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HRTと乳癌罹患率



■米国立衛生研究所(NIH)が閉経後女性を対象に行った大規模前向き臨床試験、Women's Health Initiative(WHI、表1)は、閉経後女性を対象に様々な疾患予防策の評価を図ったものだ。
この中間報告が発表されたのが2002年。

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その中で大きく話題となったのが、ホルモン補充療法(HRT)の“リスク”だった。
不定愁訴に有効ということで長らく行われている治療法が逆に、浸潤性乳癌は26%、虚血性心疾患は29%、脳卒中は41%、いずれも罹患リスクを増やすことが示されたのだ(表2)。


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■WHIは05年までの観察研究という予定だったが、HRT(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)についてはこの結果を受けて急きょ打ちきりとなった。
「WHIの発表後数年間で、HRTを受ける患者は欧米では3割ほど減少。日本の患者数はもともと少なかったが、新聞報道でやはり減少した」。
自身もHRTに取り組む東京女子医大産婦人科教授の太田博明氏は、WHI中間報告の影響をこう振り返る。

対象者や薬剤の選択に異議あり
■もっとも、WHIの中止後に出てきたサブ解析の結果などから、WHI中間報告の妥当性については様々な議論が続いた。まず第一に挙げられるのが対象者の問題だ。
太田氏によると、HRTの試験の対象者には以下のような問題点が挙げられるという。

WHIの対象者の問題点
・平均年齢が約63歳と、高齢
・ビタミンDやカルシウム、サプリメントの摂取、食事制限など、HRT以外の条件による影響が考えられる
・約7割がBMI 25以上だった
・盲検性がなかった
・脱落率がHRT群、プラセボ群ともに40%前後と高かった など
 
■第二の問題は、HRTの試験に使用された薬剤が適切だったかという点。
WHIで用いられたエストロゲン製剤は結合型エストロゲンの経口薬だが、「経口投与と経皮投与では脂質代謝や凝固因子に対する作用が異なる。
経口薬を選択したことで血栓症や脳卒中のリスクが高まった可能性がある」と太田氏は話す。

■エストロゲンと併用された黄体ホルモン製剤もポイントの一つ。子宮摘出術を受けていて子宮がない場合を除き、長期にHRTを行う場合には、子宮内膜の肥厚を抑えて子宮体癌を予防する目的で黄体ホルモンを併用することが多い。
問題は、「この黄体ホルモンが酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)だったこと」と太田氏。
MPAは、ほかの黄体ホルモン製剤に比べて乳癌細胞の抑制作用が弱いといわれるからだ。

■その後のWHIのサブ解析では、結合型エストロゲンを単独投与した場合、HRTは乳癌のリスクを低下させ、50〜55歳では虚血性心疾患のリスクも低下させる可能性があることなどが報告されている。

■WHIの試験打ち切りで冷や水を浴びせられた格好のHRTだが、2007年4月にはTIME誌が「見直されるHRT」として、HRTのベネフィットを得るためには開始する年齢やタイミングが重要と紹介するなど、回帰の動きが広がっているようだ。
実際、減り続けていた患者数も、07年以降は徐々に増え始めているという。

■もっとも、HRTのベネフィットとリスクについては賛否双方の報告が続き、WHI以降も定説といえるものは出ていないのが現状だ。
1996年〜2001年に英国で行われた「Million Women Study(MWS)」という観察研究では、主にHRTの乳癌に対する影響が検討され、03年には「HRTの治療期間に応じて乳癌の発症リスクが高まった」「ホルモン剤の剤型とは無関係にリスクが高まった」といった結果が報告されている。

■また、英国、オーストラリア、ニュージーランドで行われた臨床試験「Women's International Study of long Duration Oestrogen after the Menopause(WISDOM)」の結果も発表されてきている。
HRT(エストロゲンと黄体ホルモン併用療法)は、閉経後女性ののぼせやほてり、性機能、睡眠障害といったQOLを改善したという報告の一方で、閉経後にエストロゲン欠乏症状がない女性(閉経から経過した期間は平均15年)にHRTを行った際には、心血管イベントや静脈血栓塞栓症のリスクが有意に上昇したという報告がされている。

■さらに米国では、「KEEPS」や「ELITE」といった、血管の器質的変化をエンドポイントに置いた新しい臨床試験も始まっているという。

■日本においては、大規模な臨床試験は行われていないが、2004〜05年に行われた厚生労働省の研究班(主任研究者=埼玉医大乳腺腫瘍科教授の佐伯俊昭氏)による調査では、HRTは乳癌の発症リスクを高めないという結果が報告されている。

日本でもようやくガイドライン
■国際的には、次々に報告される試験の結果をフィードバックし、HRTの知見をアップデートしようとする動きは以前から活発だ。
今年(2008年)3月に行われた国際閉経学会(IMS)の第1回世界サミットでは、閉経後すぐのHRTについて、医療者だけでなく、患者やマスコミなどに対しても広くコンセンサスを取る努力をしようという意見がまとまった。
こうした動きに触発されてか、日本の関係学会もHRTのガイドラインを来春には正式に示す意向だ。

■2002年にWHIのHRT試験が中止になった直後、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本更年期医学会はHRTに対する統一見解を発表。
「HRTを選択する際には患者一人ひとりのリスクとベネフィットを慎重に判断すること」「施行すべきでない患者ではないという確認、治療開始後の効果と副作用の判定を怠らないこと」「肥満や喫煙習慣などリスク因子を有する患者に、心血管系疾患の予防を目的としてWHIと同条件のHRTを行わないこと」——といった内容を示した。
それから実に6年を経て、日本でもようやくHRTのガイドラインがまとめられることになる。

■日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会委員長を務める、徳島大産科婦人科学教室教授の苛原稔氏。
「(WHIのHRT試験中止以来)ようやく見直されるようになってきたとはいえ、HRTのリスクについては医療者の間でもいまだに意見が分かれている。ただ、HRTは更年期や閉経後女性のQOLを改善する上で非常に有用であることは事実なので、他科の医師やコメディカルにも広く理解してもらいたい」。 
日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会委員長である、徳島大産科婦人科教授の苛原(いらはら)稔氏は、ガイドライン作成に至った経緯についてこう話す。
これまで集積した内外のデータをきちんと示し、取り除ける不安は取り除いてもらおうということだ。

■HRTについては、いつまで続けるべきかという問題もある。
一部報道で「ガイドラインではHRTの期間を5年以内と定める」とも書かれたが、この点について苛原氏は「現時点で安全と考えられる実施期間は示したいが、それ以外のやり方を否定するものではない」と強調する。

■IMSの2007年の見解では「HRTの実施期間を限定する根拠はない」としており(IMS Updated Recommendations on postmenopausal hormone therapy. CLIMACTERIC 2007;10:181-194)、日本のガイドラインでも期間の限定までは踏み込めないだろう。
更年期症状や骨粗鬆症などの治療という観点からは、投与は短期間にとどめるのが望ましいという意見がある一方、予防という観点からは、定期的に検診を行えば長期の投与でも問題ないという意見がある。
どちらを取るかは、医師および患者の判断に任せられる。

■ガイドラインの内容については、今年11月15〜16日に行われる日本更年期医学会の第23回学術集会で案を公表し、会員の意見を集めるという。
日本産科婦人科学会でも同様に意見を集めて検討し、来年3月には最終決定まで進める方針だ。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t025/200810/508246_3.html
NM online 2008.10.21


#5年以上のホルモン補充療法が乳癌発症リスクを高める可能性
■ホルモン補充療法(HRT)と乳癌発症リスクとの関連性を示唆する研究結果が示された。
研究は、WHI(Women's Health Initiative)試験結果を解析したもの。
詳細はNew England Journal of Medicine誌2009年2月5日号に掲載された。

■HRTは閉経後女性の更年期症状の治療法として、欧米では多くの女性たちに処方されてきた。
しかし、2002年のWHIの中間報告以降、米国ではHRTの使用が激減。
その後、乳癌の発生率も減少したことから、HRTと乳癌発症リスクとの関連性が指摘されてきた。

■同研究では、WHIの試験結果を解析し、WHIの観察研究コホート群において、一定期間の乳癌発生率を乳癌のリスク因子やマンモグラフィの受診頻度などをみながら、ホルモン補充療法と乳癌発生との関連性を評価した。

■WHIは、1993-1998年にかけて実施された無作為化臨床試験。
対象となったのは50-79歳までの閉経後女性1万6608人で、結合型エストロゲン0.625mg+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgを毎日投与する群とプラセボ群とに無作為に割り付けられた。

■他方、観察研究コホート群は1994-2005年の間、HRTを使用していない2万5328人と使用している1万6121人を対象に評価した。
両群ともに過去に浸潤性乳癌の既往や子宮摘出はなく、マンモグラフィなどによる検査で乳癌を示す徴候もなかった。

■臨床試験では、最初の2年間はプラセボ群と比べてHRT投与群の方が乳癌と診断される女性は少なかったが、5.6年の介入期間中に投与群で乳癌と診断される数が増加した。

■乳癌リスクはHRTの使用によって上昇がみられたが、HRTを中止すると急速に減少した。
また、観察研究群における乳癌の発生率は、初期にはプラセボ群と比較して投与群が2倍だったが、その差は2年で減少した。

■LA BioMedのチーフ研究者で、同研究の筆頭執筆者であり、治験責任者でもあるRowan Chlebowski氏は、「これらの研究結果から、米国内において乳癌の発生率が最近減少している要因として、エストロゲン+黄体ホルモンの使用が減少したことと関連しているという仮説が支持できます」とし、さらに、「特に5年以上の投与を計画している場合は、これらの調査結果を考慮すべきです」と述べている。

■だが一方で、WHI試験に関しては、対象となった女性の年齢が、50-59歳が33.9%、60-69歳が45.4%、70-79歳が20.7%と高齢であったことや、BMI値が25未満が30.5%、25-30未満が35.3%、30以上が34.2%(数値はいずれもHRT投与群)と肥満傾向にあったことなどを指摘する専門家がいるのも事実だ。

■日本国内では2004年に、「ホルモン補充療法が乳癌の診療に及ぼす影響とその対策に関する研究」(厚生労働省癌研究助成金による研究)が実施され、HRTと乳癌との関連性については否定的な結果が報告されている。
また、今年4月以降には、日本初となるホルモン補充療法ガイドラインが発表される予定だ。

■2002年のWHIの中間報告以来、HRTと乳癌との因果関係については様々な議論が繰り返されてきた。今回の研究結果の発表を受け、また新たな議論が展開されそうだ。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200902/509433.html
出典 NM online 2009.2.20
版権 日経BP社

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by wellfrog3 | 2009-03-23 00:51 | 産婦人科