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カテゴリ:神経内科( 11 )

脳卒中慢性期治療

サノフィ・アベンティス株式会社の提供記事で勉強しました。
そのため、後半はイフェンプロジル(商品名 セロクラール)の話が出ています。


脳卒中慢性期治療の意義を考える
脳卒中に対する治療では,生命予後と直結する急性期治療がクローズアップされる傾向にある。
しかし,患者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)にとどまらず,生命予後にも多大なる影響を与える慢性期の治療意義は大きく,重要な臨床課題としての認識が高まっている。
 
今回は医療法人泰庸会新潟脳外科病院院長の新井弘之氏に,専門医の立場から見た脳卒中慢性期治療の意義や再発予防の進め方,患者QOL,ADLに配慮した治療の重要性についてお話を伺った。



―脳卒中慢性期における治療意義や重要性について,どのようにお考えですか。 
一般的に,脳卒中は急性期,亜急性期を経て,発症後およそ1か月目以降が慢性期の目安と言われています。
ただ,近年では治療薬の進歩もあり,2週間程度で慢性期へ移行したと判断できる症例も多く経験しています。

近年では,とかく脳梗塞急性期におけるrecombinant plasminogen activator(rt-PA)による最新治療に注目が集まりがちですが,その恩恵を受ける患者さんはごくひと握りの存在です。
一方で,大半の脳卒中患者さんやご家族の方は慢性期において再発の不安や後遺症に悩み続けており,こうした方々の苦痛は決して軽視できません。

慢性期における治療は,生活習慣病,メタボリックシンドローム(MetS)対策を軸とした再発予防と,ADLやQOLの維持,あるいは改善のための後遺症対策が中心となり,患者さんの状態を総合的に把握したうえで管理,指導していくことが重要です。


―脳卒中慢性期における再発予防治療の進め方や,再発予防における抗血小板薬の役割についてお聞かせください。
近年,わが国における脳卒中の主流は脳出血から脳梗塞へと移行したため,現在,脳卒中慢性期においては動脈硬化の進展抑制を念頭に置いた再発予防治療が重要視されるようになりました。
なかでも内臓肥満を基盤に,耐糖能異常や高血圧,脂質代謝異常など動脈硬化の危険因子が集積するMetSに留意し,これらの危険因子を同時に管理することが必要となります。
当院では医師とコメディカルスタッフが連携して栄養指導や運動療法を励行し,MetSの予防,治療を進めています。
さらに生活習慣についても積極的に指導しており,飲酒,喫煙は原則的に禁止しています。

こうした脳卒中の危険因子を厳格に管理したうえで,非心原性の脳梗塞には抗血小板療法が推奨されます。
抗血小板薬は生涯にわたる服用が必要なため,その選択には効果のみならず安全性も十分に勘案することが求められます。
クロピドグレル(プラビックス®)は,アデノシン2リン酸(ADP)依存性の血小板凝集を特異的に抑制する強力な抗血小板作用を有しており,その有効性や安全性に関しては多くのエビデンスが報告されています。
現在,私はチクロピジン(パナルジン®)からの切り替えも行っています。
なお,1年に一度程度,基幹病院との患者管理状況の共有化および脳梗塞の再発や脳主幹動脈の狭窄進展検査を依頼することが推奨され,これらは患者さんに対する抗血小板療法継続への動機付けにもなります。

抗血小板療法にとどまらず,患者さんに治療効果を呈示し,治療方針への理解を得ることは,慢性期治療の継続的な実践において大きな意味を持ちます。
かかりつけ医の先生方は日々の指導を担っておられますが,ぜひとも病診連携を強化していただき,定期的な精密検査などで基幹病院を活用していただきたいと思います。


患者QOLを低下させる不定愁訴としてのめまい

脳卒中例の代表的な後遺症としては片麻痺や言語障害が挙げられます。
これらの後遺症はリハビリテーションにより症状の維持あるいは改善が期待できますが,計画通りに進まない場合もありますので,患者さんの自主性を引き出す指導が重要になります。
また,脳卒中例のうつ症状も見過ごせない後遺症であり,重要度に応じて専門医へ紹介するなどの対策が求められます。

脳卒中慢性期では,不定愁訴としてのめまいにも十分な配慮が必要です。
その症状は継続性,突発性とさまざまですが,いずれにおいても再発の不安や外出恐怖などが増幅するため,患者さんのQOLが低下する要因となります。
脳卒中例のめまいは椎骨脳底動脈系の循環不全,あるいは病変と反対側の小脳における代謝活動および血流が低下する交叉性遠隔性小脳機能障害に起因する可能性がありますので,薬物療法による治療アプローチも検討されます。


―脳卒中慢性期治療におけるイフェンプロジル(セロクラール®)の位置付けと,今後期待される役割についてお聞かせください。
脳卒中治療ガイドライン2004年版では,イフェンプロジルは脳梗塞慢性期における脳循環代謝改善薬としてグレードBで推奨されています。
イフェンプロジルは平衡感覚に影響する小脳,脳幹をおもに栄養する椎骨脳底動脈の血流量を特異的に増加させ(図1),脳梗塞,脳出血後遺症に伴うめまいを改善する効果が期待できます。


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脳卒中患者266例を対象にした検討では有意なめまい改善効果が認められており(図2),当院においてもイフェンプロジルの継続的な投与によって強いめまい症状が改善し,QOLが向上した症例をしばしば経験します。

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かつて数多く存在した脳循環代謝改善薬は,再評価のプロセスを経て激減しましたが, 30年にわたり有用性と安全性の高さが支持されてきたイフェンプロジルは,信頼に足る薬剤であるという印象を持っています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view/perpage/1/order/1/page/0/id/M42250511/year/2009

出典 Medical Tribune 2009.6.18(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社



<番外編>病原体の感染防ぐ「スイッチ」酵素、解明  京都大グループなど
ウイルスなどの病原体の感染を防ぐ生まれながらの「自然免疫」のスイッチを入れる酵素の一つを、京都大医学研究科の長田重一教授らの研究グループが突き止めた。
「脱リン酸化」という重要な役割を担う酵素で、自然免疫のメカニズム解明や創薬につながる発見という。英科学誌ネイチャーで29日に発表する。

研究グループは、長田教授、博士研究員の岡部泰賢さん、大学院生の佐野晃之さん。

これまでに長田教授らは、不要になって死んだ細胞のDNAを分解する酵素が働かないと、感染を防ぐ因子インターフェロンの一つIFN−βなどが過剰に増え、貧血や関節炎などになることを明らかにしている。
今回、IFN−βなどの増加に、タンパク質EYAが働いていることを見つけた。

EYAの機能を調べると、タンパク質を構成するアミノ酸のトレオニンに結びついているリン酸基を取る「脱リン酸化酵素」であることが分かった。
タンパク質はリン酸基を付けたり取ったりすることで機能のオンオフが行われている。
EYAはIFN−βなどを増やすスイッチとして働くことが分かり、ウイルス感染時にEYAがあるとIFN−βが増えることを人の細胞の実験で確かめた。

EYAは、目を形成するために遺伝子の発現を調節する転写因子として知られていたが、まったく違う機能があることが分かった。
長田教授は「EYAが脱リン酸化するタンパク質の正体や、ウイルスを認識してEYAが働くメカニズムを明らかにしたい」と話している。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009062900028&genre=G1&area=K00出典 京都新聞 2009.6.29
版権 京都新聞社

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by wellfrog3 | 2009-07-04 12:15 | 神経内科

初期PDの臨床徴候

初期PDの臨床徴候が鑑別に有用   AANが新診療パラメータを発表
米国神経学会(AAN)パーキンソン病(PD)診断・治療基準小委員会は,新しい診療パラメータをNeurology(2006; 66: 968-1002)に発表した。
新パラメータは 4 部構成で,文献の体系的レビューにより
(1)新規発症PDの診断と予後
(2)神経保護戦略と非標準治療法の有効性
(3)L-ドーパ治療に伴う副作用とオフ期間減少の問題
(4)PD患者のうつ病や精神疾患,認知症治療
−について論じている。

パーキンソン症候群との鑑別を
第 1 部(2006; 66: 968-975)ではカルガリー大学(カナダ・カルガリー)のOksana Suchowersky博士らが,まず,PDと類似の臨床症状を呈する多系統萎縮症やレヴィ小体型認知症,大脳皮質基底核変性症などのパーキンソン症候群との鑑別について「疾患初期の臨床徴候が鑑別に役立つ」と指摘している。

パーキンソン症候群の特徴として,
(1)発症時や疾患初期における神経細胞脱落
(2)L-ドーパ治療に対する反応不良
(3)初期の対称性異常運動
(4) 3 年でHoehn-Yahr III 度へ進行するほどの急激な増悪
(5)振戦がない
(6)自律神経障害(尿意切迫や尿失禁,便失禁,カテーテル導尿を必要とする尿閉,持続的勃起障害,症候性起立性低血圧)
−を挙げている。

PDでは嗅覚障害を伴うこともあるが,これは多系統萎縮症でも起こりうる。
 
新パラメータでは,PDの進行速度の予測因子として,「高齢での発症や固縮/寡動を伴う場合は進行速度が速い。一方,振戦を呈する患者では進行速度は遅く,L-ドーパへの反応期間も長い」としている。

進行遅延に有効なエビデンスない
PDは進行性で,いったん発症すると治癒しないが,進行を遅らせる方法はあるのだろうか。
これに関しては,Suchowersky博士らが第 2 部(976-982)で「いわゆる神経保護薬やビタミン剤,食品添加物のなかで,有効とのエビデンスが得られているものは存在しない」と述べている。

第 3 部(983-995)では,カンザス大学医療センター(カンザス州カンザスシティー)のRajesh Pahwa博士らが,L-ドーパ誘発性のmotor fluctuationやジスキネジーの治療について論じている。同博士は「“オフ”期間の減少に現在用いられている薬剤の有効性はいずれも同等である」と述べている。
また,“オフ”期間の減少には脳深部刺激(DBS)も用いられるが,同博士は「視床下核へのDBSはmotor fluctuationやジスキネジーを改善することが示唆されているが,脳の他の部位へのDBSは有効性を証明するエビデンスに乏しい」と指摘。
DBSに対する反応性は,施行前のL-ドーパへの良好な反応によっても予測できるとしている。
 
第 4 部(996-1002)では,トロント大学(カナダ・トロント)のJanis M. Miyasaki博士らが,PD患者のうつ病や精神疾患,認知症の治療法について論じている。
同博士によると,精神疾患にはクロザピンが有効で,認知症はコリンエステラーゼ阻害薬により中等度の改善が認められたが,副作用が問題となりうるという。

出典 Medical Tribune 2009.6.15(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-06-01 00:11 | 神経内科

大脳皮質基底核変性症

第43回日本神経学会の記事で勉しました。

〜大脳皮質基底核変性症〜 推定患者数は約2,100人
従来,大脳皮質基底核変性症(CBD)は,固有の臨床病理所見を示す疾患と考えられてきた。
しかし,その臨床病型には多くのバリエーションがあることが知られるようになり,最近ではCBD症候群をいくつかの亜型に分類している。
昨年,厚生労働省の特定疾患対策研究事業「神経変性疾患に関する研究班」では,暫定臨床診断基準を設けて過去のCBD症例数を調査した。
山口大学脳神経病態学の森松光紀教授は,この結果から日本国内でのCBDの推定有病率は1.7人/10万人であり,全国に2,100人程度のCBD患者がいると推定されると,札幌市で開かれた第43回日本神経学会(会長=北海道大学神経内科・田代邦雄教授)のシンポジウム「大脳皮質基底核変性症と進行性核上性麻痺をめぐって」で述べた。

#PSPの2.6分の1
今回の調査に用いられた暫定臨床診断基準では,Probable CBDとして
(1)古典型は緩徐進行性で一側優位の肢節運動失行と無動・筋強剛があり,痴呆は遅れて出現するものとし
(2)古典型に似るが,肢節運動失行または無動・筋強剛がなく他の皮質徴候・運動徴候が一側優位性に出現するものを準古典型
(3)失語や痴呆,注意障害,行動異常などが早期に出現し,やがて一側優位性の肢節運動失行,無動・筋強剛が顕著に出現するものを非古典型とした。
さらに,病理学的に証明された症例については臨床型を問わずDefinite CBDとした。
 
調査の結果,全国29施設におけるCBDの総数は164例,1 施設平均5.7例,病型別では,古典型が最も多く121例,準古典型17例,非古典型13例,病理的証明例13例であった。病理的に証明された13例のうち,生前の臨床診断ではCBD 8 例(62%),進行性核上性麻痺(PSP) 3 例(23%)であった。
 
一方,PSPについては国際的なNINDS(National Institute at the Neurological Disorders and a Stroke)-SPSP基準があり,今回,同時に調査されたPSP症例数との比較の結果,CBD症例数は臨床例ではPSP症例数の1/2.6,剖検例ではPSP症例数の1/2.5であった。
 
これらの結果と1998年の旧厚生省研究班によるPSPの症例数2,300例から推定されるCBD症例数(98年)は約2,300/2.6=880例と考えられた。
また99年の鳥取県米子市での疫学調査(中島ら)によるPSP有病率4.36(人口10万人対)から推定されるCBD有病率(99年)は4.36/2.6=1.7(人口10万人対)で,99年度のわが国の総人口を 1 億2,600万人とした場合,CBD患者はおよそ2,100人と推定された,と森松教授は述べた。



#〜日本人の多発性硬化症〜 障害進行速度は欧米人と同程度
日本では多数例の多発性硬化症(MS)についての長期臨床経過に関する報告がいまだなされていない。
国立療養所宇多野病院神経内科のQi Hao氏は,MS症例の長期臨床経過の特徴について検討。
「従来,日本人MS症例の障害進行速度が欧米人に比べて速いとされていたが,同程度の進行速度と考えられた」と述べた。

#一本杖歩行まで平均16年
氏らが,同院におけるMS症例232例を対象に解析を行った結果,進行モード分類での頻度は寛解再発(RR)型が85.3%,初期寛解再発以降 1 年以上の連続的進行を示す二次進行(SP)型が8.6%,発症時から慢性進行を示す一次進行(PP)型が6.0%であった。
また,病巣部位分類での頻度は,視神経脊髄(OS)型が19.3%,新たに提唱した視神経脳幹脊髄(OBS)型が13.9%,古典型が66.8%であった。
OBS型でのSP型症例は6.5%であったが,OS型でのSP型症例は 1 例もなかった。
予後別の頻度は,発症から15年以上の経過で総合障害度(EDSS) 3 以下の良性症例が4.7%,発症 5 年以内に寝たきり状態(EDSS 8.5)となる悪性症例が4.7%,MSによる死亡例が6.5%であった。
 
障害度の進行速度では,全症例の50%がEDSS 3 に達するまでの平均年数が 9 年,EDSS 6 (一本杖歩行)に達するまでは16年であった。
進行モード分類で比較すると,初期にはPPMS型が他の型に比べ有意に速いが,その後は進行モードによる差は認められなかった。
また,病巣部位分類で比較すると,OBS型の進行が初期から最も速く,次いで古典型で,OS型は比較的遅かった。
さらに,発症年齢別の障害進行速度では,高齢発症例で有意に速い進行が認められた。
 
同氏は「日本人MS症例ではSPMS型とPPMS型の比率が,欧米の 8 分の 1 〜 3 分の 1 と少ないことが,大きな特徴である」と指摘した。


#〜MCI/AACD〜 正常群と痴呆群の中間的特徴有する
物忘れを背景とし,診断上からもなんらかの問題を有しているものの,痴呆とはみなされていない高齢者を軽度知的機能障害(MCI)と呼ぶが,その実態は明らかではない。
東京都老人総合研究所老化臨床神経科学研究グループの村山繁雄氏は,MCIおよび加齢関連認知低下(AACD)に相応する症例の病理学的特徴について検討を行った。

#脳血管障害が変性型を上回る
村山氏らは,開頭剖検例1,094例を対象として,そのなかから入院・外来病歴,看護記録,あるいは必要に応じ主治医や介護者から聴取してMCI/AACD相応例を抽出。
神経病理学的検討としては,脳の代表的部位をH.E.,K.B.メセナミン銀,Gallyas-Braak 鍍銀染色,抗τ,Aβ,α-synuclein,ubiquitin抗体免疫染色で評価,老化構造物の半定量化を行った。
また,腎臓からDNAを抽出し,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅後に制限酵素で切断しアポリポ蛋白質(ApoE)の遺伝子型を決定した。
 
その結果,1,094例のうち,正常群は382例(34.9%),MCI/AACD相応例は159例(14.5%),痴呆群は428例(39.1%),不明が125例であった。MCI/AACD相応例の平均脳重量は正常群と痴呆群の中間に位置していた。
 
痴呆群では,変性型が206例(48.1%)と最も多く,その内訳はアルツハイマー104例,嗜銀顆粒性痴呆44例,Lewy小体型痴呆36例などが続き,血管性痴呆は144例(33.6%)であった。
 
一方,MCI/AACD相応例では,脳血管障害が42例(26.4%)と,変性型の38例(23.9%)よりも多かった。
また変性型では,いわゆる加齢に伴う側頭葉内側面を侵すtauopathyが19例と頻度が高く,次いでsynuclei-nopathyが10例,アルツハイマーが 7 例と続いた。
 
さらに,神経原線維変化,老人班といったアルツハイマー型老年変化,およびApoE遺伝子型では,いずれも正常群と痴呆群の中間的な特徴を有していた。

出典 Medical Tribune 2002.6.27(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
大脳皮質基底核変性症
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000003600/hpg000003552.htm


<きょうの一曲> Diana Krall - Love Letters : Live in Paris
http://www.youtube.com/watch?v=l6uios2-3HE&feature=related
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by wellfrog3 | 2009-05-25 00:01 | 神経内科

コーヒー・たばことパーキンソン病

コーヒーやたばこ好きはパーキンソン病リスクが低い
「喫煙やコーヒーを飲むことでパーキンソン病が予防される」という意外な可能性を示した米国での家族ベースの研究が、医学誌「Archives of Neurology」4月号に掲載された。

過去の研究でも、コーヒー摂取、喫煙、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用がパーキンソン病の予防になる可能性が報告されていたが、家族ベースでこの関連を調べた研究はほとんどなかった。

米デューク大学メディカルセンター(ノースカロライナ州)のDana B. Hancock氏が率いた今回の研究は、パーキンソン病患者356人(平均66歳)およびその家族317人(平均64歳)を対象に実施したもの。
パーキンソン病患者は、罹患していない血縁者と比較して、喫煙経験者の比率が44%低く、現喫煙者の比率は70%低かった。
また、コーヒーをよく飲むほどパーキンソン病になりにくく、総カフェイン摂取量とパーキンソン病発症に反比例の関係があることがわかった。
しかし、NSAIDとパーキンソン病との間には関連がみられなかったという。

喫煙やカフェイン摂取がパーキンソン病の発症リスクを減らすメカニズムは明らかになっていない。
このような環境因子が単独で作用しているとは考えにくく、遺伝子と環境の相互作用が重要であると考えられるという。
パーキンソン病に関わる候補遺伝子について研究する上で、喫煙やカフェインを作用修飾因子として考慮する必要があるとHancock氏らは述べている。

HealthDay News  2007.4.9

http://www.healthday.com/Article.asp?AID=603475
Copyright © 2007 ScoutNews, LLC. All rights reserved.

http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=163


<番外編>
#高用量ビタミンD補充は高齢者の非椎体骨折の予防に有効

 ビタミンDによる非椎体骨折の予防効果は用量依存的で,高用量の補充によって高齢者の非椎体骨折が少なくとも20%減少すると,スイスと米国の共同研究グループがArchives of Internal Medicine の3月23日号に発表した。
 最近の何件かの研究から,ビタミンDの骨折予防効果を疑問視する結果が示されている。同グループは,65歳以上の高齢者の骨折予防における経口ビタミンD補充の有効性を検証する目的でメタ解析を行った。
 解析には,ビタミンD補充〔単独またはカルシウム(Ca)併用〕とCaあるいはプラセボ補充の骨折予防効果を非椎体骨折について検討したランダム化比較試験(RCT)12件(4万2,279例)と,大腿骨近位部骨折について検討したRCT 8件(4万886例)が含まれた。
 ビタミンDの補充は骨折のリスク低下と関係し,RRは非椎体骨折で0.80,大腿骨近位部骨折で0.91であったが,結果には明らかな不均一性が見られた。しかし,対象としたRCTをすべて含む解析では,高用量のビタミンD補充と血中25-ヒドロキシビタミンD高値達成により骨折予防効果が有意に高まり,1日400IUを超える補充を行ったRCTでは不均一性は消失した。
 高用量ビタミンD補充による骨折のRRは非椎体骨折が0.80,大腿骨近位部骨折が0.82であった。高用量の補充による非椎体骨折の減少率は地域在住高齢者では29%,施設入所高齢者では15%で,その効果はCa補充の併用とは独立していた。
B
2009年4月16日(VOL.42 NO.16) p.39]
海外の主要医学誌から/Journal Scan

日本、長寿世界一を維持 WHOの世界保健統計
2009年5月22日 提供:共同通信社
この記事に対する現在のメッセージ数: 16件
 【ジュネーブ21日共同】世界保健機関(WHO)は21日、2009年版の「世界保健統計」を発表、07年の平均寿命が世界で1番長いのは日本の83歳で、前年までに続いて首位の座を維持した。

 男女別では、日本の女性の平均寿命が86歳で世界一。男性ではイタリア中部にある内陸国サンマリノの81歳が世界一で、日本はスウェーデンなどとともに、80歳のアイスランドに続き3位の79歳だった。

 世界全体の平均寿命は71歳で、最も平均寿命が短かったのは西アフリカ・シエラレオネの41歳。長寿国としてはスイスやイタリア、オーストラリアなどが82歳とされ、日本に続いた。

 同統計によると、世界全体で05年の妊産婦の死亡率は10万人当たり約400人で、年間約53万6000人が妊娠や出産に絡んで死亡。国連のミレニアム開発目標では、妊産婦の死亡率を15年までに1990年の水準の4分の1まで削減するとしているが、90年からあまり改善が見られなかった。

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by wellfrog3 | 2009-05-24 00:06 | 神経内科

年齢層別に見た脳梗塞

高齢者は心原性脳塞栓症が増加
国立循環器病センター(大阪府)内科脳血管部門の前田亘一郎氏は,最新のJSSRSの急性期脳梗塞症例を年齢層別に比較,検討した。
臨床的特徴は階層別に大きく異なり,高齢になるほど心原性脳塞栓症の割合が高く,入院時に重症で転帰も不良であるケースが多かったとの解析結果を示した。

急性期の臨床像は年齢で大きく違う
対象は2000年1月〜07年11月にJSSRSに登録された3万3,593例(男性61%)。
年齢層は39歳以下(403例),40〜59歳(4,964例),60〜79歳(1万9,634例),80歳以上(8,952例)の4つに分けて解析した。
 
病型の割合は,男女とも心原性脳塞栓が加齢に伴い増加していた。
40〜79歳ではアテローム血栓性とラクナ梗塞の頻度が高かった。
39歳以下では,他の脳梗塞が最も多かった。
 
危険因子では,高血圧症が39歳以下で20%程度だったが,他の層では60%超であった。
心房細動は加齢に伴い増加した。
現在の喫煙が39歳以下と40〜59歳の男性で60%前後と高かった。
女性も危険因子の割合の傾向については男性と同様であったが,飲酒率と喫煙率は男性より著しく低かった。
 
入院時のNIHSSは,高齢ほど上がり,女性のほうが高い傾向にあった。
在院日数も同様で,女性が比較的長くなっていた。
機能予後尺度のmodified Rankin scale(mRS)も高齢であるほど予後不良で,特に女性が不良であった。
 
前田氏は「入院時重症や予後不良は高齢であるほど多くなるなど,急性期の臨床像は年齢によって大きく異なることがわかった」と述べた。


出典 Medical Tribune 2009.5.14(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
JSSRS
脳卒中急性期患者データベース
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0005/3/0005_G0000068_0011.html
(JSSRS 厚生科学研究によるJapan Standard Stroke Registry Study )

脳梗塞にはどんな人がなりやすいか
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0005/3/0005_G0000068_0006.html

[PDF] わが国の脳梗塞(急性期~慢性期) の治療実態と当社戦略について
http://www.mt-pharma.co.jp/ir/meeting/pdf/S_081007.pdf


NIHSS
NIHSS採点表
http://melt.umin.ac.jp/nihss/nihssj-table.htm

[PDF] National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/NIHSS.pdf

注目!これで君も、NIHSS masterだ!
http://www.kawasaki-m.ac.jp/stroke/nihss.html


modified Rankin scale(mRS)
modified Rankin Scale
http://www.jsts.gr.jp/guideline/226-227.pdf
modified Rankin Scaleについて
http://www.ne.jp/asahi/ndmc/neurosurgery/mrs.html
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by wellfrog3 | 2009-05-19 00:11 | 神経内科

小脳梗塞

ARTICLES
Cerebellar infarction. Clinical and anatomic observations in 66 cases
(小脳梗塞 66例での臨床および解剖的観察)
CS Kase, B Norrving, SR Levine, VL Babikian, EH Chodosh, PA Wolf and KM Welch 
Department of Neurology, Boston University Medical Center, MA 02118.

BACKGROUND AND PURPOSE:
■Cerebellar infarction displays different clinical features, depending on the vascular territory involved.
(罹患血管により臨床症状が異なる)
■We studied patients with infarcts in the territories of the posterior inferior cerebellar artery or the superior cerebellar artery to compare their clinical presentation, course, and prognosis.
(罹患血管が後下小脳動脈と上小脳動脈で検討)

METHODS:
■We retrospectively analyzed the clinical features, laboratory data, and imaging studies of 66 patients with cerebellar infarction collected consecutively at five institutions.
■All the cerebellar infarcts were documented on computed tomographic scan or magnetic resonance imaging.

RESULTS:
■Two distinct profiles emerged, depending on the vascular territory involved.
■In 36 patients with posterior inferior cerebellar artery territory infarcts, a triad of vertigo, headache, and gait imbalance predominated at stroke onset.
(後下小脳動脈領域ではめまい、頭痛、歩行障害が3徴として特徴的である)
■Computed tomography showed severe cerebellar mass effect in 11 cases (30%), with associated hydrocephalus in seven.
■In these seven patients (19%), postinfarct swelling led to brain stem compression that resulted in four deaths.
■In 30 patients with superior cerebellar artery infarcts, gait disturbance predominated at onset; vertigo and headache were significantly less common.
(上小脳動脈領域では歩行障害が主体で頭痛、歩行障害は少ない)
The clinical course was usually benign.
(一般的に良好な経過をたどる)
■Computed tomography showed marked cerebellar mass effect, hydrocephalus, and brain stem compression in only two instances (7%).
■Presumed cerebral embolism was the predominant stroke mechanism in patients with superior cerebellar artery distribution infarcts, whereas in those with posterior inferior cerebellar artery distribution infarcts, the stroke mechanism was equally divided between cardiogenic embolism and posterior circulation arterial disease.
(上小脳動脈梗塞では心原性塞栓が原因と推定されることが多く、一方、後下小脳動脈梗塞では塞栓と血栓が半数ずつであった)

CONCLUSIONS:
■Cerebellar infarcts in the posterior inferior cerebellar artery and superior cerebellar artery distribution have distinct differences in clinical presentation, course, and prognosis.
■These differences should help in the selection of appropriate monitoring and treatment strategies. 
Stroke. 1993;24:76-83
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/abstract/24/1/76

Articles
Causes and Mechanisms of Cerebellar Infarction in Young Patients
Fernando Barinagarrementeria, MD; Luis E. Amaya, MD; Carlos Cantú, MD
From the Stroke Clinic, Instituto Nacional de Neurologia y Neurocirugía, Manuel Velasco Suárez, Mexico City, Mexico.

Correspondence to Fernando Barinagarrementeria, MD, Stroke Clinic, Instituto Nacional de Neurologia y Neurocirugía, Manuel Velasco Suárez, Insurgentes Sur 3877, Tlalpan 41269, Mexico City, Mexico.

Background and Purpose
■The incidence of cerebellar infarction in a series of patients with stroke is approximately 1.5%.
(小脳梗塞は全梗塞の1.5%を占める)
The average patient age in most reported series is 62 years.
The most common etiologies in this age group are atherosclerosis and cardiac embolism.
■The aim of this study was to determine the causes and mechanisms of cerebellar infarction in patients younger than 40 years.
(40歳以下での小脳梗塞について検討)

Methods
■We analyzed retrospectively the clinical and radiological data from 21 men and 16 women with cerebellar infarction admitted to our hospital from January 1986 to December 1996.
■The patients had been studied extensively to determine the etiology of the cerebellar infarction.
Results In the 37 patients (mean age, 30 years), 29 infarcts were limited to one territory (15 in the posteroinferior cerebellar artery [PICA]; 14 in the superior cerebellar artery); 8 had nonterritorial infarctions.
■The most common stroke mechanisms in each territory were as follows: PICA: nonatherosclerotic vasculopathic (67%), cardioembolic (20%), and hematologic and cryptogenic (each 7%); superior cerebellar artery: cardioembolic (42%), cryptogenic (31%), migrainous (21%), and nonatherosclerotic vasculopathic and hematologic (each 7%); and mixed territory: nonatherosclerotic vasculopathic (50%), cryptogenic (25%), cardioembolic (12%), and hematologic (12%).

Conclusions
■The most common mechanism of cerebellar infarctions was arterial occlusion as a result of intracranial vertebral artery dissection (40%), mainly with PICA involvement.
■Embolism from a cardiac source resulted primarily from patent foramen ovale and rheumatic valvular disease.
■Hematologic disturbances and migraine were responsible for a few cases.
Stroke. 1997;28:2400-2404
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/abstract/28/12/2400

Acute Dizziness and Vertigo
http://www.ferne.org/Lectures/Bergey_MS.htm
Cerebellar Infarction
■Anterior inferior cerebellar artery (AICA) infarction is uncommon as an isolated syndrome. 
■Ischemia in this distribution is most commonly due to basilar artery arteriosclerosis or involvement and as such has important treatment implications. 
■Symptoms include nausea, vomiting, vertigo, tinnitus (VIIIth nerve), ipsilateral Horner’s, ipsilateral facial analgesia and ipsilateral cerebellar limb ataxia.  ■Associated ipsilateral facial weakness and contralateral hemiparesis may be seen if there is associated pontine involvement. 
■Isolated vertigo or acute unilateral deafness (internal auditory artery) may be also seen.
Superior cerebellar artery (SCA) infarction much less commonly produces vertigo than AICA or PICA ischemia, but can produce dizziness and vomiting. 
■Ipsilateral Horner’s syndrome, ipsilateral limb ataxia, contralateral spinothalamic sensory loss, and ispilateral facial palsy are typical physical findings. 
■If the ischemia is purely in the SCA distribution the outcome can be benign; but typically this syndrome is seen in association with basilar artery (the SCA arises from the BA) embolic or atherosclerotic disease.
■Cerebellar and lateral medullary infarctions can be misdiagnosed as peripheral labyrinthitis, because of the prominent symptoms of nausea and vomiting and the frequent absence of focal weakness.
■Cerebellar hemorrhage is most commonly a result of hypertension. 
■Typically it presents with headache, nausea, vomiting and dizziness. 
■Involvement of the cerebellar vermis produces ataxia, involvement of more lateral structures produces ipsilateral limb ataxia. 
■ With isolated vermian involvement the physical findings and diagnosis may be missed unless the patient is asked to walk to reveal the associated ataxia. 
■Cerebellar hemorrhage does not produce altered consciousness or weakness unless there is associated brainstem compression. 
■ These signs and symptoms are indications for prompt neurosurgical intervention with clot evacuation. 
■ Cerebellar hemorrhages that rupture into the fourth ventricle, in addition to being large and more likely to cause brainstem compression, can also produce later obstructive hydrocephalus.
■Although caused by hypertension, elevated blood pressure can be a reflex response from a large hemorrhage. 
■Treatment of blood pressure should be conservative unless pressures exceed about 180/120.

http://www.ferne.org/Lectures/Bergey_MS.htm

<関連サイト>
CNS Causes of Vertigo
http://emedicine.medscape.com/article/884048-overview
Disease Information for Cerebellar infarct
http://en.diagnosispro.com/disease_information-for/cerebellar-infarct/11972.html#Demographics_amp_Risk_Factors

小脳梗塞
http://www.khk-dr.jp/mosimosi/0711wed.htm
小脳・脳幹の血管障害
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10840500.html
目まい・脳梗塞・小脳梗塞
http://kenkou-handan.blog.ocn.ne.jp/joushiki/2007/01/post_f6b2.html
脳梗塞
http://ja.wikipedia.org/wiki/脳梗塞
若者に急増!首の動脈硬化が引き起こす小脳梗塞
http://blogs.yahoo.co.jp/endokoro728/25750058.html
小脳梗塞の治療法
http://www.elmuu.com/bk/ner2/syounoukousoku.htm
プライマリー・ケア医のための
めまい診療のポイントと落とし穴1
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=小脳梗塞&perpage=0&order=0&page=1&id=M41340301&year=2008&type=allround

<小脳梗塞まとめ>
■小脳梗塞は比較的少ない。
■突然の、急性の発症でめまい(多くは回転性)、左右どちらかの上下肢の小脳性運動失調、歩行障害、ロレツが回らないという失調性構音障害などがみられる。
■数時間から数日にかけて、梗塞巣周辺の浮腫が強くなると、後頭蓋窩で占拠性病変として脳幹を強く圧迫し患者が突然に死亡することがある。
(引用 北野邦孝著「神経内科の外来診療」 医学書院)



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by wellfrog3 | 2009-04-12 00:31 | 神経内科

頭痛・肩こりを伴うめまい

昨日は
めまい診療のポイント
http://wellfrog3.exblog.jp/11200425/
で勉強しました。
きょうは
特別企画  頭痛・肩こりを伴うめまいの治療の記事で勉強しました。

めまいにはさまざまな随伴症状があるが,患者に最も大きな恐怖感を与えるのが頭痛であろう。
たとえ生命予後への影響が少ないものであっても,発作を恐れる患者は日常生活を自ら制限しがちである。
また,こうした患者は首や肩のこりにも悩まされていることが多く,患者QOLの低下は著しい。
 
今回は頭痛・肩こりを伴うめまいについて,埼玉医科大学耳鼻咽喉科・神経耳科部門助教授の伊藤彰紀氏に,その種類と診断・治療法について伺った。また,薬物療法と運動療法の併用で,頭痛・肩こりとめまいが消失した自験例を紹介していただいた。

末梢前庭性めまいでも頭痛・肩こりを伴うことが多い
めまいに頭痛や肩こりを伴う症例は多い。頭痛を伴うめまいのなかで見落としてはならないのが,生命にかかわる小脳出血で,回転性めまいに激しい頭痛や嘔気・嘔吐を伴うのが特徴である。
また,拍動性頭痛に加えて,複視や運動失調,痺れなどの中枢神経症状が見られる場合は,脳底動脈片頭痛の可能性が高い。
小脳梗塞で激しい頭痛を伴うことは比較的まれであるが,頭重感,嘔気,平衡失調が強い。一方,内耳が障害される末梢性めまいでも,中枢疾患ほど重篤ではないが,肩こり・頭重感・頭痛を訴える症例も多い。
 
前庭三反射が障害されると,
(1)前庭・眼反射の障害では眼振による回転性めまいが,
(2)前庭・自律神経反射の障害では,嘔気・嘔吐・冷感などが現れる。
さらに
(3)前庭・脊髄反射の障害では,骨格筋の筋緊張に影響して身体のふらつきが現れる。

そのなかでも特に頭痛・肩こりと関連が深いのが(3)で,末梢前庭障害により首の筋緊張に対する前庭系からの抑制性の入力が低下して脱抑制性に転じ,その結果,首の筋肉の緊張が亢進して首や肩のこりが生じ,二次的に筋緊張性頭痛が発症しやすいと推測されている。

頭痛の症状は問診で聞き出す。末梢性めまいの頭痛は?
頭痛の症状には,片頭痛に代表されるズキズキする痛みと,筋緊張性頭痛に多く見られる頭重感があり,診断の有用な手がかりとなる。
しかし,患者ごとに痛みの表現が異なるため,問診では「脈を打つように痛いですか」「何かをかぶったように重苦しいですか」「頭が締め付けられるように痛いですか」などと具体的に聞き出すことが重要である。耳鳴りや聞こえの悪さなど蝸牛症状の有無も,確かめておきたい。
 
末梢前庭性めまいには,良性発作性頭位めまい症,メニエール病,突発性難聴,前庭神経炎,いわゆる内耳性めまい症などの疾患があるが,すべての疾患の多くの症例で頭痛や肩こりを訴える。その性状としては頭重感であり,片頭痛よりも筋緊張性頭痛と推測される例が多い。

頭痛・肩こりを伴う内耳性めまいには循環改善薬・自律神経調整薬・運動療法の組み合わせが有用
内耳性めまいの治療法は,その病態ごとに異なる。
すなわち,メニエール病(内リンパ水腫)であれば浸透圧利尿薬,めまいを伴う突発性難聴であればステロイド薬などと,使用する薬剤が異なる。
薬物療法だけではなく,良性発作性頭位めまい症では理学療法や運動療法(図 1;(1)(2)(3)(4))も有用である。
一方,首や肩のこりをほぐし,頭痛を軽減させるためには肩こり体操(図 1;(5)(6)(7))が効果的である。

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内耳の循環障害による,いわゆる「内耳性めまい」でも首や肩のこり,頭痛,頭重感を訴える症例が多い。
このような症例に対する治療としては,循環改善薬や自律神経調整薬が有効である。
内耳障害そのものに対する治療効果だけではなく,首や肩の緊張をほぐすためにも有用である。

 
症例(図2
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ここで用いた循環改善薬のカリジノゲナーゼは降圧作用を有するが,低血圧のめまい症例に用いても問題はなく,むしろめまいの根幹である内耳の循環を改善する基本的な薬剤として重要であると考える。



出典 Medical Tribune 2004.11.25 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog3 | 2009-04-11 00:36 | 神経内科

めまい診療のポイント

特別企画
アデホスコーワ顆粒10%・イソバイド(R)適応追加20周年記念座談会
の「めまい診療」の記事で勉強しました。
ごこ最近、40代の男性でめまいを主訴に来院された方がみえました。
近くの病院へ紹介し、脳MRI検査で小脳梗塞の診断をしていただきました。
今までは、多くのめまいの症例を良性発作性頭位めまい(BPPV)と診断してきましたが、脳MRIも積極的に検査すべきと実感しました。


開業医のためのめまい診療のポイントと落とし穴1
ストレス社会, 超高齢化社会を迎えたわが国では, めまいの患者が増加している。
めまい患者の多くは, まずはプライマリー・ケア医を受診する機会が多いが, その病因の多様性などから, 診療に苦慮する場面も多い。
 
出席者
山本 昌彦 氏(司会) 東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科 教授
石川 和夫 氏 秋田大学 耳鼻咽喉科 教授
鈴木 衞 氏 東京医科大学 耳鼻咽喉科 教授
肥塚 泉 氏 聖マリアンナ医科大学 耳鼻咽喉科 教授

めまい診療の第一歩:問診の重要性
山本 
本日は, めまいの専門医とめまい診療のこつと注意すべき落とし穴について考えることで, プライマリー・ケア医の先生方のめまい診療に役立つ話ができればと思っています。
めまいはその原因(表1)が多岐にわたっていることから, 診断が難しいといわれますが, まず石川先生, プライマリー・ケア医がめまいを診るうえでの最初のポイントは何だとお考えですか?

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石川 
めまい診療の第一歩としては, まずはその原因が末梢性なのか中枢性なのかを診断することです。
末梢性めまいのほうが頻度は高いのですが, 中枢性のめまいには脳梗塞や脳腫瘍など, 生命にかかわる重大な疾患が隠れていることがありますので, プライマリー・ケアの段階でそれを見分けることは大変重要です。
そのためには, めまいの背景にある原因疾患をつかむために, 的確な問診を行うことが大切になります。

鈴木 
めまいの診断をするうえで最も重要なのは問診です。
問診のポイントは,
(1)発症状況(いつ, 何をしていたときに),
(2)めまいの性状(どのようなめまいが;回転性, 浮動性など),
(3)持続時間(どれくらいの時間;数秒, 数分, 数時間, 数日など),
(4)起こり方(単発性, 反復性, 持続性など),
(5)経過(よくなる, 変化なし, 悪くなる),
(6)随伴症状の有無(蝸牛症状, 神経症状)を詳しく確認することです(表2)。
これらの情報から, おおよその診断がつくとさえいわれています。

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肥塚 
私も問診は非常に大切だと思います。
しかし, めまいの患者さんは発作が起きているときはパニック状態に近いことが多いので, うまく問診がとれないこともあります。
また, 単に「めまいがする」としか答えない患者さんも多く来院します。
時間はかかりますが, 面倒がらずに根気よく聞き出すことで, 個々の患者さんのめまいの特徴を捉えることが重要です。
的を射ない答えだとしても, それをカルテにそのまま書き込んでおくと, 後々, 役に立つこともありますね。
 
また, 特に高齢者の場合は, 服用している薬剤や既往歴を聞くことも大切です。
薬剤自体がめまいを引き起こしていることもありますし, 降圧薬や脂質異常症, 糖尿病の薬を飲んでいるなら, 中枢障害を起こしやすいバックグラウンドを持っているということも分かります。

山本 
めまいを経験したことのある方は非常に多いのですが, その原因をしっかりと診断されている患者さんは少ないのが現状です。
命にかかわる中枢性のめまいを見逃さないためにも, ぜひ, めまいの問診をマスターしたいですね。

中枢性のめまいを見落とさないために
山本 
では, 危険な中枢性のめまいを見落とさないためのポイントはなんでしょうか?

石川 
中枢性めまいと一言でいっても, 原因疾患により症状も多岐にわたりますが, 一般的に, 末梢性のめまいは回転性で症状が非常に強いものが多く, 逆に中枢性は「フワフワする」などの浮動性のめまいで症状は比較的軽いことが多いといわれています(表3)。
また, 神経症状(言語障害, 構音障害, しびれ, 知覚障害, 運動麻痺, 複視など)があれば, 中枢性を疑う大きなポイントになります。

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肥塚 
私は, 中枢性のめまいの特徴として「ふらつき」を重視しています。
「ふらつきがあって歩きにくい」などの症状を訴えた場合は, 小脳梗塞が疑われます。
また, いま話題のメタボリックシンドロームの患者さんは脳梗塞を起こしやすいわけですから, それも把握しておく必要があると思います。

鈴木 
中枢性のめまいの場合, めまい症状のわりに平衡障害が強いことが多いのが特徴だと思います。
重心動揺検査で非常に動揺範囲が広いような場合は注意が必要です。
ただ, 1回の受診では正確な診断ができない場合もあります。そういう場合は, 必ず「次はいつ来るように」と再診の指示をしています。
めまい症状は変動しますので, 1回で手放さないで何回か診ることも大事です。

山本 
頻度は低いですが, 軽いめまいのみを主訴とする中枢疾患の患者さんもいます。
よく問診をして, 神経症状やふらつき, 歩きにくいなどの症状が少しでもあれば, 念のため画像診断を行うほうがよいですね。

鈴木 
初めは末梢性のめまいと診断されていたが, 実は中枢性だったという例も全体の4〜5%にみられます。
落とし穴に陥らないためには, 一度診断がついたからそれで終わりにせず, 経過を見守ることが大切です。

石川 
また最近, 高齢者では椎骨脳底動脈循環不全によるめまいが増えています。
秋田大のめまい外来でも, 高齢者に最も多い中枢性めまいの原因疾患となっています。
自覚症状としてはめまい(浮動性〜回転性), 眼前暗黒感, 手足のしびれ, 視覚異常などが特徴です。
初めは軽いめまいしか症状がありませんが, 椎骨動脈内血栓が関与している場合は, これが脳幹側に移動すると命取りになることもあります。
ですので, 私は椎骨脳底動脈循環不全の患者さんには「具合が悪くなったらすぐ来なさいよ」と言っています。

山本 
いずれにしても, いろいろなめまいの患者さんがいるなかで, どうしても原因の分からない場合も残念ながら少なくありません。
そういった場合は, 曖昧なままで患者さんを抱えこむことだけは絶対にしないで, ぜひ, 専門医へ紹介して欲しいと思います。


Medical Tribune 2008.8.21(一部改変)
メディカル・トリビューン社


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熊谷守一  猫
http://www.oida-art.com/buy/detail/1526.html


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21〜 http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
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by wellfrog3 | 2009-04-10 00:33 | 神経内科

パーキンソン病治療の最前線

Movement Disorder Society, Japan(MDSJ)の設立にともに尽力された順天堂大学越谷病院院長の水野美邦,香川県立中央病院神経内科主任部長の山本光利の両氏の,パーキンソン病の薬物療法をめぐる最近のエビデンスに基づいた現状の課題と今後の展望についての討議で勉強しました。

パーキンソン病治療の最前線 ―その後の新しいClinical Trial―
現在においても,パーキンソン病の薬物療法は対症的治療ではあるが,最近の大規模臨床試験の結果,一部のパーキンソン病治療薬が神経保護作用,disease modifying effectを有する可能性があると示唆されている。
こうした見解が妥当であれば,より早期からの治療介入の有用性が期待されるが,同時にジスキネジアの予防を視野に入れた治療開始薬の選択,投与方法の工夫など課題も少なくない。
 

L-DOPAの有用性と問題点を明らかにしたELLDOPA study
水野 
本日は,山本先生とご一緒にパーキンソン病の薬物療法をめぐる最近のエビデンスを振り返りながら,現状の課題と今後の展望について語らいたいと思います。
 
まずは,長くパーキンソン病治療のゴールドスタンダードとして使用されてきたL-DOPAに対して新旧の知見を検証した,ELLDOPA studyについてご説明いただけますか。

山本 
ELLDOPA studyは,プラセボ対照の二重盲検比較試験でL-DOPAの効果と副作用を改めて確認し得た,エビデンスレベルの高い試験と言えます。
パーキンソン病と診断後2年以内で,パーキンソン病治療薬服用歴のない患者361例を対象に,レボドパ・カルピドパ合剤の用量別に150mg/日群,300mg/日群,600mg/日群,プラセボ群に分けて40週投与し,投与中止後に2週間の休薬期間を設けて観察しました。
 
その結果,UPDRSで評価した運動症状は用量依存的に改善したと報告されています。
2週間のwash out期間後は,いずれの群においてもUPDRSスコアが悪化しました。
ところが,注目すべきことに,実薬群ではUPDRS総スコアがプラセボ群と同レベルにまで悪化しませんでした(図1)。

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したがって,L-DOPAを初期から投与することによって進行が抑制された可能性があると理解する専門家もいるということです。
一方,wearing off,ジスキネジアといった運動合併症などの副作用も用量依存的に発現しています(表)。

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また,β-CIT SPECTによる神経終末機能の評価も行っており,線条体でのβ-CITの取り込みが,プラセボ群に比べて,L-DOPA投与群で低下している傾向がありました。
β-CIT SPECTはL-DOPA服用中に行われていたことも結果の解釈を困難なものにしています。
このように,臨床効果と画像評価が矛盾する結果をどう解釈するかが1つの議論となっています。
 
試験期間,休薬期間ともにより長く設けて検討しなければL-DOPAが神経保護的に作用したとは言い切れないと思います。
しかし,本試験によりL-DOPAの有効性と問題点が明確に示された意義は大きいと考えています。

L-DOPAによるDisease modifying effect−高用量でのみ効果を維持−
水野 
2週間の休薬後もUPDRSスコアがプラセボ群と同レベルにまで悪化しなかったことから,L-DOPAには少なくともdisease modifying effectがあり,パーキンソン病初期からの投与が,病態進行の抑制に有用であることが示唆されました。
その機序が神経保護作用か,脳の可塑性の変化なのかは明確になってはおりませんが,症状を緩和する効果が示されたことは意義深いです。
 
また,UPDRSでみた運動症状の改善は150mg/日群で6か月,300mg/日群では9か月でベースラインに戻っているのに対し,600mg/日群のみが9か月以降も改善を維持していました。
 
しかしながら,副作用をみてみると150mg/日群,300mg/日群ではwearing offもジスキネジアもプラセボ群と差がないのに対し,600mg/日群ではwearing offが16.5%,ジスキネジアが29.7%に発現しています。
 
つまり,L-DOPA単独で運動症状の改善を9か月以上の長期にわたって維持するには,600mg/日という高用量の投与と,それに伴うwearing off,ジスキネジアのリスクを考慮する必要があります。

山本 
欧米人より体格の小さい日本人にL-DOPAを600mg/日という高用量で投与すれば,よりwearing off,ジスキネジアが発現しやすくなるでしょうね。

水野 
L-DOPA300mg/日単独投与で全ての患者さんの症状が十分に改善するわけではありませんし,改善しても,効果を維持できるのはせいぜい1年に過ぎません。
150mg/日単独投与であれば半年です。L-DOPA少量単独投与の有用性を検証するには, UPDRS Part IIなどの評価も併せて行い,UPDRS totalスコアはベースラインに戻ったとしても自覚的な改善は維持しているかどうかといったデータが欲しいですね。
 
また,L-DOPA300mg/日で開始し,症状の改善が思わしくなくなった時点でドパミンアゴニストを併用するのも1つの方法だとは思いますが,こうした治療を一般に行うためにはエビデンスをつくる必要があります。

早期治療介入の妥当性TEMPO studyで明らかに
山本 
同様にTEMPO studyでは, MAO-B阻害薬のラサジリンが神経保護作用を有する可能性が示唆されています。
 
同試験は,パーキンソン病早期で,抗コリン薬をのぞく,パーキンソン病治療薬では未治療の患者を対象に行いました。
ラサジリン1mg/日群,2mg/日群,プラセボ群に分けて6か月間投与し,最初から実薬投与を受けている群をearly start群としています。
その後,プラセボ群においてもラサジリン2mg/日群の投薬を開始し,これをdelayed start群と分類しました。Delayed start群においてラサジリン投与を開始して6か月後(試験開始1年後)にdelayed start群とearly start群のUPDRSスコアを比較しました(図2)。

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結果を見ますと,delayed start群はearly start群をキャッチアップできず,early startの2mg/日群がdelayed start群に対してUPDRSスコアを2.29ポイント,early startの1mg/日群は,delayed start群に対して同スコアを1.82ポイント改善しています(図3)。

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ラサジリンが対症効果のみを示すのであればearly start群とdelayed start群のUPDRSスコアは同等になるはずですが,報告により,ラサジリンはdisease modifying effectを有する可能性が示唆されました。
しかし,これがラサジリンの神経保護作用を証明したかといえば,そのように結論付けるのはなかなか難しいと思います。

水野 
しかし,機序はどうであれ患者さんの運動症状をより早く治療しておいたほうが,ADLを長期に維持できるだろうと考えています。

山本 
TEMPO studyの意義は,ラサジリンに神経保護作用があるかどうかより,例えばドパミン関連の神経細胞を休ませるといったことも含め,早期の治療介入が結果的によい方向に働く可能性を示したことにあると思います。
その意味では,振戦や歩行障害などによって患者さんのADLが低下し,日常生活に支障を来した時点で薬物療法を開始するという従来の考え方は再検討を要する時期に来ているのではないでしょうか。

水野 
早期から症状を改善したほうがよいと私も考えています。
従来の薬物療法の考え方は,L-DOPAは患者さんの人生で最も必要な時期に合わせて使ったほうがよいというものでした。
その流れは大きくは変わってはいないと思いますが,最近,パーキンソン病治療薬にdisease modifying effectが期待しうることが知られてきたことから,患者さんに「あまり長く治療を待つよりは早く始めたほうがいいですよ」と勧められるようになりました。

山本 
治療の進歩というのは,何も新薬によってのみなされるものではなく,既存の薬剤をどのように使って患者さんによりよい状態を提供できるかを考えることによってもなされると考えます。
その意味でも,disease modifying effectというコンセプトは頭に入れておく必要があるのではないでしょうか。

若年者においての治療開始薬はドパミンアゴニストが有用
山本 
ところで,パーキンソン病の治療開始薬はドパミンアゴニストか,L-DOPAかという問題は,ドパミンアゴニストの登場以来,結論の出ない問題です。
 
ロピニロールの10年スタディ〔Hauser RA. et al: Movement Disorders. 22(16): 2409-2417, 2007〕の結果では,ジスキネジア全体の発現頻度はドパミンアゴニストで始めた群のほうがL-DOPAで始めた群より少なかったことが報告されています。
ただし,障害となるジスキネジアの発現頻度は両群で有意差は認められませんでした。
 
このことが,パーキンソン病の治療開始薬はドパミンアゴニストかL-DOPAかという問題を考えるうえで,1つの参考にはなるのではないかと思います。
したがって,特に比較的若い方の場合,やはりドパミンアゴニストで治療開始することが望ましいと考えています。

水野 
ELLDOPA studyでdisease modifying effectが示唆されてから,L-DOPA治療を早く開始しても良いのではないかという風潮がありますが,治療開始薬はL-DOPAかドパミンアゴニストか,という問題に関して,本試験では何の証明もし得ていません。
ただ,今はL-DOPAを見直すよい機会ですし,現行のエビデンスにしたがってドパミンアゴニストから治療を開始したとしても,あまり単独で長く治療を引っ張らずに,できるだけ早期にL-DOPAを併用したほうが患者さんのためにはいいのではないかと思います。

ドパミンの持続的刺激でジスキネジアは予防できるか
山本 
最近,パーキンソン病治療薬の長期使用に伴うジスキネジアの発現を予防するうえでcontinuous dopaminergic stimulation(CDS)という概念が注目されていますね。

水野 
通常のL-DOPA内服のようにドパミン受容体を波状的に刺激する,いわゆるpulsatile stimulationは,長期的にはジスキネジアを引き起こす原因となるという仮説があります。
この仮説に基づき,持続的にドパミン受容体を刺激することによりジスキネジアが予防できるのではないかというのがCDSの概念です。
L-DOPAの持続的な静注などにより,本当にCDSが達成されればジスキネジアはある程度予防できるという印象をもっていますが,経口薬のみでのCDS達成は至難の技でしょうね。

山本 
動物実験で血中ドパミンを高濃度に持続させると,ジスキネジアが予防できるというデータがあります。
これがヒトで可能であればジスキネジアの予防につながると思いますが,現実にはL-DOPA,エンタカポンはいずれも半減期がきわめて短いため,経口薬である限りは頻回投与を行ってもCDSの達成は難しいのではないでしょうか。

水野 
エンタカポンはプラセボと比較してL-DOPAの血中半減期を延長するものの,L-DOPAの血中濃度そのものは上昇させません。
つまり,L-DOPA単独の作用時間が2時間半から3時間であるとすれば,エンタカポンはそれを30分ほど延長させたあと,再び治療域以下の血中濃度に戻ってしまうのです。
したがって,1日4回の経口投与でCDSを達成するのは容易ではないでしょうね。
 
ただし,まもなく結果が示されるであろうSTRIDE-PD study(L-DOPA,カルビドパ,COMT阻害薬であるエンタカポンの合剤の試験)で,ジスキネジアの予防効果が証明されれば,その結果は尊重しなければならないと思います。

ドパミンアゴニストはジスキネジアが低頻度
山本 
CDSの達成はL-DOPAでは難しく,さりとてMAO-B阻害薬で中枢のCDSが実現できるかというと,これもなかなか容易ではなくて,むしろジスキネジアが悪化する例が多いと言われています。

水野 
論理的にいえばロングアクティングのドパミンアゴニストでCDSを達成できるのかもしれませんが,ドパミンアゴニスト単独で長期にわたって患者さんの満足を得るのは難しいでしょう。

山本 
CDSはCOMT阻害薬の登場とともに普及してきた概念ですが,持続的にドパミン受容体を刺激するという特徴は,遡るとドパミンアゴニストに期待されたものですね。

水野 
おっしゃる通りです。
もともと,ドパミンアゴニストにはジスキネジアの発現が少ないわけです。

山本 
ドパミンアゴニストで治療中の患者さんにL-DOPAを併用すると,その直後から明らかにジスキネジアの発現頻度が高まります。
やはりL-DOPAによるpulsatile stimulationには問題があるのではないでしょうか。

水野 
Pulsatile stimulationを信じれば,L-DOPAを最初から使うことはいくら少量でもよくないということになります。
ただ,priming effectというのは,MPTP処置をしたサルにおいていわれていることなので,本当にパーキンソン病患者さんでそのようなことがあるかは未知数です。
そのことを念頭に置けば,最初からL-DOPAを使ってもいいかもしれないとは思うのですが,そのためにはエビデンスを作る必要があります。
 
例えば,L-DOPA300mg/日で治療を開始し,効果が不十分になった時点でドパミンアゴニストを併用する,あるいはドパミンアゴニストで治療を開始し,効果が不十分になった時点でL-DOPAを併用する。
そのうえで,どちらのグループがUPDRSの改善に優れ,ジスキネジアの発現を遅らせられるかを検討することは,意義あるトライアルだと思います。

山本 
一方で,患者さんにとってジスキネジアはそれほど問題であるかという議論もあります。
ジスキネジアはL-DOPAがよく効いている証拠だし,QOLもよいという肯定的な論文があります。

水野 
私もそう思います。
Wearing offとジスキネジアがある患者さんを対象にアンケートを行い,L-DOPAを多めに服用してジスキネジアが発現した状態と,少なめに服用してジスキネジアは消えたもののoffがある状態のどちらかを選んでいただいたところ,80%以上の患者さんがジスキネジアがあってもL-DOPAを多めに服用すると回答したと報告されています。
ただ,ジスキネジアそのものは,患者さんやご家族にとって悩ましい副作用であることは確かですので,ジスキネジアを発現させないということが重要です。

吸収障害を予防するための投与法の工夫
山本 
L-DOPAに関しては,経口投与して中枢に移行するまでに吸収障害など多くのファクターが介在するだけに,治療が難しくなるという側面があると思います。
先生は,例えば予期せぬときに起こるno-on,delayed on現象などについては,どのように対処されていますか。

水野 
No-on,delayed on現象は,おもに消化管からの吸収障害が原因ですので,私はL-DOPAを食前・空腹時に水に溶かして服用することをお勧めしています。
また,wearing offやジスキネジアが発現した場合,レボドパ・カルビドパ配合剤を水に溶かして1時間おきに服用すれば,ある程度血中濃度が維持できると指摘する専門家もいます。
水に溶かしたものであれば,ジスキネジア発現時には,例えば1回の投与量を100mgではなく75mgとか60mg台に減量することも容易にできます。
こうしたことは,パーキンソン病を治療している多くの専門家がすでに試みていることと思います。

出典 Medical Tribune 2009.2.12 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
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by wellfrog3 | 2009-03-30 00:46 | 神経内科

単純型熱性痙攣

大半で腰椎穿刺は不要
乳幼児が痙攣を来すほどの高熱を出すと親は動転し,子供を抱いて緊急治療室(ER)に駆け込むことが多い。
ERでは細菌性髄膜炎を除外するため腰椎穿刺などの検査が行われる。
しかし,ボストン小児病院救急部のAmir Kimia博士らは,腰椎穿刺は単純型熱性痙攣児にはおそらく不要であるとPediatrics(2009; 123: 6-12)に発表した。

704例中細菌性髄膜炎はゼロ
単純型熱性痙攣は持続時間15分未満で,24時間以内に再発しない全身性の痙攣で,6か月〜5歳の乳幼児の2〜5%に見られ,珍しい疾患ではない。Kimia博士は「われわれはERで1日に1例以上の熱性痙攣に遭遇している。
熱性痙攣が初めて起きた場合,親は不安になり救急車を呼ぶのが普通である」と述べている。
 
単純型熱性痙攣の初回発作に対する腰椎穿刺の適応について,1996年に出された米国小児科学会の勧告は,
(1)12〜18か月児には考慮する
(2)6〜12か月児には積極的に考慮する
—としている。
しかし,同博士らが,1995年10月〜2006年10月に同院小児救急部を受診した単純型熱性痙攣の初回発作例704例のカルテを調査した結果,いずれの年齢群でも細菌性髄膜炎の症例は皆無であった。
 
これら704例中271例(38%)が腰椎穿刺を受け,そのうち10例(3.8%)の髄液中に白血球数の増加が見られた。
ウイルス感染が示唆されたが,病原性の細菌は同定されず,細菌性髄膜炎と診断された患児は皆無であった。
 
今回の研究は,細菌性髄膜炎リスクが最も高いと考えられる6〜18か月児に限定して行われた初めての大規模研究であり,結果は同じ年齢群と6歳までの年齢群を対象に行ったこれまでの小規模研究と合致している。

非定型な臨床症状には注意を
腰椎穿刺は局所麻酔のほか,しばしば鎮静薬を要する。
Kimia博士は「腰椎穿刺は合併症発生率がきわめて低く安全な検査とはいえ,針で穿刺する以上,苦痛を伴う。われわれは絶対に必要でない限り,施行しないようにしている」と述べている。
 
11年に及ぶ研究期間中の腰椎穿刺施行率の低下にも表れているように,腰椎穿刺の必要性については既に疑問の声が上がっている。
この背景には,米国で髄膜炎の2大起因菌であるインフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチン接種が1990年に,肺炎球菌に対する接種が2000年にそれぞれ導入されたため,細菌性髄膜炎の発生率が激減したことが挙げられる。
同博士によると,先進諸国ではワクチン接種を受けた乳幼児では細菌性髄膜炎はまれな疾患となった。
 
単純型熱性痙攣は家族性に発症する傾向があり,急激な体温上昇に対処する脳の未熟性を反映すると考えられている。
一部の研究者は,体温の高さよりも体温が上昇する速度のほうが重要と考えている。
37.2℃から38.3℃に上昇しても,それが急速なものであれば,熱性痙攣の素因を有する乳幼児では発作の引き金となりうるとしている。
 
しかし,同博士らは「今回の結果は複合型の熱性痙攣,懸念すべき臨床症状・徴候や基礎疾患を有する小児には当てはまらない」としており,「腰椎穿刺はルーチンに行うのではなく,臨床症状に基づいて考慮すべきだ。
患児がぐったりしている場合や,神経学的症状,興奮状態,無反応,そのほかの臨床徴候(ある種の発疹,大泉門膨隆)などが見られる場合は,小児の年齢が高くても腰椎穿刺を考慮すべき」との見解を示している。
 
さらに,同博士は「ERで子供に検査の必要はないと親に納得させるのが難しい場合もある。痙攣発作に衝撃を受けた親のなかには子供が死んでしまうのではないかと恐れる者もいる。今回の結果は,そうした親を安心させる一助となるものと期待している」と述べている。

出典 Medical Tribune 2009.3.19 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
脳動脈瘤の家族歴のある喫煙者は脳卒中リスク高い
米国神経学会(AAN)のメンバーでシンシナティ大学(オハイオ州シンシナティ)神経学のDaniel Woo博士らは,喫煙者で脳動脈瘤の家族歴がある人は脳動脈瘤から脳卒中を発症するリスクが有意に高くなるとNeurology(2009; 72; 69-72)に発表した。

6倍強発症しやすい
脳卒中の1種であるくも膜下出血の患者では約35〜40%が死に至る。
Woo博士らは今回の試験で,脳動脈瘤から脳卒中を発症した 患者339例と対照として非発症者1,016例について調べた。
脳卒中群の半数が喫煙者で,残りの半数は喫煙歴がない,あるいは現在禁煙している患者であった。
 
その結果,喫煙歴と脳卒中の家族歴を有する人は,喫煙歴のない人あるいは脳卒中や脳動脈瘤の家族歴のない人と比べて,6倍強も脳卒中を発症しやすいことがわかった。
また脳卒中の家族歴のある人は,禁煙により発症リスクを2分の1強抑制できる可能性も示唆された。
これらの結果は高血圧,糖尿病,飲酒,BMI,学歴とは関連しなかった。
 
同博士は「今回の知見から喫煙と脳卒中の相互関係が示唆された。
そのため喫煙者には禁煙を推奨すべきだと考える。喫煙者の場合,あるいは動脈瘤の家族歴がある場合,脳動脈瘤破裂による脳卒中の発症リスクがきわめて高いことになる」と述べている。
出典 Medical Tribune 2009.3.19 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

リャド  黄昏の光 
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by wellfrog3 | 2009-03-27 00:06 | 神経内科