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メモ

 
 
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by wellfrog3 | 2009-09-30 12:40

オセルタミビル使用に関する注意

##WHOがオセルタミビル使用に関する注意を呼びかけ
世界保健機関(WHO)は9月25日,抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビル)の使用に関する注意を呼びかけた。

#重篤な免疫抑制状態にある人への長期投与,予防投与でリスクが高まる
現在,世界で28例のオセルタミビルに耐性を示す新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)ウイルスが確認されている。
すべての株に同じ変異が見られ,ザナミビルへの耐性は確認されていない。
現在のところ,重篤な症状を示すなどの問題はないが,20例がオセルタミビルの予防投与と関連することがわかっている。
また,6例は重篤な免疫抑制状態にある患者から,4例が治療投与を行った患者から分離されたという。

こうした点を踏まえ,WHOでは,オセルタミビル耐性が出現するリスクの高い症例として
○重篤な易感染性,免疫抑制状態にあり,インフルエンザの病期が長引く患者にオセルタミビルを投与した場合(特に長期間にわたり投与する場合)
○他のインフルエンザ患者と接触後にオセルタミビルの“予防投与”を受けている,または同薬を服用したにもかかわらず症状が発現した場合
を挙げ,これらの症例には注意深く対応するよう呼びかけた。
そして,インフルエンザ重症化のリスクが高い人や合併症のある人がインフルエンザ患者と濃厚接触した場合には,注意深く経過を観察し,症状が見られたら早めに抗ウイルス薬による治療を開始することも選択肢の1つだとしている。

WHOは,今後新型インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の使用量が増えるにつれ,耐性ウイルスの報告も増加することから,耐性発現に関して早期の臨床試験が望まれると述べている。
出典 MT pro 2009.9.29
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
昨夜NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で「新型インフルエンザを食い止める」という番組をやっていました。
進藤奈邦子先生。
魅力的で奇麗な先生でした。

WHOメディカルオフィサー・進藤奈邦子
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/090929/index.html

番組では一生懸命感動を伝えようとした演出が鼻についたこともありますが、なんだWHOってこんなレベルなんだと思ったのが率直な感想です。
無防備な格好で新型インフルエンザの重症患者をICUで真剣に聴診する姿。
一体聴診で何を知ろうとしているのでしょうか。
ウイルス性肺炎が聴診で分かるのでしょうか。
少し違和感を感じてしまいました。


##インフルエンザ脳症ガイドラインを改訂
#厚労省研究班,新しい定義・治療方針など示す
厚生労働省(厚労省)のインフルエンザ脳症研究班は2009年9月28日,インフルエンザ脳症ガイドラインの改訂版を公表した。
2005年の作成後,初の改訂で,新たな知見をもとにインフルエンザ脳症の新しい定義,治療方針などを示している。

#脳症と診断される前から「支持療法」を
改訂版では,
(1)けいれん重積型インフルエンザ脳症の病像が明らかになったことなどからインフルエンザ脳症の新しい定義を示した(表),
(2)全身状態の管理を目標にした「支持療法」※を積極的に行う治療法として重要性を強調した,(3)「特異的療法」(抗ウイルス薬,メチルプレドニゾロン・パルス療法,ガンマグロブリン大量療法)について可能な限りエビデンスを追加した,
(4)リハビリテーションとグリーフケアの項に脳症家族の会「小さないのち」の意見をさらに広く取り入れた
―ことなどが主な変更点となっている。

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治療指針としては,支持療法をインフルエンザ脳症と診断される前の段階から十分に行うことを強調。
また,特異的療法におけるオセルタミビルの使用については,脳症自体への治療効果,予防効果は証明されていないものの,速やかに解熱し,病状が改善することを介しての効果が期待されることから,脳症疑いの段階で使用の考慮を推奨している。

研究代表者の森島恒雄氏(岡山大学大学院小児医科学)は,「新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)による脳症の基本的な病態は季節性インフルエンザ脳症と大きな違いはないと考えられる」とし,改訂版の普及,活用を呼びかけている。

※PALS2005に基づいたlife support,けいれん重積状態への対処,体温管理,脳圧亢進の対処,搬送が含まれる。
出典 MT pro 2009.9.28
版権 メディカル・トリビューン社


<参考>
インフルエンザ脳症ガイドライン「改訂版」
http://www.jpeds.or.jp/influenza/influenza090928.pdf


##輸入予定の新型インフルエンザワクチンの中間解析
##国産とどう違うのか
東札幌病院副院長・化学療法センター長 平山 泰生先生
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090906.html
出典 MT pro 2009.9.29
版権 メディカル・トリビューン社
#研究の背景:アジュバント入り輸入ワクチンの投与回数が議論に
■厚生労働省は新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)ワクチンの接種順位の第1グループとして医療従事者,妊婦および基礎疾患を有する患者,就学前の小児などを挙げ,10月にも任意による国産ワクチン接種を開始することを計画している。
国産ワクチンは免疫増強剤(アジュバント)を使用していないため,2回接種が必要とされている。

第2グループとして10歳代以下の児童や学生,基礎疾患のない高齢者を対象として輸入ワクチンの任意接種を考慮している。
輸入ワクチンに関しては国内で9月16日からノバルティスファーマ社の臨床試験が開始された。
安全性と有効性が追認できれば12月以降に第2グループに投与開始となるが,輸入ワクチンはアジュバントが含まれており1回接種とするか2回接種とするかは議論があり決定していない。
ワクチン供給量は不足しているので1回接種でよいのであれば,接種できる人数が2倍となるメリットがある。

#研究のポイント:1回接種で8割以上が抗体陽性に
■最も頻度の高い局所あるいは全身の副反応は接種部位の疼痛(70%)および筋肉痛(42%)であった。
2人は初回接種後38℃以上の発熱を示した。重篤な副反応は見られなかった。

#考察:輸入ワクチンには不明点も多く,情報提供と市販後調査が重要
■今回紹介したワクチンは国産ワクチンのような有精鶏卵ではなくイヌ腎臓由来の細胞を利用している。
これにより従来4~6か月かかる製造を約1か月早めることが可能になり,欧州数か国で製造承認されている。
また,国産ワクチンでは使用していないアジュバントを使用している。
投与されたアジュバントと抗原は樹状細胞に取り込まれ,所属リンパ節に移動し,T細胞領域で免疫提示をするが,この経路のうちアジュバントは投与局所での抗原の樹状細胞への取り込み促進と,抗原の局所での持続的な提供を強化すると考えられている。
このアジュバント入りワクチンは1997年から海外において季節性インフルエンザで使われており,臨床試験では1万6,000例,一般臨床では4,000万例以上の実績がある。
しかし,大腿四頭筋萎縮など筋短縮症の問題により筋注を取りやめた日本では,欧米と異なり皮下注射となることが予想され,疼痛や腫れはアジュバントにより強くなる可能性が指摘されている。

本研究ではアジュバント非添加ワクチン投与群なども設定されているが,この中間解析では結果は公表されていない。

今回の第 I 相試験の主目的は少人数,短期間における有害事象の検討と至適投与量の決定である。100人への投与では重篤な副反応(有害事象)は認められなかったが,国産ワクチンと同様の安全性かどうかは明らかとは言えない。
国内での接種予定者には,適切な情報提供が必要であろう。

さて,ワクチン1回接種で満足できる抗体保有率の誘導が報告された。
しかし,対象としたのが18~50歳までの成人であり,日本で輸入ワクチン投与が予想される第2グループとしての10歳代以下の児童や学生,リスクのない高齢者への投与でもこれだけの効果が得られるかどうかは明らかではない。
ワクチンの供給量が不足しているなら,輸入ワクチンは原則1回接種でもよいと思われるが,抗体陽性率を検討する市販後調査が必要であろう。

Trial of Influenza A (H1N1) 2009 Monovalent MF59-Adjuvanted Vaccine -- Preliminary Report.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19745215



##新型ウイルスは季節性より感染力が長く続く可能性  カナダの報告
カナダ医師会雑誌(CMAJ)は,9月24日のニュースで新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)のウイルス検出期間が8日間程度と通常の季節性よりも長引く可能性があることを報じた。
調査対象となった症例のうち,8~13%程度で,罹患から8日経過してもなお,インフルエンザ症状が消失しているにもかかわらずウイルスが検出されたという。

#発症後2~4日の社会復帰は時期尚早
ケベック大学病院のGuy Boivin氏らは2009年5~7月までの間にインフルエンザを発症した65家族を対象に調査を実施。
調査に登録された173例に対し,最初に症状が出現してから8日目と10日目の検討を行った。

一緒に調査を行ったGaston De Serres氏(ケベック州立衛生研究所)は「一般的に季節性インフルエンザでは発症から7日以内にウイルスが検出されなくなり,排出が終わると考えられている。
今回の新型ウイルスでも多くの場合は同様だが,8~13%の人では8日経っても検出されることがあるようだ」とコメント。

なお,今回の検討では,10日目の時点で43例のウイルス確定例におけるウイルスの活動は見られなかった。

米疾病管理センター(CDC)をはじめとする各国の衛生担当局では,季節性インフルエンザと同様,新型インフルエンザでも解熱後24時間を待てば社会復帰が可能としている。
しかし,今回の知見から,同氏は「8日目でこれだけの割合の人からウイルスが検出されているとすれば,発症から2~4日後の復帰は時期尚早過ぎる」との見解を示している。
出典 MT pro 2009.9.28
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
#医師会はずし? 長妻厚労相が中医協の「日医」枠削減の方針 
長妻昭厚生労働相は28日、診療報酬の具体的点数を決める中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)について、開業医中心の日本医師会(日医)の代表委員を削減する方針を固めた。
中医協委員は厚労相が任命するが、慣例的に関係団体枠があり、歴代厚労相は日医などの推薦者を追認していた。
 
長妻氏は、診療報酬改定で、自民党を支援する日医が開業医に有利な形で影響力を行使してきたとみており、日医枠の一部を人員不足が深刻な勤務医の団体関係者に振り替えることなどを検討している。
 
厚労省の政務三役会議は同日、中医協の委員構成見直しを協議した。
中医協の定員は20人で、現在は健保組合など支払い側委員7人、日医など診療側委員7人、学識経験者など公益委員6人の3者で構成。
任期は2年で、10月1日で支払い側2人、診療側6人が任期満了となる。
 
平成16年の中医協汚職後の改革で関係団体の委員推薦制が廃止され、3者の定員内で厚労相が委員を任命できるようになった。
だが、実態は団体の意向通りの人選が続き、日医は3人の委員枠を確保している。
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090928/wlf0909281756001-n1.htm
出典 産経ニュース 2009.9.28 17:54
版権 産經新聞社
<コメント>
任期満了を迎える委員は
▽診療側=竹嶋康弘(日本医師会副会長)、藤原淳(同常任理事)、中川俊男(同)、西澤寛俊(全日本病院協会会長)、邉見公雄(全国公私病院連盟副会長)、山本信夫(日本薬剤師会副会長)
▽支払側=対馬忠明(健康保険組合連合会専務理事)、高橋健二(全日本海員組合中央執行委員)
ということです。
中医協の設置根拠となる社会保険医療協議会法では、委員任命の際、診療側については「地域医療の担い手を適切に代表し得ると認められる者」、支払側については「医療に要する費用を支払う者の立場を適切に代表し得ると認められる者」の意見を、それぞれ配慮することが定められています。
当然診療側からも委員が出る筈ですが、「日医枠の一部を人員不足が深刻な勤務医の団体関係者に振り替える」という発想も何だか短絡的なような気もしますが。
いずれにしろ政権与党に日医がどのように見られているかははっきりしました。


#深まる日医の苦悩 民主党シフトか否かで路線対立に発展も
自民党の有力支持団体である日本医師会(日医、唐沢祥人会長)が、民主党支持にシフトするかどうかで大きく揺れている。
鳩山政権の「日医外し」の動きに、発言力低下を危惧しているためだ。
自民党支持団体の象徴ともいえる日医が民主党に舵を切ることになれば、来夏の参院選への影響は計り知れない。
「民主党各議員に対して党幹部から『日医執行部とは会うな』との指示が出ているようだ」。
9月上旬、日医幹部は医療関係者との会合で、ため息交じりにつぶやいた。
 
8月の衆院選では一部地方医師会が民主党支持に回ったが、日医全体では自民党支持を明確にし、民主党の政策批判を展開した。
 
当然のことながら、民主党は反発。
選挙後、唐沢氏は鳩山政権にも政策提言したい意向を示すが、民主党医療関係議員の一人は「自民党ベッタリの日医の意見を、政策に反映させることは政党の信義としてあり得ない」と切り捨てる。
 
民主党とのパイプが築けないことに日医の動揺は広がっている。
来年の診療報酬改定において開業医の立場を反映させるためには鳩山政権との関係改善が急務だからだ。
「民主党政権が4年も続けば、日医は完全に発言力を失う」(日医幹部)との懸念も膨らむ。
 
「今後は自民党だけでなく、国会の議席数に応じて政治献金の配分を決めるべきだ」。
15日に行われた日医の政治団体・日本医師連盟の執行委員会では献金先の見直し提案が出された。
来年の参院選についても、自民党比例代表で出馬予定の西島英利参院議員(61)を「選挙区からの無所属とするか、擁立を白紙に戻すべきだ」との声が上がった。
 
医療費削減を続けてきた自民党に不満を抱いてきた会員も少なくない。
日医会長選が来年4月に迫り、政治路線対立はさらに激しさを増しつつある。
 
日医の前回参院選における集票は約18万6千票だが、各選挙区での存在感は小さくない。
民主党シフトとなれば、他団体の“自民党離れ”に拍車がかかる可能性もある。
参院選で与党を過半数割れに追い込みたい自民党にとっては大打撃だ。
「民主党が自民党支持団体に手を突っ込み始めたということだが、去る者を止める手立てもない」(自民党厚労族議員)との恨み節も聞こえる。
 
一方、日医には「自民党とは長い付き合いがある。支持政党をコロコロ変えては世間の信頼を失う」との意見も強い。
自民党支持の堅持か、民主党へのシフトか、それとも政治活動からの撤退か。
「医師会がバラバラになることが最悪の選択肢だ。そうなれば医療政策は政治に翻弄され続ける」(日医幹部)。
日医の苦悩は深まっている。
出典 MT pro 2009.9.25 19:37
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
「政治活動からの撤退」も選択肢にあるのなら是非この選択も考えていただきたいものです。
それにしても現医師会長の唐沢氏の3選出馬表明。
その神経がわかりません。
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by wellfrog3 | 2009-09-30 00:36 | 感染症

ホワイトホールII研究

北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟先生の書かれた記事で勉強しました。


見事に提示された糖尿病発症に至る自然史
英国のホワイトホールII研究から

研究の背景:自然史を十分に解明した研究はなかった
2型糖尿病は,遺伝的素因のもとに,インスリン抵抗性の増大が先行して生じ,その後に生じるインスリン分泌不全によってインスリン抵抗性を代償し切れなくなって発症すると考えられている。
しかし,その自然史を十分に解明した研究はなかったと言えよう。
そのようななか,英国の公務員を対象にした前向き観察研究であるホワイトホールII研究が,かなり見事にその自然史を提示してきたのでご紹介したい(Lancet 2009; 373: 2215-2221)。

研究のポイント1:約6,500人の英国人の健診データを後ろ向きに解析
ホワイトホール研究は1967年に始められた英国の公務員を対象とした観察研究であり,英国版フラミンガム研究とも言えるものである。
この研究では,既知の心血管リスク以外に社会階層(上級公務員と下級公務員の差)が死亡率に影響を与えているという興味深い知見をもたらしたのであるが,さらに心血管イベント発生のメカニズムを解明する目的で開始されたのがホワイトホールII研究である。
この研究では,下記のようなスケジュールで糖尿病についての検討(フォローアップ)がなされた。

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当初(第3期)から明らかな糖尿病であった者やHOMA(ホメオスタシス・モデル・アセスメント)の解析に適さない検体を除外するなどして,最終的に6,538人(男性4,642人,女性1,896人,91%が白人)の糖尿病未発症者の血糖やインスリンについての自然経過が解析された。
フォローアップ期間中に505人の糖尿病発症が確認され,この505人(糖尿病診断時期を0年とする)と非発症者(直近のフォローアップを0年とする)とを後ろ向きに比較したのが今回の研究結果である。

研究のポイント2:OGTT2時間値の上昇が空腹時血糖値の上昇に先行
空腹時血糖値と経口糖負荷試験(OGTT)2時間値の推移を見ると,糖尿病の発症(未発症者は直近のフォローアップ時,以下同)にさかのぼること13年前から既に糖尿病発症者の血糖値は非発症者より高値であった(空腹時血糖値98.5mg/dL vs. 94.7mg/dL,OGTT2時間値109.8mg/dL vs. 92.0mg/dL,図1)。

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空腹時血糖値はいずれの群でも年を追うごとに上昇していたが,その上昇の勾配は糖尿病発症者で急峻であった(0.5mg/dL/年 vs. 0.07mg/dL/年)。
これに対してOGTT2時間値は両群とも同様の勾配で上昇していた(0.92mg/dL/年)。

しかし,この状況は糖尿病発症6年前から様相が変化しており,糖尿病発症者では,発症6年前からOGTT2時間値が急に140mg/dL弱まで上昇していた。
この上昇は発症2年前までもう一度平衡状態になっていたが,その後はもう一度急峻に上昇し糖尿病発症に至っていた。

空腹時血糖については,糖尿病発症2年前から様相が変化し,糖尿病発症2年前から急峻に上昇して糖尿病発症に至っていた。

研究のポイント3:インスリン感受性の低下がインスリン分泌障害に先行
こうした血糖値の変動の背景を検討するべくHOMAのデータ※を見てみると,糖尿病発症13年前から既に糖尿病発症者のインスリン感受性は非発症者より障害されており,代償的にインスリン分泌は亢進していた(図2)。

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インスリン感受性は両群とも同様に低下していたが,糖尿病発症5年前から糖尿病発症者のみインスリン感受性の低下が急峻になっていた。
これに応じるかのように,長らく両群とも一定に維持されていたインスリン分泌能は,糖尿病発症4年前から糖尿病発症者のみで急峻に上昇したが,2年前からは低下し始め,糖尿病発症の時点では既に非発症者よりも低くなっていた。

山田 悟先生の考察:2008年の空腹時血糖正常値の上限変更は妥当だった
既存の研究で仮説として言われていたことが,ほぼそのまま証明されたようなグラフになっている。

糖尿病非発症者でもインスリン感受性が徐々に低下し, OGTT2時間値が徐々に上昇することは,経年的な筋肉量の減少や体脂肪の増加によるものなのであろう。
しかし,これらの変化はある程度までインスリン分泌によって代償されるので,非発症者では血糖値の上昇はきわめてわずかに抑制されている。

これに対して,当初からインスリン感受性が低い糖尿病発症者では,発症6年前から追加分泌能が極端に悪くなりOGTT2時間値が上昇,その結果なのか,発症5年前からインスリン感受性の悪化が加速し,発症4年前から空腹時血糖の上昇を抑制するための空腹時インスリンの需要がきわめて高くなり,発症2年前にその負担にβ細胞が応じ切れなくなって糖尿病発症に至る,というストーリーのようである。

時に健診で血糖異常を指摘されて外来を受診される方がおられる。
この研究で明らかにされた発症までの経過を考えれば,空腹時血糖値やOGTT2時間値が異常というだけで,糖尿病発症の直前ということがわかるし,この時点で積極的な治療(生活習慣介入)を実施しなくては,糖尿病発症から逃れられないことは当然であろう。
OGTT2時間値が140mg/dL超というのは,糖尿病発症まで2年を切っている可能性があるのである。
ゆめゆめ経過観察などと判定してはならないわけである。

そのように考えると,昨年(2008年),日本糖尿病学会が空腹時血糖の正常基準を100mg/dL未満とし,100~109mg/dLを正常高値と区分し直したことには,一定の価値がありそうである。

※この研究におけるHOMA指数はHOMA2計算ソフト(無償でオックスフォード大学から得られる)によって計算される指標である。
 
一般に使用されるHOMA指数では,インスリン抵抗性をHOMA-R=〔空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405〕で,インスリン分泌能をHOMA-β=〔空腹時インスリン値(μU/mL)×360/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)〕で求めるので,手計算が可能である。
 
しかし,HOMA2はもっと複雑な系(インスリン分泌,糖代謝,プロインスリン分泌,糖の尿排泄)を取り込んだホメオスタシスモデルで,コンピュータでないと計算できないようである(Diabetes Care 1998; 21: 2191-2192)。
 
一般のHOMA指数では,血糖値81mg/dL,インスリン値5μU/mLだとHOMA-R 1.0,HOMA-β 100と正常値になるのであるが,このHOMA2計算ソフトにこの数値を打ち込むと,HOMA2-%S 157.6,HOMA2-%B 88.2という数値が得られる。どうやら正常値も異なるらしい

出典 MTpro 2009.9.24
版権 メディカル・トリビューン社


<関連記事>
糖尿病診断基準に新判定区分
空腹時血糖値100~109mg/dLを「正常高値」に
空腹時血糖値による糖尿病の診断基準に新たな判定区分が設けられることになった。
日本糖尿病学会が委員会報告としてホームページに掲載したところによると,これまで正常域としていた空腹時血糖値110mg/dL未満のうち,100~109mg/dLは「正常高値」とするのが適切だという。

http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/uploads/photos/354.pdf

同学会では空腹時血糖値で正常高値と判定された場合は,経口糖負荷試験(OGTT)による診断を行うことなどを推奨している。

正常域と境界域との閾値引き下げの是非は国際的にも議論続く状況
わが国の糖尿病の診断基準は1999年に日本糖尿病学会が改定したものが広く用いられてきた。
それによると,空腹時血糖値126mg/dL以上またはOGTT2時間値200mg/dL以上を「糖尿病域」,同様に110mg/dL未満または140mg/dL未満を「正常域」と規定したうえで,
(1)空腹時血糖値,OGTT2時間値のいずれかが糖尿病域の場合を「糖尿病型」,
(2)いずれも正常域の場合を「正常型」,
(3)糖尿病型にも正常型にも属さない場合を「境界型」と判定する。
 
なお,糖尿病と診断するためには,別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上認められる場合,1回の検査で糖尿病型と判定され,かつ糖尿病の典型的症状,HbA1c6.5%以上,明らかな網膜症状のいずれかが認められる場合としている。

今回発表された「糖尿病・糖代謝異常に関する診断基準検討委員会報告」の骨子は,空腹時血糖値による判定区分「正常域」のうちの100~109mg/dLを「正常高値」と亜分類しようというものだ(図)。

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2003年以降,空腹時血糖値における正常域と境界域の閾値を引き下げることの是非が議論されてきた。米国糖尿病学会(ADA)の新基準,国際糖尿病連合(IDF)のメタボリックシンドロームに関する基準,米国コレステロール教育プログラムの成人治療パネル(NCEP-ATP III)の新基準では100mg/dL未満を正常域としたのに対し,European Diabetes Epidemiology Group(EDEG)は現時点では100mg/dL未満に引き下げる十分な根拠がないとして,変更を見送っている。
また,世界保健機関(WHO)もEDEGの立場を踏襲している。

正常高値者にはOGTTの実施を推奨
今回の委員会報告では,正常域と境界域との閾値を110mg/dLから100mg/dLに引き下げた場合のメリットとデメリットが整理されている。
 
それによると,メリットとしては,
(1)110mg/dL未満であっても,100mg/dL以上の場合は100mg/dL未満に比べ,糖尿病への移行率が高い,
(2)空腹時血糖値100~109mg/dLの者のうち25~40%がOGTT2時間値では境界型や糖尿病型と判定される,
(3)空腹時血糖値100 mg/dLはOGTT2時間値での境界型との閾値である140mg/dLにほぼ対応する
―などで,基準値引き下げにより糖尿病や糖尿病への移行リスクが高い者の見逃しを防止できることが要点だ。
一方,デメリットとしては,糖尿病に悪化するリスクがそれほど高くない者まで境界域と判定されることが挙げられている。

これらの点を踏まえ,委員会が示したのは「空腹時血糖値100~109mg/dLは正常域ではあるが,正常高値とする」という見解。
いわば,閾値引き下げに関する国際議論の中庸を取ったと見ることもできる。

委員会では正常高値と判定された場合は,OGTTを行って正常型,境界型,糖尿病型のいずれに判定されるかを確認することを推奨。
OGTTが行われるまでは個々の病態や経過に応じて適切な生活習慣や肥満の是正などを行うべきだと提案している。

出典 MTpro 2008.6.11
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編> 
最近サクシンとサクシゾンを間違える医療ミスが取り上げられています。

ソルコーテフに過敏の患者もあり、喘息が悪化することは知られています。
そのことは添付文書にも掲載されています。
#ソルコーテフをショック症例に一律に使用するのは危険
ソルコーテフはコハク酸エステル型であり、サクシゾン、水溶性プレドニン、ソル・メドロールと同様、喘息の悪化を来すことがあり、特にアスピリン喘息には禁忌とされています。
また、ソルコーテフは防腐薬としてのパラベンが添加されており、水溶性ハイドロコートン、デカドロン、リンデロンと同様、静脈内投与で過敏反応がみられることが指摘されています。
したがって、緊急使用に際しては、リン酸エステル型でパラベンが添加されてなく、短時間作用型のものが最良と思われますが、残念ながらこの条件に合致するステロイド薬はありません。
 
また、ソルコーテフはコハク酸エステル型であり、かつパラベン含有でありますので、救急での使用ではパラベンを含有しないサクシゾンあるいはパラベン含有であってもリン酸エステル型(水溶性ハイドロコートン、デカドロン、リンデロン、など)がより安全と考えられますが、それぞれの過敏反応の頻度は不明であります。

出典 
社団法人日本化学療法学会:従来の抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドラインQ&A
http://www.chemotherapy.or.jp/journal/reports/hinai_anaphylaxis_qa.html

<参考>
ソル・コーテフ投与による過敏反応(アナフィラキシーショックを含む)
http://pro-info.pfizer.co.jp/04_1_solu_cortef/faq.html



ソル・コーテフ注射用100mg
一般名:コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム注射用 メーカー:ファイザー
サクシゾン100(ジェネリック薬品) 
一般名:コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム注射用 メーカー:興和



<きょうの一曲> 枯葉Cannonball Adderley feat. Miles Davis " Autumn Leaves"
http://www.youtube.com/watch?v=PPHtQn1t1n4&feature=related

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by wellfrog3 | 2009-09-29 00:14 | 糖尿病

呼吸器感染症の感染拡大防止策

<b>「飲む」,「打つ」より「洗う,着ける」が効果的?
呼吸器感染症の感染拡大防止策に関するシステマティックレビュー
 
コクラン・コラボレーション(イタリア)急性呼吸器感染症グループのTom Jefferson氏らが呼吸器感染症を引き起こすウイルスの伝播を防ぐには,手洗いやマスクによる物理的な感染拡大防止策が有効であることをBMJ 9月21日オンライン版に報告した。
なお,同氏らはワクチンや抗ウイルス薬の感染拡大防止効果は限定的との見方を示している。

手洗いとマスク,グローブ,ガウンの併用でオッズ比0.09に
検証に当たり,コクランライブラリーやMEDLINEなどの医学文献データベースから,インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)など,急性呼吸器感染症を引き起こすウイルスの感染拡大防止に関する59試験(58報の論文)が選定された。

Jefferson氏らは,これらの対象論文から,動物-ヒト,ヒト-ヒト間を問わないすべての物理的感染防止策(隔離,検疫,学校閉鎖などの社会的隔離,隔壁,マスクやガウン着用などの個人的防護,手洗い)の効果を解析。ワクチン,抗ウイルス薬に関するものは除外した。

1日に10回以上の定期的な手洗い〔オッズ比(OR)0.45,95%信頼区間(CI)0.36〜0.57,Number Needed to Treat(NNT)=4,95%CI 3.65〜5.52〕,マスク(OR 0.32,95%CI 0.25〜0.40,NNT=6,95%CI 4.54〜8.03)やグローブ(OR 0.43,95%CI 0.29〜0.65,NNT=5,95%CI 4.15〜15.41),ガウンの着用(OR 0.23,95%CI 0.14〜0.37,NNT=5,95%CI 3.37〜7.12)はあらゆる急性呼吸器疾患に対しても有効であった。
また,これらすべての組み合わせによる相乗効果も確認された(OR 0.09,95%CI 0.02〜0.35,NNT=3,95%CI 2.66〜4.97)ほか,家庭内でのインフルエンザ感染防止にも有効であったという。

なお,N95マスクはサージカルマスクよりも感染防止に優れるが(OR 0.09,95%CI 0.03〜0.30,NNT=3,95%CI 2.37〜4.06),付け心地が悪く高価であるほか,皮膚の不快感を引き起こすなどの問題があると同氏らはコメントしている。

通常の手洗いに殺菌剤を加えた場合の効果については,はっきりしなかった。
検疫に関しては適切に評価した試験がない,社会的隔離については限定的ながらエビデンスが示された,という結果であった。

また,2003年2~6月にSARSに関して中国,シンガポール,ベトナムで報告されたケースコントロールスタディからプール解析を行い,それぞれの感染拡大防止策を評価したところ,有効性(1-ORで算出)は完全殺菌が70%,頻回の手洗い(10回以上/日)が55%,マスク着用68%,ガウン着用が77%,N95マスク着用が91%であった。
一方,手洗い,マスク・ガウン着用の併用で91%と高い有効率を示した。

WHOの新型インフルエンザ予防のガイダンスにも手洗いとマスク着用はほとんど登場せず Jefferson氏らは,既に,2007年に同様のシステマティックレビューを行い,呼吸器感染症の流行を防ぐには手洗いやマスク,グローブやガウンの着用による感染拡大防止策が高い効果をもたらすことを報告している。

今回のレビューにおいて,同氏らはワクチンと抗ウイルス薬を「強いエビデンスがないにもかかわらず感染拡大防止策としておもにこの両者が推奨」,「有効性と,服用や接種で受ける侵襲,それぞれの評価に不均衡がある」と指摘している。
そして,ワクチンについては「少なくともそれを必要としている人,すなわち健康な人には最も効果が高い」としたほか,抗ウイルス薬については副作用があり,便益性は抗インフルエンザ薬の種類により異なるとしている。
同氏らは2006年,各種抗インフルエンザ薬のシステマティックレビューで「ノイラミニダーゼ阻害薬は,大流行期に他の感染拡大防止策と合わせた場合にのみ用いるべき」と結論付けている(Lancet 2006; 367: 303-313)。

一方,物理的な感染拡大防止策はウイルスによる感染症を非特異的に防止でき,効果的,安全,フレキシブルで安価だとしている。

なお,同氏らによると,世界保健機関(WHO)が今回の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)の世界的流行が始まってから発表したガイダンスのうち,手洗いとマスクに関するものは2回,グローブとガウンに関するものは1回ずつだったという。
それに対し,ワクチンと抗ウイルス薬についてはそれぞれ24回,18回もガイダンスがあったとし,世界の感染症制御をつかさどる大本営にもチクリと“解析”を加えた。

同氏らは,物理的感染防止策の最大の問題はコンプライアンス不良とし,国家レベルでの手洗いプログラムの実行や,マスクなど防護具の着け心地を向上させるための取り組みも必要ではないかと結論を述べている。

出典 MT pro 2009.9.24
版権 メディカル・トリビューン社
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by wellfrog3 | 2009-09-28 00:11 | 感染症

若年者の死因

##全世界の若年者のおもな死因ワースト10が初めて明らかに
世界保健機関(WHO)は,9月11日,全世界の若年者のおもな死因に関する初めての調査結果を報告した(Lancet 2009; 374: 881-892)。
ワースト3は交通事故,自殺,暴行で,呼吸器疾患や感染症などもおもな死因であった。

#結核や下気道感染のほか,男性では白血病,女性では周産期関連死も多い
同調査はオーストラリアRoyal Children's HospitalのGeorge C Patton氏らがWHOの助成を受けて実施したもの。
全世界の10~24歳の若年者の死因に関するデータを2004年のGlobal Burden of Disease Studyならびに2006年のWorld Health Reportから収集した。

2004年の1年間に全世界で260万件の死亡が確認され,その97%にあたる256万件は南アフリカ諸国や中南米などの低~中所得の国で起きていた。
全調査対象における死因ワースト10は表の通りで,下気道感染症や結核,HIV/エイズといった感染症や髄膜炎などの疾患による死亡も多かった。

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男性では白血病が9位に入っていたほか,女性では母体出血,流産など妊娠,出産に関するものがいくつか含まれていた。

現在,これらの年代の若年者は18億人,世界の全人口の30%を占めるという。

今回の調査から,全世界での若者のおもな死因が明らかになったことで,WHOは「これらの死因の多くは予防あるいは治療が可能」としており,死亡率低下に向けた取り組みが必要とコメントしている。

出典 MT pro 2009.9.11
版権 メディカル・トリビューン社


<きょうの一曲>
Katie Melua - I Cried for you
http://www.youtube.com/watch?v=ftZAZWLrWKo&feature=related


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-09-27 00:10 | その他

エンテカビル

C型肝炎の影に隠れてB型肝炎は地味な領域となっています。
このC型肝炎も長い間非A非B肝炎と呼ばれて来ました。

循環器が専門の私には肝臓領域のup to dateはなかなか難しいのですが、総合内科医を目指す限りはエンテカビルも知っておかなければなりません。

ちょっと古い記事になりますが、きょうはエンテカビルの勉強をしました。


B型慢性肝炎治療薬「バラクルード錠0.5mg」
エンテカビル:抗ウイルス効果の高い第3の抗HBV薬

北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部
■2006年7月26日、B型慢性肝炎治療薬のエンテカビル水和物(商品名:バラクルード)が製造承認を取得した。
エンテカビルは、ヌクレオシド(核酸)系逆転写酵素阻害作用を有する抗ウイルス薬であり、B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を抑制する経口製剤である。

■HBVの主たる感染経路は母子間感染であるが、その約9割は自然経過によりHBVが減少し、健康人キャリアとなる。
しかし残りの1割ほどでは、長期間炎症が持続するB型慢性肝炎が発症する。
慢性肝炎からは年率約2%で肝硬変へと進展し、肝硬変からは年率約3%で肝癌が発生することが知られており、B型慢性肝炎の治療においては、HBVを排除し肝炎を鎮静化させることが最終目標となる。
近年、ワクチンが広く使用されるようになったことで新規HBVキャリアの発生は大きく減少しているが、現時点でもわが国のHBVキャリアは100万人以上いると推定されている。

■B型慢性肝炎の治療には、インターフェロン療法、ステロイド離脱療法などがあるが、近年では抗ウイルス療法が積極的に行われるようになっている。
この抗ウイルス療法に使用される薬剤(核酸アナログ製剤)としては、2000年11月に発売されたラミブジン(商品名:ゼフックス)と、2004年12月に発売されたアデホビルピボキシル(商品名:ヘプセラ)があり、今回承認されたエンテカビルはわが国では3番目の核酸アナログ製剤となる。
エンテカビルは、2005年4月から米国で発売されているほか、中国、EU(欧州連合)など、20カ国以上の国と地方で承認されている。

■エンテカビルの最大の特徴は、その高い抗ウイルス効果である。
第3相二重盲検試験結果(N Engl J Med 2006;354:1001-1010)によれば、エンテカビルは、ラミブジンに比べて有意に治療効果が高く、安全性は同等で、エンテカビル耐性のHBVの出現は認められなかったと報告されている。
エンテカビルは海外でも広く使用されるようになっており、今後、日本でも、ラミブジン、アデホビルとともに、B型慢性肝炎治療の中心的な薬剤として使用されていくものと考えられる。

■ただしエンテカビルでは、類薬で乳酸アシドーシスや肝障害といった重大な副作用が報告されているほか、頭痛、倦怠感、上気道感染症、鼻咽頭炎、上腹部痛、下痢などの副作用も報告されているので、注意が必要である。
また、エンテカビルは小児における有効性と安全性は確立されていないため、16歳未満の小児患者には原則して使用しない。
なお、投与予定患者には、エンテカビルの有効性を確実にするために、空腹時(食後2時間以降かつ次の食事の2時間以上前)に服用するように指導する必要がある。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/200608/501211.html
出典 Nikkei Medical 2006. 8. 24
版権 日経BP社

<エンテカビル 関連サイト>
エンテカビル:バラクルード
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se62/se6250029.html
■ウイルスのDNAポリメラーゼを強力かつ選択的に阻害します。
これにより、B型肝炎ウイルスのDNA(遺伝子)の複製が妨げられ、ウイルスの増殖が止まります。
約2年にわたる治療で、ウイルスがほぼ消滅(測定限界以下)した人の割合は、この薬で94%、ラミブジンで77%でした。



<番外編>
国内の新型インフルエンザ症例・ガイドライン集を厚労省が緊急にまとめ
厚生労働省(厚労省)は,新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)の重症例に関する症例集を緊急にまとめ,医療従事者向けに公表した。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/09/dl/info0918-1d.pdf

気管支喘息,急性脳症,肺炎合併例などの詳細な経過を掲載
平成21年度厚生労働科学特別研究「秋以降の新型インフルエンザ流行における医療体制・抗インフルエンザウイルス薬の効果などに関する研究」(主任研究者:工藤宏一郎氏,分担研究者:川名明彦氏)は,国内で発生した新型インフルエンザの重症例における発症からの詳細な経過を画像所見や医師のコメントを付けてまとめた。

掲載されているのは気管支喘息重症発作や急性脳症を合併した小児症例のほか,肺炎を合併した中年,高齢者の症例など計6例。

症例報告に加え,参考資料として,自治体から報告された脳症,挿管,集中治療室(ICU)入室および死亡事例に関する情報や現在の知見から成るエビデンス集やガイドラインなどもあわせて見ることができる。

同ガイドライン作成にあたり,分担研究者の川名明彦氏(防衛医科大学校感染症・呼吸器内科)は,「新型インフルエンザは一定の割合が感染するまで流行がおさまらない可能性がある」とし,今後増加が見込まれる重症例に適切な医療を提供するために,国内で経験された重症例の十分な検証と医師の情報共有が必要,と述べている。

厚労省は今回の流行で不顕性感染例を含めると,日本国民の半数が感染すると試算している。川名氏は,今回の新型インフルエンザの病原性は季節性と変わりないとする見解もあるが,感染例の増加に比例して重症例の数も増えることが見込まれるため,症例集で報告されているような重症例が「全国の医療機関で少なからず経験される可能性がある」と注意喚起している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0909/090977.html
出典 MT pro 2009.9.25
版権 メディカル・トリビューン社


「神経幹細胞」が脳修復 国循センター、再生医療に道
国立循環器病センター研究所の柳本広二・脳血管障害研究室長らは脳卒中などで脳が傷つくと、脳を覆う膜で神経細胞に成長する「神経幹細胞」が働き出すことを突き止めた。
ラットを使った実験成果で、機能の損なわれた脳を修復するシステムと考えられる。
人間の脳にも同様の仕組みがあるとみられ、成果は将来の脳の再生医療につながる可能性がある。
 
研究チームは脳が損傷を受けると神経細胞の中でカルシウム濃度が上昇する現象(カルシウムウエーブ)が起きることに注目。脳卒中患者で数日~1週間後に起きることから、ラットでこの現象を再現した。
その結果、脳を覆う軟膜のすぐ下にある細胞が神経幹細胞の特徴を示した。その後、幹細胞から成長する神経細胞なども観察できた。
出典 日経新聞・朝刊 2009.925
版権 日経新聞社



<きょうの一曲>あの日にかえりたい/山本潤子(ソングフォーメモリーズ)
http://www.youtube.com/watch?v=uLJaYImLRlw&feature=fvw

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by wellfrog3 | 2009-09-26 00:59 | 消化器科

小児における新型インフルエンザの臨床像

##新型インフルエンザの小児における臨床像 国立感染研がまとめ
9月16日,国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)は,現時点での米疾病管理センター(CDC)の報告などから,小児における新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)の臨床像をまとめ,ホームページに掲載した〔感染症情報センターパンデミック(H1N1)2009〕。

#重症化の7徴候に注意を
IDSCによると,新型インフルエンザでも,季節性インフルエンザ同様,5歳以下の乳幼児および基礎疾患のある児では合併症を来す可能性があると注意喚起している。

また,重症化の7徴候として
(1)頻呼吸や呼吸困難,
(2)蒼白,チアノーゼ,
(3)水分摂取不良,
(4)頻回の嘔吐,
(5)意識あるいは意思疎通不良,
(6)機嫌が悪く,抱っこされることを嫌がる,
(7)インフルエンザ様症状は治まったが,再び発熱し,咳が悪化
-を挙げ,これらの症状が見られる場合は注意するよう呼びかけている。

治療に際しては,現時点ではオセルタミビル,ザナミビルを用いることとし,投与量は季節性に準じるとの指針を示している。
オセルタミビルの使用については,「10代の季節性インフルエンザ患者に対するリン酸オセルタミビルの使用と異常行動に関しては,明らかな因果関係が否定されておらず,現在でも国内において使用が制限されている」としながらも,臨床上の必要性が危険性を上回る場合,1歳未満の乳児に関しても厳重な監視下での投与は妥当としている。
一方,吸入薬のザナミビルは「5歳以上で日本の健康保険適応となっている」と記されている。
 
なお,ワクチンに関する記述は今のところない。

小児に多く発症する脳症に関しては,現在,新型インフルエンザ感染後の脳症が国内で7例報告されており,IDSCでは季節性と同じく気道感染から神経合併症を発症しうるとしている。
また,発症した場合には季節性同様,全数把握対象疾患として届け出が必要だという。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0909/090954.html

出典 MT pro 2009.9.16
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
#国内発生新型インフルエンザ脳症の詳細な臨床経過
臨床症状と合致して脳梁膨大部に一過性の病変
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0909/090938.html
■国内2例目となる新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)脳症の詳細な臨床経過が,国立病院機構栃木病院(感染アレルギー科)医長の山口禎夫氏らによって公表された。
症例は7月に栃木県で報告された11歳女児で,臨床症状と合致して脳梁膨大部に一過性の病変が確認されたという。
■重積する痙攣にジアゼパム静注,ステロイドパルス療法で対処。
出典 MT pro 2009.9.11
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
##やればできる?!麻疹ワクチン接種率が軒並み90%台を突破
国立感染症研究所は昨日(9月15日),全国の2008年度(2008年4月1日~2009年3月31日)の麻疹ワクチン接種率の最終評価結果を発表した。

麻疹排除の目安となる2回目(第2期:5~7歳未満相当)のワクチン接種率95%以上を達成した都道府県は,2007年,秋田県1県だったが,今回は同県を含む9県に増加。
厚生労働省(厚労省)が実施している麻疹排除計画の効果が現れており,2009年の累計患者数も前年に比べ1万例以上減少している。

#95%以上が9県,80%台は東京,大阪含む5都府県のみ
2007年度,第2期の接種率が95.8%となった秋田県は,今回97.3%とトップの座を守った(「表II-2. 2008年度第2期麻しんワクチン接種率 昨年度との比較」参照)。秋田県は,2006年に大館市で起こった麻疹大流行を教訓に,小児科医会や関係機関が積極的に麻疹制圧に取り組んできた。

今年(2009年),県が制作,発行した「麻しん排除へ-平成19年度秋田県麻しん制圧の記録-」によると,当時の大流行直後から,一般的に接種対象とならない生後6か月~1歳未満の乳児への麻疹ワクチン接種を推奨したほか,ワクチン未接種者への費用助成,学校保健法の適用による未接種者の出席停止という日本ではあまり例のない措置を実施したという。

また,山形県,福井県,佐賀県は接種率の向上が課題とされていた第3期(中学1年生相当),第4期(高校3年生相当)も軒並み90%を超える高い接種率を記録した。

さらに,今回で第2期の接種率が90%を超えた県も17にのぼった一方で,大阪府は前年比約8ポイント上昇したものの88.8%となった。東京都は88.3と前年の87.1%より微増にとどまった。
第2期の接種率が80%台となったのは,2007年度は32都道府県であったが,今回は大阪,東京のほか高知県,鹿児島県,沖縄県の5都府県のみとなった。

#昨年より患者数が1万例以上激減
なお,昨年1~12月の全国麻疹累計患者数は1万1,007例であったのに対し,同センターの週報によると,今年1月~9月9日までの累計患者数は604例にまで激減,2008年からの全数把握調査の開始や学校での定期接種勧奨の成果が早くも現れた格好だ。

同研究所の多屋馨子室長は,今回の結果は評価できるとしながらも,麻疹の排除には第1期,2期両方の接種率が95%を超えること,また,過去に定期接種の機会が1回しかなかった第3期,4期の接種率のさらなる向上が課題と指摘。
「これらの点がクリアされないと数年後また流行の波がくるだろう」とコメントしている。

第3期,4期の2回目接種については,2008年4月から5年間の期限付きで定期接種の対象とする暫定措置が取られている。

国立感染症情報センターでは今回の最終評価結果のほか,麻疹排除に関する各自治体の取り組み事例をホームページで公開している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0909/090953.html

出典 MT pro 2009.9.16
版権 メディカル・トリビューン社


<きょうの一曲>
A Norah Jones - Are you lonesome (Elvis tribute)
http://www.youtube.com/watch?v=5NHLsrWAw9k&feature=related
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by wellfrog3 | 2009-09-25 00:59 | 感染症

がん抑制遺伝子p53

##千葉大・小室一成氏ら糖尿病解明に新視点「がん抑制遺伝子p53」提示
#老化脂肪細胞で発現増強しインスリン抵抗性誘導
過剰なカロリー摂取で2型糖尿病様の病態を示すマウスの脂肪組織では,脂肪細胞が老化細胞に類似した変化を来し,がん抑制遺伝子として知られるp53の蛋白質発現が増強してインスリン抵抗性を誘導する。
千葉大学大学院(循環病態医科学)教授の小室一成氏らが,Nature Medicine 8月30日オンライン版で明らかにした。同グループは糖尿病を合併するヒトの脂肪組織でも同様の変化が生じていることを確認。
脂肪細胞の老化様変化が糖尿病の進展に重要な役割を持つことを初めて示した,注目すべき成果だ。

#p53はテロメア非依存・依存性にインスリン抵抗性を誘導
細胞老化のメカニズムとして最もよく知られているのは,染色体の両端のテロメア配列が細胞分裂のたびに短くなり,短縮の程度がある閾値を超えると細胞はそれ以上分裂不能となり,細胞老化あるいは細胞死を来すというものである。
一方,細胞老化は,テロメア依存性の細胞分裂の有限性とは関係なく,多様なストレス負荷によっても誘導されることが明らかになっており,その1つに酸化ストレスによる染色体の損傷が挙げられる。

遺伝的肥満マウス(Ayマウス)の脂肪組織では,活性酸素種の増加による酸化ストレスの増大がインスリン抵抗性のキー・メカニズムであると報告されている。
実際に,通常の食餌で20週間飼育したAyマウスの脂肪組織の活性酸素種は,野生型マウスより高値だった。
そこで小室氏らはまず,Ayマウスの脂肪組織で老化様変化が生じているかどうかを調べた。

Ayマウスの脂肪組織では,細胞老化のマーカーである老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-gal)陽性細胞の増加が認められ,p53蛋白質の発現レベルが高まっていた。
さらに腫瘍壊死因子(TNF)や単球走化性因子などの炎症誘導性サイトカインの発現が亢進する一方,アディポネクチンなどの発現が低下。Ayマウスのインスリン感受性の低下と耐糖能異常が確認された。

同様な現象が,テロメラーゼ逆転写酵素を欠損させてテロメア依存性の老化を誘導したマウスの脂肪組織でも生じており,p53蛋白質の発現亢進と炎症性応答の亢進,インスリン抵抗性の増大が確認された。

これらの変化は,脂肪細胞特異的にp53遺伝子を欠損させたマウスでは著明に抑制され,高カロリー食を与えたにもかかわらず,食餌内容を同じにしたコントロールマウスより,インスリン感受性,耐糖能が有意に改善した。

#ヒトの脂肪組織でも同様の変化
小室氏らは,消化器腫瘍の摘出術を受けた患者の内臓脂肪を検討し,2型糖尿病合併例の脂肪組織でSA-β-galの活性が上昇しており,p53蛋白質のレベルや炎症誘導性サイトカインのレベルが著明に高まっていることを確認。
脂肪細胞の老化がヒトの糖尿病でも中心的な役割を持つことを示唆する結果を得ている。

同氏らは,2007年にp53が心不全発症のキー・モレキュールであるという,きわめて衝撃的な研究成果を報告した(Nature 2007; 446: 444-448)。
当時,同氏は「p53のがん抑制メカニズムは非常に多彩で,DNA損傷に対してアポトーシスだけでなく,細胞分裂の停止も誘導する。したがってp53は,ターゲットの細胞に対する老化促進因子であるとも言える」と指摘した。

今回の報告は,2型糖尿病の病因・病態解明に全く新たな視点をもたらすものであり,かつ脂肪組織の老化シグナル抑制が糖尿病治療の新たな戦略となる可能性を示すものだ。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0909/090947.html
出典 MT pro  2009.9.15
版権 メディカル・トリビューン社 2009.9.15

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2009.9.21撮影

<きょうの一曲>
Norah Jones - Cold Cold Heart
http://www.youtube.com/watch?v=g35zS1tVO3o&feature=related


<自遊時間>
昨日は休日診療所の出務でした。
朝から夕方まで1人の医師で診療するのですが、70人近くが受診し、そのほとんどが簡易検査でインフルエンザA型が陽性でした。
大半が中学生でしたが、兄弟姉妹間での感染力が強い印象を受けました。

とても疲れました。


さて現時点での新型インフルエンザ(今の季節での簡易検査A型陽性例)の印象です。

一般的に経過の良い例では季節型インフルエンザより軽い感じです。
季節型インフルエンザのように後半の局所症状が少ないように思います。
先生方の印象はいかがでしょうか。
当院では先々週にB型インフルエンザが見つかっています。
季節型インフルエンザとの区別はもうすでに難しくなっているのかも知れません。
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by wellfrog3 | 2009-09-24 00:58 | 糖尿病

アジュバント非含有インフルエンザワクチン

##アジュバント非含有インフルエンザワクチンは2009H1N1ウイルスに対する予防効果をもたない可能性
#アジュバントを含有しない最近の季節性インフルエンザワクチンの接種は、どの年齢群においても、2009 H1N1ウイルスへの交差反応性抗体反応をほとんど誘発しない
アジュバントを含有しない最近の季節性インフルエンザワクチンは、世界的に流行しているH1N1ウイルス(2009H1N1)に対する予防効果をもたない可能性があるという研究結果が、『New England Journal of Medicine』9月10日号オンライン版に報告されている。

「新しいインフルエンザA(H1N1)ウイルスが出現して世界的に流行し、主に若年者において疾患が地球規模で拡がっている」と米疾病対策センター(CDC)米国立予防接種・呼吸器疾患センター(NCIRD)インフルエンザ部門(ジョージア州アトランタ)のKathy Hancock, PhDらは記している。
「我々はヒトにおける既存の免疫力を見極め、季節性ワクチンの戦略を評価するため、以前のインフルエンザ感染またはワクチン接種により生じる本パンデミック・ウイルスに対する抗体反応を様々な年齢群で測定した」

研究者らはマイクロ中和法を用い、献血者または最近の季節性インフルエンザワクチンまたは1976年豚インフルエンザワクチンの接種者から得た保存血清検体において、2009年H1N1ウイルスに対する交差反応性抗体の力価を定量した。

2009年H1N1ウイルスに対する既存の交差反応性抗体の力価が40以上であった人は、1980年以降に生まれた107名中4名(4%)であった。
これとは対照的に、1950年以前に生まれた115名中39名(34%)では、抗体価が80以上であった。

季節性の三価不活化インフルエンザワクチンの接種後、2009年H1N1ウイルスに対する交差反応性抗体のレベルが4倍以上に上昇した人は、生後6カ月-9歳の小児55名にはおらず、18-64歳の成人231名では12-22%、60歳以上の成人113名では5%以下であった。
交差反応性抗体反応は、アジュバントを含有する季節性ワクチンにより改善しなかった。
成人の場合、A/New Jersey/1976豚インフルエンザワクチンの接種により、2009 H1N1ウイルスに対する交差反応性抗体の大幅な増加が認められた。

「アジュバントを含有しない最近の季節性インフルエンザワクチンの接種は、どの年齢群においても、2009 H1N1ウイルスへの交差反応性抗体反応をほとんど誘発しなかった」と本研究の著者らは記している。
「30歳未満の人では、このパンデミック・ウイルスに対する交差反応性抗体の証拠がほとんど認められなかった。しかし、一部の高齢者では、既存の交差反応性抗体が認められた」

本研究の限界としては、小児試験の検体数が比較的少なかったことが挙げられる。

「依然として明確なのは、年齢群を問わず、ウイルス株に特異的なパンデミック・ワクチンの開発が、2009 H1N1ウイルスへの最適な予防につながるという点である」と本研究の著者らは記している。
「様々な年齢群の人に十分な免疫を付与するには1回または2回のワクチン接種が必要なのか、また、連続変異株の出現やワクチンの節約効果を踏まえ、アジュバントの使用により2009 H1N1ウイルスへの免疫反応が拡大できるかという問題については、現在進行中の臨床試験の結果で最終的に判断できるであろう」

本研究はCDCの支援を受けた。本研究の著者の一部は、GlaxoSmithKline社および/またはJuvaris BioTherapeutics社と様々な金銭的関係があることを公表している。

N Engl J Med. Published online September 10, 2009.

Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape
http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/9/17/107890/

2009年9月17日 提供:Medscape
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by wellfrog3 | 2009-09-23 00:44 | 感染症

高齢者は新型インフルに感染しにくい?

新型に感染したか感染の疑いのある人の死亡は2009.9.22現在で18人となりました。
そこで気になるのは年齢と感染、重症化との関係です。

##高齢者は新型インフルに感染しにくい」を支持するエビデンス
#新型ウイルスに対する交差反応は1920年代生まれがピーク
米国立予防接種・呼吸器疾患センター(NCIRD)のKathy Hancock氏らは,新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)ウイルスに対して既にヒトが有している免疫性を評価した結果をN Engl J Med 9月10日オンライン版に発表した。

Cross-Reactive Antibody Responses to the 2009 Pandemic H1N1 Influenza Virus.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19745214

1880~2004年に生まれたドナーから得られた血液サンプルを対象に,新型インフルエンザウイルスに対する交差反応性を検討したところ, 1920年代生まれを中心に一部の高齢者では高レベルで認められたという。
これまで憶測交じりに語られてきた「高齢者は新型インフルエンザに感染しにくい」を支持するエビデンスと言えそうだ。

#近年流行した季節性インフルエンザとの交差反応性は低い
Hancock氏らはまず,2005~09年に季節性3価不活化インフルエンザワクチン接種を受けたヒトから採取した血清サンプルを対象に,マイクロ中和試験を用いて,新型インフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体を測定し,ワクチン接種前後で比較した。

その結果,アジュバントが含まれない季節性インフルエンザワクチン接種を受けたサンプルにおいて,抗体力価が4倍以上に増加したのは,生後6か月から9歳の小児55例では皆無,18~64歳の成人231例では12~22%,60歳以上の成人113例では5%以下であった。
また,アジュバントが含まれる季節性ワクチン接種を受けた生後6~59か月の幼児45例においても,抗体力価が4倍以上に増加したのは2%にとどまった。
このことは,近年流行した季節性インフルエンザウイルスと新型インフルエンザウイルスとの交差反応性は,いずれの年齢においても低いことを示している。

一方,次の結果は,より古い時代に流行したウイルスとの間には強い交差反応性が存在することを示唆している。
具体的には,1880~2004年に生まれた匿名のドナーから得られた417例の血液サンプルを検査し,新型インフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体の年齢分布を検討した。
その結果,1980年以降に生まれた107例では,40以上の力価のある交差反応性抗体が既に存在していたのは4例(4%)にすぎなかったのに対し,1950年以前に生まれた115例のうち39例(34%)では80以上の力価が認められた。

また,力価の度数として表される抗体反応のピークは,1910~29年に生まれた11例のドナーで認められ,全ての力価が80以上であった。
10年ごとに区切った各年代の幾何平均抗体価(GMT)を直前の年代のGMTと合わせた累積GMTのピークは,1920年代生まれの被験者で認められ,以降は徐々に低下した。

#1976年の豚インフルエンザワクチン接種者で特に強い交差反応
また,1976年に米国人の約20%がA/New Jersey/1976(H1N1)豚インフルエンザワクチンの接種を受けたが,当時25歳以上で接種を受けた成人83例から採取した血清サンプルを対象に,今回の新型インフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体を調べたところ,45例(54%)ではセロコンバージョン(抗体陽性化)が認められ,52例(63%)では接種後の抗体力価が160以上にものぼった。

Hancock氏らは「近年の季節性インフルエンザワクチンは,アジュバントの有無とかかわりなく,すべての年齢群において新型インフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体反応をほとんど増加させなかった。
また,現在30歳未満の米国人は交差反応性抗体のエビデンスがほとんど認められなかったが,一部の高齢者には交差反応性抗体が既に存在していることが明らかになった」と結論付けた。

出典 MT pro 2009.9.17
版権 メディカル・トリビューン社


<新型インフルエンザ 関連サイト>
#日本におけるインフルエンザ A (H1N1) の新型インフルエンザによる入院患者数の概況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/rireki/090917-02.html
(1週間毎の入院患者の集計が厚労省より発表されています)
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by wellfrog3 | 2009-09-22 00:30 | 感染症