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2008/09年シーズンのインフルエンザワクチン株

2008/09年シーズンのインフルエンザワクチン株 A型,B型ともワクチン株が変更
■2008/09年シーズン(以下,今シーズン)のインフルエンザワクチン製造株は,A/H1N1ロシア型はA/ブリスベン/59/2007株,A/H3N2香港型はA/ウルグアイ/716/2007株,B/フロリダ/4/2004株(山形系統株)が選定された。

■国立感染症研究所ウイルス第三部インフルエンザウイルス室の小田切孝人室長は「今シーズンはA型,B型ともにワクチン製造株が変更された」としている。

■なお,選定に当たって同研究所は厚生労働省の依頼を受けてワクチン株選定委員会を開催し,2007/08年シーズン(以下,昨シーズン)の国内外の流行事情〔世界保健機関(WHO)の推奨株など〕,分離株の抗原性や遺伝子解析,ワクチン製造候補株の開発状況などを総合的に分析した(注:WHOではワクチン推奨株を様株とする)。

昨シーズンはロシア型の流行が8割
■小田切室長によると,昨シーズンは北半球で見られたインフルエンザの流行状況は例年に比べて穏やかで,アジアと北米では11月から始まった流行が12〜1月にピークを迎え,欧州は遅れて12月から患者数が増大,1月に絶頂期を迎えた。
多くの地域でA/H1N1ロシア型が主流であり,全体の8割に達した半面,A/H3N2香港型が約1割と小規模な流行に終始し,B型の分離率も低いレベルにとどまるなど,例年とはいささか流行の様相を異にしていた。
 
■A/H1N1亜型については,当初こそ昨シーズンの選定株のA/ソロモン諸島/3/2006様株が大半を占めたものの,今年3月以降から抗原性が変化したA/ブリスベン/59/2007類似株が台頭した。
このことから,WHOは今シーズンのワクチン推奨株に選定した。

■似た現象はわが国でも観察され,シーズンの後半からA/ブリスベン/59/2007類似株の分離率が上昇,A/H1N1亜型の7割近くに達したため,厚生労働省も同株へとワクチン株をシフトさせた(図1)。
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■一方,A/H3N2亜型も昨シーズンのワクチン選定株であるA/広島/52/2005様株とA/ウィスコンシン/67/2005様株の分離率が減少,代わって南半球の推奨株であったA/ブリスベン/10/2007類似株が7〜8割を占めていたことから,WHOは今シーズンの北半球のワクチン株に推奨し,南半球にも同じ態勢で臨むことになった(図2)。
2008/09年シーズンのインフルエンザワクチン株_c0183739_23554487.jpg

■わが国ではA/ブリスベン/10/2007株と抗原性が一致し,しかも孵化鶏卵内でよく増殖する(ワクチンの生産効率に優れた)A/ウルグアイ/716/2007株を採用した。
 
■最近,同室長を含むWHOのグループは,香港型(A/H3N2)の伝播ルートを追跡,成果をScience上で発表した。

■それによると,まず新しい流行株が中国大陸に出現して北半球全体に拡散し,次いで北米から南米へと進出し,地球をほぼ一周する経路が浮かび上がったという。
 
■四季が明確な中緯度地域や高緯度地域とは違い,低緯度地域では通年でインフルエンザが流行している。
そのなかで小さいピークは雨季に見られ,熱帯や亜熱帯の環境下でもウイルスは生き延びることで患者の発生が続く。
こうした条件と人間の活動がインフルエンザの伝播に関与しているという。

B型ではビクトリア系統と山形系統の勢力が逆転
■B型に関しては,抗原性や遺伝系統が異なる2グループ,B/ビクトリア/2/1987株に代表されるビクトリア系統株とB/山形/16/1988株に代表される山形系統株に大きく分けられる。
北半球では昨シーズンまでビクトリア系統株の優位が続いたが,南半球では山形系統株の分離率が増大,これを逆転する勢いを示した。
 
■こうした流れを引き継ぐ形でわが国を含む北半球でも2008年にはB/フロリダ/4/2006類似株を中心とした山形系統株の分離率が77%に増大,B/マレーシア/2506/2004類似株などのビクトリア系統株(23%)に比べて大きく上回った。
このため,WHOは北半球・南半球ともに,B/フロリダ/4/2006様株を今シーズンのワクチン推奨株に決定した。

南半球と北欧を中心にA/H1N1のオセルタミビル耐性株が増大
■最近,抗ウイルス薬オセルタミビルに耐性を示すA/H1N1ロシア型インフルエンザ株の発生がクローズアップされてきた。
A/H1N1型のウイルスでは以前から,別の作用機序を持つ抗A型インフルエンザウイルス薬であるアマンタジンの無効化が報告されていた。
それに加え,オセルタミビルの耐性株が世界各地で出現している。
 
■WHOによると,2007〜08年冬季の北半球ではノルウェーが67%,ベルギー53%,フランス47%,ロシア45%,ウクライナ34%,オランダ27%,ルクセンブルクとカナダが各26%,フィンランド23%,アイスランド20%,スイス19%,米国12%と,北欧圏やロシアで耐性株の比率が高く,南半球の流行が一段落した9月末には,南アフリカで100%,オーストラリア96%,フィリピン91%と報告されている。
 
■オセルタミビルの使用頻度の高いわが国にとって看過し難い事態だが,小田切室長らが行った緊急調査によると,全国で採取した約1,700株のA/H1N1型のうち,耐性株は45株(2.6%)とその比率は意外なほど低かった。
 
■通常,薬剤耐性を獲得したウイルス株は,引き換えに感染力を大きく低下させ自然消滅する。
しかし,今回の耐性株の感染力は流行株と変わりがない。
つまり,薬剤の使用とは無関係に耐性株が現れ,蔓延した可能性が考えられるという。
なお,この耐性株は別の薬剤であるザナミビルには感受性で,抗ウイルス薬治療がすべて無効というわけではない。
 
■A/H1N1型が2シーズン続けて流行の主流を占めた例は過去10シーズンではない。しかし,わが国での耐性株の出現頻度は低いが,今後とも注意深く監視していく必要があるだろう。ただし,国内外で流行中の耐性株は抗原的にはA/ブリスベン/59/2007様株に近く,ワクチンの感染防御効果が期待できる(同室長)。

〜鳥インフルエンザ〜4つのクレードに対応したワクチンの国家備蓄が完了
■WHOによると,世界的な大流行(パンデミック)が懸念されるA/H5N1型(高病原性鳥インフルエンザ)の報告数は,2008年9月10日現在,累計で確定症例数387例に達し,うち245例が死亡した。
年に限って言えば,発生地域・報告件数とも前年をかなり下回り,小康状態であった。
 
■また,A/H5N1亜型は複数のクレードに分類できるが,うち4種類でヒトへの感染が確認された。
このような株をもとに作製したのがプレパンデミックワクチンで,日本ではウイルス全粒子をホルマリンで不活化して精製,免疫原性を高める目的で水酸化アルミニウムをアジュバントとして加えたタイプが開発されている。
 
■クレード1のベトナム株とクレード2.1のインドネシア株(各500万人分),2.3の安徽株(1,000万人)に加え,分布域が最も広い青海株(クレード2.2)も1,000万人の備蓄が整った。
これらの株は抗原性に隔たりがあり,交叉活性も十分とは言えないものの,免疫の初期化(基礎免疫の形成)には問題がない。
実際に,異なったクレードのワクチンの追加接種による免疫の賦活化(ブースター効果)も動物試験では確認されている。
 
■パンデミックの発生時,いち早く新しいワクチンを接種しても,十分な量の抗体をつくるためには相応の時間がかかる。
対照的に,あらかじめプレパンデミックワクチンで免疫しておけば,追加のワクチン接種により短時間で高い免疫が得られ,感染しても重症化,死亡の回避が可能になる。
プレパンデミックワクチンであらかじめ基礎免疫を獲得しておくことが,生死を分けるかもしれない(小田切室長)。

出典 MT pro 2008.12.18
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
平成20年度(2008/09シーズン)インフルエンザワクチン株の選定経過
http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/345/dj3452.html

インフルエンザQ&A
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/fluQA/QAgen-02.html
現在のインフルエンザワクチンには、A型2種類およびB型1種類が含まれており、A/ソ連(H1N1)、A/香港(H3N2)、B型のいずれの型にも効果があります。
<コメント>
ここまで言い切っています。
でもこれはウソです。



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by wellfrog3 | 2009-02-18 00:11 | 感染症
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