血液検査で活動性結核を発見 ツベルクリン反応試験より高精度
■インペリアルカレッジ(ロンドン)呼吸器感染センターのウェルカムトラスト上級臨床研究員であるAjit Lalvani教授は,100年の歴史があるツベルクリン反応試験と比較すると,最近導入されたELISpot血液検査は活動性結核のリスクが高い患者を同定する精度が高いことがわかったとAnnals of Internal Medicine(2008; 149: 777-787)に発表した。 陽性で発病リスク4倍 ■世界保健機関(WHO)の推定によると,世界人口のおよそ3人に1人は結核菌に感染しており,世界中で毎年約900万人が活動性結核を新規に発症している。 感染者の大多数は発展途上国の住民である。 ■ELISpot検査は,インペリアルカレッジの結核専門特別対策委員会によって開発された新しい血液検査法で,結核菌感染に反応して免疫系の白血球が放出する蛋白質シグナル(インターフェロン-γ)を検出する。 それにより,活動性結核のリスクが高い患者の同定が可能である。 ■活動性結核患者は発熱,持続性の咳,食欲喪失などの結核の諸症状を呈するが,潜伏結核(不顕性結核感染)の患者は症状を示さない。 潜伏結核患者の大多数は,治療によって活動性結核への進行を予防することができる。 ■Lalvani教授は,家庭で結核菌に曝露したばかりのトルコ・イスタンブールの小児908例を調べた。 このうち594例は,ELISpotまたはツベルクリン検査のいずれか一方,あるいは両方の検査から潜伏結核の陽性の反応が示された。 ■ツベルクリン検査で結核の陽性反応を示した小児550例のうち,12例が活動性結核に進行した。一方,ELISpotで陽性反応を示した小児は381例と少数だったが,活動性結核に移行した小児12例中11例が陽性であった。血液検査で陽性の小児では,陰性の小児と比べて結核の発病リスクが約4倍高かった。 ■今回の研究結果を受けて,同教授は「ツベルクリン反応試験よりもELISpotのほうが予防的治療の標的を絞り込む精度が高かった。ELISpotとは異なり,ツベルクリン反応試験では過去にBCG予防接種を受けたことがある患者で偽陽性の結果が出やすい。結核の新しい血液検査の導入によって,予防的治療が必要な患者の同定と治療が可能になるだけでなく,不必要な治療を受ける患者数を減少させ,薬剤の副作用に伴うリスクを回避することができる。結核検査と治療の資源が不十分な発展途上国では,このようなメリットは特に大きい」と述べている。 約20か国で推奨 ■研究に参加した小児の76%は,事前に活動性結核の予防薬が投与されていた。 このため,予防的治療が実施されていなかった小児における活動性結核の割合は不明であった。 しかし,ELISpotが陽性であった小児の大部分が治療を受けていたにもかかわらず,活動性結核の発病リスクが高かった。 未治療の場合,発病リスクはさらに大きくなると考えられる。 ■Lalvani教授は「英国など先進国の国民の大半は,結核は既に過去の疾患で,もはや感染を心配する必要はないだろうと考えているが,英国でも結核患者数は過去20年近く上昇し続けている。先進国以外の地域では,結核の発生が世界的流行の域に達しており,非常に多くの人々に苦痛や死をもたらしている」と指摘している。 ■同教授は「われわれの研究から,ELISpotのような新しいツールは,世界的な結核の予防対策に有用であることが示された。この血液検査は,活動性結核の予防を最も必要とする患者を同定することが可能で,予防的治療を実施するのに役立つ。この知見に基づいて,われわれはこの次世代の結核検査の有効性を実証する研究を既に開始している」と付け加えている。 ■この検査は,欧州と北米を含む世界約20か国において,ツベルクリン反応試験との併用が推奨されている。 出典 Medical Tribune 2009.1.29(一部改変) 版権 メディカル・トリビューン社 <参考サイト> ELISPOT(エリスポット)法 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=ELISpot++結核&btnG=検索&lr= 放浪呼吸器科医の日記 http://konaina.exblog.jp/9997480/ http://www.jata.or.jp/terminology/a_14.html [PDF] 結核の新しい診断 http://medical.radionikkei.jp/abbott/final/pdf/050325.pdfESAT-6およびCFP-10の両特異抗原を利用してリンパ 球を刺激し、反応性のインターフェロンγの産生を測定する方法であるという点では同じ ですが、測定系にenzyme-linked-immunospot、通常ELISPOTと呼ばれるアッセイ法を 用いており、固相化した抗インターフェロンγ抗体により産生されたインターフェロンγ を捉えることから、原理的にはインターフェロンγを産生している一つひとつの細胞を数 えることが可能です。文献的に結核感染の診断に関する感度は96%、特異度は100%と報 告されています。 新しいTBテストは患者のためのより速く、より容易な診断を意味する http://www.iconocast.com/Japanese/A9EY6/News9.htm ドイツの放射線科医における潜在性結核感染症有病率 http://www.micks.jp/jhi/2008/05/20080509.html 次世代の結核感染診断法とその諸課題 http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0805_03.pdf
by wellfrog3
| 2009-02-04 00:30
| 呼吸器科
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