<   2009年 02月 ( 28 )   > この月の画像一覧

食事療法で乳がん再発予防

食事療法で乳がん再発予防の可能性
カリフォルニア大学デービス校(カリフォルニア州デービス)のEllen B. Gold教授らは,閉経後に顔面紅潮(ほてり)のない女性では乳がん再発予防に食事療法が有効である可能性があるとJournal of Clinical Oncology(2008; 3: 352-359)に発表した。

食事でエストロゲン上昇を抑制
ほてりは閉経後の女性で特有に認められるが,顔面紅潮の症状が出ない女性ではエストロゲン値が高いことは既に知られている。
また,ほてりのない早期乳がん歴のある患者では,ほてりのある患者と比べ再発率が高く,生存率が低いとの報告もある。
 
Gold教授らは,今回の「女性の健康的な生活と食事に関する研究(Women's Healthy Living and Eating study)」で,乳がん歴のある2,967例を対象に,食事療法群と,より管理の緩やかな食事摂取群(対照群)にランダム化割り付けした。
食事療法群では,果物,野菜,食物繊維を豊富に含み,低脂肪の食事を摂取させた。
 
その結果,ほてりのない女性での比較では,がんの種類および抗エストロゲン療法で調整後も,食事療法群における乳がんの再発率は対照群に比べて31%低かった。
また,ほてりのない女性に比べてほてりのある女性では有意に再発率が低かった。
 
この結果を踏まえ,同教授は「ほてりのない乳がん歴のある女性には,今回の研究で実施された食事療法が有用である可能性がある。
今回の結果を追認するため,さらに試験を行う必要がある」と結論付けている。

出典 Medical Tribune 2009.2.12
版権 メディカル・トリビューン社


<自遊時間 その1>
諸外国の研究では、こういったきわめて臨床的、すなわち日常臨床に役立つ内容のわかりやすい報告が散見されます。
衒学的な研究よりはるかに好感が持てます。

先生方のお手元にはすでにJSH2009が届いていると思いますが、内容が冗長でよく理解できません。
要するにどうなんだと言いたくなります。
「まとめ」的なものを是非つけて欲しいものです。

私の学生時代を振り返ってみると、日本語の医学書は今ほどには充実していませんでした。
日本語の内科学書もあったのですが、文献の引用が多く、ああでもないこうでもないといった内容でした。

安直本主体で勉強し、内容が明瞭な「ハリソン」や「セシル」の教科書(当時は訳本なし)で肉付けしました。
かえって効率的に内科の勉強が出来たのを覚えています。


<自遊時間 その2>
週間朝日2009.3.6に、短期集中連載「白州次郎」と免疫学者・多田富雄「昭和からの遺言」が掲載されています。
たまたま両方の記事に「プリンシプル」という言葉が出ていました。

前者では「自分の確固たる生き方の美学(プリンシプル)があるからこそ周囲の事情で考えがブレない」、後者では「石坂公成先生は、・・・リベラルアーツの理解があり、無欲恬淡で・・・常にプリンシプルに忠実で、しっかりした人間の形を持ち続ける、昭和の知識人の典型」といった使い回しがされています。

さて、多田富雄先生は自分が脳梗塞で倒れた経験も踏まえ、まさに白鳥の歌ともいうべき思いのたけを述べておられます。

以下に引用させていただきます。

市民は働いて適正な賃金を得る。
家業も、そんなものを守れば暮らしていける。
節約して暮らせば、普通に生きてゆけた。
時々は、家族でうなぎも食べられた。
実質経済が、庶民の生活を潤していたのです。

金融経済が実態経済を凌駕し、バーチャルな経済が広まったら、健康な中流が影が薄くなった。
貧困層ととてつもない富裕層の格差社会になってしまったのです。
それは、金銭だけの問題ではなくなり、心まで荒廃させてしまい、助け合いの精神などなくなった。
希望のない貧しい人と、経済至上主義者をつくり出しました。
昭和の世界では、両者とも「普通」じゃない、不健全な市民だったのです。

中流の条件は、平成になってからみんな崩壊しています。
まず「正業」としての職業としての職業が危うくなっています。
どの正業も破壊されてしまった。
農業も、酪農も、漁師も、町の商店も、みんな崩壊しているじゃないですか。
派遣社員とかフリーターなんて健康な正業とはいえない。政治が間違っているからです。

家族の形態も崩壊している。
3世代同居だったら、今の家庭問題の大半ほ起こらなかったでしょう。
介護も自宅でできる。
今の家族形態で育てられる子供たちは本当に心配です。
生きるための規範を学ぶ機会がない。
当たり前のことを知らずに育ったら、異常なことを平気でするでしょう。

まず、「普通」という規範がなくなった。
「当たり前」のことが通用しなくなった。
要するに小林秀雄の言った「常なるもの」を失ったのです。

<コメント>
この「常なるもの」が「プリンシプル」であると合点がいきました。



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by wellfrog3 | 2009-02-28 00:06

進行癌に対する抗癌薬の追加併用

進行癌(がん)に対する抗癌薬の追加併用で状態が悪化

進行した結腸直腸(大腸)癌(がん)患者に対する標準的な3剤併用治療に、4種類目の抗癌薬をさらに追加すると、状態が悪化することがオランダの研究で明らかにされ、米医学誌「New England Journal of Medicine」2月5日号に掲載された。

■今回の研究は、直腸結腸癌が身体の他の部位にまで拡大した(転移)患者755人を対象としたもの。
ベバシズマブ(商品名:アバスチン)、オキサリプラチン(Eloxatin、日本での商品名:エルプラット)、カペシタビン(ゼローダ)の標準的な3剤併用治療にセツキシマブ(アービタックス)を追加すると有益な効果が得られることが、動物実験のほか2件の小規模ヒト試験で認められたことから実施された。
それぞれの薬剤は作用が異なり、カペシタビンとオキサリプラチンは癌細胞を直接死滅させるのに対し、ベバシズマブには細胞分裂を促進する血管内皮増殖因子を阻害する作用がある。


■試験の結果、4剤併用治療を受けた患者の平均生存期間は9.4カ月であったのに対して、3剤治療群の生存期間は10.7カ月であった。
また、4剤治療群では薬物有害反応(ADR)が高頻度でみられた。
このような結果が出た理由は不明だが、「抗体間に生じる未知の攻撃性によると考えられる」と、報告を行ったオランダ、ラドバウドRadboud大学ナイメーヘンNijmegenメディカルセンター教授のCornelis J.A. Punt博士は述べている。
動物実験で副作用が少なかったことも手がかりになり、実験動物で毒性が少ないということは、生物学的効果も少ないのだという。


■この知見から得られる教訓は、癌だけでなく、エイズ、結核など他の疾患の新しい治療にも当てはまると、米ハーバード大学(ボストン)医学部教授のRobert J. Mayer博士はいう。
作用の異なる薬剤を追加することは有益であるとの考えが定着しているが、細胞の構成成分間に混乱を生じる可能性もあり、副作用の重複がなくても総合的な作用が必ずしも有益であるとは限らないと同氏は指摘している。

■生きた細胞は複雑な機械のようなものであり、癌治療に新たな薬剤を追加する場合、何が起こるかを予測するのは不可能であるという。
「大規模な、多額の費用をかけた臨床試験を行う必要がある。簡単に実施できることではないが、これらの薬剤が利益をもたらすはずだという熱意と期待を持っている」とMayer氏は述べている。

HealthDayNews 2009.2.4
Care.Net.com 2009.2.13
(株)ケアネット


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トレンツ・リャド   ジヴェルニーの睡蓮
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v89387179#enlargeimg

<きょうの一曲>
雨(日本語)- La Pioggia ( japanese version )
http://www.youtube.com/watch?v=H3GfQuXgawA&feature=related

<中川前財務相>チャーター機4100万円 直後に民間便 
■「もうろう会見」で引責辞任した中川昭一前財務・金融担当相が先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)出席のためローマに出張した際、民間のチャーター機を使用し、その料金が4100万円だったことが26日分かった。
 
■財務省によるとローマには中川氏を含め20人が赴き、総費用は6000万円。
チャーター機以外は、定期便を利用した職員の飛行機代と20人分の宿泊費1300万円など。
11人を派遣した日銀は総額1300万円で、うち飛行機代は900万円だった。

■チャーター機の定員は8人。
中川氏のほか警護官、政務秘書官、財務省職員3人の計6人が搭乗した。

■中川氏が成田空港から出発した時刻(13日正午)の2時間後に、イタリア航空会社のローマ直行便があった。
ローマへの料金は最も高いビジネスクラスで往復約94万円。

■財務相のチャーター機使用は03年3月の参院財政金融委でも問題にされ、当時の塩川正十郎財務相は「私はもう使いません」と答弁した。
しかし財務省によると、塩川氏交代後の04、06、07年にG7出席のため、3000万~4300万円かけチャーター機を使用していた。
http://www.excite.co.jp/News/politics/20090226/20090227M10.090.html


<ある日の講演会の走り書きメモ>
食後高血糖フォーラム その①
(セイブル錠 インスリン併用効能追加記念講演会)

■血糖AUC変動量の概念
■αGIの胃腸症状は1週間で慣れる(?)場合がある。
したがって、少量から漸増すれば服用可能な場合が多い。
■糖尿病治療の目的は
1 合併症予防
2 耐糖能悪化の防止
の2つ。
このためには「食後高血糖」の防止が重要。
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by wellfrog3 | 2009-02-27 00:10 | その他

壮年期心筋梗塞患者におけるクロピドグレル

壮年期心筋梗塞患者におけるクロピドグレル治療の予後決定因子が明らかに
心筋梗塞発症後にクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療を受けている壮年患者のうち、CYP2C19*2遺伝子に変異が見られる場合は予後不良であることが、フランス・パリ第6大学Pitie-Salpetriere病院のJean-Philippe Collet氏らの検討で明らかとなった。
クロピドグレルと低用量アスピリンの併用は、急性冠症候群(ACS)やステント留置術後の虚血性イベントの再発予防において、経口抗血小板療法の中心となっている。
しかし、クロピドグレルが無効な症例も多く、その原因の究明が進められている。
Lancet誌2009年1月24日号(オンライン版2008年12月23日号)掲載の報告。


個人差の原因遺伝子に着目
■クロピドグレルの抗血小板作用には大きな個人差があるが、その重要な寄与因子としてチトクロームP450 2C19(CYP2C19)に高頻度に見られる機能的な遺伝的変異である681 G>A(*2)が注目されている。
研究グループは、CYP2C19*2遺伝子多型がクロピドグレルの長期投与を受けている患者の予後に及ぼす影響について検討した。

■1996年4月1日~2008年4月1日までに、心筋梗塞の初回発症後に少なくとも1ヵ月のクロピドグレル治療を受けた45歳未満の患者259例が多施設レジストリーに登録され、CYP2C19*2遺伝子検査を受けた。

■1次評価項目は、クロピドグレル投与中の死亡、心筋梗塞、緊急冠動脈血行再建術の複合エンドポイントとした。
フォローアップは6ヵ月ごとに実施した。血管造影画像上で確認されたステント血栓を主要な2次評価項目とした。


複合エンドポイント、ステント血栓とも、変異陽性例で有意に多い
■クロピドグレル治療の期間(中央値)は1.07年であった。CYP2C19*2遺伝子変異が陽性の例(ヘテロ接合体*1/*2:64例、ホモ接合体*2/*2:9例)と陰性例(186例)でベースライン時の患者背景に差は見られなかった。

■1次評価項目の発現は、CYP2C19*2遺伝子変異陰性例の11イベントに対し、陽性例は15イベントと有意に多かった。
ステント血栓も、陰性例の4イベントに対し陽性例は8イベントと有意に多く発現した。

■CYP2C19*2遺伝子の変異による有害な作用は、クロピドグレル治療開始後6ヵ月からフォローアップ終了時まで持続した。
多変量解析では、CYP2C19*2遺伝子変異は唯一の心血管イベントの独立予測因子であった。

■著者は、「CYP2C19*2遺伝子変異は、心筋梗塞後にクロピドグレル治療を受けている壮年期の患者における主要な予後決定因子であり、陽性例の予後は不良である」と結論し、「CYP2C19*2遺伝子型に関する予後情報が患者管理にも使用可能かという問題についてはさらなる検討を要する。これらの知見は、高齢者やヨーロッパ人以外の患者に外挿する前に、その再現性を確認すべきである」と指摘している。

Collet JP et al. Cytochrome P450 2C19 polymorphism in young patients treated with clopidogrel after myocardial infarction: a cohort study. Lancet. 2009 Jan 24; 373(9660): 309-17. Epub 2008 Dec 23.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19108880?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

Care Net.com 2009.2.5
(株)ケアネット
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=7374


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荻須高徳 ジャルダン街 25号
http://www.art-information.ne.jp/youga/takanori_ogisu/

<きょうの一曲>
60分でマイルスデイビスしったかになる方法
http://video.google.co.jp/videoplay?docid=-5643623681184321405&ei=6sSjSefVJIqSwgPs6rDCDw&q=シナトラ&hl=ja

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by wellfrog3 | 2009-02-26 00:21

後発薬品


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日経新聞


後発薬の「お願いカード」配布 厚労省、使用促進へ
厚生労働省は20日までに、患者が病院窓口や薬局で提示して後発医薬品(ジェネリック医薬品)の処方を希望できる「お願いカード」を、中小企業の従業員らが対象の協会けんぽや後期高齢者医療制度の加入者に配布する方針を決めた。

2007年度の国民医療費は約33兆4000億円。新薬と有効成分が同じで安価な後発薬の使用を促進し、国民医療費の2割を占める薬剤費を抑制する狙い。
患者の負担も軽減される。先行して実施している一部の健康保険組合で効果を上げているのに目を付けた。

厚労省は、09年度予算案に後発薬使用推進費を前年度比4倍増の約9億2000万円を盛り込んだ。
このうち、約6億1000万円をカード配布する費用の補助に充てる。市町村が運営する国民健康保険がカードを配布する場合は別途補助する方針。
公務員などの共済組合にも協力を求めた。

後発薬の普及率は17%(06年度、数量ベース)にとどまり、12年度までに30%以上に引き上げる国の目標達成は厳しい状況。
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009012001000566.html



後発医薬品:「常に説明」薬剤師の7人に1人 情報不足で
調剤薬局を訪れた患者が、先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック)のどちらも選べる処方せんを持参した場合、後発品について常に患者に説明する薬剤師は7人に1人程度に過ぎないことが、後発品メーカー「沢井製薬」(大阪市)の調査で分かった。
後発品の情報提供体制などに不満な薬剤師が多いことが背景にあるとみられる。

厚生労働省は安価な後発品の使用を進めるため、薬剤師に対し、こうした場合は常に後発品の存在を説明するよう省令で義務づけているが、実際は説明が進んでいない現状が浮かんだ。

同社は08年10月、全国の薬剤師300人にインターネットを通じてアンケートした。
その結果、国の求める「常に説明」は14.3%(複数回答可)にとどまった。
最も多かったのは「患者からたずねられれば」説明するとの回答で約51%。ほかに「患者の負担金が大きく減る場合」の説明が約17%、「時間に余裕のある時」が約13%。「説明していない」は約22%だった。

一方で薬剤師に対し、後発品に関する製薬会社からの情報提供体制に満足しているかを聞くと、「満足」の約32%に対し「不満足」は約39%に達した。

同社が同じ時期に全国の患者400人に行った別の調査でも、「後発品について説明を受けた」との回答は約15%だった。

厚労省は、現状約17%の後発品の数量シェアを12年度までに30%以上に高め、医療費を約4300億円減らす目標を掲げている。しかし、今回の調査で薬剤師が患者に後発品を渡した割合は、処方せん全体の約11%だった。

▽内田享弘(たかひろ)・武庫川女子大薬学部教授(臨床製剤学)の話 
薬剤師は時間的余裕がない上に、後発品メーカーの数が多いため、何を基準に薬を選んで薦めたらいいのか分からず、患者に説明ができないのではないか。
国が後発品使用を促進したいなら、もっと積極的に後発品を評価したり、安全性をアピールするなどして責任を果たすべきだ。後発品メーカーも具体的なデータを提示して信頼獲得に努めてほしい。


 
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090130k0000m040015000c.html


<きょうの一曲>
小田和正 −たしかなこと −
http://www.youtube.com/watch?v=I-yHDph56Rk&hl=ja
オフコース小田 小田和正 ものまね
http://www.youtube.com/watch?v=caZaGikdGAQ&feature=related

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by wellfrog3 | 2009-02-25 00:09 | その他

高齢心不全患者へのNt-BNP

高齢心不全患者へのNt-BNPを指標にした集中治療のアウトカムは?

高齢の心不全患者に対し、N末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(Nt-BNP)値を指標にした集中治療を行っても、症状による治療を行った場合と、アウトカムは同等であることがわかった。
これまでに、Nt-BNP値による治療がアウトカムを改善することを示す研究結果があるものの、そうした研究は小規模で、若い患者を対象にしていた。
スイスBasel病院のMatthias Pfisterer氏らが、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。


うっ血性心不全の約500人を18ヵ月追跡
■60歳以上のうっ血性心不全の患者499人を、無作為に2群に分け、一方にはNt-BNPを指標にした集中治療を、もう一方には症状に基づく治療を行った。
被験者は、収縮期低下による心不全(心駆出率45%以下)で、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類Ⅱ以上、1年以内に心不全による入院があり、Nt-BNP値が正常上限の2倍以上だった。試験は2003~08年にかけてスイスとドイツの外来医療機関15ヵ所で行われ、追跡期間は18ヵ月だった。

無入院の生存率、QOLともに両群に有意差なし
■無入院の生存率は、Nt-BNP群と対照群とでは同等だった(41%対40%、ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.72~1.14、p=0.39)。
被験者の生活の質(QOL)は追跡期間中に改善したが、両群に差は見られなかった。

■2次エンドポイントである、心不全による入院のない生存率は、Nt-BNP群で72%と、対照群の62%に比べて有意に高率だった(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.50~0.92、p=0.01)。

■年齢別で見てみると、60~75歳では、Nt-BNP群の方が対照群よりアウトカムが改善していたが、75歳以上では同改善が見られなかった。


Pfisterer M et al. BNP-guided vs symptom-guided heart failure therapy: the Trial of Intensified vs Standard Medical Therapy in Elderly Patients With Congestive Heart Failure (TIME-CHF) randomized trial. JAMA. 2009 Jan 28;301(4):383-92.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19176440?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

出典 Care Net.com 2009.2.10
版権 (株)ケアネット

<関連サイト>
BACH 2題
http://blog.m3.com/reed/20081219

NT-BNP in Stable Coronary Artery Disease
http://www.touchcardiology.com/articles/nt-bnp-stable-coronary-artery-disease

高齢者に対する集中治療は有益でない
http://www.doljapan.com/special/esc/2008/html/09.html
■TIME-CHF:Trial of Intensified (BNP-guided) versus standard(symptom-guided)Medical therapy in Elderly patients with Congestive Heart Failure(うっ血性心不全の高齢患者に対する集中治療[BNPを指標にする]対標準[症状を指標にする])スタディにおいて、心不全の管理に症状のみでなくナトリウム利尿ペプチドレベルを使用しても死亡およびあらゆる原因による入院を減少させることができなかった、と2008年European Society of Cardiology学会で発表された。
■しかし、結果は年代により有意に異なった。
収縮能低下による心不全(駆出率≤45%)の患者499人をN末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(NT-BNP)を指標にする群または症状を指標にする群に無作為に割り付け、75歳以上対60~74歳の群に層別化した。
■標準的な治療と比較しNT-BNPを指標とした集中治療は、一次エンドポイントである無入院生存期間を改善しなかったが、より疾患特異的なエンドポイントである心不全による入院のない生存期間は改善した。
■若年群においてNT-BNPを指標とした集中治療により全死亡率は低下し心不全による入院のない生存期間は改善したが、75歳以上の群においてはこれらの変化は認められなかった。
■これらの結果から、若年患者の結果に基づいた一般的な勧告は後期高齢患者には必ずしも直接当てはめることはできない可能性のあることが示唆された。

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by wellfrog3 | 2009-02-24 00:13 | 循環器科

線維筋痛症候群と抗うつ薬

抗うつ薬は線維筋痛症候群の症状改善に有効

抗うつ薬が線維筋痛症候群(FMS)の痛みや全身倦怠感,抑うつなどの改善に有効であるとするメタ解析結果が,ドイツのグループによりJAMAの1月14日号に発表された。
 
■FMSは全身の激しい痛みのほか,全身倦怠感や不眠などを伴う疾患である。
同グループは,FMSに対する抗うつ薬の有効性を検討するためメタ解析を行った。
対象は,2008年8月までに報告された三環系および四環系抗うつ薬(TCA),選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)とプラセボとのランダム化比較試験(RCT)。

■有効性の評価には,ランダム効果モデルの標準化平均差(SMD)を用いた。
 メタ解析には18件のRCT(患者数計1,427例,観察期間の中央値8週間)が含まれた。解析の結果,抗うつ薬と症状改善との間に強い関連が認められ,SMDは痛みが-0.43,全身倦怠感が-0.13,抑うつ気分が-0.26,睡眠障害が-0.32であった。抗うつ薬は健康関連QOLの改善とも強く関係していた(SMD -0.31)。

■ 痛みの軽減効果はTCAが最も高く(SMD -1.64),MAOIは中等度(-0.54),SSRI(-0.39)とSNRI(-0.36)は小さかった。
Häuser W, et al. JAMA 2009; 301: 198-209.

出典 Medical Tribune 2008.1.29
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
線維筋痛症
http://ja.wikipedia.org/wiki/線維筋痛症
■原因は不明であり、通常の血液検査では異常が現れない。
この病気が診断できる特別な検査は今の所なく、治療法も確立されていない。
■日本では人口の約1.7%、200万人以上と非常に多くの潜在患者が存在するにもかかわらず、的確な診断や治療が困難であるのが実状である。
■男性より女性が7倍と多く、中高年に発生率が高いと言われている。
しばしば膠原病などの自己免疫疾患と併発する。
■日本では人口の約1.7%、200万人以上と非常に多くの潜在患者が存在するにもかかわらず、的確な診断や治療が困難であるのが実状である。
■抗不安薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンズアミド系、ベンゾジアゼピン系)や三環系抗うつ薬トリプタノールなどが古くから有効とされている。
デパス・コンスタンなど補助的に使う場合が多い。
▪SSRI・SNRI(フルボキサミン、パロキセチン、ミルナシプラン、ヴェンラファキシンなど)による治療の報告も増えている。
神経や精神状態の改善が症状を改善させるという臨床例が多く認められている。
■ノイロトロピンという特殊な作用機序を持つ下行性疼痛抑制系賦活型疼痛治療剤が長期間慢性的につづく疼痛に対しては有効とされている。

厚労省研究班が概要を公表
日本初の「線維筋痛症 診療マニュアル」登場へ
春には正式版、2012年にはガイドライン化も
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200902/509475.html
■現在も適応外で線維筋痛症治療にしばしば使用されているワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名:ノイロトロピンほか)のほか、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)やガバペンチン(商品名:ガバペン)といった抗けいれん薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬が挙がっている。
それぞれ単独でも有効だが、これらを併用するケースも多い。

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by wellfrog3 | 2009-02-23 00:31 | その他

インスリンがアルツハイマー病を防ぐ

糖尿病とアルツハイマー病の関連については、以前からもいわれています。


糖尿病がアルツハイマー病の前駆症状を招く可能性
ttp://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=197

糖尿病だとアルツハイマー発症4.6倍
http://plaza.rakuten.co.jp/gnetoffice/diary/200709030000/

中年期での糖尿病発症はアルツハイマー病のリスクを高める
http://www.dm-net.co.jp/healthdayjapan/2008/04/09.html

糖尿病からアルツハイマー病!
http://iron.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_1465.html

糖尿病の人々はアルツハイマー病へ通じる記憶力の低下の危険性が高い
http://www.rda.co.jp/topics/topics2642.html

きょうの論文は、インスリンとインスリン抵抗性改善薬がアルツハイマー病の記憶力低下を遅らせたり、予防する効果があるという内容です。




インスリンによって、アルツハイマー病による記憶力低下を遅らせたり、予防したりできる可能性のあることが、米ノースウエスタン大学(イリノイ州)のチームが率いる研究で明らかにされた。

■著者の1人で、同大学認知神経学アルツハイマー病センターのWilliam L. Klein氏は「インスリン感受性は加齢とともに低下し、このことがアルツハイマー病の新たな危険因子(リスクファクター)となる。
今回の結果から、インスリンシグナル伝達を高めればニューロンの損傷を保護できることが示された」と述べている。

■この知見は、アルツハイマー病を糖尿病の一種とする考え方に最新のエビデンス(科学的根拠)を補強するもので、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」オンライン版に2月2日掲載された。

■今回の研究では、インスリンおよびrosiglitazoneロシグリタゾン(商品名:Avandia、日本国内では未承認、2型糖尿病治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬)が、脳の重要な記憶中枢である海馬から採取したニューロンを、アミロイドβ由来拡散性リガンド(ADDL)から保護することが明らかにされた。
ADDLは、記憶を形成するシナプスを攻撃、阻害し、記憶低下を引き起こすことで知られる蛋白(たんぱく)で、アルツハイマー病に関与していることがわかっている。

■「糖尿病治療薬がシナプスをADDLから保護するという今回の発見は、アルツハイマー病による記憶障害の治療に新たな期待をもたらすものだ」と、筆頭著者のブラジル、リオデジャネイロ連邦大学准教授(ノースウェスタン大学客員教授)のFernanda G. De Felice氏は述べている。
同研究グループは、最近の関連研究で、ADDLが結合したニューロンのインスリン受容体を取り去ることによりインスリン抵抗性を引き起こすことを突き止めている。

Health Day News 2009.2.3

Care Net.com 2009.2.13
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=7463


<ロシグリタゾン 関連サイト>
心筋梗塞のリスクと心血管死亡に対するロシグリタゾンの影響
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/356/356jun/xf356-24-2457.htm

「アルツハイマー病治療薬ロシグリタゾンについて」
http://www.drugsinfo.jp/2008/03/04-234015

ロシグリタゾンの黒枠警告に心筋虚血リスク追加
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200711/504845.html

高齢の糖尿病患者へのロシグリタゾン投与は心疾患リスクを高める
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/jama/200801/505305.html


<インスリン 関連サイト>
糖尿病者はアルツハイマーに?
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20040322A/

神経変性は「脳の糖尿病」 インスリン異常がアルツハイマー病などに関連しているらしい
http://www.asyura2.com/08/health14/msg/152.html

糖尿病薬がアルツハイマー病にも効果!?
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20070509A/

<番外編>
中年期のコーヒー摂取が認知症やADの発症に予防的に作用
中年期のコーヒー摂取がその後の認知症やアルツハイマー病(AD)の発症に予防的に作用する可能性があることを示すデータが,フィンランドのグループによりJournal of Alzheimer's Disease の1月号に発表された。
 
■カフェインには中枢神経系への刺激作用があるが,認知機能に対するカフェインの長期的な影響は明らかではない。
同グループは,中年期のコーヒー,紅茶の摂取と老年期の認知症,ADのリスクとの関係を検討した。
 
■この研究の参加者は,中年者を対象に1970年代と80年代に行われた2件のコホート調査の生存者からランダムに選択された。平均21年間の追跡後,65〜79歳の1,409例が1998年に再検査を終了した。
 
■61例に認知症が確認された(うち48例がAD)。人口統計学的因子,生活様式,血管因子,アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子,抑うつ症状を調整後,中年期にコーヒーを摂取していた群はコーヒーを全く飲まないか,ごくたまにしか飲まない群と比べ,老年期の認知症とADの発症リスクが低かった。
コーヒーを1日に3〜5杯飲む群で,最大のリスク低下(65%の低下)が認められた。
 
■紅茶の摂取は少なく,認知症やADとの関係は見られなかった。
<原著>
Eskelinen MH, et al. J Alzheimer's Dis 2009; 16: 85-91.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19158424
出典 Medical Tribune2009.2.19
版権 メディカル・トリビューン社

他にもブログがあります。
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by wellfrog3 | 2009-02-22 00:05 | 認知症

閉経後女性の骨粗鬆症性骨折予防ガイドライン

NICE/閉経後女性の骨粗鬆症性骨折予防ガイドラインを発表
■英国立臨床評価研究所(NICE)は,閉経後女性の骨粗鬆症性骨折の予防における薬剤使用に関するガイドラインの最終版を発表した。
同ガイドラインの内容は,骨折経験のない閉経後女性の一次予防と,骨折既往のある閉経後女性の二次予防における薬剤使用の2部で構成されている。

一次・二次予防別に推奨をまとめる
■骨粗鬆症は骨組織が劣化する疾患で,骨強度が低下し骨折リスクが高まる。一般的に加齢に伴い男女双方とも発症リスクが増大するが,女性のほうが閉経後に骨減少が加速するためにリスクは高い。
 
■今回発表されたガイドラインの最終版では,閉経後女性を対象とした一次予防と二次予防におけるさまざまな選択肢を推奨しており,第一選択薬の禁忌・非忍容例に対しても特別な臨床的基準に基づき別の予防法を提案している。
 
■NICE臨床・公衆衛生部門長で今回のガイドライン策定の筆頭研究者であるPeter Littlejohns教授は「これら2部から成る新しいガイドラインは,骨粗鬆症性骨折の一次予防と二次予防のそれぞれに役立つ最も費用効果の高い方法に対して,閉経後女性が確実にアクセスできるようにするものである。

■骨粗鬆症性一次骨折の予防薬が全国的なガイドラインにより推奨されるのは今回が初めてで,高リスク女性にとっては朗報である。

■二次予防に関するガイドラインでは,アレンドロン酸の適応拡大を推奨しており,年齢を問わず骨粗鬆症が確認された閉経後女性すべてを対象としている。
また,同薬を服用できない女性に対しては有効な代替療法も推奨している」と述べている。
 
■さらに「ガイドライン策定の過程で,医療専門家や骨粗鬆症性骨折リスクの高い人,その家族,治療提供者との協議で得られた意見も取り入れた。
こうして得られたフィードバックは貴重で,ガイドライン策定に役立つ情報を提供するものである。
完成したガイドラインは骨粗鬆症性骨折リスクの高い女性に恩恵をもたらすものとなるであろう」と指摘している。

<一次予防ガイドライン>
■一次予防ガイドラインでは,骨折の独立した臨床的危険因子1つまたは骨密度(BMD)低下の指標1つを有し,骨粗鬆症と診断された70歳以上の女性における骨粗鬆症性骨脆弱化による骨折の一次予防薬としてアレンドロン酸を推奨している。
 
■2つ以上の危険因子を有するか,BMD低値の75歳以上の女性における二重エネルギーX線吸収法(DXA)撮影は,担当医が臨床的に適切でないか実施不能と判断した場合には必要ない。
 
■骨粗鬆症と診断された70歳未満の閉経後女性に対しては,
(1)65~69歳で独立した臨床的骨折危険因子が1つ以上ある場合
(2)65歳未満で独立した臨床的骨折危険因子1つに加えてBMD低値の指標を1つ以上有する場合
には一次予防薬としてアレンドロン酸を推奨している。
 
■アレンドロン酸禁忌・非忍容の女性,特別な服薬指示を遵守できない女性に対しては,年齢,T-スコア,独立した臨床的骨折危険因子数の組み合わせに基づき,リセドロン酸かエチドロン酸を代替薬として推奨している。
 
■アレンドロン酸,リセドロン酸,エチドロン酸のいずれも禁忌・非忍容の女性,特別な服薬指示を遵守できない女性に対しては,年齢,T-スコア,独立した臨床的骨折危険因子数の所定の組み合わせに基づきstrontium ranelateを代替薬として推奨している。

<二次予防ガイドライン>
■骨粗鬆症性骨脆弱化による骨折の二次予防に関するガイドラインでは,すべての閉経後骨粗鬆症女性に対してアレンドロン酸を推奨している。

■75歳以上の女性に対するDXA撮影は,医師が臨床的に不適切と判断した場合には必要ない。

■一次予防の場合と同様の理由でアレンドロン酸を服用できない女性に対しては,年齢,T-スコア,独立した臨床的骨折危険因子数の所定の組み合わせに基づき,リセドロン酸かエチドロン酸を推奨している。

■一次予防の場合と同様の理由でアレンドロン酸,リセドロン酸,エチドロン酸のいずれも服用できない女性に対しては,年齢,T-スコア,独立した臨床的骨折危険因子数の所定の組み合わせに基づき,strontium ranelateかラロキシフェンが推奨される。
 
■一次予防の場合と同様の理由で上記薬剤のいずれも適用できない女性,アレンドロン酸,リセドロン酸,エチドロン酸による治療で満足のいく結果が得られなかった女性に対しては,年齢,T-スコア,独立した臨床的骨折危険因子数の所定の組み合わせに基づき,テリパラチドが代替薬として推奨される。
 
■現在ガイドライン記載の薬剤の1つを使用して,既に一次予防または二次予防を行っているが,今回の両ガイドラインで治療が推奨されていない場合は,患者本人または担当医が治療を中止するのが適切と判断するまで継続してもよいとしている。

出典 Medical Tribune 2009.2.12
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>
経後女性における骨粗鬆症性骨折の一次および二次予防のためのアレンドロネート
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0046/4/0046_G0000144_T0002092.html
http://mrw.interscience.wiley.com/cochrane/clsysrev/articles/CD001155/frame.html(英語版)
1日10 mgで、二次予防については脊椎、非脊椎、大腿骨近位部、手首関節骨折に臨床的に重要で、また統計学的にも有意な減少が認められた。
一次予防については、脊椎骨折に臨床的に重要な減少を除いて、統計学的に有意な結果は得られなかった。

アレンドロネート長期使用が大腿骨骨折に関与?
http://wellfrog.exblog.jp/8764738/

<自遊時間>
新着の日本医事新報 No.4426 2009.2.21で
「ブルーチーズケーキ」が紹介されていました。
みらべる-topics テレビで紹介されました 米今フクの自信作
http://www17.ocn.ne.jp/~yoneima/index.htm
http://www17.ocn.ne.jp/~yoneima/tv_topics.htm


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by wellfrog3 | 2009-02-21 00:20

コーヒーと脳卒中リスク

前向きコホート研究であるNurses' Health Studyでの、コーヒーで脳卒中リスクが下がるという報告です。

#1日4杯以上のコーヒーで脳卒中リスクが低下?
#その効果は・・・健康人のみで発揮される
■女性では,レギュラーコーヒーの摂取量が多いほど脳卒中リスクが低下するとの研究結果がCirculation 2月16日オンライン版に掲載された。

■それによると,コーヒー摂取量が1日に4杯以上と多い女性では,月に1杯未満の女性に比べて脳卒中リスクが20%低下した。
また,1日に2~3杯の場合のリスク低下率は19%,1週間に5~7杯の場合には12%低下したという。

#4杯以上/日の非喫煙女性で脳卒中リスクが43%低下
■解析対象は,1980年のベースライン時に脳卒中,冠動脈疾患,糖尿病またはがんの既往を有さなかった女性8万3,076例。1980~2004年に,2~4年ごとに食事の摂取状況を質問票で記録した。

■24年に及ぶ追跡期間中の脳卒中発生数は2,280件であり,うち出血性が426件,虚血性が1,224件,630件は不明であった。

■患者背景を見ると,カフェイン含有コーヒーの消費量が多いほど喫煙する傾向があり,またアルコール摂取量とも強く関連していたという。

中略

■このコーヒー摂取によるリスク低下効果は非喫煙者で最も高かった。

中略

■さらに,高血圧や糖尿病,高コレステロール血症の場合にも,コーヒー摂取による効果は消失したという。

#カフェイン以外の抗酸化物質によるものか
■この効果がカフェインによるものかどうかは不明だ。
紅茶やカフェインを含有したソフトドリンクを摂取した対象者では,こうした脳卒中リスクの低下は認められなかった。
また,カフェイン抜きのコーヒーでも,カフェイン含有コーヒー摂取量を補正後にも脳卒中リスクの低下傾向が認められた。

■論文の著者らは「この結果から,カフェイン以外のコーヒー含有物が脳卒中リスク低下に寄与すると考えられる。コーヒーの抗酸化性質が炎症を抑制し,血管機能を改善する可能性が示唆された」と指摘。

■「長期間にわたるコーヒー摂取は脳卒中リスクの低下に有用なようだ」と結論付けている。

■ フィンランドの50~69歳の喫煙男性2万6,556例を対象に行われた前向き観察研究の結果(Stroke 2008; 39: 1681-1687)によると,1日8杯以上のコーヒーを摂取する喫煙男性では,摂取しない喫煙男性に比較して脳梗塞リスクが23%低下した。

■この効果は紅茶を1日2杯以上摂取した喫煙男性にも認められた。
喫煙男性では,コーヒーと紅茶による脳梗塞リスクの低下が示されていた。

Coffee and tea consumption and risk of stroke subtypes in male smokers.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18369170

■今回の結果によると,コーヒーのこうした脳卒中への有益性は,健康人のみで認められた。
コーヒーをより多く飲む人では喫煙率が高いことも影響しているのかもしれない。
身体が炎症状態にある場合には,コーヒーの付加的な効果は発揮されないのだろうか。
いずれにせよ,脳卒中の大きな危険因子である喫煙の有害性を相殺するほどの効果はないらしい。

出典  MT pro 2009.2.19
版権  メディカル・トリビューン社

<原著>
Coffee Consumption and Risk of Stroke in Women
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/CIRCULATIONAHA.108.826164v1?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Lopez-Garcia&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT
Published Online on February 16, 2009

<関連サイト>
#コーヒー,紅茶の多量摂取が喫煙男性の脳梗塞リスクを低下させる
■コーヒーあるいは紅茶の多量摂取が喫煙男性における脳梗塞のリスク低下と関係している可能性があると,北欧のグループがStrokeの6月号に発表した。

■コーヒーと紅茶には抗酸化作用があり,特にコーヒーはインスリン感受性を改善する可能性も示唆されている。


■同グループは,登録時に脳卒中の既往のない50~69歳のフィンランド人喫煙男性2万6,556人を1985~2004年で平均13.6年間追跡し,コーヒーおよび紅茶の摂取と脳卒中の病型別発症リスクを検討した。
 
■追跡期間中に2,702例に脳梗塞,383例に脳内出血,196例にくも膜下出血の発症が確認された。
年齢と心血管危険因子を調整した結果,コーヒーおよび紅茶の摂取量と脳梗塞の発症リスクとの間に有意な負の相関が認められた。
一方,脳内出血とくも膜下出血には有意な関連は見られなかった。

出典 Medical Tribune誌  2008.6.19
版権 メディカル・トリビューン社

<原著>
Larsson SC, et al. Stroke 2008; 39: 1681-1687.
Coffee and tea consumption and risk of stroke subtypes in male smokers.
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M41250645&year=2008&type=article


#コーヒー愛飲者で低い脳梗塞リスク(上記と同じ論文の紹介です)
■コーヒーや紅茶の摂取によるプラス面とマイナス面についてはこれまでにも多く取り上げられているが,カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のSusanna C. Larsson博士らは,これらの飲料が脳梗塞発症リスクを有意に低下させるとStroke(2008; 39: 1681-1687)に発表した。
なお,これら飲料の摂取は,くも膜下出血や脳出血のリスク低下はもたらさないとしている。

1日8杯以上のコーヒーで顕著
■Larsson博士らは,脳卒中の既往歴のない50~69歳のフィンランド人男性喫煙者2万6,556例を対象としたコホート研究であるα-トコフェロール・βカロチンがん予防研究を解析し,コーヒーおよび紅茶の摂取と脳卒中発生率との関係について検討した。
 
■追跡調査期間は1985年12月~2004年12月(平均13.6年)で,被験者のうち脳梗塞を発症したのは2,702例,脳内出血を発症したのは383例,くも膜下出血を発症したのは196例であった。
同博士らはこれらのなかで,特に脳梗塞の発生率にコーヒーや紅茶の摂取量が影響することを見出した。
 
■例えば,1日8杯以上のコーヒーを飲む男性の脳梗塞の調整相対リスクは,1日2杯以下のコーヒーしか飲まない男性に比べ0.77であった。
紅茶の場合もほぼ同等の相対リスクとなり,1日2杯以上の紅茶を飲む男性のリスクは,紅茶を全く飲まない男性に比べ0.79であった。

■同博士らは「今回の研究から,コーヒーと紅茶の多量摂取は男性において既知の心血管危険因子とは無関係に脳梗塞リスクを低下させる可能性があることがわかった」と結論している。
出典 Medical Tribunre誌  2008.6.12
版権 メディカル・トリビューン社
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by wellfrog3 | 2009-02-20 00:18 | 脳血管

食後高血糖とナテグリニド 

治療ターゲットとしての食後高血糖

食後血糖のグローバルガイドラインとナテグリニド
■2007年に発表された国際糖尿病連合(IDF)の「食後血糖管理のためのガイドライン」では,食後高血糖を糖尿病による心血管疾患(CVD)発症の明確なリスクと位置付け,その速やかな是正に向けた治療を強く推奨している。
しかし,治療を開始するためには,まず,食後高血糖を評価しなければならず,また,治療を開始してからも,どのような薬物を用いて,どのような目標値を設定して治療すべきかなど,臨床家にとっての課題は多い。
IDFのガイドラインには,こうした事項に関しても詳細な記載があるが,発表後1年しか経過していないこともあり,いまだ広く浸透するには至っていないようである。

順天堂大学大学院
   河盛 隆造 教授(司会)
Warwick大学
   Antonio Ceriello 教授 
杏林大学生化学教室
   永松 信哉 教授 
Tulane大学教授
   Vivian Fonseca 氏 

2型糖尿病患者のCVD発症予防には"真に厳格な"血糖コントロールが必須
河盛 
■2型糖尿病の治療に関して,急速にパラダイムシフトが起こっています。
その要因の1つとしては,ADVANCE,VADT,ACCORDといった大規模臨床試験において,「強化療法」群でも必ずしも心血管イベントの低下が顕著に見られなかったことが挙げられます。
糖尿病治療の目標はCVDの発症予防であり,そのために今まで考えられていたより,より良い血糖コントロールが望まれます。
さらに,平均血糖状態を示すHbA1C値を低下させるだけでは期待される効果を得ることが困難であることが明らかとなった,と言えます。
 
■私たちは12年以上の罹病期間のある平均62歳の2型糖尿病患者100例を3年間前向きに種々の薬剤を用いて,きめ細かく治療し,エコーによる頸動脈中膜内膜肥厚度(IMT)を動脈硬化進展度の定量マーカーとして検討しました。
その結果,HbA1C値が6.0%から3年後6.5%へと,わずか上昇した悪化群では,IMTが健常人の3~4倍のスピードで進行しました。
一方,HbA1C値が6.0%から5.6%まで低下した改善群では,IMTは増加せず,むしろ減少していました(Kawasumi M et al: Endocr J 53, 45-50, 2006)。
 
■さらに私たちは,薬物療法歴のないHbA1C値6.5%未満の2型糖尿病患者において,食後血糖改善を主なターゲットとするナテグリニドによる治療群と食事および運動療法のみによる治療群に分け,1年間追跡して,頸動脈IMTの変化を検討しました。
非ナテグリニド治療群ではHbA1C値がわずか上昇し,IMTが進行しましたが,ナテグリニド治療群では空腹時血糖値は不変で,HbA1C値については有意差があるもののわずかな低下でした。
しかし,驚くべきことにIMTは有意に減少したのです(図1)。
c0183739_23312968.jpg

 
■このような結果から,私は2型糖尿病患者の動脈硬化およびCVDの発症を抑制するためには,食後血糖応答の正常化が必須と考えざるを得ない,と言ってきました。
今日では食後血糖コントロールの重要性は,専門家共通のコンセンサスであり,2007年にはIDFが「食後血糖管理のためのガイドライン」を作成しました。このガイドライン作成の委員長を務められたCeriello先生に,ガイドラインの趣旨,概要を伺いたいと思います。

IDFガイドラインによる適切な食後血糖管理へのリコメンデーション
Ceriello 
■食後血糖コントロールの重要性には,2つの側面があると考えています。
1つは,食後血糖が高いと,それ自体が独立して動脈硬化などの合併症のリスクになるということ。そして,もう1つは,食後高血糖はそれだけにとどまらず,やがては空腹時血糖まで上昇させ,全体的なHbA1Cレベルにまで波及するということです。
これらは同じコインの表と裏と言えますが,やはり明確に分けて理解しておくほうがよいと思います。
 
■食後血糖コントロールの重要性ということに関しては
「食後高血糖は有害か?」
「食後高血糖の治療は有益か?」
「食後血糖値の管理にはどのような治療法が有効か?」
「食後血糖値管理の目標は何か,それをどのように評価すべきか?」
という4つの大きな疑問点が生じてきます。
IDFのガイドライン作成にあたって委員会では,この4つの大きな疑問点に,これまでの報告がどのように答えているのかを検証し,また,その内容から,どのようなリコメンデーション(治療に関する推奨・勧告)が可能であるかを考えました。
なお,リコメンデーションを考察するに際して,委員会がコンピュータによる文献検索などにより入手し,検証した文献は計1,659報です。
それぞれをリコメンデーションとの関連で要約してステートメントとし,リコメンデーションを支持するエビデンスのレベルを付記しました。
なお,エビデンスのレベルに関しては,スコットランド大学間ガイドラインネットワークのグレーディング基準に準じて,レベル1++から4までの8段階※としました。

■ 「食後高血糖は有害か?」という問いに関しては,食後高血糖が大血管疾患の独立した危険因子であることが,レベル1+のエビデンスとして認められています。また,食後高血糖は網膜症発症リスクの上昇と関連することや,頸動脈IMTの進行と関連することなどが,レベル2+のエビデンスとして認められています。このことからガイドラインでは,「食後高血糖は有害で,対策を講じる必要がある」とまとめています。

■「食後高血糖の治療は有益か?」という問いに関しては,食後血糖値を標的とする薬剤による治療は血管イベントを減少させることが,レベル1-のエビデンスとして認められています。
また,食後および空腹時血糖の両方を標的とすることは,最適な血糖管理を達成するうえで重要な戦略であることが,レベル2+のエビデンスとして認められています。
ドイツからの報告では,目標とするHbA1C値の達成は食後高血糖の改善の可否に左右されていることも示されています(図2)。
したがってガイドラインでは,食後高血糖を呈する者に対しては,食後高血糖を低下させる治療戦略を実施することを推奨しています。
c0183739_2334140.jpg
 

■3番目の「食後血糖値の管理にはどのような治療法が有効か?」という問いに関しては,糖負荷の低い食事は食後血糖値の管理に有益であることが,レベル1+のエビデンスとして認められています。
また,いくつかの薬剤は選択的に食後高血糖を低下させることが,レベル1++のエビデンスとして認められています。
そこでガイドラインでは,食後高血糖を標的とするためには,種々の非薬物療法および薬物療法を考慮すべきであるとしています。
 
■最後の「食後血糖値管理の目標は何か,それをどのように評価すべきか?」という問いに対しても,やはりいくつかのステートメントのエビデンスに基づき,「低血糖にならない限り,食後2時間血糖値は7.8mmol/L(140mg/dL)を超えてはならない」「現時点で最も実際的な食後血糖のモニタリング法である血糖自己測定(SMBG)値を考慮すべきである」「目標とする食後血糖値の達成に向けて治療を進めるために,治療効果のモニタリングを必要に応じた頻度で実施すべきである」といったリコメンデーションを発しています。

■ 要するに,2型糖尿病の合併症のなかでも致死率の高い大血管症の抑制までを念頭に置いた至適血糖コントロール達成には,空腹時血糖だけではなく食後血糖のコントロールが必須であるということ,そして,食後2時間血糖値140mg/dL未満という目標値は適正かつ現状にある治療選択肢を用いれば十分到達可能だという信念が,このガイドラインの根底には流れています。

河盛 
■日本では糖尿病患者をたくさん診ていらっしゃる実地医家の先生方が多いので,日常診療では食後血糖値を測定し,食事量,内容,経過時間などと照らし合わせて評価していただきたいと呼びかけています。
HbA1C値は6.0%程度でも,食後血糖値が高く跳ね上がっている例が多いですから。

TIRF法により,食後インスリン分泌を可視化し解析することが可能に
河盛 
■食後高血糖は,食事摂取時のインスリン分泌の低下,特に瞬時の分泌の低下が関係しています。
永松先生は最近,インスリン分泌動態を斬新な方法で可視化して観察することに成功しておられます。ここで,その方法についてご紹介ください。

永松 
■インスリン分泌は,インスリン分泌顆粒が膵β細胞の形質膜にドッキングし,フュージョン(融合)したインスリン分泌顆粒からの開口放出により起こります。
私たちは,インスリン分泌顆粒をある方法により特異的に蛍光標識しておき,これを,全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)を使用して観察するという「TIRF法」によりインスリン分泌機構を解析しました。
 
■その結果,インスリン分泌第一相では,あらかじめ形質膜にドッキングしている分泌顆粒がフュージョンして,開口放出が起こっていました。
これに対して,分泌第二相では,細胞内からの分泌顆粒が形質膜にドッキングすると瞬く間にフュージョンし,開口放出が起こっていました。
つまり,開口放出機構が第一相と第二相とでは共通ではなく,異なっていることが明らかになったわけです(図3)。
c0183739_23361445.jpg
 

■ヒト2型糖尿病モデル動物であるGKラットの膵β細胞を用いてTIRFMによる解析を行うと,形質膜にドッキングしているインスリン分泌顆粒が大きく減少しており,そのため第一相のフュージョン,開口放出も減少していることが明らかになりました。
一方,GKラットにおいても,第二相のフュージョン,開口放出は減少していませんでした。

TIRF法で視覚的にも確認されたナテグリニドによるインスリン第一相分泌の改善
河盛 
■松先生は,速効型インスリン分泌促進薬,ナテグリニドによる第一相インスリン分泌の回復についても,TIRF法による解析をされていますね。

永松 
■ナテグリニドに関しては,直接的なインスリン分泌の改善作用のほかにとても興味深い結果が得られています。8週齢のGKラットを未治療群,ナテグリニド投与群,SU薬投与群,インスリン投与群の4群に分け,正常群を対照として膵β細胞に対するそれぞれの薬剤の負荷について,比較検討した結果をお話しします。
6週間の治療期間が終了した14週齢時の食後血糖1時間値の推移を見ますと,ナテグリニド投与群では,未治療群と比べて有意に食後血糖1時間値が低下していました。
薬剤をウォッシュアウト後,膵β細胞を取り出した後にブドウ糖を添加し,膵β細胞がインスリンを分泌する様子をTIRF法で解析したところ,ナテグリニド投与群では,β細胞が活発にインスリンを分泌している様子が観察されました。
さらに,光学顕微鏡を用いた観察から,ナテグリニド投与群ではβ細胞が集積されたランゲルハンス氏島の形態が保持されており,ナテグリニドが膵β細胞を疲弊させにくい薬剤であることも示唆されました(図4)。
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生理的インスリン分泌動態に近づけるナテグリニド
河盛 
■TIRF法による動画で観察されたナテグリニド投与GKラット膵β細胞でブドウ糖刺激による瞬時のインスリン分泌が盛んに行われる様子は,とても印象的でした。
次に,2型糖尿病治療におけるナテグリニドの位置付けや有用性についてご意見を伺えますか。

Fonseca 
■2型糖尿病治療の薬剤を考慮する際は,血糖低下効果の強さ,空腹時血糖と食後血糖のどちらを標的とするか,低血糖の頻度,体重変化の程度,1日何回投与かといったことがポイントになると思います。
 
■空腹時血糖と食後血糖のどちらを標的にするかという点では,ナテグリニドは言うまでもなく食後血糖を標的としています。
ほかには速効型インスリン,αグルコシダーゼ阻害薬なども同じタイプの薬剤に属します。
 
■2型糖尿病患者に経静脈的糖負荷試験(IVGTT)を行いナテグリニドのインスリン分泌に与える影響を見ると,糖負荷の直後にインスリン分泌の急激な亢進が認められます。
この急激な亢進は,糖負荷後の数分以内に起こっており,永松先生のお話にもありましたように,第一相インスリン分泌が回復していることを示しています。
 
■また,ナテグリニドは低血糖の発現頻度が低いことで知られていますが,これは,ナテグリニドの作用が遷延しないという特性から,結果的にインスリン分泌動態が生理的な分泌動態に近づくことによると考えられます。

注目されるナテグリニドとインスリン抵抗性改善薬との併用効果
河盛 
■ナテグリニドと,作用機序の異なる他剤との併用についてはいかがでしょうか。

Fonseca 
■空腹時血糖を標的とするチアゾリジン薬やビグアナイト薬メトホルミンの投与患者で血糖のコントロールがうまくいかない場合,ナテグリニドを併用すると,良好な血糖コントロールが得られるということをしばしば経験しますが,実際に,メトホルミンとナテグリニドの併用では,食後血糖値およびHbA1C値において有意な低下が認められており(図5),さらにこの2剤併用による血糖低下効果は相加的であることをハーバード大学のHortonらが報告しています。
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■また,メトホルミン単独治療の無効例をナテグリニドあるいはSU薬併用群に無作為割付し,2年間にわたり経過を観察したGerichらの検討では,ナテグリニド併用群はSU薬併用群と同等のHbA1C低下効果を示しただけでなく,食後血糖値の良好な低下も確認されました(Gerich J et al: Diabetes Care 28, 2093-2099, 2005)。
特に注目を集めたのが,ナテグリニド併用群では体重がむしろ減少し,重篤な低血糖は認められなかったことでした。
 
■さらに,われわれが2型糖尿病患者を対象に行ったチアゾリジン薬ロシグリタゾン(本邦未発売)とナテグリニドとの併用についての24週間の検討では,ロシグリタゾンとナテグリニドの併用群はロシグリタゾンとプラセボの併用群に比べHbA1C値が有意に減少し(p<0.0001),空腹時血糖値ならびに食後血糖2時間値についても有意な低下が認められました(p<0.001)。

■2型糖尿病では, Fonseca先生が述べられたような,複数の薬剤による併用療法が有用となります。
このような観点から最近,わが国でも,チアゾリジン薬ピオグリタゾン単剤で十分な血糖コントロールが得られなかった2型糖尿病患者を対象に,ナテグリニドを併用した場合の効果を検討する第II/III相二重盲検比較試験が実施され,ピオグリタゾンとナテグリニドの併用で食後血糖2時間値(図6)およびHbA1C値(図7)が有意に低下することが示されました。
こうしたエビデンスを踏まえ,ナテグリニドとピオグリタゾンとの併用療法の効能・効果が2008年12月に新たに追加承認され,2型糖尿病の治療選択肢はさらに広がりを見せています。
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アジアの多くの国で,近年,2型糖尿病患者の特徴に変化が見られるように思います。
例えば日本では,以前は非肥満の2型糖尿病患者が多かったのですが,10~20年前頃から,肥満を伴う2型糖尿病患者が急増してきています。非肥満の2型糖尿病患者ではインスリン分泌は低下していますが,インスリン抵抗性は増大しておらず,むしろ心血管イベントは少なかった。
しかし,肥満を伴う2型糖尿病患者では,インスリン分泌の低下にインスリン抵抗性が加味され,動脈硬化に基づく大血管症を呈する例が多くなってきます。

Ceriello 
■いずれにせよ,2型糖尿病患者の合併症の発症を抑制するためには,より早期から,食後血糖コントロールを含めた厳格な血糖コントロールが必須であり,そのための方策としては,単独の薬剤に依存するのではなく複数の薬剤を併用する。
特にナテグリニドなど食後血糖に対して特異的にコントロールを発揮する薬剤を有効に活用することが重要であることが,今までのお話で明確になったと思います。

河盛 
日本では,検診により糖尿病は早期に発見されています。しかし,治療をすぐ受ける方は少ない。
IDFのガイドラインが作成されたことを機に,医師サイドも糖尿病と診断した際に,食後血糖コントロールの意義を患者さんに的確に伝え,水面上に出てきた糖尿病をもう一度押し戻す治療をすることを再認識すべきですね。

※エビデンスのグレーディング基準:
エビデンスの質の高いほうから順に「1++」「1+」「1-」「2++」「2+」「2-」「3」「4」の8段階となっている。

出典 MTpro 2009.2.5
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
武田の痛風治療薬、米で3月発売へ 販売許可を取得
武田薬品工業と帝人ファーマは14日、米国で開発中の痛風治療薬の候補物質「TMX―67(一般名フェブキソスタット)」が米食品医薬品局(FDA)から販売許可を得たと発表した。
武田薬品が米子会社を通じて「ユーロリック」の製品名で3月に発売する。
 
ユーロリックは痛風の原因となる尿酸を体内でつくる酵素の働きを妨げ、尿酸値を下げる。帝人ファーマが創製し、武田薬品が米国で開発してきた。米国には約500万人の痛風患者がいるとされ、痛風薬の市場規模は約100億円とみられる。
出典 日経新聞・朝刊 2009.2.15
版権 日経新聞社

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-02-19 00:14 | 糖尿病