2009年 03月 20日 ( 1 )

薬剤抵抗性てんかん

少なすぎる適応患者への手術件数
コロンビア大学(ニューヨーク)神経学のHyunmi Choi助教授らがJAMA(2008; 300: 2497-2505)に発表した分析結果によると,薬剤に反応しない側頭葉てんかん患者は側頭葉部分の手術を受けることで余命とQOLが著明に向上するという。

発作の消失により死亡率低下

現在入手できる抗てんかん薬を使用しても,患者の20〜40%では治療効果が得られない。
Choi助教授らによると,てんかんのなかで最も多い側頭葉てんかんは,薬剤に反応しない可能性が最も高く,若年死亡リスクも高い。
薬物療法に代わる治療法として,側頭葉切除術(側頭葉の脳組織を切り取る手技)がある。
前側頭葉切除後に発作が消失する患者では,発作が続く患者に比べて死亡率が低下する。
 
同助教授らは「1950年代以降,側頭葉切除の有効性を報告している研究は複数あるが,手術のために紹介されてくる患者は少ないうえ,紹介患者でも既に罹病期間が平均20年も続いた後であることが多い。
心理社会的発達の重要な時期にある青少年および若年成人に,このような治療の遅延があることは特に問題である」と指摘している。
 
同助教授らは今回,シミュレーションモデルを用い,薬剤抵抗性側頭葉てんかん患者において前側頭葉切除と継続的薬剤療法の余命および質調整余命に対する効果を推測比較して分析した。
モデルには手術による合併症の可能性と発作の状態を組み入れ,患者から直接的に得た健康関連QOLデータと医学文献からのデータを組み入れた。

手術の早期検討が重要
前側頭葉切除後5年間および10年間発作がないことのモデル予測を行ったところ,その結果は既に発表されている研究結果と一致していた。
今回の分析では,前側頭葉切除により余命が5.0年延長してシミュレーションの100%で手術が望ましいこと,また切除により質調整後の期待余命が7.5年延長してシミュレーションの96.5%で手術が望ましいことが判明した。
 
ある35歳の患者の場合,前側頭葉切除により発作のない年数が15.0年増加し,発作関連の死亡の生涯絶対リスクが15%低下することがシミュレーションモデルで示唆された。
 
Choi助教授らは「薬剤抵抗性側頭葉てんかん患者と神経科医にとって,この結果は手術と薬物療法の継続による効果を比較検討するうえで,新たな視点を提供するものとなるだろう」とし,「手術時に高年齢であることや,罹患期間の長さといった要因は,前側頭葉切除による発作の抑制効果を低下させる可能性があるため,時機を逃さずに手術を行うことが重要である。
少なくとも2種の適切な抗てんかん薬を最大許容量投与しても効果が得られない場合,また患者に障害をもたらす部分発作がある場合は,専門的な手術プログラムを紹介することも検討すべきである」と述べている。
手術はあまりにも少なく遅い

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デービッド・ゲッフェン医学部(ロサンゼルス)のJerome Engel教授は,今回の分析結果に ついて同誌の付随論評(2008; 300: 2548-2550)で「てんかんの手術治療はまだ十分に活用されていないうえ,手術が行われても重度の関連障害を回復させるには遅すぎる時期になって施行される例が多い」とし,「Choi助教授らによる研究は側頭葉てんかんの手術による利益を強調しているが,現状ではまだ過小評価されている可能性が高い。
難治性側頭葉てんかんの自然経過をよりよく理解し,持続性発作が見られる患者を確実に予測する因子を明らかにすることが必要だ。
また,回復不能の心理的障害や社会的障害が現れる前,つまり抗てんかん薬治療の初期段階で,手術による利益を正確に予測できるようにするためには,さらなる情報が必要である」と指摘している。
 
さらに,「今のところ,プライマリケア医や神経科医にできることは,いくつかの抗てんかん薬を試しても効果がなく,障害をもたらす発作が続く患者を,より詳細な診断のためにてんかん専門センターに紹介することだろう。
てんかん専門医は,初期の手術が有効な選択肢であるか否かを判断できるからである」と述べている。



出典 Medical Tribune 2009.2.26(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

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by wellfrog3 | 2009-03-20 00:02 | 神経内科