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積極的学校閉鎖

当地では新型インフルエンザによる小中学校や高校の学級や学年閉鎖が続出しています。
学校の先生も授業や各種の行事を消化せねばならず頭が痛いことと思います。
新型インフルエンザの流行については、これから冬期に向かい流行がどのように推移していくのか知りたいところです。
南半球ではどうだったのでしょうか。
2〜3年にわたって波状的に流行するのか、今の状態がしばらく続いて収束に向かうのか。

前者の場合なら「積極的学校閉鎖」も「ワクチン接種」も効果は限定的ということになります。



##積極的学校閉鎖は時期により高い効果も社会的影響大きい
#新型インフルエンザ流行時の学校閉鎖に関する考え方
厚生労働省(厚労省)新型インフルエンザ対策推進本部は,9月24日,流行期の公衆衛生対策に関する指針「学校・保育施設の臨時休業の要請等に関する基本的考え方」をホームページに掲載した。
それによると,積極的な学校閉鎖は防疫面で高い効果が期待できるとしながらも,社会的な影響を考えると現時点での実施は困難で,その判断は従来通り各自治体に委ねられている。

#少数例発生時点で広域に措置を講ずる「積極的臨時休業」が新たに追加
新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)に関し,今年(2009年)5月22日に厚労省が出した「基本的対処方針」では,学校・保育施設などの臨時休業に関して,

地域において急速に患者数が増加している場合には,広範囲の地域で学校・保育施設等の臨時休業を行うことは感染拡大防止には効果が薄いため,地域の学校等の全てを対象に臨時休業の要請をする必要はないと考える
ただし,患者が多く発生している学校等において,当該学校等に通学する児童生徒等を感染から守るために臨時休業等をすることには意義があることから,季節性のインフルエンザと同様の対応として特定の学校の臨時休業や学校閉鎖等の措置が考えられる
との季節性インフルエンザに準じた見解が示されているのみであった。
今回の指針では新たに追加した「積極的臨時休業」とこれまでの概念を踏襲した「消極的臨時休業」の意義について,これまでの知見を踏まえてより具体的な内容が示されている。
それによると,流行の第一段階では,少数の患者が発生した時点で休校,患者未発生の近隣地域までの閉鎖を行うなど積極的な措置を講ずることで防疫効果が高まるという。

また,流行拡大後の第二段階では「消極的臨時休業」が適用され,例として学校では学級閉鎖レベルの措置を取りながら,発症者の外出禁止の徹底や発熱,呼吸器症状のある者を休ませるなど,従来通りの措置を取ることとしている。
第二段階の判断基準については,明確な根拠はないが定点あたり報告数が1を超え,前週の倍を超えるなど急激な動きが見られたときなどとしている。

#積極的休業の実施は現実的に困難,個別の判断による対応求める
今回の指針の基盤となった班研究「新型インフルエンザ流行時における学校閉鎖に関する基本的考え方」(主任研究者=東北大学微生物学分野・押谷 仁氏)では, インフルエンザの地域における感染拡大の起点が学校であることが示されている。
そして,過去のパンデミックや疫学モデルから,早期に一定期間,徹底的な学校閉鎖を行うことで感染拡大の防止効果が上がると指摘。

しかし,積極的臨時休業の実施に当たり,最大のネックとなるのが社会的損失だ。
欧米各国では学校休業にともない,保護者が子どもの世話にかかりきりになることで発生するコストや国内総生産(GDP)の損失が小さくないことが明らかにされている。
このことを踏まえ,米疾病管理センター(CDC)など各国の衛生省は,現時点で積極的学校閉鎖を推奨していない。

日本においても,押谷氏らは5月に近畿地方で起きた学校閉鎖にまつわる風評被害や8月に行われた学校活動以外のスポーツ大会で散発的に感染流行が起きたことを挙げ,「今後,地域で一斉に行うというような大規模な学校閉鎖を実施することは難しいと考えられる」との見解を示した。

今回の基本的考え方を作成するにあたり,文部科学省,各自治体の教育委員会から,学校閉鎖の統一基準を策定してほしいとの要望に対して,同氏らは「運用上のメリットはあると思われるが公衆衛生学的には必ずしも正しい方向性であるとはいえない」として,現時点では学校閉鎖の目的や考え方を整理するにとどまった(表)。

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なお,学校・学級閉鎖にあたっては各自治体がそれぞれの地域での感染拡大状況,経済的・社会的影響を判断して決めるべきとしている。


社会的隔離や個人防護具などが,感染拡大予防に効果的なことは誰しもすぐ理解できるが,各方面に及ぶ影響までを考えて総合的に判断することが,効果がすぐに目視できない感染症対策の難しいところだと言える。


#早期の学校閉鎖が感染を抑制 インフルエンザパンデミック時の対策
インペリアルカレッジ(ロンドン)疫学・公衆衛生・プライマリケアのSimon Cauchemez博士とNeil Ferguson教授らは,インフルエンザパンデミック時の学校閉鎖が医療,社会,経済に与える影響について分析し,Lancet Infectious Diseases(2009; 9: 473-481)に発表した。
Cauchemez博士らは学校閉鎖に伴う長所と短所を検討し,パンデミックの規模を慎重に見極めたうえで最終決定を下すよう勧めている。

#国ごとの学校閉鎖計画が必要
今回のエビデンスは,これまでに発生した世界的なインフルエンザの流行に関する研究のレビューから得られた。
Cauchemez博士らは「早期かつ長期にわたる学校閉鎖がパンデミック時の患者数を減らし,飽和状態である病院の負担を大幅に軽減する」と結論付けている。
 
最近の新型インフルエンザパンデミックでは,患者の60%超を18歳未満の小児が占めるため,小児は重要な感染媒介者と見られている。
実際,成人と比べて小児はほとんどのインフルエンザ株に感染しやすい。
このことが,最近の新型インフルエンザパンデミックにおいて学校閉鎖を支持する重要な論拠となっている。
そのため,学校閉鎖で感染の連鎖を断ち切ることにより,
(1)総発症数の減少
(2)流行速度の遅延によるワクチン製造期間の確保
(3)流行ピーク時の発症率低下
(4)医療システムへの負担軽減
(5)一般人口における欠勤数抑制による地域社会の活力回復
―などが期待されている。
 
しかしその一方で,多くの医療従事者が親でもあるため,学校閉鎖が長期化すると,子供の介護をするため休職するなど医療システムを阻害する可能性も指摘している。
そのため,学校の長期閉鎖を決定する際には,パンデミックの深刻度を慎重に考慮すべきだとしている。
 
このように,医療従事者などの重要な職種では学校閉鎖によって好ましくない影響が生じることもある。
また教師が感染すると,学校閉鎖が必然となるため,同博士らは「すべての国が対応策の1つとして学校閉鎖の計画を立てておくのが賢明であろう」と指摘している。


#6例中1例の感染を予防可能
Cauchemez博士らは,これまでのインフルエンザの流行について分析している。
まず,2000年の流行時には,イスラエルで教師のストライキにより学校が閉鎖されると,感染患者の医師あるいは救急部門への受診回数が減少し,1週当たりの呼吸器感染症の診断数やウイルス感染者数が減少した。
しかし,インフルエンザ流行中にストライキがいったん終了して学校が再開すると,再び感染者数が増加した。
 
また,1984〜2006年にフランスで学校の長期休暇を調査した研究によると,長期の休暇により,季節性インフルエンザ患者6例のうち1例が予防可能だと見られ,もし学校に休暇がなければ,毎年の感染者数は16〜18%増加したと推定されている。
この研究によると,積極的に学校を閉鎖すればインフルエンザ発症数は計13〜17%減少し,さらに流行のピークであれば38〜45%が減少すると考えられている。
 
さらに,米国とオーストラリアの都市における1918年のパンデミックに関する研究では,学校閉鎖に加えて教会閉鎖や衛生環境の改善など他の施策を行えば,死亡率は10〜30%低下したと見られている。
ピーク時の死亡率はさらに低下し,一部の都市では50%近くになることが示唆された。
しかし,フランスで発生した1957年のパンデミック期間中,あるいは香港の季節性インフルエンザ流行中にもこの戦略が実施されたが,感染拡大に重要な影響を与えなかったと見られている。

#医療従事者の最大欠勤率は45%
もちろん,感染者数の低下は学校閉鎖がもたらす影響のほんの一部にすぎない。
英国と米国での研究の結果,12週間にわたる学校閉鎖のコストは国内総生産(GDP)の1〜6%と推計されている。
学校閉鎖により学校で出される無料給食などの社会的プログラムが中断されて最も影響を受けるのは,社会的・経済的に貧困な層である。
 
医療システムへの影響も深刻かつ長期化する可能性がある。
英国では,医療と福祉の労働人口の30%は16歳未満の子供を持つ主たる扶養義務者である。
これは全産業部門の平均値16%と比べ高い。そのため,医療産業ではパンデミック時に医療従事者自身が病欠するのに加えて,子供の介護をするため長期間欠勤する可能性がある。
 
英国保健省が行ったある調査では,回答者の77%が女性で(英国の医師・看護師の78%は女性),そのうち50%には16歳未満の扶養すべき子供がおり,21%は学校が閉鎖されれば欠勤する可能性があると回答した。
英国保健保護局のMd Z. Sadique博士らの研究(BMC Public Health 2008; 8: 135)では,インフルエンザ流行中における医療従事者の欠勤率はピーク時で45%(学校閉鎖30%,病気10%,その他の原因5%)と推計されている。


#罹患率1%以下での閉鎖が効果的
学校閉鎖を行うと地域への影響が大きいため,事前に慎重な計画が必要となる。
そのため,学校閉鎖が医療の観点から厳密に検討して好ましい選択肢であるとしても,すべての国や状況下で実施できるとは限らない。
モデル研究によると,罹患者が人口の1%に到達しないうちに学校閉鎖を行えば,その効果はほぼ最大になるという。
学校閉鎖が地域ベースで行われるのは当然であるが,そのなかでも特に閉鎖の時期は決定的に重要となる。
かなりの欠席者が出るまで待てば,閉鎖の好機を逸することもありうる。
閉鎖期間の設定や,子供の自宅学習が可能かどうかなど多くの困難な決定事項がある。
 
しかし,どの学校でも職員の長期欠勤がきっかけで,いつ閉鎖に直面するかわからないため,これらの決定事項は前もって計画しておくべきである。
閉鎖の前,最中,後におけるインフルエンザの流行の影響に加えて,閉鎖が一般世帯に与える社会的・経済的影響も調査する必要がある。
また感染による閉鎖がより広い地域社会へ与える影響の解明にも取り組まなければならない。
 
Cauchemez博士らは「閉鎖を決定する際は,パンデミックの深刻度も考慮すべきである。新型インフルエンザのパンデミックはさらに深刻化する可能性があるため,現在,欧州や北米で提言されている,必ずしも学校閉鎖を推奨しないという慎重なアプローチも今後再検討する必要がある」と述べ,「パンデミック時の対策を立てるうえで国民がどのような行動を取るか予測することも重要だ。
長引く学校閉鎖の間,子供同士が外でどの程度接触するかは予想が付かないが,それはパンデミックの深刻度に影響されると思われる。対策を立てる際には,このような不確実事項の予測も必要だ」と結論付けている。


出典 Medical Tribune 2009.9.24
版権 メディカル・トリビューン社



<きょうの一曲> "We Don't Cry Out Loud"
Rita Coolidge - Don't Cry Out Loud (Live 1979, Tokyo)
http://www.youtube.com/watch?v=Z3u6gn6UQQg

Don't Cry Out Loud-Melissa Manchester
http://www.youtube.com/watch?v=Dbf2C39kNs0&feature=fvw

Melissa Manchester - Don't Cry Out Loud LIVE
http://www.youtube.com/watch?v=-hhqm06Sxuw&NR=1
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by wellfrog3 | 2009-10-07 00:25 | 感染症
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