カテゴリ:脳血管( 6 )

片頭痛と脳梗塞

JAMA誌の片頭痛に関する記事で勉強しました。

片頭痛がある中年女性は高齢期に梗塞病変が見られやすい
アイスランドの出生コホートの追跡結果

中年期に多い片頭痛は、長期的な問題を引き起こすのだろうか。
米国Uniformed Services大学のAnn I. Scher氏らは、アイスランドの出生コホートを高齢期まで追跡し、中年期の片頭痛と高齢期の脳の梗塞様病変の関係を調べた。
この結果、前兆のある片頭痛を経験していた女性では、頭痛がなかった女性に比べ、MRI検査により小脳に梗塞様病変が見られるリスクが有意に高いことが示された。
詳細は、JAMA誌2009年6月24日号に報告された。

片頭痛は男性より女性に多い。約3分の1の患者が片頭痛発作の前に、視覚性、感覚性、失語性、運動性の前兆を経験する。
近年、前兆のある片頭痛が、脳卒中や冠動脈疾患などのリスク上昇と関係している可能性が示されている。
またMRIによって検出される小脳の梗塞様病変と有意な関係があるという報告もあった。

そこで著者らは、中年期に片頭痛症状がある人々と、頭痛がない人々を追跡し、高齢期に脳のMRI検査において梗塞様病変が検出されるリスクを比較した。

対象となったのは、集団ベースのReykyavikスタディに参加した人々。
この試験では、アイスランドのReykyavikの1907〜1935年の出生コホートを1967年から追跡している。
著者らは今回、1972〜1986年に33〜65歳(平均年齢51歳)になっていた人々に対し、中年期の評価として片頭痛に関する質問を行い、心血管危険因子、人口統計学的特性について調べた。

月1回以上の頭痛があると述べた患者には、片頭痛症状(悪心または嘔吐、片側だけの頭痛、光恐怖、視覚障害、片麻痺)の有無を尋ね、前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛、片頭痛以外の頭痛に分類した。

Reykyavikスタディーはその後、2002年にAGES-Reykyavikスタディと名を変えて継続された。
著者らは、2002〜06年に、高齢期の評価としてMRIを用いた脳の評価と、心血管危険因子の測定を行い、心血管疾患歴などについても調べた。 

主要アウトカム評価指標は、梗塞様病変の存在(脳全体)と、皮質、皮質下、小脳の梗塞様病変に設定。

Reykyavikスタディからの参加者のうち、条件を満たした4689人(女性が2693人、男性が1996人)が分析対象になった。
中年期の調査時の平均年齢は50.9歳、高齢期の調査時には76.2歳だった。

片頭痛は、男性の5.7%、女性の17.0%、全体では12.2%に見られた。
前兆なしの片頭痛は男性の1.5%、女性の6.6%で、全体では4.5%。前兆ありはそれぞれ4.2%、10.3%、7.7%だった。

前兆ありグループのうち、視覚性前兆は男性の77.1%、女性の66.2%に見られた。感覚性前兆は14.5%と17.3%。それら両方を訴えたのは8.4%と16.5%だった。

高齢期にMRIによって梗塞様病変が検出されたのは、男性の39.3%、女性の24.6%だった。

未調整解析において、梗塞様病変の有病率は、中年期に頭痛がなかった女性に比べて、前兆のある片頭痛を訴えていた女性に多かった(25%と31%、p=0.04)。
しかし、男性にはそうした差は見られなかった(39%と41%)。

年齢、性別、追跡期間で調整後、中年期に頭痛なしの男女3243人と比べると、前兆のある片頭痛があった361人では、高齢期に梗塞様病変が認められるリスクは上昇していた。
調整オッズ比は1.4(95%信頼区間1.1-1.8)。

前兆のある片頭痛群では、主に小脳の病変の有病率が高かった(調整オッズ比は1.6、1.3-2.2)。皮質、皮質下の病変については、前兆あり片頭痛、前兆なし片頭痛、片頭痛以外の頭痛の患者のいずれにも有意なリスク上昇は見られなかった。

男女別に比較すると、男性では、前兆のある片頭痛群の梗塞様病変の有病率上昇は有意ではなく(1.3、0.8-1.8)、女性では有意な上昇が見られた(1.5、1.1-2.0)。
女性では特に小脳の梗塞様病変の有病率が、頭痛なし群で14.5%、前兆のある片頭痛群では23.0%となり、調整オッズ比は1.9(1.4-2.6)になった。
男性ではそれぞれ21.3%と19.3%で、オッズ比は1.0(0.6-1.8)だった(性別との相互作用のp<0.04)。

前兆のある片頭痛と小脳の梗塞様病変の関係は、高齢期の心血管リスクと冠疾患歴またはTIA/脳卒中歴で調整しても変化しなかった。

冠疾患歴あり群となし群、TIA/脳卒中歴あり群となし群に患者を層別化して分析しても、関係は変化しなかった。

女性における小脳の梗塞様病変の存在と、前兆のある片頭痛の関係を調べたところ、視覚性前兆と感覚性前兆が併存するグループ(女性全体の8.6%)で、視覚性前兆のみのグループ(1.7%)より強力だった。調整オッズ比は前者が2.2(1.5-3.1)、後者が1.3(0.6-2.8)。

中年期の前兆のある片頭痛は、高齢期にMRI検査により検出される小脳の梗塞様病変の有病率と有意に関係していた。関係は女性でのみ有意だった。
ただし今回は、症状の有無は問わずに、病変の存在のみについて片頭痛との関係を評価したため、リスク上昇の臨床的意義は明らかではない。著者らは、今後も研究の継続が必要だ、と述べている。

Migraine Headache in Middle Age and Late-Life Brain Infarcts
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/301/24/2563

出典 NM online 2009.7.13
版権 日経BP社


<番外編 その1>
新型インフル、夏も衰えず 秋口の流行加速警戒 実態把握困難に
新型インフルエンザウイルスの発生が米保健当局などにより確認されてから約3カ月。
これまで確認されているだけで感染者は世界で15万人、死者は800人を超えた。
米国とメキシコに始まった感染は冬を迎えたオーストラリア、チリ、アルゼンチンなど南半球にも拡大する一方、北半球でも衰えをみせておらず、実際の感染者や死者は確認数の何倍にも達している可能性が高い。

米疾病対策センター(CDC)など各国保健当局は、行楽シーズンが終わった夏休み明けに再開する学校や職場を介した一段の流行加速があり得るとみて、警戒を強めている。

新型インフルエンザの拡大を象徴するのは、日米を含む主要な感染国が感染者の全数把握を停止、世界保健機関(WHO)による定時集計もストップした事実だ。

WHOなどは「数字の把握よりも、患者の症状の悪化具合や拡大防止策の検討が重要」としているが、感染者数が急増したため、詳細(PCR)検査による感染確認をすべての感染疑い者に実施するのが先進国ですら物理的に不可能になり、確認数に注目する意味がほとんどなくなったのが最大の理由だ。

23日時点で欧州疾病対策センター(ECDC)がまとめた世界の確認感染者数は15万1656人、死者は868人となった。しかし米CDCは既に全米の感染者は100万人を超えると推計、英保健当局もイングランド地方だけで過去1週間で10万人増えたとの見方を示している。

一方、夏にも供給が始まると期待された新型インフルエンザ用ワクチンの開発・製造は遅れ気味だ。ワクチン製造に必要なウイルス培養の速度が予想以上に遅いことや、開発後の安全性確認に時間がかかることが主な理由だ。

WHOのキーニー・ワクチン研究部長は「9-10月には供給が始まる」との見通しを示しているが、その後も供給不足が続くのは確実で、医療従事者や重症化のリスクが高い妊婦、既往歴のある人などの優先接種検討を各国に勧告している。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/07/27/104917/?Mg=5ee54b3fc669372b58b3d2ec4fe94a34&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
共同通信社 2009.7.27


<番外編 その2>
新型インフル、1人から1・96人に…南半球
新型インフルエンザが急速に広がっている冬の南半球で、1人の新型インフルエンザ感染者から何人に感染させるかを意味する「再生産数」が、1・96と推定されることが、ユトレヒト大(オランダ)の西浦博研究員らの調査でわかった。
ニュージーランドの医学誌に掲載された。

季節性インフルエンザ(1・1-1・4)を上回る値で、日本でも秋以降に予想される流行で、多数の感染者が出る恐れがある。

調査では、6月初旬以降に、海外から持ち込まれた事例を除く、ニュージーランドの国内感染者数の推移を分析し、平均1・96と推定した。

この数字をもとに試算すると、感染防止策などがない場合、大流行が終息するまでに人口の78・6%が感染するとしている。

今回の結果は、流行初期にメキシコで報告された1・4-1・6よりも高い。

研究チームは、冬季に感染が広がりやすく、再生産数が大きくなった可能性もあるとしている。


<番外編 その3>
早期投与で発熱期間短縮 新型インフル治療薬
新型インフルエンザの治療で抗ウイルス薬のタミフルかリレンザを発症早期に投与すると、熱の高い期間が短縮され症状が軽かったとする研究結果を国立感染症研究所のチームがまとめ、24日までに欧州の感染症専門誌ユーロサーベイランスに発表した。

大阪府で5月末までに確認された新型インフルエンザの患者171人を調査。96%に当たる165人がタミフルかリレンザの投与を受けており、この中で治療中の情報が判明している90人について38度以上の熱があった期間を調べた。

発症して24時間以内に治療薬を投与した場合、熱があった期間の平均は1・9日間、発症1日後では同2・5日間、発症2-5日後では同3・4日間と、投与が早いほど発熱期間が短かった。

タミフルとリレンザの間では発熱の期間に違いは見られなかった。

調査に携わった感染研感染症情報センターの安井良則(やすい・よしのり)主任研究官は「新型インフルエンザの発症直後にタミフルやリレンザを服用すれば、2日以内に熱を下げることができ、重症化を防ぐことができるのではないか」と話している。
2009年7月27日 提供:共同通信社

<番外編 その4>
メタボリックシドローム、仕組みを解明 免疫細胞が炎症誘発 東大、マウス実験で
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の原因となる内臓脂肪の炎症が起きる仕組みを、永井良三・東京大大学院医学系研究科教授らが、マウス実験で突き止めた。
免疫細胞の一つ、Tリンパ球が炎症の引き金になっていた。
メタボリックシンドロームの治療薬開発につながる成果という。26日付の米専門誌「ネイチャーメディスン」(電子版)に掲載される。

内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が大きくなると、白血球の仲間のマクロファージなど免疫細胞が集まって慢性的な炎症が起きる。
炎症によりインスリンの効きが悪くなることなどがマウス実験で分かっており、動脈硬化や糖尿病などにつながる。しかし、炎症の起きる仕組みはなぞだった。

永井教授らは、高脂肪食を与えた肥満マウスと通常の食事を与えたマウスを比較。その結果、肥満マウスは病原菌を撃退する「CD8陽性Tリンパ球」が、マクロファージより先に増えていた。

そこで、このリンパ球を減らしたり、存在しないマウスを作製して調べると、高脂肪食を与えても内臓脂肪組織に炎症が起きないことが判明した。
さらに、一度炎症が起きたマウスから、このリンパ球を取り除くと、内臓脂肪の炎症が抑えられ、インスリンの効きが改善されることなども分かった。

真鍋一郎・東京大大学院医学系研究科特任准教授(循環器内科)は「このTリンパ球は免疫機能にとって重要で、すべてを除去するのは難しい。脂肪組織の肥満化によって、Tリンパ球を活性化させる物質を見つけられれば、それを制御することで、メタボリックシンドロームの治療薬開発につながる可能性がある」と話す。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/27/104956/毎日新聞 2009.7.27

<番外編 その5>
先週、「診療報酬は、中央社会保険医療協議会ではなく、国会で議論して決定」との報道がありましたが、直嶋正行・政調会長は「中医協については、構成メンバーも含めて見直す必要があるという問題意識は持っている。しかし、国会で診療報酬を決定するというのは、岡田(克也)氏の個人的見解。中医協のあり方については今後、議論していく」と述べ、現時点では党の方針として決定したわけではないとしています。
http://mrkun.m3.com/mrq/community/message/view.htm?cmsgId=200907281057523883&msgId=200907281059504170&mrId=ADM0000000


<きょうの一曲>  波
Gal Costa - Wave
http://www.youtube.com/watch?v=rduKvPcMg9c&feature=related
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by WELLFROG3 | 2009-07-29 00:24 | 脳血管

国際くも膜下動脈瘤試験 (ISAT)

#くも膜下動脈瘤 5年生存率はコイル塞栓術が優れる クリッピング術と平均9年間の比較
オックスフォード大学ジョンラドクリフ病院(オックスフォード)神経血管神経学研究科のAndrew Molyneux博士らは,国際くも膜下動脈瘤試験(ISAT)の長期追跡調査を行い,動脈瘤患者に対してクリッピング術を行うよりも,コイル塞栓術を行うほうが5年以内に死亡するリスクは低いとの解析結果をLancet Neurology(2009; 8: 427-433)に発表した。

#コイル塞栓術の効果は持続
ISATでは,1994〜2002年に43の神経外科施設で治療を受けたくも膜下動脈瘤患者2,143例を,(1)クリッピング術群(クリッピングを行う開頭手術)
(2)コイル塞栓術群(コイルを注入して,漏出部分を閉鎖する血管内手技)
―のいずれかにランダムに割り付けした.。
先の報告では,コイル塞栓群はクリッピング群に比べて1年後の生存率が高く,独立した生活ができる患者が多く,死亡や要介護状態に至るリスクが24%低下した。
今回の検討では,両群を平均9年間(範囲6〜14年間)追跡し,2,000例強のデータを解析した。
 
1万6,000人年の追跡では,手術1年以上経過後の再出血は24例に認められた。
このうち13例(コイル塞栓群10例,クリッピング群3例)は治療を行った動脈瘤から,4例は治療時に存在していたが治療しなかった動脈瘤から,6例は新規の動脈瘤からの出血で,1例は不明であった。
 
フォローアップ5年時点で,コイル塞栓群の11%,クリッピング群の14%が死亡し,死亡の相対リスクは,コイル塞栓術群がクリッピング術群より23%低かった。
しかし,5年後に生存した患者のうち独立した日常生活が可能な患者の比率は,コイル塞栓群で83%,クリッピング群で82%と同等であった。
1年生存について調整した標準化死亡比は,両群とも一般人口より57%高かった。
 
Molyneux博士らは「治療に適した動脈瘤を有する患者では,コイル塞栓術はクリッピング術よりも1年後の臨床アウトカムが良好である可能性が高い。今回のデータから,コイル塞栓術に見られた初期の臨床的有益性は時間の経過に伴い低下するものの,4年後も見られることがわかった」と述べている。
 
同博士らは「ISATの平均9年間(範囲6〜14年間)にわたる追跡の結果,治療した動脈瘤からの再出血リスクは低いことが立証された。
コイル塞栓術群ではクリッピング術群より再出血が多かったが,再出血による死亡数に差はなかった」としている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=0&order=1&page=0&id=M42240011&year=2009

出典 Medical Tribune 2009.6.11
版権 メディカル・トリビューン社


<新型インフルエンザ関連>
軽症者は自宅療養 診察、すべての医療機関で 全数把握やめ検疫縮小 厚労省、インフル新指針

新型インフルエンザの国内対応をめぐり厚生労働省は19日、すべての地域を対象に一般医療機関で感染者を診察し、軽症者を自宅療養とすることなどを柱とする「改定版運用指針」を正式決定した。
感染者を個人単位で全数把握することをやめ、集団発生の早期探知を徹底。
検疫も大幅縮小する。

今秋にも予想される流行の「第2波」に備え、患者が増えた場合でも迅速に重症者を発見、治療するとともに、十分な病床を確保するのが目的。
医療体制やサーベイランス(監視)、検疫の各項目に分けて対応を見直しており、今後、関係機関の態勢を整え、段階的に実施していく。

新たな運用指針によると、感染者の広がり度合いに応じた現行の地域分類を廃止。
軽症患者については入院措置は取らず、自宅療養とする。ぜんそくなど重症化の恐れのある疾患を持つ人に対しては早い段階で抗インフルエンザ薬を投与するほか、優先的に遺伝子を調べる詳細(PCR)検査を実施して、必要に応じて入院治療もする。

感染者の診察を専門的に受け付ける発熱外来は存続させるが、すべての一般医療機関でも診療。
その場合、ほかの患者と分け、診療時間をずらすなどして院内感染防止に取り組む。
対応する医療機関を拡大し、重症者や重症化しやすい患者への早期対処を念頭に置いた。
ただし、院内感染した際のリスクが高い透析、がん、産科の専門病院は診療を受け付けない。

サーベイランスについては感染者全数の把握をやめ、PCR検査は集団発生の恐れがある場合のみに行う。
検疫に関しては、これまで全入国者に記入させていた健康状態質問票の配布を中止し、有症者に対するPCR検査もしない。

厚労省は、世界保健機関(WHO)が11日に警戒水準(フェーズ)を「6」に引き上げたことを受け、医療や検疫など国内対応の見直し作業を進めていた。

共同通信社 2009.6.19
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/19/102448/?pageFrom=m3.com


<医学雑誌 斜め読み>
「エッセイ 意外に多い! 医師の認知症」
日本医事新報 No.4441 2009.6.6 P95~98
<コメント>
タイトルにビックリして思わず読みました。
しかし、エッセイということで確たるデータの提示はなくほっとしました。
文中の「現行の保険医療制度の下では朝から夕方遅くまで大勢の患者さんを捌かなくては一定の収入は見込めないだろう。必然的に趣味、スポーツ、芸術などを嗜む、あるいは楽しむ時間はない」。
確かに図星です。
ただ一つ誤解があります。
大勢の患者さんを捌きたくとも昨今そんなに患者さんは来ません。
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by wellfrog3 | 2009-06-20 00:06 | 脳血管

虚血性脳血管障害の予測

2つのバイオマーカーで虚血性脳血管障害の予測精度が改善
<b>高リスク者の特定が可能に
ベイラー医科大学(BCM,ヒューストン)アテローム動脈硬化・血管内科のVijay Nambi助教授らは,炎症が起こっているときに産生されるリポ蛋白質関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)と高感度C反応性蛋白(hs-CRP)の2種類の蛋白質(バイオマーカー)の有無を調べる血液検査を実施すれば,脳卒中の高リスク者の特定が可能になることがわかったとStroke(2009; 40: 376-381)に発表した。

リスクの全体像が明確に
■Lp-PLA2とhs-CRPは,脳への血流が途絶した場合に発生する脳卒中リスク増加に関連していることが知られている。
今回の研究は,アテローム動脈硬化症の原因と経過を解明するためにデザインされた大規模なAtherosclerosis Risk in Communities研究の参加者949例を対象とした。このうち183例が脳卒中を発症した。
 
■血液検査の結果,この2種類の炎症性バイオマーカーを検査すると,各患者の脳卒中リスクの全体像が明らかに把握しやすくなることがわかった。
 
■従来の危険因子のみを使用した評価では,今後5年間に虚血性脳血管障害を生じる可能性が2%未満の患者は低リスク者,2〜5%は中等度リスク者,5%超は高リスク者と定義された。
 
■次に,従来の危険因子に2種類のバイオマーカーの検査結果を追加したところ,一部の患者のリスクカテゴリーが変化し,低リスクと判断された患者の4%は中等度リスクに,中等度リスクと判断された患者の11%は高リスクに引き上げられた。
一方,高リスクと判断された患者の33%は中等度リスクに引き下げられた。
 
■筆頭研究者でメソジスト・ドベーキー心臓センター心血管疾患予防センター(ヒューストン)の心臓病専門医でもあるNambi助教授は「虚血性脳血管障害に対する従来の危険因子にこれらのバイオマーカーを個々に追加したところ,リスクの予測精度が改善された。さらに,2種類のバイオマーカーの相互作用を考慮に入れたうえで両方を追加すると,予測精度が最大限に改善された」と述べている。
 
■このタイプ(虚血性)の脳卒中リスクを判定するために使用されている従来の危険因子は,年齢,性,人種,喫煙の有無,血圧,糖尿病の有無,降圧薬投与の有無,BMIである。
 
■今回の研究では心筋梗塞リスク評価尺度(低,中,高)と同様の尺度が脳卒中リスクの評価に適用できるか否かについても検討した。

リスクカテゴリーが変化
■Nambi助教授は「脳卒中リスクが高い患者を特定することができれば,現在よりも優れた個別化治療と予防選択が実現するだろう」と指摘している。
 
■同助教授は「このようなリスクカテゴリーを標準とすることの妥当性を解明するには多くの研究を行わなければならないが,今回の知見から個人の脳卒中リスクを分類する1つの方法が明らかになり,新しい血液検査項目を追加することで患者のリスクがどのように変化するかが示された。2種類のバイオマーカーを追加すると,脳卒中の高リスク者の特定が容易になる。今後の研究では,リスクに基づいた治療選択肢の変更により虚血性脳血管障害の予防が改善されるか否かが解明されるだろう」と述べている。
 
■研究責任者でBCMアテローム動脈硬化・血管内科のChristie M. Ballantyne科長は「脳卒中リスク者が特定できれば,後には食事,運動,禁煙,降圧薬,脂質異常症治療薬が予防に役立つことを示す強力なエビデンスが控えている」とコメントしている。

出典 Medical Tribune 2009.3.19 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


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小倉遊亀 白い椿
http://www.oida-art.com/buy/detail/6647.html


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21〜 http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-04-02 00:19 | 脳血管

コーヒーと脳卒中リスク

前向きコホート研究であるNurses' Health Studyでの、コーヒーで脳卒中リスクが下がるという報告です。

#1日4杯以上のコーヒーで脳卒中リスクが低下?
#その効果は・・・健康人のみで発揮される
■女性では,レギュラーコーヒーの摂取量が多いほど脳卒中リスクが低下するとの研究結果がCirculation 2月16日オンライン版に掲載された。

■それによると,コーヒー摂取量が1日に4杯以上と多い女性では,月に1杯未満の女性に比べて脳卒中リスクが20%低下した。
また,1日に2~3杯の場合のリスク低下率は19%,1週間に5~7杯の場合には12%低下したという。

#4杯以上/日の非喫煙女性で脳卒中リスクが43%低下
■解析対象は,1980年のベースライン時に脳卒中,冠動脈疾患,糖尿病またはがんの既往を有さなかった女性8万3,076例。1980~2004年に,2~4年ごとに食事の摂取状況を質問票で記録した。

■24年に及ぶ追跡期間中の脳卒中発生数は2,280件であり,うち出血性が426件,虚血性が1,224件,630件は不明であった。

■患者背景を見ると,カフェイン含有コーヒーの消費量が多いほど喫煙する傾向があり,またアルコール摂取量とも強く関連していたという。

中略

■このコーヒー摂取によるリスク低下効果は非喫煙者で最も高かった。

中略

■さらに,高血圧や糖尿病,高コレステロール血症の場合にも,コーヒー摂取による効果は消失したという。

#カフェイン以外の抗酸化物質によるものか
■この効果がカフェインによるものかどうかは不明だ。
紅茶やカフェインを含有したソフトドリンクを摂取した対象者では,こうした脳卒中リスクの低下は認められなかった。
また,カフェイン抜きのコーヒーでも,カフェイン含有コーヒー摂取量を補正後にも脳卒中リスクの低下傾向が認められた。

■論文の著者らは「この結果から,カフェイン以外のコーヒー含有物が脳卒中リスク低下に寄与すると考えられる。コーヒーの抗酸化性質が炎症を抑制し,血管機能を改善する可能性が示唆された」と指摘。

■「長期間にわたるコーヒー摂取は脳卒中リスクの低下に有用なようだ」と結論付けている。

■ フィンランドの50~69歳の喫煙男性2万6,556例を対象に行われた前向き観察研究の結果(Stroke 2008; 39: 1681-1687)によると,1日8杯以上のコーヒーを摂取する喫煙男性では,摂取しない喫煙男性に比較して脳梗塞リスクが23%低下した。

■この効果は紅茶を1日2杯以上摂取した喫煙男性にも認められた。
喫煙男性では,コーヒーと紅茶による脳梗塞リスクの低下が示されていた。

Coffee and tea consumption and risk of stroke subtypes in male smokers.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18369170

■今回の結果によると,コーヒーのこうした脳卒中への有益性は,健康人のみで認められた。
コーヒーをより多く飲む人では喫煙率が高いことも影響しているのかもしれない。
身体が炎症状態にある場合には,コーヒーの付加的な効果は発揮されないのだろうか。
いずれにせよ,脳卒中の大きな危険因子である喫煙の有害性を相殺するほどの効果はないらしい。

出典  MT pro 2009.2.19
版権  メディカル・トリビューン社

<原著>
Coffee Consumption and Risk of Stroke in Women
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/CIRCULATIONAHA.108.826164v1?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Lopez-Garcia&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT
Published Online on February 16, 2009

<関連サイト>
#コーヒー,紅茶の多量摂取が喫煙男性の脳梗塞リスクを低下させる
■コーヒーあるいは紅茶の多量摂取が喫煙男性における脳梗塞のリスク低下と関係している可能性があると,北欧のグループがStrokeの6月号に発表した。

■コーヒーと紅茶には抗酸化作用があり,特にコーヒーはインスリン感受性を改善する可能性も示唆されている。


■同グループは,登録時に脳卒中の既往のない50~69歳のフィンランド人喫煙男性2万6,556人を1985~2004年で平均13.6年間追跡し,コーヒーおよび紅茶の摂取と脳卒中の病型別発症リスクを検討した。
 
■追跡期間中に2,702例に脳梗塞,383例に脳内出血,196例にくも膜下出血の発症が確認された。
年齢と心血管危険因子を調整した結果,コーヒーおよび紅茶の摂取量と脳梗塞の発症リスクとの間に有意な負の相関が認められた。
一方,脳内出血とくも膜下出血には有意な関連は見られなかった。

出典 Medical Tribune誌  2008.6.19
版権 メディカル・トリビューン社

<原著>
Larsson SC, et al. Stroke 2008; 39: 1681-1687.
Coffee and tea consumption and risk of stroke subtypes in male smokers.
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M41250645&year=2008&type=article


#コーヒー愛飲者で低い脳梗塞リスク(上記と同じ論文の紹介です)
■コーヒーや紅茶の摂取によるプラス面とマイナス面についてはこれまでにも多く取り上げられているが,カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のSusanna C. Larsson博士らは,これらの飲料が脳梗塞発症リスクを有意に低下させるとStroke(2008; 39: 1681-1687)に発表した。
なお,これら飲料の摂取は,くも膜下出血や脳出血のリスク低下はもたらさないとしている。

1日8杯以上のコーヒーで顕著
■Larsson博士らは,脳卒中の既往歴のない50~69歳のフィンランド人男性喫煙者2万6,556例を対象としたコホート研究であるα-トコフェロール・βカロチンがん予防研究を解析し,コーヒーおよび紅茶の摂取と脳卒中発生率との関係について検討した。
 
■追跡調査期間は1985年12月~2004年12月(平均13.6年)で,被験者のうち脳梗塞を発症したのは2,702例,脳内出血を発症したのは383例,くも膜下出血を発症したのは196例であった。
同博士らはこれらのなかで,特に脳梗塞の発生率にコーヒーや紅茶の摂取量が影響することを見出した。
 
■例えば,1日8杯以上のコーヒーを飲む男性の脳梗塞の調整相対リスクは,1日2杯以下のコーヒーしか飲まない男性に比べ0.77であった。
紅茶の場合もほぼ同等の相対リスクとなり,1日2杯以上の紅茶を飲む男性のリスクは,紅茶を全く飲まない男性に比べ0.79であった。

■同博士らは「今回の研究から,コーヒーと紅茶の多量摂取は男性において既知の心血管危険因子とは無関係に脳梗塞リスクを低下させる可能性があることがわかった」と結論している。
出典 Medical Tribunre誌  2008.6.12
版権 メディカル・トリビューン社
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by wellfrog3 | 2009-02-20 00:18 | 脳血管

t-PA療法普及の鍵

「t-PA静注療法(以下,t-PA療法)の恩恵を受ける患者を増やすには,わが国でも,脳卒中集中治療室(Stroke Unit;SU)を整備する必要があることを示す報告が,Strokeに掲載された(2009; 40: 30-34)」という記事で勉強しました。
このt-PA療法は4年前の2005年に承認されて以来、わずか3か月で,SUを有する全国24施設ではt-PA療法施行率が0.9%から5.2%に有意に増加し,脳梗塞急性期治療が大きく変貌したことがわかったということです。


t-PA療法普及の鍵を握る脳卒中集中治療室
承認後の脳卒中急性期治療を前向きに観察
■SUとは,脳卒中の急性期治療システムで,脳卒中治療に精通した医師,看護師,理学療法士などがチーム医療を行う。

■欧米ではSUが整備されたことで,発症後3時間以内に適応となるt-PA療法の施行率が増加し,脳卒中死亡率の減少,社会復帰率の向上などの効果が報告されている。

■なかでも,脳卒中治療施設の集約化を約10年かけて計画的に進めてきたカナダでは,SUに入院した脳梗塞患者でt-PA施行率30%を達成しているという。

■わが国の脳卒中治療ガイドライン(2004)でも,SUによる初期治療が強く推奨されているが,体制や運営についての明確な基準はない。

■今回の研究は,SUの有効性に関する多施設共同前向き研究であるSUMO(Stroke Unit Multicenter Observational)研究(主任研究者:国立循環器病センター内科脳血管部門・峰松一夫部長)の一環として同センター脳血管内科の上原敏志医長や佐藤祥一郎氏が中心となって実施した。
対象は,2004年12月〜05年12月の13か月間に,全国から公募した84の脳卒中治療施設(うち24施設がSUに相当すると自己申告)に入院した脳梗塞患者で,t-PA療法承認前後(前:2004年12月〜05年9月,後:2005年10〜12月)の急性期治療の変化について前向きに観察した。
 
その結果,発症72時間以内の脳梗塞患者4,620例が登録され,うち1,089例はt-PA療法承認後の登録であった。
患者の背景因子は,同療法承認前に比べて,承認後では高血圧が有意に多かったが,これは調査期間が10〜12月の寒冷期であったことが影響したと考えられるという。
性,年齢,脳梗塞発症から入院までの時間,NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale),病歴や脳卒中サブタイプには有意差がなかった。

短時間で非侵襲的な画像検査が有意に増加
■各種画像検査の頻度を見ると(図1),t-PA療法承認前に比べて,承認後には,短時間で非侵襲的に行えるMRI(P=0.003),MRアンギオグラフィー(MRA,P=0.001),頸部超音波(P=0.004)が有意に増加した一方,脳血管造影(P= 0.002),SPECT(P=0.012)が有意に低下。
こうした変化は,同療法時に発症3時間以内の迅速な適応判断が求められることを反映したものと見られる。
採血検査についても,同療法時に評価すべき血糖値(P=0.015),凝固系のプロトロンビン時間(P=0.034),D-ダイマー(P=0.003)の頻度が有意に増加していた。これらの検査法の変化は,SUで顕著であったが,非SUでも同様の傾向が見られた。
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SUでは施行率が0.9%から5.2%に
■t-PA療法承認前後の同療法の施行率は,全体では0.7%から2.6%に,SUでは0.9%から5.2%にそれぞれ有意に増加した(各P<0.001)が,非SUではほとんど同じであった(図2)。血栓溶解剤の動注療法は,SU,非SUのいずれでも減少傾向が見られた。

■日本脳卒中学会は,t-PA療法適正治療指針を2005年10月に公表し,同療法を実施する施設基準として,画像検査が24時間可能で,十分な人員と設備(SUまたはそれに準ずる)を有することなどを求めている。
この指針を受けたSUを有する施設では,承認後わずか3か月で同療法の導入が迅速に進んだことが今回の研究結果から確認された。

■一方,2007年の全国調査によると,承認後に同療法を受けた患者は脳梗塞患者の2%にとどまっている。
t-PA静注療法施行率や治療成績は,SUの整備状況によって地域格差 が拡大することは必至で,脳卒中対策の法制化に向けた検討も始まっている。

国立循環器病センター内科脳血管部門 峰松 一夫 部長のコメント
■t-PA療法承認直後の調査にもかかわらず, SUではt-PA療法実施率5%という高い施行率が得られ,その脳卒中急性期治療システムとしての有用性,必要性があらためて確認された。
■しかし,全国的な医師不足のなかで,脳卒中の急性期治療システムの質と効率を改善し,都市部だけでなく,地方にもSUを整備していくには多くの課題が残されている。
SUMO研究では,さまざまな診療体制を持つ施設の脳卒中診療の実態を調査し,効果的な診療手法について解析中だ。

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出典 Medical Tribune 2009.1.29
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog3 | 2009-02-12 00:29 | 脳血管

ラクナ梗塞とアテローム血栓の原因と鑑別

ラクナ梗塞とは、「単一の深部穿通枝の閉塞による脳梗塞」と定義されている。
「深部穿通枝」とは、
①中大脳動脈から分岐するレンズ核線条体動脈、
②前大脳動脈から分岐する内側線条体動脈、
③内頚動脈から分岐する前脈絡動脈、
④後大脳動脈から分岐する視床膝状体動脈、視床穿通動脈、
⑤脳底動脈から分岐する傍正中動脈、
などを指す。
 
ラクナ梗塞は、主に高血圧症や糖尿病を背景因子として、穿通動脈のlipohyalinosisやmicroatheromaによる閉塞によって発症する。
症候としては、pure motor hemiparesis(片麻痺のみ)、pure sensory stroke(半身感覚障害のみ)、ataxic hemiparesis(片麻痺+同側半身失調)、dysarthriaclumsy hand syndrome(構音障害+手の巧緻運動障害)、sensorimotor stroke(片麻癖+半身感覚障害)を呈する(ラクナ症候群)。
画像(CT、MRI)上は深部穿通枝領域に最大15mm未満の小梗塞を認める。
意識障害を伴うことはほとんどなく、皮質症候は原則として伴わない。

アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化性の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙)を背景として、頭蓋内外の主幹脳動脈の粥状硬化性病変によって生じる脳梗塞である。
したがって、冠動脈疾患や閉塞性動脈硬化症を合併することも少なからずある。
主幹脳動脈には、内頚動脈、中大脳動脈、前大脳動脈、椎骨動脈、脳底動脈、後大脳動脈が含まれる。
 
発症機序としては、
①血栓性、
②塞栓性、
③血行力学性
がある。

血栓性とは、粥状硬化性病変での粥腫内出血、粥腫破綻などによる狭窄または閉塞を来すもの、塞栓性とは、粥腫由来の遊離血栓による末梢動脈の閉塞を来すもの、血行力学性とは、主幹脳動脈の閉塞もしくは高度狭窄性病変の存在下に血圧低下や心拍出量低下などの血行力学的要因が加わった場合に発症する。
これらの発症機序が複合的に作用する場合もある。
 
症候としては意識障害を伴うことが多く、特に脳底動脈閉塞例の意識障害は高度である。
皮質症候(失行、失認、失語、半側空間無視など)を伴うことも多い。
画像(CT、MRI)上は、脳深部、境界域、皮質に病巣を生じ、大きさは小さいものから比較的大きなものまでさまざまである。
 
両者の鑑別は、神経症候(意識障害、皮質症候、ラクナ症候群の有無)、他の動脈硬化性疾患(虚血性心疾患など)合併の有無、画像(深部穿通枝領域に最大径15mm未満の小梗塞はラクナ梗塞)に加え、頚部血管エコーやMRA、脳血管撮影などの血管評価(主幹脳動脈病変の有無の確認)によって行う。

ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞の定義で区別し難い穿通枝系梗塞にbranch atheromatous disease(BAD)という概念がある。
これはCaplanにより提唱され、病理学的に定義された概念である。
すなわち、ラクナ梗塞が穿通枝自体の血管病変であるのに対し、BADでは主幹脳動脈の穿通枝入口部でのアテローム硬化性病変が原因となる。
複数の穿通枝が同時に起始部で閉塞することもある。
 
ラクナ症候群で発症しながら階段状の症候増悪を呈し、画像(CT、MRI)所見では、最大径15mm以上の穿通枝の支配領域に一致した細長い梗塞巣を認め、かつ穿通枝を分岐する主幹脳動脈に明らかな狭窄性病変を認めない場合、BADを疑う。
BADをラクナ梗塞と鑑別する意義は、病態がアテローム血栓性脳梗塞と似ており、症候悪化を生じる場合があり、アテローム血栓性脳梗塞に準じた治療、再発防止対策が必要なためである。

出典 日本医事新報 No.4278 2006.4.22
版権 日本医事新報社


<関連サイト>
BAD患者は代謝性因子の合併率高い
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=BAD++%E8%84%B3&perpage=0&order=0&page=0&id=M41110381&year=2008&type=allround
■BADは1989年にLouis R. Caplanが提唱した脳梗塞の新しい概念
■脳主幹部動脈のアテローム硬化性狭窄や閉塞によるものがアテローム血栓性脳梗塞,単一の穿通枝の閉塞によるものがラクナ梗塞であり,BADはこの中間に位置するものとされているが,現在のところ,穿通枝の閉塞部位を直接診断することは困難であるため,画像所見の特徴からBADを診断せざるをえない
■画像所見上,古典的なラクナ梗塞は穿通枝末梢部の閉塞を示すが,BADでは穿通枝起始部が閉塞しており,穿通枝レベルのアテローム血栓性脳梗塞が認められるという特徴がある
■BAD症例における危険因子保有率は,従来のラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞と比べて,代謝性因子の関与が強い傾向を示した」と結論したうえで,「代謝性因子が多いと病態が進行しやすいが,そうした急性期の患者に抗血小板薬を投与する際には,オザグレルナトリウムよりも抗凝固作用もあるアルガトロバンで治療するほうが進行する例が少ないことを臨床上経験している」と付言した



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)
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by wellfrog3 | 2009-01-02 00:58 | 脳血管