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ANCA関連血管炎

抗好中球細胞質抗体anti-neutrophil cystoplasmic antibody:ANCA)の勉強をしました。

まずは日内会誌 第97巻 第12号 H20.12.10P108より
■ANCAは好中球の細胞質に存在するアズール顆粒中の抗原に対する自己抗体
■蛍光抗体法により細胞質型(cANCA)と核の周囲型(pANCA)に分類される
■cANCAの対応抗原はproteinase-3(抗PR-3抗体)であり、Wegener肉芽腫症の診断に有用性が高いマーカー抗体である
■pANCAはmyeloperoxydaseを認識し(抗MPO抗体)、壊死性半月体形成性腎炎や顕微鏡的結節性多発動脈炎、あるいはアレルギー性肉芽性結果炎などで検出される

<関連サイト>
ANCA関連血管炎
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10T10600.html
顕微鏡的多発血管炎(MPA)、ウェゲナー肉芽腫症(にくげしゅ)(WG)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)では、血清中に好中球(こうちゅうきゅう)に対する自己抗体である抗好中球細胞質抗体(ANCA)が検出されます。

ANCAには、好中球のミエロペロキシダーゼ(MPO)などに反応するP—ANCAと、プロテイネース3(PR—3)に反応するC—ANCAがあります。
前者は主にMPA、AGA、後者はWGの患者さんの血清中に検出されます。
一般的にANCAの値はこれらの血管炎の活動期には高く、治療後には低くなります。このため、ANCAは血管炎の診断や治療効果の判定に重要です。

ANCA(抗好中球細胞質自己抗体)
campus.milkcafe.net/
ANCAとは、「抗好中球細胞質自己抗体」の英語名である「anti-neutrophil cytoplasmic autoantibody」の各単語、最初のアルファベットを組み合わせた略語である。

ANCAは、急速進行性腎炎症候群に属する腎疾患の一部において陽性を示す。
1.急速進行性腎炎症候群
まず、ANCAの理解に必要な範囲で急速進行性腎炎症候群について記載する。
急速進行性腎炎症候群とは、血尿や蛋白尿などの尿所見を呈し、数週間から数ヶ月の間に急速に腎機能が低下していく予後不良な腎疾患の総称である。
急速進行性腎炎症候群は、顕微鏡で見た腎糸球体の所見(蛍光抗体法所見)により、抗基底膜抗体型、免疫複合体型およびpauci-immune型の3型に分類される。
これら3型の急速進行性腎炎症候群のうち、ANCAが陽性になることがあるのは、pauci-immune型の急速進行性腎炎である。

a.抗基底膜抗体型の急速進行性腎炎
免疫グロブリン(IgG)が糸球体係蹄に線状に沈着している急速進行性腎炎。
b.免疫複合体型の急速進行性腎炎
糸球体内にIgGおよび補体が顆粒状に沈着している急速進行性腎炎。
c.pauci-immune型の急速進行性腎炎
IgGおよび補体の糸球体内沈着が認められない急速進行性腎炎。

2.ANCA関連腎炎の定義
血清ANCAが高力価で陽性を呈し、腎生検でpauci-immune型の腎炎が証明された場合にANCA関連腎炎と診断する。

3.ANCAによる糸球体傷害の機序
白血球の一種であるマクロファージは、何らかの異物(抗原)を取り込むと体液中にサイトカインを放出する。
このようにしてマクロファージから放出されたサイトカインは好中球を刺激し、この刺激により好中球内部から好中球表面にMPO (myeloperoxidase)やPR3 (proteinase-3)などの物質が移動し、好中球表面に現れるようになる。
このようにして好中球表面に現れたMPOやPR3などの物質に、それらに対する抗体であるANCAが結合すると、好中球は活性化される。
そして、活性化された好中球は血管内皮を傷害するようになる。
毛細血管が特殊な形態に変化した組織である糸球体の内皮がこのような機序で傷害されると、これをANCA関連腎炎と呼ぶ。

4. ANCAの種類
ANCAがMPOやPR3などの物質に対する抗体であるということは、MPOやPR3などの物質はANCAの抗原であることを意味している。

好中球がマクロファージから放出されたサイトカインで刺激される前には、MPOは核周辺に存在する。
そこで、「核周辺の」という日本語に対応する英語が「perinuclear」であることからMPOを抗原とするANCA(MPO-ANCA)を「perinuclear」のpを単語の最初に付けてP- ANCAと呼ぶ。
一方、好中球がマクロファージから放出されたサイトカインで刺激される前には、PR3は細胞質に存在する。
そこで、「細胞質の」という日本語に対応する英語が「cytoplasmic」であることからPR3を抗原とするANCA(PR3-ANCA)を「cytoplasmic」のcを単語の最初に付けてC- ANCAと呼ぶ。

なお、C- ANCAはWegener肉芽腫にのみみられるが、P- ANCAはpauci-immune型の腎炎、Churg-Strauss症候群で高率に陽性となる他、関節リュウマチでも陽性となることがある。

5.ANCA陽性の基準
ANCAが陽性であるのか、あるいは陰性であるのか、調べる方法には、間接蛍光抗体法(IF法)と酵素抗体法(ELIZA法)とがある。
IF法はANCAが陽性か、あるいは陰性かに大きく分ける定性判定法である。これに対して、ELIZA法は血清中のANCAの濃度を測定する定量判定法である。

ELIZA法で血清中のANCA濃度を測定する場合、MPO-ANCA (P-ANCA)では、20EU未満を陰性とし、20EU以上を陽性とする(二プロ社製MPO-ANCA測定試薬を使用)。
一方、PR3-ANCA(C-ANCA)では、10EU未満を陰性とし、10EU以上を陽性とする(EuroDiagnostica社製PR3-ANCA測定試薬を使用)。


by wellfrog3 | 2008-12-18 00:31 | その他
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