のほかに,ステロイドにより症状が改善するのが,帯状疱疹,伝染性単核球症,肺炎球菌肺炎などであり,予後に関しての明らかな悪影響は認められない。

ステロイドの作用機序より推測される予後の悪化が,上記疾患などで認められないことは意外である。
動物の進化の過程において常に病原体侵入は高頻度に生命の危機をもたらしてきたために,それに対する免疫および疼痛という危機信号は過剰なくらい反応するのであろう。
一部の疾患では過剰な免疫反応は多少抑制しても問題はないのかもしれない。

今回紹介した論文に関して考察すると,急性の咽頭痛患者の多くは,「感冒」の各症状を呈しており,細菌感染のほかに,ライノ,コロナ,アデノといったウイルス感染などが多い。
咽頭痛患者の診療では,まず急性喉頭蓋炎ではないことを確認し,次に溶連菌感染の可能性を考慮するのであるが,その際,頸部リンパ節腫大があるか? 咳がないか? などの臨床所見を参考とし,疑わしい場合は迅速診断キットを施行する。
溶連菌感染であった場合は,主としてリウマチ熱発生予防のためペニシリンなどを投与する。成人の場合は抗生物質を投与しなくても,投与群とほぼ同様に自然治癒する。溶連菌を除いては,たとえ原因病原体が細菌であったにせよ咽頭炎患者に抗生物質を投与するメリットはほとんどないと言われている。
したがって実地臨床では,大部分の咽頭炎患者に抗生物質を投与せず,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のみ投与するのが一般的である。

本研究はステロイドとともに抗生物質・鎮痛薬を投与した結果であるため,患者の苦痛は早期に軽減されるにせよ,医療費の増大および耐性菌の誘導という懸念がある。
したがって,私としては実地医療として咽頭炎患者にステロイド投与を勧めることはしない。
また,ステロイド投与はB型肝炎キャリアの劇症化を招く可能性がある。咽頭炎に限った話ではないが,B型肝炎表面抗原(HBsAg)を測定していない患者に安易にステロイドを投与してはいけない。

「生体の免疫反応,危機信号の過剰さ」に思いを巡らすという点では非常に興味深い結果だが,医療者としては,咽頭炎患者のQOLの改善にステロイド投与は有効であるということを知識として持っている,というレベルにとどめておくべきであろう。

出典 MT pro 2009.8.17
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
#新型インフル流行 10月にも第1波ピーク クローズアップ2009
#沈静化後、第2波も 専門家「春までに3600万人」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/08/27/106482/?Mg=606e9a8f538e530ee2e0bc81ff8251a7&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
毎日新聞社 2009.8.27
■「10月が流行第1波のピークかもしれない」。
冬とみられていた新型インフル流行のピークが大幅に前倒しになる可能性を、専門家が指摘し始めた。
国立感染症研究所の安井良則・感染症情報センター主任研究官は「秋に感染者数が減る要素がない」と説明する。
■浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(疫学)によると、過去の新型インフルのパンデミック(大流行)は、流行期入りからピークまで約1カ月半。
厚労省は今回、今月21日に流行開始を宣言したためこれを当てはめると10月にもピークを迎えることになる。
厚労省は10月下旬にも新型用ワクチン接種を始める方針だが、ピークに間に合わない恐れが出てきた。
しかもこれは第1波のピークで、いったん沈静化した後に第2波があるとの見方も強い。
■東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「この冬、必ず日本で大流行する」とし、季節性の3倍以上の規模となり、来春までに国民の約30%、約3600万人が感染すると予測する。
浦島准教授は最大約5000万人の感染可能性を指摘。
押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「11年春までに約8000万人が感染し、患者は5000万人に達するのではないか」と警鐘を鳴らす。
世界保健機関(WHO)は8月、大流行が終わるまでに世界の人口の約3割、約20億人が感染するとの予測を公表した。
■東京大医科学研究所の上昌広特任准教授(医療ガバナンス)は「大学病院や大病院が、空いた個室に重症患者を受け入れやすくするために、国が補助金を出すなどして支援するのも一つの対策だ」と指摘する。

◇重症化を警戒すべき症状(WHOによる)
・休息の間でも息切れする
・呼吸困難
・顔が青白くなる
・たんに色が付いている、血たんがでる
・胸が痛む
・意識もうろう
・3日を超える高熱
・低血圧

子供ではさらに
▽息が速い
▽注意力欠如
▽遊ぶ意欲がない
--などを警戒すべき症状に挙げ、急速に悪化する可能性があると注意を促している


c0183739_741595.jpg

デュフィ作 『電気の精』
http://blogs.yahoo.co.jp/pas_de_roses_sans_epines/49145683.html


<きょうの一曲> リバーサイドホテル
井上陽水 / リバーサイドホテル
http://www.youtube.com/watch?v=E7TCf1csQeQ&hl=ja

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

[PR]
by wellfrog3 | 2009-08-29 00:08 | 感染症
<< オセルタミビルの合併症低減 新型インフルエンザ 本格的な第... >>