カテゴリ:呼吸器科( 8 )

COPD治療薬と心血管リスク

抗コリン薬の害について検討したシステマティック・レビューで勉強しました。


##COPD治療薬で心血管リスクが増えるのか
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理に使われる抗コリン薬のチオトロピウム(日本での商品名:スピリーバ)に関して、米食品医薬品局(FDA)が2008年3月、early communicationとしながらも、“脳卒中リスクが増える可能性”を指摘しました(参考文献1)。

Singh S, Loke YK, Furberg CD. Inhaled anticholinergics and risk of major adverse cardiovascular events in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA 2008; 300: 1439-50. (2008年9月24日号)



【診療上の疑問・課題:明確】
COPDに対する吸入抗コリン薬の長期使用が、心血管リスク(心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡)に及ぼす影響を検討するというもので、焦点は明確に絞られていました。

【研究デザイン:RCTのみ、追跡期間は30日以上】
COPD患者を対象に、吸入抗コリン薬(イプラトロピウム[日本での商品名:アトロベント]およびチオトロピウム)を評価したランダム化比較試験(RCT)で、追跡期間が30日以上のものを検討対象としました。
コントロール薬は、プラセボでも他の薬(β刺激薬など)でも可としました。喘息患者を対象としたものは除きました。

今回は、薬の効果ではなく、害についての検討なので、研究デザインは必ずしもRCTに限定せずに、観察研究なども含めるという考え方もあると思います。

【文献検索:企業の臨床試験登録も検索、ただし言語は英語のみ】



【個々の研究のクオリティ:コクラン・ハンドブックを参考にしてチェック】



【解析:メタアナリシスを実施】
 


【結果:抗コリン薬は心血管リスクを有意に増やす】
最終的に17件のRCT(チオトロピウム12件、イプラトロピウム5件)、計1万4783人のデータがメタアナリシスに含まれました。
追跡期間は、短期(6週間から6カ月)が12件、長期(6カ月以上)が5件でした。
対象となったRCTのうち、最も参加者数が多かったのは、イピラトロピウムとプラセボを比較したLung Health Study(参考文献2)で、3923人でした。それ以外のRCTは概して小規模でした。

全体を統合した結果、主要アウトカムである心血管リスク(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中[TIA含む]、心血管死亡[突然死含む]の複合アウトカム)に関して、吸入抗コリン薬により有意にリスクが増すという結果でした(抗コリン薬1.8%対コントロール1.2%、RR 1.58[95%CI 1.21-2.06]、p<0.001)。この結果は、感度分析でも変わりませんでした。

個々のアウトカムでは、心血管死亡(12件のRCT、RR 1.80[95%CI 1.17-2.77]、p=0.008)および心筋梗塞(11件のRCT、RR 1.53[95%CI 1.05-2.23]、p=0.03)については、吸入抗コリン薬により有意にリスクが増すという結果でしたが、脳卒中(7件のRCT、RR 1.46[95%CI 0.81-2.62]、p=0.20)については有意な差は認められませんでした。

また、全死因死亡は、吸入抗コリン薬によりリスクが増しましたが、ぎりぎりのところで有意には至りませんでした(RR 1.26、95%CI 0.99-1.61、p=0.06)。

著者らはさらに、カナダにおけるCOPD患者における心筋梗塞発生率(1000人年当たり10.9)を用いて、吸入抗コリン薬の害必要数(NNH)を計算したところ、174/年(1年当たり174人が吸入抗コリン薬を服用すると心筋梗塞を起こす人が1人増える)でした。
同様に、心血管死亡率(1000人年当たり31.9)に関する害必要数(NNH)を計算したところ、40/年でした。

【臨床への適用:日本人における心血管イベントの発生率を考慮する必要も】
著者らによれば、吸入抗コリン薬がCOPD患者の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を増やす生物学的なメカニズムは、はっきりとは分かっていないそうです。
しかし、長期の使用により心血管リスクが増えるなら、COPDの管理を考える上で注意すべきと思われます。

ただし、今回のメタアナリシスには限界も少なからずあります。
メタアナリシスに含まれたRCTは、追跡期間が6カ月未満の比較的短期のものが多く、そのため死亡を含む害が十分に捕捉されていない可能性があると考えられます。
また、Lung Health Study以外は小規模のRCTが多かったため、個々のRCTにおける信頼区間が広くなってしまいました。
著者らも、メタアナリシスは、検討したいアウトカムを見るように初めからデザインされた大規模RCTに比べれば、説得力は弱いと認めていました。

また、著者らが計算したNNHは、カナダにおける心血管イベント発生率を基に計算されたものであることにも注意が必要です。
日本人の場合、心血管イベント発生率は欧米人より低いと考えられるため、実質的な害はより少なくなるでしょう。

【その他の検討項目:薬の効果とのバランスを考えて】
今回のメタアナリシスは、薬の害に焦点を当てましたが、肝心の効果の方はどうなのでしょうか。チオトロピウムに関する別のメタアナリシス(参考文献3)によれば、チオトロピウムはプラセボに比べて、COPDの悪化およびCOPD関連の入院を、有意に減らすという結果が出ています(治療必要数[NNT]はそれぞれ約21、約20)。

【診療への影響:心血管リスクを減らさないというメタアナリシスもあり、決着はまだ】
ベーリンガー・インゲルハイム社は、2008年9月23日付のプレスリリースで、今回のメタアナリシスとは正反対の研究結果を発表しました。

Established safety profile of Spiriva® confirmed by 30 rigorously controlled clinical trials
http://www.boehringer-ingelheim.com/corporate/news/press_releases/detail.asp?ID=5994

それによると、チオトロピウムとプラセボを比較した多施設共同大規模RCTであるUPLIFT試験(参考文献4)の結果を含む、30件のプラセボ対照RCT(参加者は計1万9545人)を同社がまとめたところ、チオトロピウムはプラセボに比べて、全死因死亡率(リスク比0.88、95%CI 0.77-0.999)、心イベントによる死亡率(リスク比0.77、95%CI 0.55-1.03)、血管イベントによる死亡率(リスク比0.44、95%CI 0.79-1.35)、脳卒中(リスク比1.03、95%CI 0.79-1.35)、心筋梗塞(リスク比0.78、95%CI 0.59-1.02)のいずれも、有意には増やさなかったとのことです。
脳卒中を除いて、点推定値はむしろ減っています(1より小さい)。

さらに、2008年9月24日付のプレスリリースで、UPLIFT試験の結果の概要が紹介されました。

Landmark UPLIFT® study reaffirms the safety of Spiriva® (tiotropium) in patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease
http://www.boehringer-ingelheim.com/corporate/news/press_releases/detail.asp?ID=6034

それによると、致死的イベントは、チオトロピウム群12.8%(381/2986)、プラセボ群13.7%(411/3006)で起こり、ハザード比は0.84(95%CI 0.73-0.97)で、むしろチオトロピウム群の方が少ないという結果だったとのことです。
UPLIFT試験の詳細は、2008年10月5日に開かれる欧州呼吸器学会で発表される予定だそうです。

同社はこれらの結果を基に、チオトロピウムの安全性が確認されたとしています。
ただし、UPLIFT試験は、同社およびファイザー社の資金提供で行われたRCTであるということにも、注意する必要があるかもしれません。


【参考文献】
1)US Food and Drug Administration. Early communication about an ongoing safety review of tiotropium (marketed as Spiriva Handihaler). http://www.fda.gov/cder/drug/early_comm/tiotropium.htm

2)Anthonisen NR, Connett JE, Enright PL, Manfreda J and the Lung Health Study Research Group. Hospitalizations and mortality in the Lung Health Study. Am J Respir Crit Care Med 2002; 166: 333-9.

3)Rodrigo GJ, Nannini LJ. Tiotropium for the treatment of stable chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review with meta-analysis. Pulm Pharmacol Ther. 2007; 20: 495-502.

4)Decramer M, Celli B, Tashkin DP, Pauwels RA, Burkhart D, Cassino C, et al. Clinical trial design considerations in assessing long-term functional impacts of tiotropium in COPD: the UPLIFT trial. COPD 2004; 1: 303-12.



NM online 2008.10.3
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kitazawa/200810/507999.html


<番外編>
2009年7月3日 14時00分

見た目は幼児のままの16歳、老化の仕組みの鍵にぎる
capra 曰く、

本家/.、New Scientistより。

米在住のBrooke Greenbergさんは今年1月に16歳になったが、見た目にも知能的にも幼児のままだそうだ。一見「時が止まっている」かのように見える彼女だが、そうではないという。University of South Florida College of Medicineの Richard Walker博士によると、Brookeさんは一個体として調和した成長をしているのではなく、身体のパーツが非同期でそれぞれ独自に成長しているとのこと。脳は幼児期とほぼ同程度とみられ、発声はできるが言葉は話せないという。骨は年齢からすると非常に小さいが、細胞や構造などをみると10歳児程度に成長しているとのこと。しかし歯は8歳児程であり、未だに乳歯のままだという。

Walker博士によると、このような一貫しない発育秩序の報告例はBrookeさんが初めてとのこと。研究者らは原因を解明するため、まずプロジェリア症候群やウェルナー症候群などの早老症でみられる遺伝子変異を調べたが、Brookeさんにこの変異は確認されなかったそうだ。彼女の場合恐らく成長を調節するレギュレータの役割を担う部分が欠如していると考えられており、その仕組みの解明はすなわち成長や老化の仕組みの解明に繋がる可能性が高いと考えられている。

http://www.excite.co.jp/News/column/20090703140000/Slashdot_09_07_03_049207.html
excite.ニュース 2009年7月3日 14時00分


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by wellfrog3 | 2009-07-05 00:22 | 呼吸器科

COPD治療のパラダイムシフト

北海道大学大学院呼吸器内科学 西村正治教授のCOPDに関する記事で勉強しました。


COPD治療のパラダイムシフト
生命予後の改善を目指した薬物治療へ

慢性かつ進行性の気流制限を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(COPD; Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は長年、効果的な治療法が存在しない疾患と理解されてきた。
しかし近年は、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などの投与により、呼吸器症状の改善、急性増悪や呼吸機能低下の抑制などが期待できることが国内外で報告されている。
さらに、COPD治療は生命予後の改善を見据えた薬物療法の可能性も示唆され、大きな変革期を迎えている。

—— COPDの治療に対する考え方が、ここ数年の間に大きく変わったといわれています。どのような変化があったのですか。
西村 
これまで多くの臨床医の間では、COPDの病態は肺気腫が主体のため肺組織が壊れた状態であり、治療の手立てがない疾患と考えられていました。
つまり、病態の非可逆的な部分にばかり目が向けられ、喘息のように治療によって呼吸機能の改善がみられることはないと認識されてきたわけです。

ところが、米国国立心肺血液研究所(NHLBI)と世界保健機関(WHO)のサポートにより作成されたガイドラインであるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)が2001年に発刊され、COPD治療の新たな方向性が示されました。
具体的には、COPDを非可逆的な病変と可逆的な病変が併存する病態ととらえ、可逆的な部分に最大限の治療を施せば、完全に元に戻ることはないとしても、患者さんのQOLをかなり改善できるという考え方です。実際、呼吸器専門医の多くはそのころから、そうした視点に立った治療を行ってきました。

最近になって、治療に関する考え方がさらに進展しています。
それは薬物療法によって、年単位で起こる呼吸機能の低下を遅延させ、ひいては生命予後も改善しようというものです。
すなわち、慢性疾患としての自然経過を薬物療法で改善しようと考えるようになったことが、最大の変化だと思います。

呼吸機能低下の抑制効果を検討しているUPLIFT試験
—— そうした治療の方向性を支持する近年のエビデンスについて、説明して下さい。
西村 
例えば、昨年発表されたTORCH試験が挙げられます(N Engl J Med 2007;356:775-789)。
この試験は、約6000人の中等症以上のCOPD患者をプラセボ群、吸入ステロイド薬のフルチカゾン群、長時間作用型β2刺激薬(LABA)のサルメテロール群、吸入ステロイド薬/LABA併用群の4群に無作為に分け、3年間にわたってCOPD患者の生命予後を検討したものです。
その結果、吸入ステロイド薬/LABA併用群で、COPD患者の予後を改善することはぎりぎり証明できませんでしたが、急性増悪の有意な抑制が示されました。
 
PEACE試験も注目されます(Lancet 2008;371:2013-2018)。
これは、本邦では去痰薬として使用されているカルボシステインのCOPDへの効果を検討した試験です。
約700人のCOPD患者を対象に中国で行われたプラセボ対照の二重盲検比較試験で、COPD患者の急性増悪を有意に抑制したとのデータが得られました。

また、あくまでTORCH試験のサブ解析結果ですが、吸入ステロイド薬/LABA併用による薬物治療が呼吸機能(1秒量)の低下を有意に抑制したことが今年発表され、COPD患者の自然歴に影響を与える可能性が示唆されました(Am J Respir Crit Care Med 2008;178:332-338)。

COPDにおける薬物治療の目標は単なる症状改善にとどまらず、急性増悪の抑制、呼吸機能そのものの低下抑制、あるいは生命予後の改善にシフトしつつあり、そうした視点に立った治療が求められるようになってきています。

—— 呼吸機能低下の抑制を直接見据えた検討も進められているのでしょうか。
西村 
これまで、禁煙療法を除き、COPD患者における呼吸機能の経年的低下を薬物治療で抑えることができるという明確なエビデンスはありませんでした。
実は、先ほど説明したTORCH試験もプライマリーエンドポイント(1次エンドポイント)が全死亡であり、呼吸機能ではありません。

しかし、呼吸機能の経年変化に対する効果をプライマリーエンドポイントとした、大規模臨床試験としては世界で初めての検討が2003年から行われており、その結果が今年10月に欧州呼吸器学会(European Respiratory Society)で発表される予定です。
これはUPLIFT 試験と呼ばれており、2003年に改訂されたGOLDで慢性安定期におけるCOPD治療の新たな推奨薬となった長時間作用型抗コリン薬チオトロピウムの効果を調べています(COPD 2004;1:303-312)。
もし4年間にわたり呼吸機能の悪化をチオトロピウムが抑制することが明らかになれば、これまでとは異なる観点からCOPDにおける薬物療法に目が向けられるようになるでしょう。

明らかに見逃されているCOPD患者
—— COPD治療に進展がみられる一方で、治療されないまま放置されている患者さんが非常に多いことも指摘されています。その理由をどのようにお考えですか。
西村 
肺炎や肺がんで入院される患者さんの中に、COPDとの診断を受けておらず治療されていなかったと考えられるケースが多々みられます。
COPDが見逃される大きな理由として、患者さんが静かに暮らしていれば、喘息のような発作が起きにくいという疾患の特性が挙げられます。

つまり、COPDは呼吸機能が低下しても重症化するまでは、強い運動をしたり、肺感染症に罹患したりしない限りは目立たないからです。
日本人のCOPD患者は70歳前後でようやく診断されることが多く、それまでは日常の活動性が少しくらい低下しても加齢のためと思われがちで、家族なども呼吸機能が落ちていることになかなか気づかないのではないでしょうか。
また、呼吸機能の低下を自覚しても、それを隠すためにライフスタイルを変えて、外出を控えるようになる患者さんもいます。そうすると、やはり周囲の人は気づきにくくなります。

—— どうすれば、COPD患者さんを見つけ出すことができるのでしょうか。
西村 
COPDになるリスクの高い人、すなわち中・高年者で喫煙歴が長い人に対して、スパイロメーターを用いて呼吸機能検査を行えば、簡便に診断できます。
ただ、一般臨床医の間にスパイロメーターがそれほど普及していないことが、診断を遅らせる一因になっていることも事実です。
特に近年のCOPDでは、咳や痰といった典型的な症状を呈する患者さんは昔に比べると少なくなっているので、呼吸機能検査の普及が求められます。
したがって、特定健康診査や人間ドックの検査項目の1つに、呼吸機能検査をぜひとも取り入れてほしいとも考えています。

また、COPDを基礎疾患として有する肺炎や急性気管支炎患者さんに対し、急性症状の治療だけを行う、つまりレントゲンの陰影、血液検査の炎症所見、咳・痰の臨床症状がなくなれば治療を終えている例も少なくありません。
COPDは呼吸機能検査による評価が必須であり、レントゲン所見や血液検査だけで呼吸器疾患をすべて診断できるわけではないことを認知していただく必要があります。
このことは肺炎や気管支炎の再発予防のためにも大切です。

—— COPDは日本人の死因では10位と、さほど多くはないようですが?
西村 
確かに10位ですが、2007年の死亡者数は1万5000人弱であり、決して少なくはないと思います。
それに、肺炎や肺がんで死亡している人の中に相当数の“隠れCOPD”患者さんがいます。
私どもの病院に肺炎や肺がんで入院した患者さんの中には、COPDであるのにそれまで診断されていなかったケースは少なくないからです。
したがって、COPDを軽視するべきではありません。

欧米人を対象に実施されたTORCH試験では、心血管疾患による死亡と呼吸器疾患による死亡がほぼ同数でした。
その背景には喫煙が考えられます。
喫煙はCOPDと心血管疾患に共通するリスクファクターですから、喫煙習慣のある人がCOPDと診断されれば心疾患を有する可能性もあるというメッセージだと思います。
ただ、あくまでも欧米人の傾向であって、虚血性心疾患がもともと欧米より少なく、肥満度も低い日本人の場合は、急性増悪の結果としての肺感染症と肺がんによる死亡が多いと考えています。

COPDの早期発見・早期治療に努めるべき
—— COPDの早期発見と早期治療により、肺炎や肺がんなどの発症リスクや死亡者数を減少させられるのでしょうか。
西村 
それを明らかにしたデータはまだありませんが、その可能性は十分にあると思われます。実は現在、私どもの施設では約300人のCOPD患者を対象にコホート研究を実施しており、半年ごとに呼吸器機能検査と1年ごとにCT検査を行っています。
追跡期間は少なくとも5年間を予定しており、日本人のCOPD患者における自然歴を明らかにできるのではないかと考えています。

—— COPD治療における薬物療法の可能性と今後の課題についてお聞かせください。
西村 
現状では、壊れた肺組織を完全に元の状態に戻せないことは既に述べたとおりです。
しかし、気管支拡張薬などを適切に投与することで、見違えるように呼吸が楽になったり、自宅で静かにしていた患者さんが外出できるようになるといった、QOLが著明に改善される例はかなりあります。

これも繰り返しになりますが、基本的に治らないと考えられていたCOPDが2006年に改定されたGOLDガイドラインでは「予防と治療が可能な疾患」に位置づけられていることを、ぜひともご理解いただく必要があると考えています。そういう意味でも、呼吸機能(1秒量)低下の抑制効果をプライマリーエンドポイントに設定しているUPLIFT試験は注目に値します。

スパイロメーターによる呼吸機能検査を普及させることも非常に大切です。
呼吸機能は健常者でも加齢によって少しずつ低下しますが、喫煙や疾患によりその低下速度が加速されます。
そのため、患者さんは呼吸機能の低下を加齢のためと認識しがちですので、同姓・同年代と比べて優れているのか劣っているのかを明らかにする必要があります。
そこで、一般の方々が理解しやすいように、日本呼吸器学会によりスパイロメーターの結果を「肺年齢」という指標で説明する工夫がなされていますので、実地臨床で活用していただきたいと思います。

治療可能なCOPDを決して放置しないように、早期発見・早期治療を心がけることが医療者としての責務ではないかと考えています。

(日経メディカル開発)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/copd2008/topics/200808/507500.html
NM online 2008.8.12

フルチカゾン/サルメテロール配合剤投与による慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の生存率試験
http://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2006_01/P1000334.html
http://www.japancorp.net/japan/article.asp?Art_ID=39780&cid=28503

[PDF] 吸入療法と COPD(TORCH、INSPIRE)(080514)
http://rockymuku.sakura.ne.jp/kokyuukinaika/kyuunyuuryouhoutoCOPD.pdf



<医学雑誌斜め読み>
Natural history of small gallbladder polyps is benign: evidence from a clinical and pathogenetic study.
胆嚢の小ポリープの自然史

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19209165?dopt=Abstract

Am J Gastroenterol. 2009 Mar;104(3):624-9. Epub 2009 Feb 10.
OBJECTIVES:
Little is known about the natural history and pathogenesis of small gallbladder polyps (<10 mm, usually of the cholesterol type), particularly in Western populations.
It is unclear if these polyps and gallstones represent different aspects of the same disease.
The aim of this study was to characterize the natural history and pathogenesis of small gallbladder polyps.
METHODS:
Fifty-six Caucasian patients with small gallbladder polyps, 30 matched gallstone patients, and 30 controls were enrolled in this 5-year prospective study.
Patients underwent a symptomatic questionnaire, abdominal ultrasonography, and ultrasonographic evaluation of gallbladder motility at baseline and yearly intervals for 5 years.
Cholesterol saturation index, cholesterol crystals in bile, and apolipoprotein E genotype were also determined.
RESULTS:
Most patients with polyps (mean size: 5.3 mm) were men (61%), asymptomatic, and had multiple polyps (57%).
Polyps did not change in 91% of patients during follow-up.
No subject experienced biliary pain or underwent cholecystectomy; four developed gallstones. Cholesterol saturation index was higher in patients with polyps or gallstones than in controls (P<0.05).
Cholesterol crystals were more frequent in patients with polyps than in controls (P<0.0001) but less common than in gallstone patients (P<0.0001).
Polyps and gallstones were associated with nonapolipoprotein E4 phenotypes.
CONCLUSIONS:
The natural history of small gallbladder polyps was benign, as no patient developed specific symptoms and/or morphological changes in polyps.
Consequently, a "wait and see" policy is advisable in these patients.
Polyps have some pathogenetic mechanisms in common with gallstones, but few patients developed gallstones.

これらの長期のデータは、SGPは良性のまま経過し、大きくなる患者は少数にすぎないというこれまでの知見を裏付けている。
また、SGPを有する患者も、無症状の胆石を発症する割合は、一般の人々と同等である。臨床医は自信をもってこれらの患者を「経過観察」する方針をとるべきであり、予防的な胆嚢切除は不要である。


<自遊時間>
茨城で1266人が自民党離党へ 県医師連盟会員ら
茨城県医師会の政治団体、県医師連盟は25日、自民党員となっている同連盟の会員や家族ら3472人のうち1266人が自民党離党を決めたと発表した。
同連盟は従来、自民党支持だったが、後期高齢者医療制度に反対し、次期衆院選で県内7小選挙区すべてで民主党候補の推薦を決定。
自民党県連からの離党勧告を受け、原中勝征委員長ら幹部はすでに離党している。

http://www.excite.co.jp/News/politics/20090625/Kyodo_OT_CO2009062501000710.html
excite ニュース 2009年6月25日 18時59分



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P.アイズピリ 「パープルバックの花」 リトグラフ


<きょうのブログ>
臨時 vol 145 「医師の計画配置論は荒唐無稽だ」
http://medg.jp/mt/2009/06/-vol-145.html
■6月3日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、平成22年度予算編成の基本的な考え方を発表しました。
■医療については、「地域間、診療科間、病院・診療所間における医師の偏在を是正する必要がある」とされ、その解決策として「『経済的手法』と『規制的手法』の両方を行なうべきだ」と提言されました。
■今回の提言(原文ママ)
「偏在是正の手法としては、規制的手法を活用することも必要である。規制的手法の導入については、医師の職業選択の自由を制約するといった議論もある。しかし、国民医療費のほとんどが公費負担(保険料又は税金)であり、税金の投入されている比重も主要諸外国と比較しても大きいことや、医師の養成 には多額の税金が投入されていること等にかんがみれば、医師が地域や診療科を選ぶこと等について、完全に自由であることは必然ではない」
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by wellfrog3 | 2009-06-26 00:17 | 呼吸器科

マクロライド系抗菌薬とCOPD

マクロライド系抗菌薬でCOPDの症状悪化を抑制

ロンドン大学(ロンドン)のJadwiga A. Wedzicha博士と西インド諸島大学(トリニダードトバコ・オーガスティン)臨床医科学のTerence Seemungai博士は,中等度以上の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する1年間の研究を行い,症状の悪化はマクロライド系抗菌薬の長期使用によって最大35%まで低減できるとの結果を,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(2008; 178: 1139-1147)に報告した。

#頻度,期間のいずれも抑制
■この研究は,COPDに対するエリスロマイシンの効果を検討した1年間のランダム化プラセボ対照試験としては初めてのものである。
この試験では中等度以上のCOPD患者109例を,エリスロマイシン250mg(53例)またはプラセボ(56例)のいずれかを1日2回投与する群にランダムに割り付け,症状悪化の頻度を比較した。
症状悪化に関しては,中等度の症状悪化を「ベースライン時と比べた呼吸器症状の悪化が2日以上見られ,プレドニゾンまたは抗生物質の投与を要する」,重度の悪化を「入院を要するほどの症状悪化」と定義した。
 
■その結果,中等度〜重度の症状悪化はエリスロマイシン群81回,プラセボ群125回の計206回生じた。
また,そのうち重度の症状悪化はエリスロマイシン群で6回(7.4%),プラセボ群で14回(11.2%)生じ,症状悪化の頻度はエリスロマイシン群で低かった。
症状悪化の期間(中央値)は,エリスロマイシン群の9日間に対し,プラセボ群で13日間であった。

#長期使用の有効性解明にはさらに研究が必要
■Seemungai博士は「こうした差異を説明する機序は解明されていないが,in vitroの結果から,エリスロマイシンの持つ抗炎症の特性が関与していると考えられる」と説明。
ただし,「こうした抗菌薬の長期使用によって長期耐性が促進されることが懸念されるため,今回の結果は慎重に受け止めるべきだ」と述べている。
 
■また,今回の対象患者が受けていた治療が,エリスロマイシン療法に加えて,症状悪化頻度を低減するステロイド吸入薬や長時間作用型気管支拡張薬といったガイドライン推奨療法を用いていたか否かも問題となってくる。
 
■さらに,米国胸部学会前会長のJohn Heffner氏は「進行COPD患者に対し症状悪化時に強力な広域抗菌スペクトル薬を使用するよりも,エリスロマイシンを長期使用するほうがよいか否かについても検討すべき」と指摘。

■「中等度〜重度のCOPD患者の場合,症状悪化はおよそ1年に1回起こり,直接・間接コストは米国だけで年間300億ドル以上に及んでいる。急性悪化時におけるきわめて強力な抗菌薬の高頻度投与と,エリスロマイシンの長期使用による耐性発現における相対的なリスクについてさらなる分析が必要だ。ステロイド吸入薬や持続性気管支拡張薬による治療を既に受けている患者に対する長期的な研究で今回と同等の効果が認められれば,エリスロマイシン療法による便益はリスクを上回るだろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2009.2.12(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

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片岡球子 「富士」
http://www.art-information.ne.jp/nihonga/kataoka_tamako/


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)
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by wellfrog3 | 2009-03-03 00:30 | 呼吸器科

肺炎に対する抗菌薬療法

肺炎はわが国の死因の第4位を占める疾患です。
受療率,罹患率ともに高齢社会の到来により急激に増加しています。
年齢別での検討で、85歳以上の男性では死因の第2位,90歳以上では第1位となり,高齢者に特有の誤嚥性肺炎や基礎疾患による感染リスクの増大,抗菌薬の過剰使用により誘導される耐性菌の増加が問題視されています。

長崎大学の河野茂医学部長が肺炎に対する抗菌薬療法の将来展望について話された記事で勉強しました。

PK/PD理論とDe-escalationは耐性菌予防の重要な戦略
MDRPなど耐性菌増加が大きな問題

■市中呼吸器感染症の最も重要な原因菌は肺炎球菌である。

■1990年ころから,ペニシリン系薬に対する感受性低下が急速に進行し,現在は60%程度が低感受性菌ならびに耐性菌である。
また,マクロライド耐性肺炎球菌も約80%を占め,ニューキノロン耐性菌の増加が懸念されている。
 
■院内感染症の代表的な原因菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は,出現から40年以上たった現在もさらに耐性化が進み,2002年には数株ではあるがバンコマイシン(VCM)耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)として報告された。

■市中感染型MRSA(CA-MRSA)の出現が新たな柱として院外に拡大していることが示唆され,注意が必要な問題である。
 
■最近注目されている耐性菌感染症は,多剤耐性緑膿菌(MDRP)による院内感染である。
緑膿菌に対して抗菌活性を有するカルバペネム系薬,ニューキノロン系薬およびアミノ配糖体系薬の3剤すべてに耐性を獲得しており,既存抗菌薬はほとんど無効である。
白血病や臓器移植などの易感染性宿主では,致死的な感染症を引き起こすことがある。
 
■MDRPは,国内の複数施設で発生した院内感染が社会問題となっている一方,治療薬がほとんどないため,感染制御・予防がきわめて重要である(河野茂氏)。

■β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)や基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌(ESBL)など多くの耐性菌が大きな問題となっている。

市中肺炎/重症度分類のA-DROPとPK/PDを考慮した治療指針が有用
■わが国では,日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン(GL)作成委員会により,「成人市中肺炎診療GL」(市中肺炎GL),「成人院内肺炎診療の基本的考え方」(院内肺炎GL)が発行された。
 
■これまでの抗菌薬開発と耐性菌出現の歴史を反省し,優れた抗菌薬を継続的に使用し,かつ耐性菌を生み出さない薬剤選択や使用法を考慮した指針として,患者の予後と高い相関を示すことで十分な治療効果が期待されるA-DROPシステム,PK/PD理論に基づいた抗菌薬投与計画を提示した(河野茂氏)。
 
■2005年に改訂された市中肺炎GLでは,既存の抗菌薬を温存するための治療指針を追及する立場があらためて強調された。
具体的には,重症度分類に年齢(Age),脱水(Dehydration),呼吸状態(Respiration),意識レベル(Orientation),血圧(Blood Pressure)を指標とするA-DROPシステムが推奨された。
抗菌力が強く,広域スペクトラムを有するニューキノロン系薬やカルバペネム系薬などをエンピリック治療の第一選択とせずに十分量のもとでの短期間使用を前提とし,生体内で薬剤がどれだけ有効に作用しているかを考えた概念として,薬物動態(Pharmacokinetics;PK)/吸収,分布,代謝,排泄など生体内における薬物の作用(Pharmacodynamics:PD)理論を導入した(図1)。
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■PK/PD理論については,推奨される投与方法が抗菌薬の種類によって異なる。
例えば,ペニシリン,セフェム,カルバペネム系抗菌薬など時間依存性に抗菌作用を示す薬剤では,最小発育阻止濃度(MIC)を上回る時間(time above MIC)が長いほど高い臨床効果が得られることから,1日分の投与量を1回より2回,2回より3回,3回より4回とすることでtime above MICが延長されて高い効果が期待できる。

■アミノグリコシド,キノロン,ケトライド系抗菌薬など濃度依存性に抗菌作用を示す薬剤では,血中濃度-時間曲線下面積(AUC)/MIC(あるいはCmax/MIC)の値が大きいほど高い効果が期待できる。
したがって,1日の投与量が同じであれば1回にまとめた投与が理論的に推奨される。

院内肺炎/予後予測因子をもとに重症度分類から抗菌薬選択を
■院内肺炎は「入院後48時間以降に新しく出現した肺炎」と定義付けられ,通常見られる市中肺炎とは異なり,基礎疾患を有し,免疫能や全身状態などが悪い患者が多い。

■そこで,2002年に発行された院内肺炎GLでは,重症度と生体側の危険因子の組み合わせから,使用抗菌薬の選択が推奨された。
また,日和見感染としての院内肺炎の治療法を提示したのも大きな特徴である。

■2005年に米国胸部学会(ATS)と米国感染症学会(IDSA)合同のGLが発表されたが,大きな特徴としてDe-escalationを戦略の基本としていることが挙げられる。

■病歴から耐性菌関与の可能性を推定し,耐性菌関与が疑われる院内肺炎ではカルバペネム系薬のモノセラピーやグリコペプチド系薬との併用療法など,広域スペクトラムを有する抗菌薬を積極的に投与し,並行して行われる原因菌検査の結果を待って,より狭域の抗菌薬に照準を絞って変更する戦略である」(河野茂氏)
 
■米国では死亡率が高い重症の人工呼吸器関連肺炎(VAP)が多く,治療では多くの症例でDe-escalationが推奨される。一方,わが国では軽症〜中等症の誤嚥性肺炎患者が相対的に多いほか,中小規模の医療機関では検査室がなく,外注化する傾向も見られるため,効率よく迅速な検査が行われているとは限らない。
したがって,De-escalationの適応が困難であることも多い。
 
■以上から,わが国ではより予後と相関する因子を選択して組み合わせ,治療に直結した独自の重症度分類を構築する作業が行われた。
2008年に院内肺炎GLが改訂され,重症度分類としてA-DROPシステムに準じたI-ROADシステムが推奨された。
さらに重症度を規定するC反応性蛋白(CRP)や胸部X線所見を2段階目の分類項目として取り入れた(図2)。
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■従来のGLでは重症例が軽症〜中等症として取りこぼされる可能性があったが,改訂GLで2段階の分類項目を設定したことで,重症例の取りこぼしが減少するであろう。重症例ではDe-escalationの観点からの抗菌薬療法を推奨する(河野茂氏)。

■PK/PD理論によりブレイクポイントや欧米との投与量の差異に言及できたこと,すなわち,わが国では抗菌薬の投与量が相対的に少ない場合が多いことで,かえって不十分な抗菌薬治療となり,耐性菌増加に拍車をかけている可能性を指摘できた点は評価すべきである(河野茂氏)。
 
■最近では新規抗菌薬の開発は著しく停滞している。
われわれは既存の抗菌薬を効率的に,かつ慎重に使用していかなければならない。
PK/PD理論やDe-escalationを導入した新しいGLにより,耐性菌を誘導しない適正な抗菌療法を推進し,抗菌薬の有用性を保つことがきわめて重要である(河野茂氏)。

出典 Medical Tribune 2009.2.5
版権 メディカル・トリビューン社


<MR面談録 2009.2.12>
 1. サノフィ・アベンティス
    パンフ 第17回 日本心血管インターベンション学会学術集会
         ランチョンセミナー記録集 (2008.7.4名古屋)
         抗血小板療法に関する最近の知見
    パンフ プラビックス発売2周年記念講演会 記録集
         (2008.8.30 グランドプリンスホテル赤坂)
    パンフ 2009年は全国的に平年以上の花粉飛散数が予想されるため、初期療法な
         どの早めの予防策が望まれます。(アレグラ)
    パンフ(欧州脳卒中機構)ガイドライン
    パンフ(アマリール) ADA/EASDコンセンサス  UKPDS80 の説明 
 2. 武田薬品
 3. 小野薬品
 4. シオノギ製薬
 5. アステラス
 6. 大日本住友
 7. ノバルティス
 8. 持田製薬
    パンフ(アテレック) L型・N型の両Caチャンネルをブロック(Dual action)
 9. 第一三共
10. 万有
    ニューモバックスNP品薄についてのお詫び
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by wellfrog3 | 2009-02-13 00:54 | 呼吸器科

特発性肺線維症の新薬

特発性肺線維症(IPF)は、難治性呼吸器疾患の代表例です。
今まで有効性のある薬剤の登場が待たれていました。

最新医学 60巻12号(通巻753号)
特集 特発性肺線維症とその周辺-治療の最前線-
http://www.saishin-igaku.co.jp/backnum/2005/m6012.htm

さりげない記事ですが、関係者にはビッグニュースと思い取り上げました。
実は、個人的にもこの疾患の方に携わる機会がありました。
悔しい思いをしたのがつい昨日のことのように思い出されます。


世界初の特発性肺線維症向け薬剤が登場
■特発性肺線維症(IPF)は,診断後の平均生存期間が3〜5年と,著しく予後不良の疾患であり,国の難病指定を受けている。

■塩野義製薬(株)は,IPFに対する「ピルフェニドン」(製品名:ピレスパ®錠200mg)の製造販売承認を昨年10月,世界で初めて取得し,12月に薬価収載を経て上市した。

■同薬の薬価収載に先立ち東京都で行われたプレス講演会では,日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍部門の吾妻安良太教授が同薬の臨床試験の経過,およびその有効性や副作用などについて説明した。


肺活量,無増悪率の低下を抑制
■これまで国内外のIPFの治療は,ステロイドまたはこれに免疫抑制薬を加えた治療が暫定的に推奨されていたが,同薬は線維化自体を抑制するという新しい作用機序で,IPFの進行を抑制することが期待できる。
 
■IPFは肺胞に原因不明の傷ができ,その修復のためにコラーゲンなどが増加して間質が厚くなり,肺の線維化が進行していく疾患。
その結果,肺胞から血管への拡散能が低下し,血液中の酸素量は減少していく。
そのため症状としては空咳や坂道・階段での息切れなどが起こり,呼吸困難に陥ることもある。
 
■同薬は,炎症性サイトカイン,抗炎症性サイトカインなどの各種サイトカインおよび線維化形成に関与する増殖因子に対する産生調節作用,線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン産生抑制作用など複合的な作用に基づいた抗線維化作用を示し,患者の肺活量と無増悪率の低下を有意に抑制するという。
 
吾妻教授は同薬の有効性を示すために国内で行われた第III相試験の概要を報告した。

中略

肺活量はP群で160cc,H群で90cc,L群では80ccの減少を示し,無増悪生存期間は,P群に比べH群,L群とも有意に長かった(図1,2)。

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■以上のように、同薬におけるIPFの有効性が認められが,同教授は「H群とL群の肺活量の低下量に有意な差が見られなかったため,製造販売後も調査を継続し,適切な投与量を検討していきたい」と述べた。

副作用に光線過敏症など認める
■従来,IPF治療で投与されているステロイド薬や免疫抑制薬は,免疫抑制作用が強いのが難点であった。
同薬はそれらに比べ免疫抑制作用が弱いため,副作用のリスクは低くなるとされる。
 
■しかし,第II,第III相試験で検討された安全性評価では,評価対象となった265例の約50%で光線過敏症の発症が認められた。
この評価はプラセボ群でも20%以上が光線過敏症とされるなど,かなり厳格ではあるが,吾妻教授は「光線過敏症や皮膚発がんのリスクがあることは確かなので,投与に際しては光曝露への防護策としてサンスクリーン剤の使用や衣服の工夫などが必要である」と注意を呼びかけた。
また,光線過敏症の発現時期別の頻度は,投与4週超〜28週以内で67.2%と高く,この時期には特に警戒すべきとした。
 
■同薬は軽症,中等症のIPFの進行を遅らせるのみで完治させられない点や,進行病態での有効性は確認できていないことに留意すべきだと強調した。
上市後も,肺がんの合併,急性増悪の発症頻度,生存期間などについて薬剤評価を続けていくことが必要であるという。


出典 Medical Tribune 2009.1.29(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
2008年12月12日 ピレスパR 錠200mg 新発売のお知らせ
http://www.shionogi.co.jp/med/houzai/img/pdf/PRS-S-1.pdf

特発性間質性肺炎
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/076.htm
■特発性間質性肺炎は病態の異なる7つの疾患からなりますが、頻度からすると「特発性肺線維症」、「器質化肺炎」、「非特異性間質性肺炎」の3つの疾患のいずれかに含まれることがほとんどです。

Idiopathic Pulmonary Fibrosis (IPF)
an Interstitial Lung Disease
http://noairtogo.tripod.com/ild.htm

Pulmonary fibrosis (IPF)
http://www.lunguk.org/you-and-your-lungs/conditions-and-diseases/pulmonary-fibrosis.htm

What is Pulmonary Fibrosis?
http://www.pulmonaryfibrosis.org/ipf.htm


<番外編> 健診と検診の違い
健診(健康診断、健康診査)  
   健康であるかどうかを調べるもの
検診(検査診断、検査診察)               
   特定の疾患を早期に発見し、早期に治療することを目的としたもの

一般的に基本健診に比較しがん検診の受診率は低いのが特徴です。
当市町村でも今年度から始まった「特定健診」のあおりを受けて、例年になくがん検診の受診率が低下しています。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-02-07 00:25 | 呼吸器科

ELISPOT(エリスポット)法

血液検査で活動性結核を発見  ツベルクリン反応試験より高精度
■インペリアルカレッジ(ロンドン)呼吸器感染センターのウェルカムトラスト上級臨床研究員であるAjit Lalvani教授は,100年の歴史があるツベルクリン反応試験と比較すると,最近導入されたELISpot血液検査は活動性結核のリスクが高い患者を同定する精度が高いことがわかったとAnnals of Internal Medicine(2008; 149: 777-787)に発表した。

陽性で発病リスク4倍
■世界保健機関(WHO)の推定によると,世界人口のおよそ3人に1人は結核菌に感染しており,世界中で毎年約900万人が活動性結核を新規に発症している。
感染者の大多数は発展途上国の住民である。

■ELISpot検査は,インペリアルカレッジの結核専門特別対策委員会によって開発された新しい血液検査法で,結核菌感染に反応して免疫系の白血球が放出する蛋白質シグナル(インターフェロン-γ)を検出する。
それにより,活動性結核のリスクが高い患者の同定が可能である。
 
■活動性結核患者は発熱,持続性の咳,食欲喪失などの結核の諸症状を呈するが,潜伏結核(不顕性結核感染)の患者は症状を示さない。
潜伏結核患者の大多数は,治療によって活動性結核への進行を予防することができる。
 
■Lalvani教授は,家庭で結核菌に曝露したばかりのトルコ・イスタンブールの小児908例を調べた。
このうち594例は,ELISpotまたはツベルクリン検査のいずれか一方,あるいは両方の検査から潜伏結核の陽性の反応が示された。
 
■ツベルクリン検査で結核の陽性反応を示した小児550例のうち,12例が活動性結核に進行した。一方,ELISpotで陽性反応を示した小児は381例と少数だったが,活動性結核に移行した小児12例中11例が陽性であった。血液検査で陽性の小児では,陰性の小児と比べて結核の発病リスクが約4倍高かった。
 
■今回の研究結果を受けて,同教授は「ツベルクリン反応試験よりもELISpotのほうが予防的治療の標的を絞り込む精度が高かった。ELISpotとは異なり,ツベルクリン反応試験では過去にBCG予防接種を受けたことがある患者で偽陽性の結果が出やすい。結核の新しい血液検査の導入によって,予防的治療が必要な患者の同定と治療が可能になるだけでなく,不必要な治療を受ける患者数を減少させ,薬剤の副作用に伴うリスクを回避することができる。結核検査と治療の資源が不十分な発展途上国では,このようなメリットは特に大きい」と述べている。

約20か国で推奨
■研究に参加した小児の76%は,事前に活動性結核の予防薬が投与されていた。
このため,予防的治療が実施されていなかった小児における活動性結核の割合は不明であった。
しかし,ELISpotが陽性であった小児の大部分が治療を受けていたにもかかわらず,活動性結核の発病リスクが高かった。
未治療の場合,発病リスクはさらに大きくなると考えられる。

■Lalvani教授は「英国など先進国の国民の大半は,結核は既に過去の疾患で,もはや感染を心配する必要はないだろうと考えているが,英国でも結核患者数は過去20年近く上昇し続けている。先進国以外の地域では,結核の発生が世界的流行の域に達しており,非常に多くの人々に苦痛や死をもたらしている」と指摘している。
 
■同教授は「われわれの研究から,ELISpotのような新しいツールは,世界的な結核の予防対策に有用であることが示された。この血液検査は,活動性結核の予防を最も必要とする患者を同定することが可能で,予防的治療を実施するのに役立つ。この知見に基づいて,われわれはこの次世代の結核検査の有効性を実証する研究を既に開始している」と付け加えている。
 
■この検査は,欧州と北米を含む世界約20か国において,ツベルクリン反応試験との併用が推奨されている。
 
出典 Medical Tribune 2009.1.29(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>
ELISPOT(エリスポット)法
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=ELISpot++結核&btnG=検索&lr=

放浪呼吸器科医の日記
http://konaina.exblog.jp/9997480/
http://www.jata.or.jp/terminology/a_14.html

[PDF] 結核の新しい診断
http://medical.radionikkei.jp/abbott/final/pdf/050325.pdfESAT-6およびCFP-10の両特異抗原を利用してリンパ 球を刺激し、反応性のインターフェロンγの産生を測定する方法であるという点では同じ
ですが、測定系にenzyme-linked-immunospot、通常ELISPOTと呼ばれるアッセイ法を
用いており、固相化した抗インターフェロンγ抗体により産生されたインターフェロンγ
を捉えることから、原理的にはインターフェロンγを産生している一つひとつの細胞を数
えることが可能です。文献的に結核感染の診断に関する感度は96%、特異度は100%と報
告されています。

新しいTBテストは患者のためのより速く、より容易な診断を意味する
http://www.iconocast.com/Japanese/A9EY6/News9.htm

ドイツの放射線科医における潜在性結核感染症有病率
http://www.micks.jp/jhi/2008/05/20080509.html

次世代の結核感染診断法とその諸課題
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0805_03.pdf
[PR]
by wellfrog3 | 2009-02-04 00:30 | 呼吸器科

糖尿病と死亡リスク

昨今、2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで死亡するといわれます。
この両者の数字の差が何を意味しているのかよくわかりません。
恐らく、がんが医学的介入により治ってしまうか、がんに罹患中に他の病気で死亡してしまうということだと思います。

きょうは、「すでに糖尿病のある患者が、がんに罹患するとあらゆる原因による死亡率が健常者に比較して高い」という記事で勉強しました。

がんの診断以前から糖尿病があった患者は死亡リスクが高い 
■がんと診断される前から糖尿病があった患者は,糖尿病がなかったがん患者と比べてあらゆる原因による死亡率が高いと,米ジョンズホプキンス大学のグループがJAMAの12月23日号に発表した。
 
■糖尿病は一部のがんの危険因子である可能性があるが,新規に診断されたがん患者における以前からの糖尿病の存在が死亡に及ぼす影響は明らかではない。

■同グループは,2008年5月15日までの電子データベースからがん診断前の糖尿病の有無と全生存を検討した研究を検索,メタ解析を行った。
 
■その結果,23件の研究のランダム効果モデルの解析で,糖尿病があった群は正常血糖値群と比べてすべてのがんによる全死亡率が1.41倍高いことが示された。

■がんのタイプ別によるサブグループ解析では,糖尿病は子宮内膜(体)がん,乳がん,結腸・直腸がんのリスク上昇と関係し,ハザード比はそれぞれ1.76,1.61,1.32であった。


原著 Barone BB, et al. JAMA 2008; 300: 2754-2764.

出典 Medical Tribune 2009.1.1,8 2009年1月1,8日
版権 メディカル・トリビューン


<コメント>
■最初この記事を読んだ時、がんと診断がついた時点ですでに糖尿病だった患者と、診断確定後に糖尿病を発症した患者の比較と勘違いしました。
■「あらゆる原因による死亡率」「すべてのがんによる全死亡率」・・・少しわかりにくい表現です。
■当然、糖尿病関連死も「あらゆる原因による死亡」に組入れられるわけですから、何だか当たり前のような気もする結果です。
がんに罹患していない母集団で検討しても「あらゆる原因による死亡率」に有意差が出そうです。
■糖尿病患者はがんに罹患しやすいかどうかということの方が私は興味を持ちます。
先生方はいかがでしょうか。

<参考>
Barone氏らは「糖尿病に関連する死亡リスク増大は、癌および癌治療とはまったく無関係の可能性がある。癌患者ではない成人の心臓血管系死因による死亡に対し、糖尿病は十分に確立されたリスクファクターである。癌の状態にかかわらず、糖尿病による微小血管障害および大血管障害は、ある程度蓄積する可能性がある」と述べるとともに、「糖尿病関連死亡リスクが生じるまでのさまざまな経路に関しては、今後の研究によって、相対的な重要性が明らかになるであろう」と述べている。
http://www.dm-net.co.jp/healthdayjapan/2008/12/17.php



<糖尿病とがん 関連サイト>
糖尿病患者に癌が多い?
http://www4.ocn.ne.jp/~sasaki/2003.2.htm
■糖尿病と癌に関する研究は少なく、糖尿病患者の癌死亡率の全国集計は数年に一度で調査されている。
■糖尿病患者の約4割近くが癌で亡くなることとなり、この割合は一般の人よりやや多い(1.3倍)。
■糖尿病患者に膵癌が多いという説は以前からあった。
■全膵癌患者の52.3%が糖尿病をもっていたという報告もある。
■糖尿病があってさらに喫煙歴があると膵癌の危険度が2倍になるともいわれている。

糖尿病歴ある男性は発癌リスク3割増
肝癌2.24倍、膵癌1.85倍と特に高い、女性は胃癌などで高リスク
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200610/501512.html
■糖尿病と癌発症の関係が疑われるようになって久しいが、明確なエビデンスを示した報告はなかった。
■厚生労働省研究班による多目的コホート研究の結果、糖尿病歴がある男性はそうでない男性に比べ、癌リスクが27%と有意に高く、肝臓癌に限定すると2.24倍になることが示された。
■糖尿病歴がある女性では、胃癌(1.61倍)、肝臓癌(1.94倍)などが有意に高かった。

肥満や糖尿病が癌(がん)に関連
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w02071206
■"米ミネソタ大学(ミネアポリス)疫学部のAndrew Flood氏らの研究では、糖尿病の女性で結腸直腸癌発症のリスクが50%増加することが示された。
乳癌検出プログラムに8年以上登録していた4万5,000人以上の女性を追跡調査した結果、結腸直腸癌の発症率は交絡因子を考慮しても有意に増加していた。
同氏はリスク増加の原因として糖尿病に伴うインスリン値上昇の可能性を挙げている。"

■米エール大学(コネティカット州)の研究者らの研究は、糖尿病女性ではインスリン値が高いため乳癌による死亡リスクが3倍高いとしている。
乳癌の長期試験に参加した女性の血中Cペプチド濃度(インスリン分泌能のマーカー)を測定した結果、8年間でCペプチド濃度が上位3分の1の女性の乳癌による死亡リスクは、下位3分の1の女性の2倍であった。

■"米ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部(ボルティモア)の研究者らによる研究では、浸潤性乳癌と診断された後の体重増加によって、癌による死亡リスクが有意に上昇した。
乳癌の女性4,000人以上をボディ・マス・インデックス(BMI:肥満指数として用いられる)で分類した結果、肥満女性の乳癌による死亡リスクは正常体重の女性の2.4倍で、年齢や閉経状態、喫煙を考慮しても変わらなかった。"

■同大学による別の研究では、前立腺癌の男性264例とそうでない男性264例の血中Cペプチド濃度を測定。試験開始時に濃度が高かった男性は低い男性に比べ、前立腺癌の発症率が3分の1低く、転移のない前立腺癌の発症リスクは半分であった。
同大学准教授のElizabeth Platz氏は、糖尿病男性の前立腺癌リスクが低いのは、インスリンが前立腺癌の成長を刺激するテストステロン(男性ホルモン)の活性を低下させるためだと説明している。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-01-25 00:29 | 呼吸器科

スタチン系薬服用と肺炎

入院前のスタチン系薬服用が肺炎による死亡率低下と関連
オルフス大学オールボー病院(デンマーク・オールボー)臨床疫学科のReimar W. Thomsen博士らは,肺炎で入院する時点でスタチン系薬を服用していた患者では入院後90日以内に死亡する割合が低かったとArchives of Internal Medicine(2008; 168: 2081-2087)に発表した。

入院から数週間以内が特に有効
米国や欧州では,肺炎による入院率が過去10年間に20〜50%上昇した。
一方,近年の研究でスタチン系薬が抗血栓作用,抗炎症作用,あるいは免疫調節作用により敗血症または菌血症に有効であることが示されている。 
Thomsen博士らは,1997〜2004年に肺炎で入院した2万9,900例の成人患者に関するデータをレビューした。
このうち,1,371例(4.6%)が当時スタチン系薬を服用していた。
 
その結果,スタチン系薬服用群における入院30日後の死亡率は10.3%だったのに対し,非服用群では15.7%であった。
また,90日後でも16.8%対22.4%とスタチン系薬服用群で低かった。
スタチン系薬服用による死亡率の差が最も小さかったのは,80歳以上の患者と菌血症患者であった。
死亡率の差が著明に見られたのは,肺炎関連の死亡が高率となる入院後から数週間の時期で,入院から30〜90日後ではその差は微増したにすぎなかったため,スタチン系薬服用はおもに感染の初期に有益と考えられた。
 
過去のスタチン系薬の服用および心血管系の健康を保つことを目的とした他の予防薬の服用は,肺炎による死亡率低下とは直接関連していなかった。
 
今回の結果を説明できる生物学的機序は複数存在する。
スタチン系薬は免疫反応を調節し,血栓および炎症の発生過程に影響を及ぼすことで,血管の機能不全を抑制する。
これらの効果は,肺炎による早期死亡につながる敗血症と菌血症を呈している患者に対して特に便益がある。
 
同博士らは「今回の研究結果は,スタチン系薬が重度感染症の予後改善と関連していることを示した先行研究の結果を支持するものである。
今回,スタチン系薬服用に伴う死亡率低下は,入院が必要な肺炎患者では顕著に見られたが,この因果関係を分析するには,ランダム化比較試験を行う必要がある。スタチン系薬は広く投与されているうえ,比較的低コストで有害事象も軽度であるため,肺炎患者に対する試験結果が良好であったことは,臨床上と公衆衛生上の意義が大きい」と結論している。
 
ノートルダム大学(インディアナ州ノートルダム)のKasturi Haldar博士は,同誌の論評(2008; 168: 2067-2068)で「スタチン系薬は,有効血漿濃度に到達するのに数日かかるため,急性感染治療にはあまり適していない。しかし,同薬は宿主を標的とするため,細菌感染治療で大きな問題となる薬剤耐性は起こりにくい。今後,同薬を従来の抗菌薬と組み合わせて臨床試験を行い,急性感染と持続性感染の両方に有効で最適な併用療法を見出すことが望まれる」と述べている。

出典 Medical Tribune 2009.1.1,8
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
ゔょっと古いニュースで恐縮です。

難病腸炎の発症メカニズム解明…阪大チーム
腸に炎症を起こす難病「潰瘍(かいよう)性大腸炎」などの腸疾患が発症するメカニズムを、大阪大の竹田潔教授(免疫学)、本田賢也准教授(同)らがマウスの実験で解明した。
腸内の細菌が過剰に放出したATP(アデノシン三リン酸)という物質が免疫システムの異常を引き起こしていた。
治療法の開発につながる成果で、20日付の科学誌ネイチャー電子版で発表した。

潰瘍性大腸炎や若年層の腸が炎症を起こすクローン病は、食生活の欧米化に伴い、患者数が急増している。

竹田教授らは、炎症を起こす物質を作る「Th17細胞」が、無菌飼育したマウスの腸管ではほとんど見られないことに着目。
腸内細菌が放出するATPをマウスの腸管細胞に大量に与えると、Th17細胞が増加し、炎症物質も増えた。
竹田教授は「腸内のATP濃度を抑えれば、治療できる可能性がある」と話している。
出典  読売新聞 2008.8.22
版権 読売新聞社
<コメント>
「腸内の細菌が過剰に放出したATP」が発症の原因ということのようですが、どのような人にこのようなことが起こるのかという疑問が残ります。
<関連サイト>
潰瘍性大腸炎の発症要因を解明 (竹田教授・本田准教授らが Nature に掲載)
http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/2008/08/nature-takeda080829.php


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-01-15 00:12 | 呼吸器科