急性腹痛に対する画像検査
Imaging for Acute Abdominal Pain 2009 July 28 急性腹痛を有する患者における画像検査(例えば、超音波検査[ultrasonography:US]、コンピュータ断層撮影[computed tomography:CT])は、診断見逃しを減らすが費用がかかる。 さらに、CTによって患者は放射線に曝露される。 このドイツのプロスペクティブな多施設研究では、2時間~5日間の非外傷性腹痛を有する成人1,021人を対象とし、緊急性のある疾患(すなわち、24時間以内に治療が必要である疾患)を検出するための最適な画像検査ストラテジーを検討した。 すべての患者に身体診察、臨床検査、単純X線撮影を実施したのち、診断(緊急性または非緊急性)を記録した。 次に、CTおよびUSを実施し、診断を再記録した(各画像検査を読影した放射線科医には、当該患者の臨床データが与えられたが、他の画像検査の結果は与えられなかった)。 全体で11種類の診断ストラテジーが評価された。各患者に対するそれぞれのストラテジーから得た診断を、熟練した医師のグループが6ヵ月後に下した診断(既知のアウトカムに基づく)と比較した。 患者のうち緊急を要する疾患がレトロスペクティブに診断されたのは、661人(65%)であった。USまたはCT単独のストラテジーでは、臨床診断単独と比較して、緊急を要する疾患の偽陽性診断数が少なかった。 CTはUSと比較して、独立した画像検査法としてより感度が高かったが、すべての患者にUSを行い、USが陰性または決定的でない場合にCTを実施するストラテジーは、もっとも感度が高く(94%、すなわち、見逃した緊急性疾患は6%のみ)、CTによる放射線曝露を受ける患者は49%のみになると考えられた。 疼痛部位、年齢、または体格指数に基づくストラテジーは、US+条件付きCTのストラテジーよりも感度が低かった。 コメント: これらの結果は、現場でよく認められることを確認するものである。 つまり、急性腹痛患者における緊急性疾患の同定にはCTのほうがUSよりも感度が高い。 しかし、すべての患者にUSを行ったあとUSが陰性または決定的でない場合のみCTを行うという条件付きストラテジーは、もっとも感度が高く、放射線に曝露される患者数がかなり減少するであろう。 — Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP Published in Journal Watch General Medicine July 28, 2009 Citation(s): Laméris W et al. Imaging strategies for detection of urgent conditions in patients with acute abdominal pain: Diagnostic accuracy study. BMJ 2009 Jun 26; 338:b2431. (http://dx.doi.org/10.1136/bmj.b2431) http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW09-0728-02.html <番外編> #名古屋の死亡者 病院、はじめは感染疑わず 国内3例目の新型インフルエンザ感染による死者となった名古屋市の女性(81)が入院していた国立病院機構名古屋医療センター(同市中区)は19日、女性が高熱で13日に救急外来を受診した際、食べ物などが気道に入って起きる誤嚥(ごえん)性肺炎と診断し、新型インフルエンザ感染を疑わなかったことを明らかにした。 女性が簡易検査を受けたのは入院から4日後で、死因は新型インフルエンザによる重症肺炎だった。 女性は受診の際、誤嚥性肺炎を併発することがあるという多発性骨髄腫の診断も受けており、市役所で会見した内海真・副院長は「現場の医師の判断に大きな間違いはなかった」と話した。 センターによると、女性が13日に受診した際、発熱などのほか、嘔吐(おうと)もみられ、誤嚥性肺炎などと診断して4人部屋に入院させた。 女性は15日に個室に移ったが、女性を診断した研修医や看護師3人が16〜17日に、同室だった1人を含む同じ病棟の入院患者2人が17〜18日に、インフルエンザが疑われる症状を訴えた。 17日に女性の簡易検査を実施し、18日に遺伝子検査(PCR検査)で新型インフルエンザと確認した。 内海副院長は「抗生物質を投与して熱は37度台まで下がっていた。診断に問題はなかった」と説明。 一方で「早期に検査していれば違う対処もできたかもしれない」と話した。 センターは研修医ら6人が院内感染した可能性を認めているが、いずれも快方に向かっており、PCR検査をする予定はないという。 出典 毎日新聞 2009.8.20 版権 毎日新聞社 <コメント> 他の報道と異なり毎日新聞は辛口のタイトルをつけています。 私は外来で、高熱患者には白血球数と簡易な血液像を自動血球計算機で検査しています。 もちろん各種迅速試験も併用しています。 昨日も下腹部痛の20歳代の女性が来院し、虫垂炎としては非典型的と思ったのですが院内検査で白血球数18700。 病院へ「虫垂炎疑い」として紹介しました。 夜Faxで返事が届いて「虫垂炎として緊急腹腔鏡下虫垂切除術を行った」ということでした。 そのように自動血球計算機がなければ私の日常診療は「めくら同然」です。 CRPも重要でしょうが、私はまずはウイルス感染と細菌感染の鑑別からと思っています。 名古屋でのケースでの検査データの開示は是非していただきたいものです。 「現場の医師の判断に大きな間違いはなかった」という限りは検証が必要です。 私の勤務医の経験でも内科に関してはだんだんチーム医療という認識が薄れて来ています。 要するに若い医師はベテラン医師に相談しない、部長などのベテラン医師は研修医などにきちんと指導しないといったことです。 国立病院は給料も高くなくいまだに、ベテラン医師がネーベンをしているケースも多いのではないのでしょうか。 今回ニュースになった病院も以前、ネーベン問題で新聞記事になりなしたが現在はどうなんでしょうか。 私自身国立病院に勤務した経験がるのですが決して士気は高くありませんでした。 厚労省への注文としてはお膝元の国立病院での新型インフルエンザ対策の強化です。 つまり「隗より始めよ」ということです。 ジェネリック薬品もそんなにいいのなら、まずは国立病院での処方普及をさせるべきです。 時系列的に考えると入院時は誤嚥性肺炎で入院後に新型インフルエンザを併発した(入院4日で簡易検査が陽性になるのは少し変)ということも考えられるかも知れません。 いずれにしろ院内調査委員会を立ち上げるか、厚労省からの事情聴取を受けるかしてわれわれ医療機関にその結果を情報公開して欲しいものです。 <自遊時間> 衆議院選が近づいて来ています。 ちょっと興味深い記事が見つかりました。 衆議院議員選挙と医療政策 「医療界にとって政権交代が望ましい」が約6割◆Vol.3 医療政策決定プロセス改善の最善策は「実施結果に担当官僚が責任を負う」 http://www.m3.com/iryoIshin/article/105901/ Q. 医療政策決定プロセスを改善するために、最も効果的だと思われる方法は何ですか A. 勤務医・開業医ともに、上位3位は「実施した政策の結果について担当官僚が責任を負う仕組みを導入する」、「厚労省の幹部クラスに、臨床現場の医師を任命する」、「重要な政策・制度の決定において医療従事者を含めた関係者の議決を取る仕組みを導入する」で、いずれも約半数の回答者がこれを挙げている。 4位は「厚労省の官僚が、一定期間救急などの医療現場を体験することを義務化する」、5位は勤務医が「地方分権を進める(都道府県が地域の現状に合わせた制度を実施できるよう、厚労省から権限を委譲)」、開業医は「主要審議会・検討会を同時中継するか、すべての(逐語)議事録を公開する」。 その他の意見としては、「政策に仮決定試行期間を設ける」、「過疎化が進む地方都市に厚労省付属病院を作り、官僚に病院経営をさせる。労働基準法を順守し、正しい保険診療を行って、黒字経営ができるか試させる。黒字になるまで診療報酬を上げさせる」などが上がった。 Q. 医師会・医師連盟などが、特定の政党や候補者を支持・推薦することについて、どのように考えますか A. 「全国のすべての医師会・医師連盟が支持・推薦対象を統一すべき」との意見は勤務医で8.5%、開業医で12.6%と少数。 「全国で対象・方針を統一する必要はないが、各医師会・医師連盟による支持・推薦はすべき」との意見は勤務医・開業医ともに回答のうち最も割合が多く、それぞれ40%台。 「全国で統一」と合わせて、半数以上の医師が医師会・医師連盟などによる支持・推薦を行うべきだと考えている。 一方で、「医師会・医師連盟などによる支持・推薦はすべきではない」とする医師も勤務医で36.8%、開業医で34.3%と、3分の1強を占めた。 なお、日本医師会常任理事・中川俊男氏は、一部の都道府県や郡市区の医師会・医師連盟が自民党以外への支持・推薦を表明していることについて、共同記者会見において質問に答え、「以前にも都道府県レベルで自民党以外の候補者が推薦されることはあった。できれば全国で意思が統一されることが望ましいが、現在のような状況では仕方がない」との見解を示した。 勤務医、開業医ともに「政権交代期待」が約6割 2009年08月19日 http://mrkun.m3.com/mrq/community/message/view.htm?cmsgId=200908190903307799&msgId=200908190908178649&mrId=ADM0000000 「他の政党に政権交代をした方が良い」:勤務医55.1%、開業医60.9% 「自民党が政権を維持した方が良い」:勤務医16.2%、開業医14.3% 「どの政党が政権を取っても変わらない」:勤務医15.4%、開業医16.1% 既存政権の「不満」と、新しい政権への「期待と不安」。そんな思いが入り混じった選挙戦が展開されています。 span style="color:rgb(0,0,255);">他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
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