2009年 03月 19日 ( 1 )

開張足

開張足:三脚構造の崩れによりさまざまなトラブルが
3次元的な見方で治療を
町田 英一 氏 高田馬場病院(東京都)整形外科

最近,足の三脚構造が崩れ,土踏まず(足の縦アーチ)が低下した扁平足と同時に,前足部横軸アーチが低下した開張足が増えており,それによる足のトラブルも増加しているという。
開張足増加の背景には,日本人の靴に関する間違った習慣があり,その治療には3次元的な見方からの手術と整形靴が重要だ,と同氏は話す。

#MTP関節の幅が扇状に広がる
開張足では,中足骨をつなぐ靭帯が伸びて,親趾および第5趾の中足趾(MTP)関節の幅が扇状に広がり,前足部横軸アーチが低下し,3点アーチ構造が崩れるため,いろいろな足のトラブルが起きます(図)。

■足底部の組織が柔らかいため,開張足になると,親趾が内旋し,曲げただけで小趾側に外反して,中足骨遠位端が内側に飛び出す外反母趾になります。
また,開張足では足底部の軟部組織が薄くなり,中足骨の骨頭,特に第2,3趾のMTP関節が床に当たって,タコが生じやすくなります。
 
■モートン病は第3,4趾間の神経腫ですが,その前に強い痛みが生じます。
これは開張足によって縦方向の趾間神経の通り道が狭くなり,神経が圧迫されて生じる趾間関節炎(IDN)によるものです。
日本人では第2,3趾のIDNの頻度も高く,発症すると足趾の知覚鈍麻が起こりやすくなります。
 
■さらに開張足になると,第5趾も外反母趾と対称的に回旋し,母趾側に内反して,中足骨遠位端が外側に飛び出す内反小趾になります。
どちらも開張足が原因なので,内反小趾と外反母趾を併発している場合も多くなります。また,開張足では第5 MTP関節の足底部に難治性のタコ,難治性足底胼胝(IPK)も生じやすくなります。
 
■ヒトが手でものをつかむように,足も地面をつかめるようなアーチ構造をしています。
ところが,開張足になると中足部が下がり,反対に足趾が上がるため,靴に当たった足趾が靴の形に合わせてハンマー状に曲がるハンマートウが生じます。
ハンマートウと外反母趾は同じ開張足が原因になるため,両者は合併することが多くなります。
 
■さらに,開張足では足首の関節が内側に傾き,踵が外反するため,三角形の中心にあるべき重心が内側に傾き,縦アーチも低下するので,程度の差はありますが,偏平足も併発しています。
また,体重が加わることで,母趾の内側部にタコができやすくなります。

#ハイヒールをやめ,ひも靴で予防
■開張足のおもな原因はハイヒールです。
ハイヒールを履くことにより,前足部に体重が集中するため,中足骨をつなぐ靭帯が伸びてしまい,開張足になります。
開張足の予防にはなるべくハイヒールは履かないこと。どうしてもハイヒールを履かなくてはならない場合には,その場所までハイヒールを持っていって履き替えてください。
もともとハイヒールはおしゃれのための室内履きで,外を歩くためのものではないのです。
太らないケーキ,肺がんにならないたばこ,肝臓を傷めない酒がないように,足の健康によいおしゃれ靴はありえません。
おしゃれと健康は両立できないはずなのに,日本人が靴の文化を取り入れたとき,間違った習慣を身に付けてしまったのです。
 
■もう1つの開張足のおもな原因として,靴のひもを結ばないことが挙げられます。
ヒトの足の構造では,土踏まずから足の甲にかけてのラインが重要なので,歩くための靴はこの部分をひもあるいは面テープでしっかりと締めて固定しなくてはいけないのです。
開張足の予防には,靴を履いたら,踵を床にとんとんと打ちつけて踵を靴の踵に合わせて,靴のひもをしっかりと結び,中足部が締まり固定された状態を保って歩くことです。
日本人は靴のひもをしっかり結ぶこともしないという間違った習慣も身に付けてしまったのです。
 
■靴には,おしゃれ靴,歩くための靴(コンフォータブルシューズ)があります。
コンフォータブルシューズには,ひも靴またはスニーカーがあり,これらは通勤や買いものなど日常的に履くための靴です。
おしゃれ靴には,パンプス,ミュール,スリッポンなどが含まれますが,これらは本来が室内履きで,長く歩くための靴ではありません。
元来,おしゃれ靴とコンフォータブルシューズは相いれないものなのです。ところが,日本社会では女性労働者に,接客業だからとひも靴を禁止し,ハイヒールを強要する場合が多くあります。
これは,危険きわまりないことです。
 
■外反母趾の治療は,残念ながら失敗の歴史でした。
20年以上前にはX線画像だけから2次元的な見方で外反母趾をなおそうとしていたため,母趾外転筋だけを治療するマックブライトの手術が行われていました。
しかし,それではもともとの原因である開張足がなおらないため,失敗に終わっていました。
しかし,20年くらい前から米国で立体的,3次元的な見方から外反母趾の原因である開張足自体を治療する,骨を切って中足骨の幅を狭くする骨切り術が行われるようになり,現在ではほとんどが成功するようになりました。
 
■米国では年間約3万例の外反母趾手術が行われていますが,日本ではその100分の1程度しか行われていません。
外反母趾の手術は難易度が高く,片手間ではできないからです。
私は年間約50例の外反母趾に対して3次元的な見方から開張足をなおす手術を行っています。
それでも手術の成功率は8〜9割ですが,術後は1人1人の足に合わせた中敷を入れたドイツの整形靴(ひも靴)をつくり,外ではそれを履いてもらい,室内でも裸足ではなく,中敷の中足部にパッドが入ったドイツのサンダルを履いてもらっているので,患者さんの満足度は高くなっています。
開張足の手術をしても,平らなところに立つと中足部に体重が加わり,また開張足の引き金になるからです。足の形,状態は1人1人異なり,左右でも差があるため,靴も眼鏡や入れ歯と同じように,その人に合ったものを履くようにすることが重要なのです。



出典 Medical Tribune 2009.2.12(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン

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by wellfrog3 | 2009-03-19 00:47 | リハビリテーション科