人気ブログランキング | 話題のタグを見る

炎症判定の際の 白血球数とCRPの使い分け

炎症判定の際の白血球数とCRPの使い分け
細菌感染症では、白血球数とCRP値は病勢を反映して上下し、ともに重要な指標となります。
炎症急性期には、白血球とCRPはほぼ相前後してともに上昇します。
増加する白血球の中心は好中球であり、核の左方移動も認めます。
炎症のピークが過ぎてからの下がりは、CRPのほうがより速やかです。
慢性化した場合には、CRPも白血球数も、炎症の程度に応じて高値をとりますが、CRP値のほうがより客観的に評価できる場合が多いようです。
これには、白血球数という検査項目自体の個体間変動の大きさも関係しています。

白血球の基準範囲は、成人の場合、3、300〜9、000/μL程度です。
新生児や幼児は、成人より多めです。
しかし、これは、あくまでも集団の基準範囲であり、白血球数のように個人差が大きい検査項目に関しては、理想的には、個人の基準範囲に照らし合わせて評価することが望ましいです(実際には不明の場合が多いですが)。
例えば、普段の白血球数が3、500〜4、500/μL程度の人ならば、白血球数8、500/
μLは基準範囲内に収まっていても異常と判定しなくてはいけません。
逆に、いつも白血球数が10、000/μL程度という人もいます。
とくに喫煙者の場合は、非喫煙者よりも明らかに白血球数が多く、この程度の白血球数を示される方は多くいます。
さらには、白血球数の場合、産生・動員と消費のバランスが関係しており、重篤な感染症ではむ
しろ下がることもあります。
また、炎症以外にも白血球数に関係する因子が多々あり、例えば、骨髄の造血機能の低下などがあると白血球数は減少します。
この場合、炎症があっても、白血球数は増加しないことも多いです。

一方、CRPは、元々は、肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応を示す蛋白として見いだされましたが、急性相反応蛋白の代表です。炎症などにより活性化された単球/マクロファージはインターロイキン(IL)-1、IL-6、TNF-αなどを分泌しますが、これらの炎症性サイトカインは肝細胞に作用して、CRPなどの急性相反応蛋白の産生を誘導し、その血中濃度を高めます。
炎症性疾患で鋭敏に上昇し、病態の改善後速やかに低下するため、病態の診断、予後の判定、治療効果の観察に役立ちます。
また、白血球数と違い、炎症のない健康な人では、ほとんどカットオフ値以下であり、他の要因で相殺されるということも少ないです。
また、微弱な慢性炎症もかなり鋭敏に反映されます。
最近では、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる動脈硬化症が慢性炎症性疾患としてとらえられるよ
うになりましたが、この際も、高感度CRP測定が有用とされています。

白血球数、CRPともに炎症のマーカーとして有用であり、日常臨床においては両者の測定がなされることが多いと思われますが、以上より、どちらか一方となると、(とくに慢性炎症においては)CRPが有用と思われます。ただ、これに関しては、検査を実施する環境も関係し、画一的には決められないと思います。

http://www.e-clinician.net/vol56/no581/pdf/sp21_581.pdf
CLINICIAN 2009 NO.581 P74~76

<番外編>
ワクチン輸入ピンチ、専門家「安全確認が先」
読売新聞 2009.8.22
■政府が検討する新型インフルエンザワクチンの輸入について、ワクチンを供給する欧米の製薬会社が提示した契約条件が明らかになった。

■ワクチンが原因で副作用が起きた場合にメーカーを免責するよう求め、8月末までに契約しないと他国への供給を優先させるとしている。国内の専門家は、輸入に先立つ日本人での安全確認を求めており、契約が間に合うかどうか微妙な情勢。大流行が懸念される秋に、輸入が間に合わない可能性も出てきた。

■政府が交渉しているのは、欧米の大手製薬企業。厳しい条件を提示してきたのは、北半球が流行期に入る10-11月以降、世界的なワクチン不足が予想されているためと見られる。

■舛添厚生労働相は先月、国内で必要なワクチンの数を5300万人分と表明。厚労省は国内メーカーの供給分を差し引いた1500万-2000万人分を輸入で穴埋めするため、海外のメーカーと交渉してきた。

■早期の輸入を目指す厚労省は契約条件を受け入れる方向で、政府の諮問委員会に対し、薬事法の「特例承認」を適用し、海外での試験結果だけで承認する方式を打診した。

■これに対し、専門家からは「国産ワクチンと接種方法が違ったり、免疫増強剤が入ったりしており、安全性が担保できない」「輸入するほどの数量が必要なのか」といった異論が続出。国内での安全確認や必要量の再検討を求めたため、メーカー側との具体的な交渉に入れないままとなっている。


target="_blank">http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/08/24/106226/?Mg=e2957f6d282710e07f814b914918eef3&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

by wellfrog3 | 2009-08-27 00:22 | 感染症
<< 新型インフルエンザ 本格的な第... 血中インスリン測定(IRI)について >>