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アスピリンの定期的服用と胃がん

アスピリンとがんリスク低下については時々話題になります。
「大腸がん」については

アスピリンと大腸がんのリスク低下
http://wellfrog.exblog.jp/8208765/

でも勉強しました。

きょうは日本人にまだまだ多い「胃がん」についての論文があったので少し勉強しました。



#アスピリンの定期的服用が胃がんを予防する可能性
アスピリンの定期的服用が胃がんの予防に有効であることを示唆するデータが,米ハワイ大学などのグループによりAmerican Journal of Epidemiology の8月15日号に発表された。
 
多くの疫学研究で非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用と大腸がんとの負の相関が報告されているが,胃がんとの関係を検討した研究は少ない。
同グループは,1993〜2004年にハワイとロサンゼルス在住の多民族を対象とした調査を行い,アスピリンおよび非アスピリン系NSAIDの使用と胃がんとの関係を検討した。
期間中に確認された胃がん(腺がん)症例は643例であった。
 
解析の結果,アスピリンの定期的服用は胃体部〜幽門部の遠位部胃がんの有意なリスク低下と関係し,定期的に服用していなかった群と比較したHRは0.73であった(P=0.009)。
一方,非アスピリン系NSAIDではそうした関係は見られなかった。
 
アスピリンの定期的服用による胃がんのリスク低下は分化型の遠位部腺がんにのみ認められ(HR 0.66,P=0.01),低分化型の遠位部腺がんではリスク低下は観察されなかった。
Epplein M, et al. Am J Epidemiol 2009; 170: 507-514.

出典 2009.8.20
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
アスピリンのがん予防効果の研究は、「大腸がん」が一番進んでいるようです。
「肺がん」についても、ちょっと古いのですが2002年に以下の報告があります。
いずれも疫学的研究で理論的根拠がはっきりしないのが弱いところです。

#アスピリンにがん予防効果
http://www.47news.jp/feature/medical/news/611asupi.html
■鎮痛剤アスピリンの服用が肺がん発症のリスクを減らすとの研究結果を米マサチューセッツ大のグループがまとめ、このほど米国のがん予防学会で発表した。  
研究では肺がん患者868人と肺がんと診断されなかった患者935人について、過去の生活習慣などを調査。
1年以上にわたり、週に1回以上アスピリンを服用した人は、そうでない人に比べ肺がんの危険が4 3%減少した。
服用頻度が多く、服用期間が長いほどリスクは低かったという。


<きょうの一曲>
Ravel - Bolero - Daniel Barenboim - Berliner Phil. Pt. 1
http://www.youtube.com/watch?v=S2q-gWMAGjw&hl=ja

Ravel - Bolero - Daniel Barenboim - Berliner Phil. Pt. 2
http://www.youtube.com/watch?v=MP3qwZxm7p4&hl=ja


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http://www.47news.jp/feature/medical/news/611asupi.html



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-08-31 00:38 | その他

オセルタミビルの合併症低減

#オセルタミビルは小児および青年においてインフルエンザ関連の合併症を低減させる可能性
インフルエンザの診断時に処方されたオセルタミビルは、インフルエンザ合併症のリスクが高い人たちにおいて、合併症および入院のリスク低減につながることが研究から示されている。

インフルエンザの診断時に処方されたオセルタミビルは、インフルエンザ合併症のリスクが高い小児および青年において、インフルエンザ関連の合併症および入院のリスクを低減させる可能性があるということを示すレトロスペクティブ研究の結果が『Pediatrics』7月号に報告されている。
この研究はベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)(テキサス州、ヒューストン)のPedro A. Piedra, MDらが行ったものである。

「この研究では、慢性内科疾患または神経疾患や神経筋疾患を有する1-17歳の小児および青年においてオセルタミビルがインフルエンザ関連の合併症および入院に及ぼす影響について検討されている」とニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)医学部公衆衛生・地域医療学科(School of Public Health and Community Medicine)(オーストラリア、シドニー)の准講師(associate lecturer)Holly Seale, PhD, BScは、独立したコメントを求められて、Medscape Infectious Diseasesに話している。

「これらの疾患のある小児はインフルエンザ関連の合併症および入院のリスクが特に高いと考えられる。インフルエンザワクチンの使用が推奨されているものの、接種率は依然として低い」

ノイラミニダーゼ阻害薬は小児におけるインフルエンザ症状の重症度を低下させ罹病期間を短縮させ得るが、インフルエンザ合併症のリスクが高いと考えられる慢性疾患患者におけるオセルタミビルの有効性についてはデータが不足していると同研究の著者らは記している。

この研究では、MarketScanデータベース(Thomson Reuters社、マサチューセッツ州、ケンブリッジ)の匿名データを用いて、2000年から2006年までの6回のインフルエンザシーズンから患者を特定した。肺炎、肺炎以外の呼吸器疾患、中耳炎、入院の頻度をインフルエンザの診断から1日以内にオセルタミビル投与を受けた患者(n=1634)と抗ウイルス療法を受けなかった患者(n=3721)との間で比較した。

人口統計学的因子および病歴に関する臨床因子について補正したところ、オセルタミビルの使用は、インフルエンザの診断から14日後に、肺炎以外の呼吸器疾患、中耳炎とその合併症、あらゆる原因による入院のリスクの有意な低減と関連していた。
また、インフルエンザの診断から30日後も、肺炎以外の呼吸器疾患、中耳炎とその合併症、あらゆる原因による入院について、オセルタミビルによる有意なリスク低減が認められた。

「この研究では、インフルエンザ合併症のリスクが特に高いと考えられる小児および青年においても、オセルタミビルの処方は肺炎以外の呼吸器疾患、中耳炎とその合併症、あらゆる原因による入院の相対リスクの低下と関連することが認められた」と同研究の著者らは記している。
「これらの結果から、オセルタミビルは、インフルエンザを臨床的に診断した診察時に処方された場合、慢性内科疾患のためにインフルエンザ罹患およびインフルエンザ後の二次感染のリスクが高いと考えられる小児患者に有用となる可能性があるというエビデンスが初めて得られた」

Seale博士らが記している同研究の長所には、1-17歳の小児の大規模なコホートを対象としていること、様々な併存疾患および評価項目を組み入れたこと、複数シーズンのデータをレビューしたこと、多くの異なるデータベースから情報を得たことがある。
一方、Seale博士は同研究について、小児における基礎疾患の重症度に関する情報不足など、種々の限界も記している。

「ICD [国際疾病分類] に基づいたコード化は、[それらが] 医師の臨床診断に基づいているために問題がある可能性があり、[しかも] 臨床検査による裏づけがなかった」とSeale博士は述べている。「[この研究は] 健康保険に加入している患者のみに限られ、社会経済的階層の高い集団へのバイアス[がかかっている]とともに、おそらく全ての民族集団を代表してはいなかったと思われる。最後に、この研究はレトロスペクティブであるため、データの質と精度に不安がある」

さらに、シーズン間の一貫性を保証するために10月1日-3月31日という期間が固定されていたため、この期間以前および以降に発生した症例が含まれていない、と同研究の著者らは記している。しかも、患者が勧められた時間内にオセルタミビル治療を開始したことを確認するのは不可能であった。

「これらの集団ではワクチン接種率は低率に留まっているので、この研究の知見はこうした高リスク群への同薬の有効性に関する重要なエビデンスとなる」とSeale博士は結論付けている。
「さらに、これらの種々の患者コホートを対象に、同薬の効果をプロスペクティブに検討する研究が実施される必要がある。
これらの患者の同薬への忍容性について、すなわちこれらの小児における副作用の程度と種類について、健常小児と比較検討するのも興味深いことであろう。
しかし、ワクチン接種の重要性を忘れてはならない」

この研究はRoche社の資金提供を受けており、著者のうち1名は同社に雇用されている。
Piedra博士はRoche社、MedImmune社、Merck社、Novartis社の顧問を務めているほか、MedImmune社、Sanofi-Pasteur社から助成金を受け取っている。
もう1名の著者はThomson Reuters社ヘルスケア部門(Healthcare Division)に勤めている。Seale博士は関連する金銭的関係はないことを開示している。

Pediatrics. 2009;124:170-178.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=105851&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY&

Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape
出典 Medscape 2009.8.17

<コメント>
最後の資金提供の部分は重要です。
抗ウイルス剤のインフルエンザ関連の合併症を低減させる可能性についてはすでに周知のように物事が進んでいます。
政府のタミフル抱え込みにも疑問をもち先生方も多いのではないでしょうか。
新型インフルエンザワクチンも然りです。

私も、抗ウイルス剤の症状軽減効果は認めるものの、死亡率低減効果については懐疑的で論文を探していたところです。
メーカーの学術にもMSを通して調べるように依頼しましたが、何の連絡もありません。
どこまでわかってどこからわかっていないのか。
これは抗ウイルス剤にかかわらず、すべてのことにあてはまることです。
よき指導者に恵まれて、その指示通りに研究をすればラクで効率的というのは、「どこがわかっていないか」が指導者が知っているから研究のスタートが早いからだと思います。

今回のタイトルを見て「なんでこんなことが今更」と思ったのは私だけではないのではないでしょうか。


<きょうの一曲>
Rosa Elvira Sierra -Pie Jesu- Requiem- Fauré
http://www.youtube.com/watch?v=ZThARSv69Rg&feature=related
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by wellfrog3 | 2009-08-30 00:41 | 感染症

咽頭炎へのステロイド投与

BMJに掲載された”Corticosteroids for pain relief in sore throat: systematic review and meta-analysis. ”という論文を東札幌病院の平山泰生副院長・化学療法センター長が解説した記事で勉強しました。


#咽頭炎へのステロイド投与,本当に禁じ手か?   英国でのメタ解析を踏まえて
#研究の背景:
#発熱や炎症を抑制すると最終的には患者に不利益もたらす?
感染症にステロイドを投与すると,迅速に解熱し,疼痛などの症状も軽快することが予想される。しかし,発熱や炎症は生体防御機構であり,それを抑制することは病原体の生存に有利となり,最終的には感染症の遷延など患者の不利益になることが想定されるため,一部の例外を除いて感染症に対するステロイド投与は「禁じ手」と考えられてきた。

 今回,咽頭炎患者に抗生物質・鎮痛薬とステロイドを併用投与すると,咽頭痛は早期に軽快し,ほかに明らかな不利益は認められなかったとの結果が英国で報告されたので紹介する(BMJ 2009; 339: b2976
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19661138)。

#研究のポイント:
#ステロイド群で疼痛軽減が早く,明らかな不利益なし
滲出性咽頭炎患者を対象とした8つの臨床試験(総患者数743例,うち小児369例,成人374例)の結果を検討した。330例(44%)はA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)陽性であった。

 全例に抗生物質と鎮痛薬が併用された。8試験において,ステロイドの併用投与(ステロイド群)が行われた。投与の内訳は,経口(デキサメタゾン0.6mg/kg単回など)4試験,筋注(デキサメタゾン10mg単回など)4試験で,全例二重盲検,全試験にプラセボ群が設定された。

 メタ解析の結果,ステロイド群はプラセボ群に比べ,24時間後(4試験で検討,以下同)における疼痛(VASスコアによる評価)の完全寛解率が3倍以上(3.2倍, 95%信頼区間2.0~5.1)で,48時間後の判定(3試験)でも1.7倍であった。また,ステロイド群ではプラセボ群に比べ,疼痛軽減までの中央値が6時間以上短縮された(6試験,95%信頼区間3.4~9.3時間,P<0.001)。

 学童における欠席期間に両群間で有意差はなかった(3試験)。4試験では再発率に有意差は認められなかったが,1試験においてブラセボ群で再発率が有意に高値であった。

 サブグループ解析では,小児あるいは非重症例に対するステロイド投与の優位性が証明されず,成人,重症例では効果が著明であった。細菌性病原体の陽性,陰性における差は認められなかった。

#東札幌病院の平山泰生副院長・化学療法センター長の考察:
#「咽頭炎にステロイド投与」は個々の患者には有用だが,社会全体としてはデメリットが予想される
感染症に対してステロイドの投与が認められるのはどういう疾患か,という問題に関して近年データが蓄積されつつある(Arch Intern Med 2008; 168: 1034-1046
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18504331)。
ステロイド投与により死亡率を下げるのが,細菌性髄膜炎,結核性髄膜炎,中等症以上のニューモシスチス(カリニ)肺炎などであり,これらには適切な抗微生物薬とともにステロイドの投与が推奨される。

今回メタ解析された咽頭炎のほかに,ステロイドにより症状が改善するのが,帯状疱疹,伝染性単核球症,肺炎球菌肺炎などであり,予後に関しての明らかな悪影響は認められない。

ステロイドの作用機序より推測される予後の悪化が,上記疾患などで認められないことは意外である。
動物の進化の過程において常に病原体侵入は高頻度に生命の危機をもたらしてきたために,それに対する免疫および疼痛という危機信号は過剰なくらい反応するのであろう。
一部の疾患では過剰な免疫反応は多少抑制しても問題はないのかもしれない。

今回紹介した論文に関して考察すると,急性の咽頭痛患者の多くは,「感冒」の各症状を呈しており,細菌感染のほかに,ライノ,コロナ,アデノといったウイルス感染などが多い。
咽頭痛患者の診療では,まず急性喉頭蓋炎ではないことを確認し,次に溶連菌感染の可能性を考慮するのであるが,その際,頸部リンパ節腫大があるか? 咳がないか? などの臨床所見を参考とし,疑わしい場合は迅速診断キットを施行する。
溶連菌感染であった場合は,主としてリウマチ熱発生予防のためペニシリンなどを投与する。成人の場合は抗生物質を投与しなくても,投与群とほぼ同様に自然治癒する。溶連菌を除いては,たとえ原因病原体が細菌であったにせよ咽頭炎患者に抗生物質を投与するメリットはほとんどないと言われている。
したがって実地臨床では,大部分の咽頭炎患者に抗生物質を投与せず,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のみ投与するのが一般的である。

本研究はステロイドとともに抗生物質・鎮痛薬を投与した結果であるため,患者の苦痛は早期に軽減されるにせよ,医療費の増大および耐性菌の誘導という懸念がある。
したがって,私としては実地医療として咽頭炎患者にステロイド投与を勧めることはしない。
また,ステロイド投与はB型肝炎キャリアの劇症化を招く可能性がある。咽頭炎に限った話ではないが,B型肝炎表面抗原(HBsAg)を測定していない患者に安易にステロイドを投与してはいけない。

「生体の免疫反応,危機信号の過剰さ」に思いを巡らすという点では非常に興味深い結果だが,医療者としては,咽頭炎患者のQOLの改善にステロイド投与は有効であるということを知識として持っている,というレベルにとどめておくべきであろう。

出典 MT pro 2009.8.17
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
#新型インフル流行 10月にも第1波ピーク クローズアップ2009
#沈静化後、第2波も 専門家「春までに3600万人」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/08/27/106482/?Mg=606e9a8f538e530ee2e0bc81ff8251a7&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
毎日新聞社 2009.8.27
■「10月が流行第1波のピークかもしれない」。
冬とみられていた新型インフル流行のピークが大幅に前倒しになる可能性を、専門家が指摘し始めた。
国立感染症研究所の安井良則・感染症情報センター主任研究官は「秋に感染者数が減る要素がない」と説明する。
■浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(疫学)によると、過去の新型インフルのパンデミック(大流行)は、流行期入りからピークまで約1カ月半。
厚労省は今回、今月21日に流行開始を宣言したためこれを当てはめると10月にもピークを迎えることになる。
厚労省は10月下旬にも新型用ワクチン接種を始める方針だが、ピークに間に合わない恐れが出てきた。
しかもこれは第1波のピークで、いったん沈静化した後に第2波があるとの見方も強い。
■東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「この冬、必ず日本で大流行する」とし、季節性の3倍以上の規模となり、来春までに国民の約30%、約3600万人が感染すると予測する。
浦島准教授は最大約5000万人の感染可能性を指摘。
押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「11年春までに約8000万人が感染し、患者は5000万人に達するのではないか」と警鐘を鳴らす。
世界保健機関(WHO)は8月、大流行が終わるまでに世界の人口の約3割、約20億人が感染するとの予測を公表した。
■東京大医科学研究所の上昌広特任准教授(医療ガバナンス)は「大学病院や大病院が、空いた個室に重症患者を受け入れやすくするために、国が補助金を出すなどして支援するのも一つの対策だ」と指摘する。

◇重症化を警戒すべき症状(WHOによる)
・休息の間でも息切れする
・呼吸困難
・顔が青白くなる
・たんに色が付いている、血たんがでる
・胸が痛む
・意識もうろう
・3日を超える高熱
・低血圧

子供ではさらに
▽息が速い
▽注意力欠如
▽遊ぶ意欲がない
--などを警戒すべき症状に挙げ、急速に悪化する可能性があると注意を促している


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デュフィ作 『電気の精』
http://blogs.yahoo.co.jp/pas_de_roses_sans_epines/49145683.html


<きょうの一曲> リバーサイドホテル
井上陽水 / リバーサイドホテル
http://www.youtube.com/watch?v=E7TCf1csQeQ&hl=ja

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
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by wellfrog3 | 2009-08-29 00:08 | 感染症

新型インフルエンザ 本格的な第1波は8月中旬から

「本格的な第1波は8月中旬から」、感染研・田代氏
「8月中旬から本格的な第1波となったと判断されるが、8月中旬で日本の新型インフルエンザ(H1N1)感染報告者は(1週間に)5000人を超えたにすぎない(推定11万人)。いまだ季節性インフルエンザの流行規模にはるかに達していない(200-400分の1)」
 
8月22日に京都で開催された、2009年プライマリ・ケア関連学会連合学術会議のシンポジウム「地域における新型インフルエンザ対策を考える」で、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター・センター長の田代眞人氏は、こうコメントし、今後の増加に警鐘を鳴らしました。

第33週(8月10日から16日)のインフルエンザ定点当たりの患者数が1.69を超え、流行期に入りました。
その大半が新型インフルエンザウイルスAH1pdmによると推定されています。
国内第一例目が5月中旬に報告され、その後、報告数が増加したものの、6月に入り下火になりました。
ところが直近6週連続で増加を続けており、既に5月をはるかに超える流行になっています。

「さて第2波の到来か」との声も聞かれますが、田代氏は、この流行動向を踏まえ、「これからが本格的な第1波。その後、第2波が来ることが予想される」という見方をしているわけです。
その理由の一つが、ウイルス変異の状況です。
「ヒトで流行を繰り返すと、遺伝子の突然変異によって、(E627Kという部分の)アミノ酸置換が起こり、ウイルス増殖に至適な温度がヒトの体温に下がり、完全なヒト型ウイルスに変化する」(田代氏)とのことですが、現在流行中の新型インフルエンザウイルスの「E627K」ではこの変異が起きておらず、まだトリ由来です。
この変異により、ヒトで流行しやすいタイプに変わると、さらに大きな流行となる「第2波」の到来になると推測されるわけです。

ちなみに体温は、トリ:42℃、ブタ:38-39℃、ヒト:36-37℃。
また、季節性インフルエンザの場合、定点当たりの患者数が1を超えてから、8週間前後で流行のピークを迎えるのが一般的なパターンです。

「現時点では比較的病原性が低いものの、決して侮ってはいけない」と田代氏は続けます。
これから本格的な第1波が予想されるほか、完全なヒト型ウイルスに変異し、ヒトでの伝播効率と病原性が増強する可能性があるためです。
さらに、「強毒型の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)は、今の新型インフルエンザ(H1N1)の影響を受けることなく、独立して流行が続いている。H1N1とH5N1が同時期に流行すると、ウイルスの交雑が起き、強毒型ヒトH5N1が出現する危険もある」(田代氏)。

マスクや医薬品などの備蓄を新型インフルエンザ(H1N1)で使い切ってしまうと、H5N1が流行した際に、肝心の備蓄がなくなってしまう事態も想定できます。
ウイルスの変異や流行動向の推測は難しいところですが、想定し得るリスクを評価し、対策を講じることが必要というのが田代氏の主張です。

では、現時点で何を検討すべきか。
本シンポジウムに参加した、政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長で、自治医科大学教授の尾身茂氏は、下記を挙げました。
直近の課題はワクチン接種の優先順位の決定。
先週8月21日、尾身氏もメンバーである厚生労働省の「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」が開催されました。

尾身氏は、「重症化・死亡例の軽減」のため、
(1)基礎疾患を持つハイリスク者、
(2)新型インフルエンザ感染者と接触する医療関係者、
(3)6カ月未満の幼児のCare giver(親など)、
(4)妊婦、
などを挙げています。
「学童期の子供についても、基礎疾患がなくても重症化している例があるので、どう扱うかが課題。また、妊婦は季節性ワクチンは接種していないので、新型インフルエンザのワクチン接種は、これまでの方針を大きく転換することになる」と尾身氏。
優先順位の決定にはまだ議論すべき事項が多々あります。
さらに、ワクチンの供給・接種体制も検討課題です。
http://mrkun.m3.com/mrq/community/message/view.htm?cmsgId=200908240908316810&msgId=200908240858315472&mrId=ADM0000000


アジア風邪も夏に患者増 新型インフルと類似点
夏にもかかわらず全国的に流行入りした新型インフルエンザ。
1957-58年に世界的に流行したインフルエンザ「アジア風邪」も、日本国内では通常の流行シーズンとは違う夏場に患者が増え、現在の新型と類似点があることが分かった。

新型インフルエンザの感染が、通常の流行シーズンに関係なく広がるのは、大半の人が免疫を持っていないためとみられている。
現在夏休みの学校が再開すれば、さらに感染が拡大し、流行規模が大きくなる恐れがあるため警戒が必要だ。

アジア風邪の流行は第1波と第2波に分かれていた。
第1波は通常のインフルエンザとは違い、5月から8月まで流行が続いた。
9月に入りいったん報告数が減少したが、その後再び増加、第2波は通常の流行シーズンに押し寄せた。

当時の厚生白書(昭和32年度版)にも「従来日本に見られなかった新変異型ヴィルス(ウイルス)によるインフルエンザの流行があり、5月から7月にかけて急激に患者の発生が起こった。32年全体においては、近来まれな罹患(りかん)率を示すことになるものと憂慮されている」との記述がある。

今回、国内での流行が始まった新型の患者報告数は、7月上旬に増加し始め8月に入り急増。
全国約5千の医療機関から16日までの1週間に報告されたインフルエンザ患者数は7750人と、前週から一気に3千人以上増加した。
大半は新型とみられ、ほかの医療機関も含めた全国の推計では、この週の患者は11万人に上るとみられるという。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/08/24/106194/?Mg=e2957f6d282710e07f814b914918eef3&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
出典 共同通信社 2009.8.24



<番外編>
基礎疾患や妊婦ら最優先 ワクチン、乳児の保護者も検討へ
新型インフルエンザ用ワクチンの接種対象として、基礎疾患(持病)のある人、妊婦、幼児、患者を診る医療従事者を特に優先する方向が27日固まった。
厚労省が開いた専門家や患者団体らとの意見交換会でほぼ一致した。1歳未満の乳児への接種は安全性などで課題があるため、保護者への接種を検討する。
政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会での議論などを経て、9月中に正式決定する。
http://www.excite.co.jp/News/society/20090827/Kyodo_OT_CO2009082701000861.html



<きょうの一曲> Desperado 
Linda Ronstadt - Desperado
http://www.youtube.com/watch?v=djP8zIwCp3I&hl=ja

The Eagles & Linda Ronstadt -Desperado
http://www.youtube.com/watch?v=xHS1Jey4clk&feature=related

The Eagles - Desperado (live)
http://www.youtube.com/watch?v=vsLylyEoLDo&feature=related



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by wellfrog3 | 2009-08-28 00:07 | 感染症

炎症判定の際の 白血球数とCRPの使い分け

炎症判定の際の白血球数とCRPの使い分け
細菌感染症では、白血球数とCRP値は病勢を反映して上下し、ともに重要な指標となります。
炎症急性期には、白血球とCRPはほぼ相前後してともに上昇します。
増加する白血球の中心は好中球であり、核の左方移動も認めます。
炎症のピークが過ぎてからの下がりは、CRPのほうがより速やかです。
慢性化した場合には、CRPも白血球数も、炎症の程度に応じて高値をとりますが、CRP値のほうがより客観的に評価できる場合が多いようです。
これには、白血球数という検査項目自体の個体間変動の大きさも関係しています。

白血球の基準範囲は、成人の場合、3、300〜9、000/μL程度です。
新生児や幼児は、成人より多めです。
しかし、これは、あくまでも集団の基準範囲であり、白血球数のように個人差が大きい検査項目に関しては、理想的には、個人の基準範囲に照らし合わせて評価することが望ましいです(実際には不明の場合が多いですが)。
例えば、普段の白血球数が3、500〜4、500/μL程度の人ならば、白血球数8、500/
μLは基準範囲内に収まっていても異常と判定しなくてはいけません。
逆に、いつも白血球数が10、000/μL程度という人もいます。
とくに喫煙者の場合は、非喫煙者よりも明らかに白血球数が多く、この程度の白血球数を示される方は多くいます。
さらには、白血球数の場合、産生・動員と消費のバランスが関係しており、重篤な感染症ではむ
しろ下がることもあります。
また、炎症以外にも白血球数に関係する因子が多々あり、例えば、骨髄の造血機能の低下などがあると白血球数は減少します。
この場合、炎症があっても、白血球数は増加しないことも多いです。

一方、CRPは、元々は、肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応を示す蛋白として見いだされましたが、急性相反応蛋白の代表です。炎症などにより活性化された単球/マクロファージはインターロイキン(IL)-1、IL-6、TNF-αなどを分泌しますが、これらの炎症性サイトカインは肝細胞に作用して、CRPなどの急性相反応蛋白の産生を誘導し、その血中濃度を高めます。
炎症性疾患で鋭敏に上昇し、病態の改善後速やかに低下するため、病態の診断、予後の判定、治療効果の観察に役立ちます。
また、白血球数と違い、炎症のない健康な人では、ほとんどカットオフ値以下であり、他の要因で相殺されるということも少ないです。
また、微弱な慢性炎症もかなり鋭敏に反映されます。
最近では、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる動脈硬化症が慢性炎症性疾患としてとらえられるよ
うになりましたが、この際も、高感度CRP測定が有用とされています。

白血球数、CRPともに炎症のマーカーとして有用であり、日常臨床においては両者の測定がなされることが多いと思われますが、以上より、どちらか一方となると、(とくに慢性炎症においては)CRPが有用と思われます。ただ、これに関しては、検査を実施する環境も関係し、画一的には決められないと思います。

http://www.e-clinician.net/vol56/no581/pdf/sp21_581.pdf
CLINICIAN 2009 NO.581 P74~76

<番外編>
ワクチン輸入ピンチ、専門家「安全確認が先」
読売新聞 2009.8.22
■政府が検討する新型インフルエンザワクチンの輸入について、ワクチンを供給する欧米の製薬会社が提示した契約条件が明らかになった。

■ワクチンが原因で副作用が起きた場合にメーカーを免責するよう求め、8月末までに契約しないと他国への供給を優先させるとしている。国内の専門家は、輸入に先立つ日本人での安全確認を求めており、契約が間に合うかどうか微妙な情勢。大流行が懸念される秋に、輸入が間に合わない可能性も出てきた。

■政府が交渉しているのは、欧米の大手製薬企業。厳しい条件を提示してきたのは、北半球が流行期に入る10-11月以降、世界的なワクチン不足が予想されているためと見られる。

■舛添厚生労働相は先月、国内で必要なワクチンの数を5300万人分と表明。厚労省は国内メーカーの供給分を差し引いた1500万-2000万人分を輸入で穴埋めするため、海外のメーカーと交渉してきた。

■早期の輸入を目指す厚労省は契約条件を受け入れる方向で、政府の諮問委員会に対し、薬事法の「特例承認」を適用し、海外での試験結果だけで承認する方式を打診した。

■これに対し、専門家からは「国産ワクチンと接種方法が違ったり、免疫増強剤が入ったりしており、安全性が担保できない」「輸入するほどの数量が必要なのか」といった異論が続出。国内での安全確認や必要量の再検討を求めたため、メーカー側との具体的な交渉に入れないままとなっている。


target="_blank">http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/08/24/106226/?Mg=e2957f6d282710e07f814b914918eef3&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag



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by wellfrog3 | 2009-08-27 00:22 | 感染症

血中インスリン測定(IRI)について

「インスリン注射を行っている場合、血中インスリンの測定は内因性と外因性(インスリン注射)の両者を測定してしまうのでしょうか」
という質問に対する

東京女子医科大学 中央検査部   佐藤麻子准教授
         糖尿病センター 岩本安彦センター長
による解説で勉強しました。



膵臓ランゲルハンス島β細胞でインスリンは、前駆物質プレプロインスリンとして作られた後、プロインスリンに転換されます。
プロインスリンはインスリンとCペプチドに切断されて血中に放出されます。
すなわち、インスリンが生物活性を持ち血中に分泌される際は、同じモル数のCペプチドも血中に分泌されます。
Cペプチドの約5%は腎で代謝され尿に排泄されるので、1日尿中のCペプチド測定は内因性インスリン分泌量を見る指標となります。
同様に、腎機能の低下している例では血中Cペプチドは高めに出ますので、その点に留意する必要があります。
血中インスリンの測定は、インスリン抗体に対する免疫活性を見る測定法が中心でありIRI(immunoreactive insulin)といい、正常値は空腹で5〜10μU/mLです。
また、Cペプチドもその免疫活性CPR(C-peptide reactivity)として測定され、その正常値は空腹時血中で1〜3ng/mL、尿中CPRは40〜100μg/dayです。

インスリン治療を行っている患者さんの場合、注射からのインスリンを外因性インスリン、自分自身の膵臓から分泌されたインスリンを内因性インスリンと呼びます。
一般的な臨床検査でIRIを測定する場合、両者を分けることは困難で内因性・外因性両方のインスリン値を合わせて測定することになります。
この場合血清CPRを測定すると、内因性インスリン分泌について評価することが可能になります。

丸1日休薬すれば、注射したインスリンは血中から消失していると思われますが、内因性インスリン分泌を評価するためにわざわざインスリン注射を中断することは一般には行われません。
この場合も、血清CRPの測定によって内因性インスリン分泌を推定することができます。

以前ブタやウシのインスリンを使っていた例、インスリンアナログ製剤を使っている例、まれにはヒトインスリン製剤を使っている例でも、血中にインスリン抗体が産生される場合があります。
その場合IRI値が正確なインスリン値を反映しない場合があるので注意しなければなりません。また、血中CPRもプロインスリンとの関与があるため、インスリン抗体が存在すると抗体と結合したプロインスリンが血中に停滞し測定に用いるCペプチド抗体の特異性によってはCPR値が見かけ上高くなる場合があります。
そのほかIRIとCPRが異常値を示す疾患を表に示します。
インスリン分泌は、食事の量や質、肥満度、血糖コントロールの良否など膵β細胞機能の他にも多くの条件に影響されます。
IRIの評価・解釈にはこうした臨床所見や条件も考慮することが大切です。

出典 CLINICIAN ’09 NO. 581 18
http://www.e-clinician.net/vol56/no581/pdf/sp05_581.pdf(IRI、CPR が異常値を示す疾患・病態が表で説明されています)


<番外編>
腸内細菌、大腸のがん化促進 米グループがマウスで解明
下痢を起こす腸内細菌の一種が、大腸のがん化を促進することを、米ジョンズホプキンス大のグループがマウスの実験で明らかにした。
胃がんでは、胃の中にいるピロリ菌が原因の一つとされているが、この腸内細菌も、似たような役割を果たしている可能性を示している。
23日付米医学誌ネイチャー・メディシンに発表される。

バクテロイデス・フラギリスという、人の腸内に常在している腸内細菌の一種。
人によっては何の症状も示さないが、下痢を起こすことで知られている。
毒素を作るタイプと作らないタイプがあり、グループは大腸がんを自然発生しやすくしたマウスに、それぞれを感染させて観察した。

すると、毒素型を感染させたマウスは下痢になり、大腸に炎症と腫瘍(しゅよう)が1週間以内にでき、がん化が早まった。
非毒素型は下痢を起こさず、大腸の炎症も腫瘍も認められなかった。
菌の毒素が免疫細胞を活性化させて炎症を起こし、がん化を促進しているとみられる。

また、毒素型を感染させたマウスは、炎症反応の引き金となる信号を送るたんぱく質が増えていた。
このたんぱく質が増えると、特定の免疫細胞が活性化されてIL17という因子が作られることが、もともと知られている。
IL17を働かなくさせたマウスで同様の実験をすると、腫瘍ができにくくなったことから、こうした因子を抑えることなどで大腸がんの治療につながる可能性も明らかになった。

今回の成果について、吉村昭彦・慶応大医学部教授(微生物・免疫学)は「人の大腸がんとの関係は今後、疫学調査などがされないと、まだわからないが、人の腸内細菌の毒素ががん化を促進することを実験的に示したことは画期的だ」としている。

http://www.asahi.com/science/update/0824/TKY200908230205.html
出典 asahi.com 2009.8.24
版権 朝日新聞社




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by wellfrog3 | 2009-08-26 00:58 | 糖尿病

急性心筋梗塞患者の死亡率と病院間格差

急性心筋梗塞患者の死亡率と病院間格差、米国で減少
米国の65歳以上の急性心筋梗塞患者2,755,370人の退院データ3,195,672件を分析したところ、患者のリスクの相違を補正した病院単位の入院30日後の総死亡率は、1995年の18.8%から2006年の15.8%に低下し、死亡率の差に病院の違いが占める寄与率は4.4%から2.9%に低下した。
論文はJournal of the American Medical Association 2009年8月19日号に掲載された。

1990年、米国心臓病学会と米国心臓協会は共同で、急性心筋梗塞に関してエビデンスに基づく初めての診療ガイドラインを公表した。
1992年には、現在メディケア・メディケイド・サービスセンターとなっている組織が、急性心筋梗塞に関する病院診療の質の測定を全国規模で開始した。

診療の質の改善に関するこれらの努力が行われてきたが、先行研究は一部の地域等で、患者個人を単位とする調査に限られていた。
著者らによれば、全国規模で、病院を単位とする調査は、今回が初めてという。
今回の調査は、65歳以上の高齢者を対象とする連邦政府の医療保険メディケアのデータを使って行われた。
1995−2006年の全期間を通して、毎年1例以上の急性心筋梗塞患者を診療した病院は3,054施設だった。

1995年には、患者の総死亡率が全国平均より偏差値で10高い病院と比べて、平均より10低い病院の総死亡率は1.63倍だった。
2006年にはこれが1.56倍に低下した。
また、病院間の総死亡率のばらつきを表す変動係数(死亡率の標準偏差を平均値で割った値)は11.2%から10.8%に、四分位範囲(上位25%の病院と下位25%の病院の差)は2.8%から2.1%に減少した。
平均在院日数は、7.9日から7.0日に減少した。

比較のために、急性心筋梗塞以外の全疾患について、患者のリスクの相違を補正した30日後の死亡率を算出したところ、1995年は9.2%、2006年は8.8%と、急性心筋梗塞と比べて低下は小さかった。

著者らによると、1992年に開始された診療の質を改善する動きは、努力の焦点を、個別の診療ミスから、診療全体の質の測定と改善に移してきた。
このことが、今回の診療成績の向上と病院間格差の減少につながったと考察している。


30日死亡率の絶対値の差を見ると、18.8%−15.8%=3.0%で、あまり大きな減少には見えない。
しかしその比を見ると、(18.8%−15.8%)/18.8%=16.0%で、死亡率が約1/6(16.0/100)減少していることになる。
著者らはこれを「著しい減少」(a marked reduction)と評価している。
論文には、横軸に病院ごとの死亡率、縦軸に病院数を示したヒストグラムが表示されているが、1995年と2006年を比べると、全体の分布が大きく左に(低死亡率に)シフトしていることが分かる。

日本ではがん診療の「均てん化」(地域差、施設差の改善)が政策課題となっているが、全国規模できちんと評価しようとすれば、今回のような超大規模なデータを使った分析が必要になることを示している点で、参考になる研究だろう。
http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51685189.html

Reduction in Acute Myocardial Infarction Mortality in the United States
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/302/7/767



<番外編>
ビール愛飲家にとってはドキっとするようなニュースです。

1日1杯のビール、がんになるリスク高める可能性=研究
ビールなどのアルコールを定期的に摂取する男性は、複数のがんになるリスクが高くなる可能性があるという。
カナダ・マギル大学の研究チームが発表した。

同研究チームは、約3600人の35歳から70歳までのカナダ人男性を対象に調査を実施。
少なくとも1日に1杯のアルコールを飲む人は、時々、あるいは全くアルコールを飲まない人に比べて、複数のがんになるリスクが高いことが分かった。

発症リスクが増大するのは、食道や胃、大腸、脾臓(ひぞう)、肝臓、前立腺などのがんだという。
http://www.excite.co.jp/News/odd/E1251106653700.html


<ビールと発がん 関連サイト>
「ビールの発がんプロセス抑制作用」
http://kirin-foodresearch.jp/R&D/a_page_1.html
■最近の疫学的な研究では、アルコールの適量摂取が発がんリスクを低減させるとの報告がされています。
■これまでの研究を通じて、ビールには、アゾキシメタンによって誘発される大腸発がん、肉や魚の焦げに含まれるヘテロサイクリックアミンによる細胞や動物組織のDNA変異及び大腸前がん病変形成を抑える作用があることがあきらかになっています。

ビールに前立腺がん予防効果 1日17本飲めば 米大学
http://www.asahi.com/science/news/JJT200606130002.html

ビールから抗がん成分発見、効果を得るには大量摂取必要。
http://www.narinari.com/Nd/2006066088.html

大腸がんモデルラットにおけるビールの発がん抑制作用
http://kirin-foodresearch.jp/R&D/syousai_a_1_01.html


<コメント>
ビールは発がん、発がん抑制。
いったいどっちなんでしょうか。


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by wellfrog3 | 2009-08-25 00:36 | 循環器科

検診の効果

ヨーロッパ9カ国の住民、大半が検診の効果を過大評価

EU8カ国とロシアの人口を代表する10,228人に調査を行ったところ、女性の92%がマンモグラフィー検診による乳がん死亡率の低下を一桁以上過大に回答するか「分からない」と回答し、男性の89%がPSA検診による前立腺がん死亡率の低下について同様の回答をした。論文はJournal of the National Cancer Instituteのサイトに2009年8月11日掲載された。

調査は2006年、独、仏、英、オーストリア、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランド、ロシアで行われた。EU諸国には、政府によるマンモグラフィー検診プログラムがある。PSAは、政府による検診プログラムはない。

マンモグラフィーの効果については、女性に次のように質問した。「40歳以上の一般住民の女性1,000人が2年に1回マンモグラフィーによる乳がん検診に参加しました。10年後に効果を測定しました。検診に参加したグループでは、参加しなかったグループと比べて、乳がん死亡がどれだけ少なくなるかを見積もって下さい。」

回答の選択肢は、1,000人中0人、1人、10人、50人、100人、200人、「分からない」とした。その結果、正しい回答(1,000人中1人)を選んだのは対象者の1.5%に過ぎず、92.1%が「10人」以上という過大評価か「分からない」を選んだ。6.4%が「0人」と回答した。過大評価の回答の割合は、検診受診率の高いフランス(受診率78%)、オランダ(85%)、英国(75%)で高かった。

男性のPSA検診の効果についても、50歳以上の1,000人が2年に1回参加するという設定で、女性のマンモグラフィー検診と同様の質問をし、同じ選択肢から選んでもらった。その結果、正しい回答(1,000人中0人または1人)を選んだのは10.7%で、89.3%が「10人」以上という過大評価か「分からない」を選んだ。過大評価の回答の割合は、フランス、オーストリア、オランダ、スペイン、英国で高かった。

調査の対象者には、検診の対象にならない若年層も含まれていた。しかし、検診のターゲットになる50−69歳のグループで、過大評価の割合が低くなるということはなかった。また、医師への相談回数やパンフレットの利用機会が増えると、かえって過大評価の割合が高まる傾向が見られた。

こうした結果から著者らは、「検診への参加について、正確な情報を知らされた上で決定を下す(informed decisions)ための前提は、ヨーロッパにはほとんど存在しない」と結論している。

⇒検診の効用を過度に強調するこれまでの広報のあり方を考えれば、これは意外なデータとは言えないが、それにしても数値で示されると驚きを新たにする。仮に日本で同じ調査を行ったとして、質的な結果は今回とほぼ同様になると容易に予想がつくが、量的な数値としてどんな結果になるか、懸念されるところだ。

http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51682813.html


Public Knowledge of Benefits of Breast and Prostate Cancer Screening in Europe
http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/djp237v1


<番外編>
日病協代表者会議 新型インフル対策への要望書を提出へ 日医常任理事の勤務医発言は「問題発言」
Japan Medicine(じほう)2009.8.19
■日本病院団体協議会の代表者会議が12日開かれ、会議後の記者会見で小山信彌議長(日本私立医科大学協会病院部会担当理事、東邦大医学部教授)、邉見公雄副議長(全自病会長)は、新型インフルエンザ対策に関する要望書を今月中にも提出する方針とした。
■さらに、日病協では、中医協で日本医師会の藤原淳常任理事が「本当に勤務医は逃げ出すほど忙しいのか疑問を感じている」と発言したことに対して、勤務医の業務環境に対する理解が足りない問題発言であるとの認識で一致した。

 
■新型インフルエンザの新たな運用指針で厚生労働省は、院内感染対策の徹底をはじめ、原則としてすべての一般医療機関で外来診療を行うことや入院措置は実施せず自宅療養とするが、感染症指定医療機関以外においても重症患者の入院受け入れを行うことなどを発表した。
重症患者のための病床は、都道府県等が確保することとしている。

感染者用の空床補償などを要望
これを受け日病協に属する医療機関は、引き続き新型インフルエンザに対して積極的に対応していくが、施設整備や財政支援が不可欠としている。
そのため、
<1>感染者用入院病床確保のための空床補償
<2>感染防御装備、簡易検査キット、テントなどの資器材の整備、タミフルなどの十分な配布と、そのための費用の補填
<3>感染者と非感染者を分離する施設改修費の補填
-などを要望していく予定だ。

新型インフルエンザ対策について病院関連団体では、全国自治体病院協議会が6月に要望書を提出している。
その際には、新型インフルエンザ対策に掛かる施設整備費や診療を行う医療従事者に対する補償制度、医療物資の供給確保などを要望していた。

一方、日医の藤原常任理事(中医協委員)は、5日の中医協でさらに「本当に勤務医は逃げ出すほど忙しいのか疑問を感じている。何を重点的に考えるのか、診療報酬だけでなく総合的に考えてほしい」と強調した。

これに対して西澤寛俊委員(全日本病院協会長)が、「勤務医が果たして大変なのかという発言があったが、この認識は改めてほしい。病院を紹介しますから、現場を見てから発言してほしい」と反論。この経緯が代表者会議に報告され、各団体の代表者から勤務医への現状認識が乏しく、遺憾とする認識で一致したものだ。
今後の対応について、邉見副議長は、議長一任と答えた。
http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=105979&categoryId=&sourceType=GENERAL&


<コメント>
日医常任理事の不用意な発言が開業医と勤務医を含めた病院との溝を深めています。
現在の日医もどっかの政党のようにそろそろ「終わっている」のではないでしょうか。


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by wellfrog3 | 2009-08-24 00:34 | その他

ホルモン補充療法と卵巣癌

JAMA2009.7.15に掲載された「50−79歳のデンマーク人女性全員909,946人を1995−2005年まで追跡したところ、閉経後のホルモン剤治療により上皮性卵巣がん(2,681例)のリスクが1.44倍に上昇した」という論文で勉強しました。
「50−79歳のデンマーク人女性全員」というところがすごいところです。
1960年に導入された国民総背番号を使い、薬剤処方登録、地域がん登録など7種類の全国登録を組み合わせて行った、巨大な疫学研究ということです。

#ホルモン補充療法と卵巣癌のリスク
Hormone Therapy and Risk for Ovarian Cancer
いくつかの観察研究において、ホルモン補充療法(hormone therapy:HT)は、卵巣癌のリスクの上昇と関連付けられてきた。
この新しい研究では、デンマークの研究者らは、卵巣を少なくとも1個有し、ホルモン感受性癌の認められない女性900,000人(年齢範囲50~79歳)をプロスペクティブにフォローアップした。
卵巣癌の発症を薬局登録データと関連付けた。

平均8年のフォローアップ期間中、上皮性卵巣癌2,681件が診断された。
多くの人口統計学的因子および生殖関連因子で補正後の解析では、上皮性卵巣癌のリスクは、何らかのHTを使用中の者で44%(高度に有意)、過去の使用者で15%(かろうじて有意)上昇した。HT中止後はリスクが低下し、2年後にベースライン時の値に近づいた。
estrogen単独療法とestrogen+progesterone併用療法の間にリスクに差は認められず、使用期間とリスクの間に関連性は認められなかった。
持続的療法と周期的療法のリスクはほぼ等しく、異なるprogesterone薬物のリスクもほぼ等しかった。
経皮的estrogen投与では13%、経膣的estrogen投与では23%リスクが上昇したが、いずれのリスクも、経口投与のリスクと比較して、統計学的な差は認められなかった。
絶対リスクは、HT使用者8,300人につき約1件の卵巣癌症例の超過であった。

コメント:
バイアスや交絡の原因が多様に存在するため、HTと卵巣癌を関連付ける観察研究は、ランダム化研究ほどの重みはない。
しかし、いくつかの大規模研究がほぼ同じ結論に達したことから、患者とHTについて話し合う際には、たとえ絶対リスクが低いとしても、卵巣癌のリスクを伴う可能性がある点を盛り込むべきである。
今のところ、期間、用量、HTの種類に基づいてリスクを解析する試みは、ほとんど価値がないようである。

— Thomas L. Schwenk, MD
Published in Journal Watch General Medicine July 28, 2009

Citation(s):
Mørch LS et al. Hormone therapy and ovarian cancer. JAMA 2009 Jul 15; 302:298.


http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW09-0728-01.html

2009 July 28


ホルモン補充療法により卵巣癌(がん)リスクが増大
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20090723hj001hj



以下は2007年Lancet誌に報告された、今回と同規模(948,576人、卵巣がん2,273例)の英国の追跡調査です。
<関連研究>
#ホルモン補充療法で卵巣癌リスク上昇
#罹患リスクは1.2倍、死亡リスクは1.23倍に
ホルモン補充療法(HRT)と卵巣癌リスクとの間には相関関係があるのだろうか。
英国Cancer ResearchのValerie Beral氏らは、大規模コホート研究により、HRT経験のない女性に比べ、HRT中の女性の卵巣癌罹患リスクは1.2倍、卵巣癌による死亡リスクは1.23倍であることを示した。
詳細は、Lancet誌2007年5月19日号に報告された。

英国で行われたUK Million Women Studyは、長期的なHRTと乳癌の関係を示したことでその名を知られている。
この研究に登録され、1996年から2001年に乳癌のスクリーニングを受けた130万人の閉経女性のうち、HRT歴などに関する情報が揃っており、癌の既往がない、両側卵巣摘出術を受けていないなどの条件を満たした約95万人について、卵巣癌と卵巣癌死のリスクを調べた。

コホート研究では、卵巣癌と診断されるまで、または卵巣癌死まで追跡し(卵巣癌罹患が平均5.3年、死亡については6.9年)、それらイベントが発生しなかった女性については、試験期間終了まで追跡した。

卵巣癌の相対リスクは、年齢と子宮摘出の有無で患者を層別化し、居住地域、社会経済的要因、閉経からの年数、出産経歴、BMI、飲酒、経口避妊薬の使用で調整し、Cox回帰モデルを用いて算出した。

計94万8576人(登録時の平均年齢は57.2歳)のうち、HRT歴に関する質問を最後に行った時点で、28万7143人(30%)が治療中、18万6751人(20%)が過去に治療経験ありと回答した。
治療経験なしは47万4682人(50%)。

5億人-年を超える追跡において、2273人が卵巣癌を発症、1591人が卵巣癌で死亡した。
そして、治療経験なし群に比べ、治療中群では、卵巣癌、卵巣癌死ともに有意に多かった。
卵巣癌の相対リスクは1.20(1.09-1.32、P=0.0002)、卵巣癌死の相対リスクは1.23(1.09-1.38、P=0.0006)となった。
さらに、治療中群の卵巣癌罹患率は治療期間と相関しており、5年以上治療継続で有意なリスク上昇が見られた。

なお、治療に使われた薬剤のタイプ(エストロゲンのみが30%、エストロゲン・プロゲステロン併用が59%、その他が11%)、投与法等によるリスクの差は認められなかった。

このほか上皮性卵巣癌と非上皮性卵巣癌の患者の間で、相対リスクに有意差はなかった。
しかし、患者の95%を占めた上皮性卵巣癌の中では、腫瘍の組織学的分類によって、リスクに有意な差が認められた(P<0.0001)。
治療経験なし群に比べ、治療中群の相対リスクは、粘液性腺癌(1.53、1.31-1.79)で大きかった。
それ以外については、漿液性腺癌(0.72、0.52-1.00)、類内膜腺癌(1.05、0.77-1.43)、明細胞腺癌(0.77、0.48-1.23)となった。

なお、過去に治療経験あり群では、卵巣癌、卵巣癌死ともにリスクに有意な上昇は見られなかった。

卵巣癌の5年間1000人当たりの標準化罹患率は、治療中群2.6人(2.4-2.9人)、治療経験なし群2.2人(2.1-2.3人)。
卵巣癌死については、それぞれ1000人当たり1.6人(1.4-1.8人)と1.3人(1.2-1.4人)だった。

以上の結果に基づいて、著者らは、「1991年以来のHRTの適用により、英国では、2005年までに、卵巣癌罹患者が1300人、卵巣癌による死者が1000人増えたと推算できる。
さらにHRTにより、乳癌と子宮体癌のリスクも上昇すること、これら3つの癌は英国人女性の癌の39%を占めることから、HRTのリスクを重く感じている。
これら3つの癌の罹患者率は、5年間1000人当たりで、治療中群31人、治療経験なし群19人になる」と指摘している。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200706/503393.html

原題「Ovarian cancer and hormone replacement therapy in the Million Women Study」
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673607605340/abstract


<きょうの一曲> All My Life
Karla Bonoff - All My Life
http://www.youtube.com/watch?v=2xUCHcM9duw&hl=ja


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)
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by wellfrog3 | 2009-08-23 00:10 | 産婦人科

新型インフルエンザからがん患者を守れ

東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 客員研究員の成松宏人先生の「新型インフルエンザでがんの化学療法ができなくなる可能性がある」という記事で勉強しました。


成松 宏人(なりまつ ひろと)先生のプロフィール
1999 年名古屋大学医学部卒、2008年同大学院修了。医学博士、総合内科専門医、血液専門医。血液内科医として愛知県厚生連昭和病院(現江南厚生病院)、豊橋市民病院などに勤務。現在は東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門で、以前より取り組んでいる「従来型」のがん臨床研究に加えて、従来とは異なる社会的アプローチからのがん臨床研究を展開中。



新型インフルエンザからがん患者を守れ
今春の流行で関西では献血者が3割以上減、病原体不活化技術が必須
新型インフルエンザでがんの化学療法ができなくなる懸念
今年春の新型インフルエンザ騒動は、医療関係者に危機管理について課題を突きつけた。
2009年5月、関西地区にて献血者数が当初の計画よりも約34%も減少したと報告されている。
これは新型インフルエンザの感染の拡大により外出を控える人が増えたことなどが原因だろう。
今まで、WHO(世界保健機関)は、新型インフルエンザが大流行した場合の献血者は約25%減少すると見積もっていたが、日本における減少率は大幅にそれを上回った。
新型インフルエンザのパンデミックが起こった際には、必要な輸血ができなくなることが以前から懸念されていたが、それが現実化しようとしている。
特に血小板輸血の供給への影響は深刻だ。常温で保管するために4日しか保存できず、在庫調整が困難なためだ。
血小板輸血ができなければ、血小板輸血を必要とするような化学療法が必要ながんの治療は制限されてしまう。

輸血の病原体不活化技術で保存期間が延長
輸血血液の病原体不活化技術とは、血液を処理し核酸を壊すことによって、ウイルス、細菌、原虫などの病原体を殺す技術だ。
この不活化技術は、新型インフルエンザのパンデミックが発生した際の非常事態に有用である可能性を、一部の専門家が指摘している。
少し専門的になるが、血小板製剤の不活化技術の一つにソラレン誘導体を用いる方法がある。
ソラレンはレモン、セロリなどの食品に多く含まれる化合物。
この不活化技術により、保存中の細菌増殖を抑制することができるため、血小板製剤の保存期限を現在の4日から7日に延ばすことが可能になる。
そして、保存期間が延びれば、在庫調整が容易になり、製剤の有効活用が可能になる。
つまり、比較的製剤の充足している地域から、不足している地域に製剤を回すことができる。

不活化技術をめぐる状況―不活化を義務づける国も
ソラレン誘導体を用いる不活化技術は、実は世界的には一般的な技術になりつつある。
具体的にはEU(欧州連合)16カ国、東南アジア諸国では既に承認されている。
中国、韓国でも審査を行っている最中だ。
これらの国々の中で、ベルギーでは不活化を義務づける法律(国王令)が最近発表された。

一方、米国はこの不活化技術に関して比較的慎重だ。
しかし、その米国でも治験が既に終了し、承認申請がされている。
現在、FDA(米食品医薬品局)は不活化技術を導入する際にはベネフィット(利点)とリスクを十分に見極める必要があると表明している 。
インフルエンザの再流行に備える米国で、FDAがどのような判断を下すか興味深いところだ。

日本では、血液事業を独占する日本赤十字社が不活化技術の導入を検討はしているが、安全性に関するリスクを重視して 、治験開始の目途も立っていない状況にある。
日本の状況は上に述べた諸国と比べて、議論すら進んでいないという点で際立っている。
この7月、筆者らの研究グループは不活化技術に関する新型インフルエンザ流行時の有用性について指摘する論文を、輸血分野での世界最高峰の学術雑誌であるTransfusion誌に投稿したが、残念ながら不採用になった。
その理由は、既に我々の指摘は(世界の専門家の間では常識で)、今さら議論するまでもないというものだった。

ベネフィットとリスクを勘案した議論が必要
ここで、新型インフルエンザの流行に備えて、日本に血小板製剤の不活化技術を導入した場合のベネフィットとリスクをもう一度整理してみる。
一番のベネフィットは、輸血製剤の保存期間が延び、在庫調整が容易になり、製剤の有効活用が可能になることだろう。
これによって新型インフルエンザの大流行時に救われるがん患者さんは相当数に上るとみられる。一方で最大のリスクは、輸血製剤に添加物を加えることによって、何らかの副作用生じる可能性だ。
今までの研究では、不活化技術を導入により輸血の副作用が多くなることが指摘されたことはない 。
人種により、副作用の頻度や重症度が変わることが指摘されたこともない。
しかし、日本において不活化技術を導入した際に、今まで海外では言われていなかったような、副作用が発生することは完全には否定できない。
筆者は、不活化技術の導入の是非は、これらの新型インフルエンザ大流行時のベネフィットとリスクを議論し、最終的にはどちらに重きを置くのかを判断せざるを得ないのではないかと考えている。

真のステークホルダーは誰か?
不活化技術を認めないと判断すると、新型インフルエンザ流行時に輸血製剤の不足で大混乱になる可能性がある一方で、認めた場合に未知の副作用が起こる可能性も完全に否定はできない。
このような重大な判断は容易にできるものではない。
「審議会」の中心である厚生労働省や日本赤十字社、一部の輸血専門家であっても同様だろう。筆者は、この点こそが、この問題の議論があまり進まない最大の原因ではないか(もちろん他にも原因はあるだろうが)と考えている。

筆者はこの問題について判断ができるのは、当事者だけだと考える。
言い換えれば、判断の結果の影響を受けるステークホルダー(利害関係者)だ。
では、この問題のステークホルダーは誰か。まず、第一に輸血療法を必要としている患者、次に将来患者になる可能性のある市民、そして患者の利益の最大化を職業的な使命としている医療関係者だろう。

問題の解決に向け「当事者」の議論が必要
筆者は問題をこの問題を解決するためには、徹底的な情報開示、そして、合意形成のためのステークホルダーによる徹底的な議論が急務だと考えている。

まず必要なのは情報開示。今まで、この問題の検討に担当してきた、厚生労働省や日本赤十字社、輸血療法専門家の方々は、今までの経緯やこれまで検討した不活化療法のベネフィットとリスクをそれぞれの専門家の立場から、積極的にかつ分かりやすく情報開示することが必要だろう。
特に、「分かりやすい」というのが重要だ。既に、不活化に関する審議会の内容など、かなりの情報が公開されている。
しかし、これらを専門外のステークホルダーが理解するのは極めて困難な状況にある。

次に議論。
現時点では既存学会が受け皿を提供するのが現実的だと思う。
しかし、この不活化技術自体は、多くの国で承認されていることからも分かるように、技術論自体はかなりの部分が確立されている。
今までの議論の中心であった、輸血の専門学会ではなく、がんや血液疾患の治療に従事する医療関係者が所属する学会で議論を行う段階に来ていると思う。
さらに、筆者はこの問題の情報開示や議論を活発化させる際には、近年急速に発達しているオンラインの医療メディアがかなりの役割を果たすことが可能ではと期待している。

時間はそれほど残されていない
筆者は今でも、日本の医療は世界最高水準のすばらしい医療と考えている。
今の医療の枠組みを作った先人の方々の努力は尊敬に値すると思う。さ
ながら、厚労省版「官僚たちの夏」ではなかったかと、勝手に想像する。
しかし、社会は多様化した。
一部の専門科や担当者では、とても判断できない問題はこれからも増え続けるだろう。
大げさかも知れないが、この不活化技術の導入問題は、今後の日本の医療のあり方を決める一つの試金石になるように思う。

新型インフルエンザは今秋には第二波が上陸することが懸念されていることを考えると、実はあまり時間は残されていない。
この問題を解決するためには、市民、患者そして現場の医療関係者一人ひとりが早急に議論に加わることが何よりも必要だ。


http://www.m3.com/iryoIshin/article/104785/


<番外編>
#放射性医薬品、供給ピンチ カナダ原子炉停止、輸入急減
乳がんや前立腺がんの転移の診断に使われる放射性医薬品の原料「モリブデン99」の供給がピンチに陥っている。100%輸入に頼っており、主要製造元のカナダの原子炉がトラブルで長期間、生産できないためだ。発売元の日本アイソトープ協会はオランダや南アフリカの原子炉から取り寄せているが、輸入量は4割ほどに落ち込み、医療現場ではすでに影響が出始めている。

 放射性医薬品は、特定の臓器や細胞に集まりやすい薬に微量の放射性同位元素(RI)を組み合わせたもの。静脈注射などで体内に入れ、目的の臓器や組織に集まったところで薬が放つ放射線を専用のカメラで撮影、画像化する。患者に苦痛はなく、脳や心臓の血流状態、腎臓の機能など様々な診断ができる。放射性医薬品を使った核医学検査は、全国約1300の病院や医療機関で年間100万件に上る。

 国内で供給される放射性医薬品の85%が、モリブデン99とそれを元に作られるテクネチウム99mで占めている。モリブデン99は、カナダ、オランダ、南アのほか、ベルギー、フランスの計5カ所の原子炉で世界の需要の90%以上が生産されている。とくにカナダは世界の3分の1を生産しているが、原子炉が重水漏れを起こし、今年末まで運転は再開できない見込みだ。

 放射性医薬品は、人体への影響を少なくするために放射線を出す能力が半分になる期間(半減期)が数時間から数日と短い同位体が使われる。そのため、薬としての寿命も短く、貯蔵できない。日本アイソトープ協会は、カナダからの供給が途絶えた5月末から、オランダや南アから急きょ取り寄せ始めた。だが、十分な量が確保できる保証がないのが現状だ。

 富山県の砺波総合病院では例年1カ月に140件前後あるRI検査が、5月以降3〜4割に減った。絹谷啓子・核医学科部長は「検査ができるまで手術を延期したり、別の検査で代用したりしているが不便」と話す。日本核医学会(理事長・遠藤啓吾群馬大教授)は影響を調べるため、近くアンケートを始める。遠藤理事長は「ギリギリの状態で踏ん張っている医療機関が多い。ただ、現状を知っても改善は難しい」と頭を抱える。

 日本学術会議は昨夏、国内の原子炉や加速器を使ってRIを製造することを提言していた。日本原子力研究開発機構も廃炉予定だった材料試験炉「JMTR」(茨城県大洗町)を改修し、RIを製造する検討を始めているが、めどは立っていない。

出典 asahi.com 2009.8.19
版権 朝日新聞社


<新型インフル>流行期入り 厚労省「経験ない状況に直面」
http://www.excite.co.jp/News/society/20090821/20090822M40.107.html
毎日jp 2009.8.21
■厚労省は、他人に感染を広げないことが重要だとして、急な発熱やせきの症状がある場合、いきなり医療機関に行くのは控え、かかりつけ医や保健所の発熱相談センターにまず電話するよう求めている。
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by wellfrog3 | 2009-08-22 00:18 | 感染症