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膵がんの警告症状

上腹部痛と背痛が膵がんの警告症状
早期診断なくして治癒はない
膵がん患者の生存率は現在も低く,治癒が見込まれるのは,早期診断と完全切除が行われた場合のみである。
カリタス連盟・聖テレジア病院(ザールブリュッケン)内科のManfred Lutz教授は「膵がんの早期診断が可能となるよう,危険因子と症状を把握することが重要だ」とDer Internist(2008; 49: 1079-1088)に発表した。

家族歴でリスクは3倍に
悪性膵がんの90%以上が膵管腺がんで,うち約80%が膵頭がんである。
膵がんは後期になってから初めて発見されるケースがほとんどで,その場合,根治療法はほぼ不可能である。
ドイツでの年間発症率は人口10万人対で16,平均年齢は69歳である。
5年生存率は男性で6.4%,女性で7.6%にすぎない。
 
発症には家族歴が大きく関与している。
膵がん患者の第1度親族では,膵がん発症リスクが2倍に上昇し,60歳未満の家族が膵がん患者の場合には3倍となる。
こうした遺伝的要因以外に,喫煙,過体重,慢性膵炎も確定的な危険因子である。
喫煙者の膵がん発症率は非喫煙者の2倍で,発症年齢も10歳ほど低い。
BMIが30以上の肥満者では,正常体重者と比べて発症率が20%ほど上昇する。
 
以上に加えて,膵がんの発症と結び付く遺伝性腫瘍症候群もいくつか存在する。
家族性膵がん(FPC)の場合には,第1度親族のうち少なくとも2人が膵がんで,年齢は無関係である。
このようなケースに対しては,遺伝的な面から説明を行うべきである。
Peutz-Jeghers症候群患者の36〜42%,家族性異型多発母斑黒色腫症候群(FAMMM)患者の17%が疾患経過中に膵がんを発症する。
遺伝性乳がん,遺伝性卵巣がん,家族性大腸ポリポーシス(FAP),遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC),von Hippel-Lindau病,Fanconi貧血の患者などでは,膵がんリスクが軽度に上昇する。
 
膵がんには特徴的な初期症状はないが,上腹部や背部の鈍痛が初発症状であることが多く,このうちの約80%が食欲不振または体重減少と結び付いている。
約25%に無痛性の黄疸が現れ,腹部膨満感,鼓腸,脂肪便,消化不良などの症状が認められることも珍しくない。
膵がんが発見される数か月から数年前に,非定型的な2型糖尿病が多発しやすい。

早期診断には不向きなCA 19-9
膵がんが臨床的に疑われる場合には,超音波検査を優先的に実施し,次にCT,MRIによる胆管膵管造影(MRCP),超音波内視鏡検査などを検討する。Lutz教授によると,超音波検査以外の3つの検査法の価値はほぼ等しいという。
 
膵がん患者の80〜90%では腫瘍マーカーCA 19-9が上昇しているが,このパラメータは早期診断には不向きである。同パラメータは良性胆道疾患でも上昇する。
 
悪性を疑う充実性空間占拠性病変が確認されたら,生検をせずに一次手術を実施すべきである。
完全切除のみが治癒のチャンスと結び付く。
手術計画の策定に当たって決定的となるのは,上腹部大動脈の状況である。
根治的切除(R0切除)が可能となるのは,腹腔動脈や腸間膜動脈への浸潤が認められない場合である。
既に遠隔転移が生じている場合には,膵がんの外科的切除は無意味である。
 
手術に成功した段階でアジュバント化学療法(主としてゲムシタビンを6か月間投与)を実施すれば,5年後の全生存率が8〜9%から21%に改善される。
 
膵がん手術の不可能な患者に対して実施する化学療法は姑息的治療で,1年生存率を20%にまで引き上げることができる。
補助的療法として重要なのは十分な疼痛治療であり,閉塞性黄疸に対しては胆管ドレナージを実施する必要がある。

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出典 Medical Tribune 2009.5.14(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社


<自遊時間>
きのう紛れ込んで来た子猫です。
ことの顛末は以下を参照下さい。

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第73回日本循環器学会・右室梗塞合併AMI
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by wellfrog3 | 2009-05-20 00:24 | 消化器科
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