大半で腰椎穿刺は不要
乳幼児が痙攣を来すほどの高熱を出すと親は動転し,子供を抱いて緊急治療室(ER)に駆け込むことが多い。 ERでは細菌性髄膜炎を除外するため腰椎穿刺などの検査が行われる。 しかし,ボストン小児病院救急部のAmir Kimia博士らは,腰椎穿刺は単純型熱性痙攣児にはおそらく不要であるとPediatrics(2009; 123: 6-12)に発表した。 704例中細菌性髄膜炎はゼロ 単純型熱性痙攣は持続時間15分未満で,24時間以内に再発しない全身性の痙攣で,6か月〜5歳の乳幼児の2〜5%に見られ,珍しい疾患ではない。Kimia博士は「われわれはERで1日に1例以上の熱性痙攣に遭遇している。 熱性痙攣が初めて起きた場合,親は不安になり救急車を呼ぶのが普通である」と述べている。 単純型熱性痙攣の初回発作に対する腰椎穿刺の適応について,1996年に出された米国小児科学会の勧告は, (1)12〜18か月児には考慮する (2)6〜12か月児には積極的に考慮する —としている。 しかし,同博士らが,1995年10月〜2006年10月に同院小児救急部を受診した単純型熱性痙攣の初回発作例704例のカルテを調査した結果,いずれの年齢群でも細菌性髄膜炎の症例は皆無であった。 これら704例中271例(38%)が腰椎穿刺を受け,そのうち10例(3.8%)の髄液中に白血球数の増加が見られた。 ウイルス感染が示唆されたが,病原性の細菌は同定されず,細菌性髄膜炎と診断された患児は皆無であった。 今回の研究は,細菌性髄膜炎リスクが最も高いと考えられる6〜18か月児に限定して行われた初めての大規模研究であり,結果は同じ年齢群と6歳までの年齢群を対象に行ったこれまでの小規模研究と合致している。 非定型な臨床症状には注意を 腰椎穿刺は局所麻酔のほか,しばしば鎮静薬を要する。 Kimia博士は「腰椎穿刺は合併症発生率がきわめて低く安全な検査とはいえ,針で穿刺する以上,苦痛を伴う。われわれは絶対に必要でない限り,施行しないようにしている」と述べている。 11年に及ぶ研究期間中の腰椎穿刺施行率の低下にも表れているように,腰椎穿刺の必要性については既に疑問の声が上がっている。 この背景には,米国で髄膜炎の2大起因菌であるインフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチン接種が1990年に,肺炎球菌に対する接種が2000年にそれぞれ導入されたため,細菌性髄膜炎の発生率が激減したことが挙げられる。 同博士によると,先進諸国ではワクチン接種を受けた乳幼児では細菌性髄膜炎はまれな疾患となった。 単純型熱性痙攣は家族性に発症する傾向があり,急激な体温上昇に対処する脳の未熟性を反映すると考えられている。 一部の研究者は,体温の高さよりも体温が上昇する速度のほうが重要と考えている。 37.2℃から38.3℃に上昇しても,それが急速なものであれば,熱性痙攣の素因を有する乳幼児では発作の引き金となりうるとしている。 しかし,同博士らは「今回の結果は複合型の熱性痙攣,懸念すべき臨床症状・徴候や基礎疾患を有する小児には当てはまらない」としており,「腰椎穿刺はルーチンに行うのではなく,臨床症状に基づいて考慮すべきだ。 患児がぐったりしている場合や,神経学的症状,興奮状態,無反応,そのほかの臨床徴候(ある種の発疹,大泉門膨隆)などが見られる場合は,小児の年齢が高くても腰椎穿刺を考慮すべき」との見解を示している。 さらに,同博士は「ERで子供に検査の必要はないと親に納得させるのが難しい場合もある。痙攣発作に衝撃を受けた親のなかには子供が死んでしまうのではないかと恐れる者もいる。今回の結果は,そうした親を安心させる一助となるものと期待している」と述べている。 出典 Medical Tribune 2009.3.19 (一部改変) 版権 メディカル・トリビューン社 <番外編> 脳動脈瘤の家族歴のある喫煙者は脳卒中リスク高い 米国神経学会(AAN)のメンバーでシンシナティ大学(オハイオ州シンシナティ)神経学のDaniel Woo博士らは,喫煙者で脳動脈瘤の家族歴がある人は脳動脈瘤から脳卒中を発症するリスクが有意に高くなるとNeurology(2009; 72; 69-72)に発表した。 6倍強発症しやすい 脳卒中の1種であるくも膜下出血の患者では約35〜40%が死に至る。 Woo博士らは今回の試験で,脳動脈瘤から脳卒中を発症した 患者339例と対照として非発症者1,016例について調べた。 脳卒中群の半数が喫煙者で,残りの半数は喫煙歴がない,あるいは現在禁煙している患者であった。 その結果,喫煙歴と脳卒中の家族歴を有する人は,喫煙歴のない人あるいは脳卒中や脳動脈瘤の家族歴のない人と比べて,6倍強も脳卒中を発症しやすいことがわかった。 また脳卒中の家族歴のある人は,禁煙により発症リスクを2分の1強抑制できる可能性も示唆された。 これらの結果は高血圧,糖尿病,飲酒,BMI,学歴とは関連しなかった。 同博士は「今回の知見から喫煙と脳卒中の相互関係が示唆された。 そのため喫煙者には禁煙を推奨すべきだと考える。喫煙者の場合,あるいは動脈瘤の家族歴がある場合,脳動脈瘤破裂による脳卒中の発症リスクがきわめて高いことになる」と述べている。 出典 Medical Tribune 2009.3.19 (一部改変) 版権 メディカル・トリビューン社 リャド 黄昏の光 http://www.oida-art.com/buy/detail/7022.html
by wellfrog3
| 2009-03-27 00:06
| 神経内科
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