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3大パンデミックに学ぶ

今回流行中の新型インフルエンザについてはまだ十分に把握されたわけではなく、今後どのように流行していくのか不明な点が数多くあります。
「新型」のために当然といえば当然です。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というのはビスマルクが言った言葉ということになっています。
「アジアかぜ」について検証すれば学ぶことも多いはずです。


抗菌薬時代に広まったアジアかぜ
1957年春に感染拡大が始まったアジアかぜは,罹患者数も死亡者数もスペインかぜに比べれば,けたが小さかった。
しかし,既に抗菌薬が存在した時代としては甚大な被害と言える。
現代より脆弱な医療体制であったとはいえ,アジアかぜと戦った人類の記録から見えるものとは。当時を肌で知る長崎大学の松本慶蔵名誉教授が実体験を交えて考証し,新型インフルエンザ(A/H1N1)への備えを説いた。
 

目立った黄色ブドウ球菌の感染
中国南部から香港を経て,世界的大流行へと拡大したアジアかぜのわが国でのピークは,1957年5〜8月の第1波と,季節性インフルエンザの流行と重なる同年10月〜58年2月の第2波がある()。


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ほとんどの人に免疫がないことから"処女感染"との見方もあったが,70歳代の一部に抗体が見られたため,20世紀初頭に類似したインフルエンザの流行があったと推測される。

記録されている数字では国内で延べ約300万人が罹患,死亡者は5,700人程度。
年齢別の死亡者数は,季節性インフルエンザと同様に体力のない小児と高齢者が多かった。
死亡者数が80歳を過ぎると急激に下がるのは,抗体保有者がいたことに加え,当時の人口構成比率によるものと見られる。
死亡者を詳しく調べたところ,肺炎中黄色ブドウ球菌の2次感染に注目が集まった。
なぜなら,当時は耐性を獲得し,"王者の菌"と呼ばれた黄色ブドウ球菌が,最も多い市中肺炎としてばっこしていたからだ。
死亡などの被害は僧帽弁膜症をはじめとした弁膜症患者や肥満者,高齢者,妊婦に多く見られた。


わずか6種類程度の抗菌薬に大きな効果
瞬く間に広まったというよりも,重症者が多かったという印象が強かったと感じる。
もし,単純にスペインかぜの時代に流行していたと考えれば,ひょっとしたら同規模の大きな被害が生じていたかもしれない。
 
しかし,そうはならなかった。
なぜならば,流行時の抗菌薬はペニシリンやテトラサイクリン,クロラムフェニコールなど6種類程度しか使えなかったものの,抗菌薬が存在していたことが大きかった。
世界保健機関(WHO)によると,アジアかぜの死亡率は6,000〜7,000人に1人とスペインかぜよりもきわめて低かったという。


ウイルスよりも恐怖感が広がる
よく3大パンデミックで亡くなった感染者の数値をクローズアップする報道があるが,多くの抗菌薬と抗ウイルス薬がある現代医療であれば,慌てる必要は全くないことがわかる。
今春は新型インフルエンザそのものよりも,こうした情報の氾濫で恐怖感が拡大したことが混乱を招き,拍車をかけたと見るべきだろう。
 
先月には国内初となる院内感染の事例がニュースとなったが,病院も診療所も過度に心配することはないと言いたい。

抗ウイルス薬の備蓄も世界トップレベルであり,治療も予防も可能ということを前提に考えたほうがよい。
私自身,かつてアジアかぜにかかって3日間,39℃の高熱で寝込んだ経験がある。
おそらく感染者を診察している最中にかかったのだと思う。
しかし,治療をすればすぐにおさまった。院内感染に関しては,高齢者や老人ホームの入所者には優先的に新型インフルエンザのワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種などを講じておけば,季節性と変わらない対応ですむ。


感染拡大は「長くても1か月」
3大パンデミックにしても,季節性インフルエンザの流行にしても,同じ地域での流行は1か月もたてば収束しているという事実もある。
メキシコに端を発した新型インフルエンザの感染拡大も,同国ではほぼ1か月で爆発的な拡大はおさまった。
インフルエンザの猛威は1か月で終わるし,感染しても治療を受け,回復すればすぐに社会復帰できる。
 
今後,どのような形で新手のインフルエンザウイルスが出ようとも,現時点では3大パンデミックのような被害にはならないだろう。
ただし,医療者に過去から未来を学ぶ姿勢がないと,今秋に新型インフルエンザが大流行すれば,たちまち春の二の舞になってしまう。
医療者,そして行政,マスコミが力を合わせて正しい情報を共有することが,何よりのパンデミック対策と考える。


社会的混乱大きく「補償要求」も
戦後最初のインフルエンザパンデミックとなったアジアかぜでは,世界で200万人の死者が出たとされる。
スペインかぜに比べれば"10分の1程度"と見る向きもあるが,社会的な混乱は決して小さくはなかった。

<20日で都道府県の半数超で感染>

中略

<休校措置に異論も>
一方,研究者の間ではワクチンが十分に行き渡る見込みがなく,スペインかぜでは第2波の被害が大きかったことから,秋の流行に備え「早いうちにかかっておいたほうが免疫を獲得できて安全」とする見方もあった。
これらを踏まえ,ある医大学長らはインフルエンザの感染による休校措置に異を唱える声明を出した。
 
職場にも欠勤者が続出し,都内の警察署では警察官が足りなくなり,犯罪捜査に支障が生じたという。
東北地方の裁判所では,殺人事件などの弁護士や判事が寝込んだため,公判が延期となった。
 
パンデミックへの備えを万全にする余り,逆に被害を被った例も。
医薬品メーカーが厚生省の指示でインフルエンザワクチンを大量に製造したものの,第2波の被害が想定よりも小さかったため,大量の在庫を抱える羽目になったという。
ワクチンの有効期間は1年程度で,在庫を抱えるメーカーも資金繰りに窮することから,国に補償を求める騒ぎにまで発展し,当時の新聞には「とんだ置き土産」の文字が躍った。
 
あれから半世紀を経たが,ブタ由来の新型インフルエンザに関する情報の錯綜や"診療拒否"問題などを省みると,現代でも同じ騒動が繰り返されないとは限らない。
だからこそ,医療者には正しい知識を備えた対応が求められる。

出典 Medical Tribune 2009.8.27
版権 メディカル・トリビューン社



<番外編>
肝がん細胞:大半を正常化 ハーバード大チーム、マウスで成功
マウスの体内の肝がん細胞の大半を、正常な細胞に変化させる新しい手法を、森口尚史・米ハーバード大研究員らのチームが開発した。肝がんの悪性度などに関与する遺伝子などを使い実現した。
2日、米ボストンで開かれる「分子生命科学会議・幹細胞シンポジウム」で発表する。

チームは、まずがん細胞を作る「もと」になるヒトの肝がん幹細胞をマウスに移植し、肝がんマウスを作成した。
この幹細胞に風邪の原因ウイルスと同種のアデノウイルスを使って、肝臓で働きが低下するとがんの悪性度を高める遺伝子「HNF4α」を組み込むことに成功。
さらに、がん細胞が正常な細胞になる能力を高める働きがあり、海外では抗がん剤としても使われる2種類の化学物質を患部に投与した。

その結果、投与から60日後には体内の肝がん細胞の85~90%が、見た目や機能が正常な肝細胞に戻り、染色体もがん細胞特有の異常が消えることが分かった。
一方、治療したマウス8匹は実験から8週間後まですべて生存していたのに対し、何もしなかった同数のマウスはすべて死んだという。

森口研究員は「今後、安全性を確認し、人での治療を目指したい。完全にがんは消えないが、残りはがんの部位に電極を入れて焼くラジオ波を使えば、手術に比べ体に負担の少ない治療が可能になる」と話している。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090902ddm003040080000c.html
出典 毎日新聞・東京朝刊 2009.9.2
版権 毎日新聞社



滑脳症:知能障害、てんかん伴う病気 酵素の働き抑える薬で、治療に光明
遺伝子が欠けていることで起きる先天性の病気「滑脳症(かつのうしょう)」について、大阪市立大の広常真治教授(分子生物学)と山田雅己講師らが、関係する酵素を発見し、この酵素の働きを抑える薬で症状を緩和できることをマウスの実験で確認した。
治療法につながる成果という。
米科学誌「ネイチャーメディシン」に7日、論文が掲載される。

滑脳症は「LIS1」という遺伝子が欠けていることによって起き、発症は新生児1万5000人に1人程度。
この遺伝子が作り出すたんぱく質が不足することで脳の神経細胞がうまく発達できず、通常6層の脳構造が4層になり、表面のしわができない。
知能障害やてんかん、まひを伴い、治療法はない。

広常教授らは、「カルパイン」と呼ばれる酵素が、この遺伝子が作るたんぱく質を分解することを確認。遺伝子操作で滑脳症にしたマウスの胎児に、母親の腹腔(ふくくう)を通してカルパインの働きを抑える薬剤を注射で投与。
すると胎児の脳構造が回復し、運動能力も通常のマウス並みになった。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090907ddm012040146000c.html
出典 毎日新聞・東京朝刊 2009
版権 毎日新聞社


<きょうの一曲>  ドビュッシー/月の光
Debussy, Clair de lune (Twilight soundtrack? piano music)
http://www.youtube.com/watch?v=LlvUepMa31o&feature=fvw

David Oistrakh, Debussy - Clair de lune
http://www.youtube.com/watch?v=SKd0VII-l3A&feature=related

John Williams & Julian Bream: C.Debussy-Clair de Lune
http://www.youtube.com/watch?v=T1i_2HYmJkA&feature=related

横浜夜景~ドビュッシー/月の光
http://www.youtube.com/watch?v=yV7lwpw1ZIs&hl=ja

ドビュッシー/月の光 ジャズmix Debussy/Clair de Lune jazz mix (record)
http://www.youtube.com/watch?v=BbgatlKO1IU&feature=related

clair de lune
http://www002.upp.so-net.ne.jp/hidk/mft/clair_de_lune.html

月の光、ドビュッシー~名曲スケッチ
http://www.geocities.jp/mani359/meitukinohikarido.html

【朗読】「月の光」/ポール・ヴェルレーヌ
http://koebu.com/topic/【朗読】「月の光」%20_CLAIR%20DE%20LUNE_#25c3f78eaac8e07a0bbaa3dfb97295a401e2dbf8

月の光
http://web.t-online.hu/yuitobt/clairdelune.html


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http://d.hatena.ne.jp/asin/B000VI6KVY
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by wellfrog3 | 2009-09-08 00:23 | 感染症

輸入ワクチンは「かけ捨て保険」?

新型インフルエンザについては

ワクチン輸入慎重論
http://wellfrog3.exblog.jp/d2009-09-02

でもとりあげました。
きょうはその続編です。

「白紙承認」してまで輸入しなければならないものか
厚労省意見交換会でワクチン輸入への懸念相次ぐ」

今冬に新型インフルエンザ(A/H1N1)の大きな流行が懸念されるなか,ワクチンの量確保や接種優先順位が注目されている。
厚生労働省(厚労省)は昨日(8月27日),専門家や医学関連学会代表,薬害患者団体代表らを集めて「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」を開催した。
各学会代表から優先順位の案が提出されたほか,ワクチン輸入に関する議論では政府の拙速な判断に懸念を示すメンバーが続出。
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の田代眞人氏からは,舛添要一厚労大臣が特例承認制度の活用する考えを示したことに対し「白紙で承認してまで輸入して接種しなければならないものなのか」という疑義が呈された。

輸入ワクチンは「かけ捨て保険」
同会の開催は8月20日に続いてのもの。今回の会合では自治医科大学(公衆衛生学)教授の尾身茂氏以外,すべて前回と異なるメンバーが招集された。
前回はワクチンの接種目的が「重症化予防,死亡者数減少」であることがおおまかに決定し,ワクチンが「ゼロリスク」ではないことを国民にどうやって周知していくか,副反応が出た際にどうやって補償していくかなどが議論され,ワクチン輸入に対しては尾身氏が
(1)国際貢献:輸入ワクチンの一部を発展途上国に寄付するのか,
(2)安全性:国民に説明できるか,安全性が危ぶまれたら即使用中止できるか,
(3)感染拡大の状況との兼ね合い—の検討を3条件として政府に提言したいと述べていた。

今回は,輸入予定のワクチンについて事務局が
(1)数社から入手可能,
(2)すべてアジュバント使用,
(3)少なくとも海外で承認を得たものを輸入,
(4)さまざまな患者層による安全性の検討などは上市後にモニターする
—などの方針を示し,年内に国内で生産可能な1,300万〜1,700万人分は0.5ccを2回接種した場合の試算で,投与量や接種回数が少なければこれ以上の人数分になるとの見解を提示。
また,必要量としている5,300万〜5,400万人分の根拠は,優先接種候補である医療従事者,小中高生,妊婦,基礎疾患を有する者,高齢者らを患者調査などから推計したという。

こうしたデータを示したうえで,厚労省健康局長の上田博三氏は「国内生産分は,6歳未満の小児,妊婦,医療従事者,高リスク者らへの接種で使い切ることが予想される。国内生産分のみで対処するのか,それとも不足分を輸入すべきかをある程度議論して欲しい」とメンバーに要望した。

これに対し,田代氏は「これまで『ワクチンが足りない』というだけで,輸入ワクチンのデータなしに輸入の是非について議論されてきた。ロジックの進め方がおかしいのではないか」と指摘し,特例承認についても「試験も製剤基準の決定もせず,書類審査のみという事実上の白紙承認も可能かと思う。そういうことをしてまで,輸入・接種をしなければならないものなのか。そもそも,こうしたことが議論されていない」と発言した。
さらに「国民全員分のワクチンを生産するのに1年半かかることは以前からわかっており,こうした事態になれば海外から輸入しなければならないということは予想できたはず。どうしていまになってこんな議論が行われているのかが疑問だ」と苦言。輸入ワクチンを「かけ捨ての保険」と表現し,「安全性の確認が絶対条件で,使わないに越したことはない」との見解を述べた。

上田氏は「臨床試験中の現段階では,有効性や安全性についてしっかりとしたエビデンスが提示できない。アジュバントを加えた海外産ワクチンは,筋肉注射をするなど我が国と使い方も違う。当然のことながら,承認する際にはきちんとしたデータを示したいと思う」とし,輸入問題の議論が遅れたことについて,厚労省新型インフルエンザ対策推進本部事務局長の麦谷眞里氏は「国内産ワクチンの増殖率が予想の半分以下で,各社がどのくらい供給できるのかなどもこの数か月でわかってきたこと。
ただ,なぜ議論をしてこなかったのかはご指摘の通りだと思う」と反省の意を示している。

「海外から購入してまで途上国に供与しない」
また尾身氏からは,国内産ワクチンを優先して接種するのか,輸入ワクチンの一部を途上国へ供与することは考えているのかなどの質問があった。
これについて上田氏は「少なくともどのメーカーが生産したものかわかるようにし,医療関係者にリスク情報を提供していく。また,輸入ワクチンは上市が遅れるため,優先度の高い人々には国内産を接種することになる」と回答。麦谷氏は「海外から購入してまで途上国に供与することは考えていない」とした。

このほか,日本小児科学会の森島恒雄氏(岡山大学大学院教授)からは「海外のワクチンはアジュバントを使用しており,効果が高いものの小児での発熱が予想される。日本の子供たちは熱に弱いといわれており,熱性痙攣の発症率も米国の2倍以上。海外での安全性試験の結果が,必ずしも日本に適用できるというわけではないと思う。ワクチン輸入を完全否定するわけではないが,発熱率と抗体産生率のデータをきちんと準備して欲しい」,日本老年医学会の井藤英喜氏(東京健康長寿医療センター長)からは「国内生産分だけでは,基礎疾患のない高齢者までワクチンが行きわたらないだろう。
季節性のインフルエンザでも,高齢者にワクチンを接種することによって流行などが阻止された事実がある。希望する高齢者が接種を受けられないのであれば,ワクチンを輸入しないという意見には反対だ」,日本循環器学会の島田和幸氏(自治医科大学附属病院長)からは「季節性インフルエンザに対する日本人のワクチン接種率を勘案すると,実際には現在議論されているほど接種希望者は出てこない可能性がある。数量的な状況をきちんと周知すれば,もう少し落ち着いた議論ができるのではないか」など,さまざまな意見が提示された。

唯一,患者側の代表として参加した全国薬害被害者団体連絡協議会の花井十伍氏は「各学会の接種優先順位案を見てみると,緊急性が高い人々は2,000万人程度。国内産でギリギリ足りるかもしれない。輸入の必要があるのだろうか」とし,事務局側が示した「さまざまな患者層による安全性の検討などは上市後にモニターする」については「後方監視でやろうという姿勢はおかしいのではないか」と発言。
その一方で,輸入するのであれば「現場の医師がきちんと患者に説明できるよう慎重に検討すべき。安全性を厳しく監視し,国策としての手厚い救済制度も考慮して欲しい」と述べている。

出典 MT pro 2009.8.28
版権 メディカル・トリビューン社




<きょうの一曲>  よこはま詩集
ダ・カーポ - よこはま詩集
http://www.youtube.com/watch?v=z6er83rskcs&feature=related



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デュフィ 「オーケストラ」
http://plaza.rakuten.co.jp/rousseau/diary/200801220000/
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by wellfrog3 | 2009-09-07 00:15 | 感染症

褐色脂肪組織

##成人にも活性化した褐色脂肪組織
#肥満と2型糖尿病の治療標的に
ジョスリン糖尿病センター肥満・ホルモン作用部長でハーバード大学(ともにボストン)内科のC. Ronald Kahn教授らは,これまで乳児にのみ存在するとされていた褐色脂肪組織(BAT)が,成人にも存在することを確認したとNew England Journal of Medicine(2009; 360: 1509-1517)に発表した。
エネルギーを蓄積し,体脂肪の大部分を構成する白色脂肪組織(WBT)と異なり,BATはカロリーを燃やしてエネルギーを消費するため,"善玉"脂肪組織の一種とされている。
今回の知見は,肥満と2型糖尿病に対する新たな治療法への道を開くものと見られる。

#蓄積量と肥満などの因子が相関
BATは,これまで乳児期にのみ存在し,成人するまでにそのほとんどが消失すると考えられていた。
今回の研究は,BATが成人でも存在するだけでなく,代謝活性を維持していることを初めて示した。
 
研究責任者のKahn教授は「成人でも活性化したBATが存在するという今回の知見は,BATが肥満と2型糖尿病治療において新たな標的となることを意味している」と述べている。
 
また,肥満は2型糖尿病の主要な危険因子であることから,BATの増殖を促進して,体重抑制と糖代謝改善の方法を発見することが,新規治療法につながるかもしれないとしている。
 
筆頭研究者で同センターのAaron Cypess博士は「今回の研究では,BATが成人において活性化しているだけでなく,その量が年齢や血糖値などさまざまな因子により異なることも確認した。
こうした因子のなかで最も重要なのは肥満度であった」と説明している。
 
BAT量は若年者ほど多く,また,エネルギーを消費して熱を産生することから,寒冷期ほど活性化していた。さらに,やせ型や正常血糖者にもBAT保有者が多かった。

#画像技術の進歩で検出可能に
Kahn教授は「特に注目されるのは,BMI値から過体重や肥満と診断された患者では,BATの実質量が少ない傾向にあったことだ。同様にβ遮断薬服用患者と高齢患者では,活性化したBATが少ない傾向にあった。例えば,64歳超でBMI高値の者では,BATの実質量は6分の1であった」と述べている。
 
今回の研究における特にBMIに関する知見は,BATを体重調節に活用できる可能性を示唆しており,BAT量を増大させることで年齢に関連した肥満を予防できる可能性がある。
 
同教授らは,ヒトのBAT体積と活性のin vivo測定技術の進歩により,BATの生理的役割と肥満など代謝障害治療の標的としての可能性に関する理解が進むと期待を寄せている。
今回の研究も,最新の画像技術により成果が得られた。
 
同教授らは,2003年8月〜06年5月にさまざまな理由でPET/CTスキャンを施行された1,972例のデータベースを解析した。
その結果,実質的なBATの存在が確認されたのは,男性の3%超と女性の7.5%であった。
 
同教授は「PET/CTではサイズと活性がある一定基準を超えたBAT組織しか検出できず,小径で活性の低い組織は見逃す可能性があるため,今回の保有率は明らかに過小評価されている」と説明している。
 
さらに,同教授らは,頸部の手術を行った別の患者群33例の病理記録から,BATが頸部に存在することを確認している。これは,PET/CTスキャンで,頸部にBATが最も多く認められたことと一致している。
33例の組織を検査したところ,BATに特異的に発現する熱産生蛋白質UCP-1の存在が確認された。
 
Cypess博士は「これらの知見は,これまで発見されていなかった熱産生BATが多くの成人にも存在していることを示唆している」と述べている。
肥満・糖尿病の治療に期待

米国立衛生研究所(NIH)付属米国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)臨床内分泌学部のFrancesco Celi博士は,同誌の付随論評(360: 1553-1556)で「今回の研究は,成人におけるBATの存在と生理的活性を示しており,BATがエネルギー消費調節のための薬理学的および環境面での介入の,新規かつ貴重な標的となりうることを示唆している」と述べている。
 
Kahn教授は「今回同定された人口比率よりも,はるかに高率で有意な量のBATが存在する可能性は高いが,その多くは体内に散在しており,画像検査では容易に確認できない。画像検査で捉えられるもののほとんどは頸部に存在している」と指摘している。「実際のところ,BATが乳児だけでなく成人でも存在するか否か,生理学的に重要か否かは長年議論されてきた。今回の研究は,BATが成人にも存在するだけでなく,体重と糖代謝の観点から生理学的に重要である可能性も示している。これによって,BATの調節を用いた肥満と2型糖尿病の新たな治療分野が開かれることを期待している」と述べている。
 
同教授らは,これまでに,マウスにおいて骨成長を誘発する蛋白質BMP-7もBATの発達促進に寄与していることを確認しており(Nature 2008; 454: 1000-1004),さらに,肥満と糖尿病を発症しにくいモデルマウスにおいてBATの塊が筋線維束に発現していることを確認している(Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 2007; 104: 2366-2371)。
出典 Medical Tribune 2009.6.25
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
#褐色脂肪組織の存在意義
和歌山医科大学 松下 宏名誉教授
旬日前でしたが,貴紙にハーバード大学のC. Ronald Kahn教授が肥満と2型糖尿病の発症は褐色脂肪組織(BAT)の機能低下に基因すると報告されたNew England Journal of Medicine(2009; 360: 1509-1517)の記事が紹介されました。
 
これを,小生拝見しまして誠に嬉しく思いました。
 
と申しますのは,過去30数年前にもなりますか,小生疾患モデル動物に興味を抱き,米国メーン州のジャクソン研究所で育てられた肥満糖尿(ob,db)マウスを頂き,これについて種々研究しましたが,不思議にもこれら異常マウスは寒冷に弱く,その故は何なのか調べると,ネズミに特有な褐色脂肪組織に種々の代謝酵素の低下が見られたのです。
そして,更に驚いた事に糖尿であるのに血中インスリンが高く,膵ラ氏島も長尢でした。
つまり,インスリン抵抗の故に高血糖であったわけですが,それは体温代謝保持に必要な善玉脂肪酸の低下を補う為に血糖上昇が必要であった次第で,これが俗にいう2型糖尿病だったのです。
以上の成果についてはGenevaで開催されたThermal Physiology Symposium(1977年7月)等で報告して居ります。
 
以上,私共はマウスにおいて2型糖尿病の原因を考察していたのですが,遺憾ながらヒトではBATは幼少時に存在するのに成長と共に消滅するようで,随分調べてみたのですが,終に見当たりませんでした。
 
こうした次第で,私達はヒトにおける2型糖尿病はBATに基因すると言及できませんでした。
 
斯く,久しく疑問視していた問題を今回,C. R. Kahn教授が明らかにされた事は我々の予測に誤りが無かった事に深く歓びを覚えている次第です。
 
前週,お手紙を同教授に謹呈し御礼とお歓びを申し上げましたが,此処に貴紙に対しても有難い情報を与えて下さった事に対して衷心御礼申し上げます。
 
尚,駄足ですが,近年騒がれている生活習慣病(Metabolic Disease)が内臓脂肪に基づくという説には疑問が感じられます。

出典 Medical Tribune 2009.8.27
版権 メディカル・トリビューン社




#褐色脂肪組織
脂肪組織には,過剰エネルギーの貯蔵にかかわる白色脂肪組織と,全く逆の働きの代謝的熱産生を行う褐色脂肪組織が存在する。
そのため,褐色脂肪組織は,ヒトでは新生児期の体温維持のための特殊器官として知られていた。最近,この非ふるえ熱産生ばかりでなく,過食によっても肥大と機能亢進が見られる(食事誘導性熱産生)ことから,褐色脂肪組織は肥満と関連して新たな注目を浴びることになった。
褐色脂肪組織は,おもに肩甲骨間,腎周囲に存在し,血管が豊富で血流量が多いこととミトコンドリアに富んでいるために褐色を呈し,新生児では約100g,成人では着衣や暖房のためか萎縮が見られ,約 40gしか存在していない。
しかし,標高 3,810mの「ドームふじ」で−60〜 −70℃の冬を過ごした直後の南極観測越冬隊のなかには,−30℃の環境下でTシャツ姿でも平気な隊員がおり,成人でも褐色脂肪組織の発達が示唆されている。
他の褐色脂肪組織の特徴は多房性脂肪滴で,細胞が多数の交感神経終末で網目状に取り囲まれており,グルコース・脂肪代謝活性が著しく高いなどである。
代謝活性の亢進には,グルコース輸送体(GLUT4)も関与しているらしい。
つまり,寒冷曝露などで刺激された交感神経からノルアドレナリンが分泌されると,インスリンシグナル伝達とは別経路(Gq 蛋白質共役型α1アドレナリン受容体)で GLUT4 のトランスロケーションが促進される。
ごく最近まで,両脂肪組織の最大の違いは代謝的熱産生を行う脱共役蛋白質(UCP)の存在であった。
UCP(現在はUCP1)は褐色脂肪細胞のミトコンドリア内膜に局在する分子量32,000の蛋白質で,電子伝達系によってミトコンドリア内膜から外に放出されたプロトンがプロトン勾配によって膜内に戻るときにADPとカップリングせずに(脱共役),プロトンの持つ化学エネルギーを熱に変換させる。
1997年,UCP1に相同な分子,UCP2(全身,特に白色脂肪組織に存在),UCP3(おもに骨格筋に局在)がクローニングされた。
UCP2,UCP3はUCP1と異なり,エネルギー消費の変化と対応して変動せず,その生体での役割は抗酸化能を有する以外はまだよくわかっていない。
一方,UCP1はβ3アドレナリン作動薬で刺激すると,通常は白色脂肪組織とされる部位に数多く発現し(前駆脂肪細胞),さらに白色脂肪組織に褐色脂肪細胞が散在していることもわかってきた。これらの事実は,成人になっても褐色脂肪組織(細胞)が肥満改善のターゲットとして有用であることを示唆している。
実際,既にβ3作動薬(シブトラミン)が肥満治療薬として使用され,効果を上げている。
(杏林大学医学部衛生学公衆衛生学教室・大野秀樹
出典 Medical Tribune 2005.3.3
版権 メディカル・トリビューン社




#脂肪組織の生体分子イメージング法を開発
■東京大学大学院循環器内科の西村智氏は,生きたままのマウスの内臓脂肪の撮像に成功し,その手法は国内外の研究者の注目を集めた。
この生体分子イメージング法を取り入れた研究成果の1つとして,内臓脂肪蓄積の過程でTリンパ球を介した炎症反応が生じていることが明らかとなり,今月号のNature Medicine で紹介された。
生体分子イメージング法の開発というと高価な新しい機器を思い浮かべがちだが,同氏の取り組みは,生体観察の1つ1つの工程で精度を高めていくという地道な工夫の積み重ねであった。
■#内臓脂肪蓄積による炎症にTリンパ球が関与
メタボリックシンドロームの鍵とされる内臓脂肪蓄積には炎症が深く関与していることが近年明らかにされてきた。
その背景として,脂肪組織におけるマクロファージの浸潤が報告されていた。
この炎症機序を巡る新たな知見として,Nature Medicine 8月号ではTリンパ球が重要な役割を果たしていることが3つのグループから報告された。
そのうちの1つは東京大学大学院循環器内科の永井良三教授,真鍋一郎特任准教授,西村智氏らのグループによるもので,Tリンパ球(CD8陽性T細胞)が炎症の惹起と維持に重要な役割を果たしていることが明らかにされた(2009; 15: 914-920)。
■#マクロファージに先行,集積
同グループの検討では,マウスに高脂肪食を投与し,脂肪組織を観察したところ,マクロファージの増加に先行してCD8陽性T細胞が増加していることを確認した。
CD8を減らす中和抗体の投与実験,およびCD8ノックアウトマウスを用いた実験では,脂肪組織の炎症が低減し,インスリン感受性や糖代謝異常が改善することが示された。

さらに,CD8陽性T細胞ノックアウトマウスにCD8陽性T細胞を投与すると,脂肪組織の炎症が惹起された。
また,脂肪組織に炎症を認める肥満マウスでCD8陽性T細胞を除去すると,脂肪組織の炎症および糖代謝異常の改善が認められた。
この機序として,高脂肪食によって肥満したマウスで脂肪細胞に集積したCD8陽性T細胞とマクロファージ間の相互作用が活性化し,さらに腫瘍壊死因子(TNF)αも含む炎症因子が集積することから,炎症の惹起だけでなく維持にもTリンパ球が必須であることが示された。

出典 Medical Tribune 2009.8.27
版権 メディカル・トリビューン社
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by wellfrog3 | 2009-09-06 00:41 | 糖尿病

乾癬は独立した死亡の危険因子

乾癬は独立した死亡の危険因子
皮膚科医に注意を呼びかけ
マイアミ大学レナード・M・ミラー医学部(フロリダ州マイアミ)のSrjdan Prodanovich博士らは「乾癬は虚血性心疾患,脳血管疾患,末梢動脈疾患の有病率増加と死亡リスク増加を特徴とするアテローム動脈硬化症と関連しているため,皮膚科医は心血管疾患リスクにも注意を向けるべきだ」とArchives of Dermatology(2009; 145: 700-703)に発表した。

血管疾患の診断も多い
研究の背景情報によると,世界人口の約2〜3%が乾癬に罹患している。
乾癬は肌への影響に加えて関節炎,うつ,QOLの低下と関連している。乾癬は近年,全身性炎症疾患として他の炎症性免疫疾患との類似性が示されている。
炎症性症状を呈する関節リウマチや全身性エリテマトーデスの患者で心筋梗塞リスクが増加することから,乾癬と心血管疾患の危険因子や心筋梗塞との関係が注目されている。
 
Prodanovich博士らは,単一施設で診療を受けた乾癬患者群3,236例と乾癬ではない対照群2,500例の電子カルテを分析した。
乾癬患者群は,対照群と比べてやや高齢で(67.9歳対65.1歳),男性が多い傾向にあった(95.5%対88.2%)。
 
年齢や性,高血圧,糖尿病,脂質異常症の各既往,喫煙の有無で調整したところ,乾癬患者群では対照群に比べてアテローム動脈硬化症と診断される例がより多い傾向にあった。
また,同患者群では虚血性心疾患,脳血管疾患,末梢動脈疾患などの血管疾患と診断される例もより多い傾向にあった。

皮膚科医は内科医と連携を
Prodanovich博士らは「今回の知見は,アテローム動脈硬化症が全身性であることを考えれば驚くべきものではない。
これらの心血管疾患は,いずれも医療コストが大きいうえ,障害や死亡の大きな原因であるため,この知見の臨床的意義は大きい。
さらに,以前の研究でわれわれは,乾癬患者では非乾癬患者と比べて死亡率が高く(19.6%対9.9%),乾癬が死亡の独立した危険因子であることを明らかにしたが,今回の知見はこの結果を裏づけるものとなった」と述べている。
 
同博士らは「今後の研究では,これらの患者で心血管疾患の危険因子または乾癬のいずれかを積極的に治療すれば,アテローム動脈硬化症が改善するか否か調べる必要がある」と指摘。
「当面,乾癬患者の治療に当たる医療従事者は,従来の危険因子についても注意することが推奨される。皮膚科医は,乾癬患者に対して常に心血管疾患危険因子のスクリーニングを受けるよう提案し,アスピリンの服用を推奨することが賢明である。さらに,プライマリケア医または他の内科専門医に今回の知見を周知させ,協力体制を構築することも必要である」と結論付けている。

出典 Medical Tribune 2009.8.27
版権 メディカル・トリビューン社




<自遊時間>  日本医師連盟
衆議院選挙の余韻も冷めやらないうちに、日本医師連盟から仰々しい郵便物が届きました。
中を開けてみると、参議院選に向けてのポスターや葉書でした。
つまり連盟推薦の現職の○○先生を指示せよ、ということです。
ポスターを掲示した場所も書いて返送せよ、ということでした。

私は昨年から日本医師連盟の会費(実は寄付)を払っていません。
それはそれで正解だったと思っています。
選挙戦後半でTVで繰り返し放映された○○首相の顔。
払っていればきっと、この一部は「自分の寄付金」だと思い、CMを見るたびに後悔していたと思うからです。


日本医師連盟
http://www.nichiiren.jp/incho/incho.html
■本連盟は、日本医師連盟と称し、日本医師会会員相互の全国的連絡協調の下に、日本医師会の目的を達成するために必要な政治活動を行うことを目的とする。
(収支報告は一切出ていません。入退会について不明です。献金先についてももちろんわかりません。)

【波紋-政権交代の足もとで】自公支えた医師連盟 新パイプを模索
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090901/elc0909012252015-n1.htm
■医療の充実や進歩のためには政権与党とのつながりが不可欠として、これまで国政選挙で、自民党支持を打ち出してきた。
■ところが今回の衆院選挙では、一部で民主党の候補を推薦するなど足並みの乱れが見られた。
自民の歴史的惨敗で“中央とのパイプ”を失った今、新たな道を探り出す必要に迫られている。
医療の充実や進歩のためには政権与党とのつながりが不可欠として、これまで国政選挙で、自民党支持を打ち出してきた。
ところが今回の衆院選挙では、一部で民主党の候補を推薦するなど足並みの乱れが見られた。
■自民の歴史的惨敗で“中央とのパイプ”を失った今、新たな道を探り出す必要に迫られている。
選挙の結果、推薦した10人は選挙区で惨敗し、1人が比例で復活当選するにとどまった。
日本医師連盟がホームページで「関係が深い」と紹介した自民党候補も5人中4人が落選した。
■民主党が政権をとるなかで、医師連盟はこれまでに築き上げた自公との強いつながりに代わる、中央への新たなパイプづくりを模索している。

医師会、「自民9割」献金見直し…民主軸に?
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090903-OYT1T00074.htm
読売新聞 2009.9.3
■「票」と「カネ」の両面で長年、自民党を支えてきた日本医師会(日医)の政治団体「日本医師連盟」が、政権交代が実現したのを機に、政治献金の配分を見直すことを決めた。
■献金の大半を自民党本部や同党の国会議員に集中する方針を転換し、与党への発言権を確保するため、民主党に軸足を移すことも検討する。
■民主党が圧勝して新たな与党になるという結果を受け、日本医師連盟も8月31日、日本医師会長を務める唐沢祥人委員長名で「国民の医療を守るため、与党に対し、こちらの考えを理解してもらえるよう努めていく」などという声明を出さざるを得なかった。
■2007年の政治資金収支報告書などによると、同連盟が自民党の政治資金団体「国民政治協会」に行った寄付は2億円だったのに対し、民主党の「国民改革協議会」は500万円。
これも含め、同年の寄付総額約8億円のうち、自民党の政党支部や国会議員の資金管理団体向けの寄付が9割を占めている。
■同連盟の羽生田俊常任執行委員は2日、「自民党とは長い付き合いがあり、野党になったからと言って突然関係は切れない」としながら、「自民党はもはや政権与党ではなくなった。与党の民主党に理解を求めていくことは、国民の利益のためにも当然。両党の議員数も大きく変わった今、献金を含めた活動方針を見直していく」と語った。


衆議院議員総選挙2009
「“政権与党”とは話をする」と日医・唐沢会長
今後の支持政党については明言避ける、9月2日の記者会見で
http://www.m3.com/iryoIshin/article/106924/
質問:
民主党政権と具体的に医療政策について意見交換をする予定はあるのか。
また民主党はじめ、連立与党に入る予定の政党は、後期高齢者医療制度は廃止するスタンスで一致しているが、この動きをどう捉えるか。
唐沢会長:
私どもは政府あるいは行政官庁というところよりも、医療の現場に近い立場、立ち位置で物事を考え、行動していきたいと思っている。
民主党も、医療について政策を進める際にはいろいろと考えはあるかと思うが、(日医が作成した)「医療のグランドデザイン」に全部盛り込んでいるので、ぜひこれを中心に検討していただきたい。
新たに選挙中、選挙後、この9月に入って、まだ具体的に「こうした行動をした」ということはないが、われわれはいつでも対応できると思っている。

以下、略。


<きょうの一曲> The Beatles - Something (1969)
http://www.youtube.com/watch?v=XDTi_La94Uo&NR=1

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by wellfrog3 | 2009-09-05 00:13 | 皮膚科

糖鎖腫瘍マーカー合同会議

独立行政法人産業技術総合研究所糖鎖医工学研究センター連携戦略班班長/主任研究員 新間陽一先生の,伊勢・志摩会議(2009年3月24〜27日)の印象記で勉強しました。


画期的なマーカーの実用化に向けて白熱した討議を展開
〜伊勢・志摩日米糖鎖腫瘍マーカー合同会議に参加して〜

日米"糖鎖"腫瘍マーカー開発競争
今回の合同会議では,日米双方の予算配分機関から,Sudhir Srivastavaおよび古川善規(NEDOバイオテクノロジー・医療技術開発部主査)ら担当官も参加し,冒頭のあいさつでは多額の予算を支出している立場から,実際に利用できる腫瘍マーカーを開発するようにと強い要求を研究者に突き付けていた。
 
NEDOは,1991年から糖鎖研究に予算を付け続けてきた。
その研究成果を見た米国では2000年に米国立化学財団(NSF)が報告書をまとめ,日本の糖鎖研究は進んでおり,米国も糖鎖研究を推進すべきと指摘した。
それを受け,NIHは2001年から5年間で3,400万ドルの予算を付けてConsortium for Functional Glycomics(CFG)を設立して日本を追いかけ始め,順調に成果が上がった。
 
そこで,2006年からは第2期として年間780万ドルの予算を付けて5年間の延長をした。
さらに,診断分野では2007年からNIHの一部門であるNCIに5年間で1,550万ドルの予算を追加して,がんなどの早期診断,治療指針の判定や再発診断を目指すEDRN(Early Detection of Research Network)が組織され,またthe Alliance of Glycobiologists for Detection of Cancer and Cancer Riskもグラントとして設置された。
 
一方,NEDOは2006年から年間11億円の予算で糖鎖機能活用プロジェクトを開始し,順調に研究開発は進展していたが,2009年度予算は9億円になっている。
文部科学省は2002〜08年度の7年間,CREST「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」で糖鎖研究を推進してきた。
 
拮抗する研究費を得る両国の糖鎖研究者らは,日米の予算担当官らを交えて,画期的な腫瘍マーカーの発見とその実用化に向けて,アピール,牽制,批判,競争,協力の入り交じった議論が交わされたのが会議の特徴であった。


糖蛋白質が腫瘍マーカーとして有望
会議では,いくつもの腫瘍マーカー候補発見に関する発表があり,従来に比べて精度の高いマーカーの開発を目指して,がん細胞が特異的につくる生体分子をいかに特定するか,そしていかに高感度に血清中に検出するか,日米双方から戦略的な報告がなされた。
 
その有力候補としての糖蛋白質分子が示され,その量的増減だけでなく付加している糖鎖構造の変化を捉えることの重要性が強調された。
さらに,がん化に伴う糖鎖関連遺伝子の発現量の変化,分泌蛋白質の輸送経路の変化など,特徴的な構造の糖蛋白質分子が分泌されるメカニズムについての解析も含まれていた。いくつかの発表を記す。
 
M. Hollingsworth(ネブラスカ大)は,膵がんにおけるムチンおよびそれを検出する自己抗体に注目した。ムチンとは,コア蛋白質に大量のO結合型糖鎖の付加した生体高分子であり,膵がん組織と正常組織を比較したときに,ムチンのコア蛋白質をコードする遺伝子の発現が特徴的に変化していること,およびその分子構造の特徴を報告した。
 
それによると,正常組織ではMUC1,MUC5ac,MUC6が発現しているが,がん細胞ではMUC1,MUC4,MUC5ac,MUC16,MUC17であり,約9割のMUC1にTn(N-アセチルガラクトサミン)あるいはsialyl Tn(シアル酸-N-アセチルガラクトサミン)糖鎖およびCA19-9〔シアル酸-ガラクトース-(フコース)-N-アセチルグルコサミン〕糖鎖が付加していたが,正常組織にはそのような分子はなかったというものであり,自己抗体の検出による高感度な測定法を発表した。
 
三善英知(大阪大学大学院機能診断科学教授)は,ハプトグロブリンという糖蛋白質の特定の位置のN結合型糖鎖の根元に,健常者には付加しないフコースという糖が付加した構造が,膵がん患者の血清中で特異的に増加し,AALレクチン-ELISA法による検出が診断に有望であると報告。
さらに,膵がん患者の肝臓でハプトグロブリンが生産されるメカニズム,本来は胆汁に分泌されるフコースが付加したハプトグロブリンが輸送経路の異常により血液中に分泌されるようになることについても解析結果を示した。
 
また,血清中のN結合型糖鎖の解析から,年齢,性などの違いを含め,個人により大きな相違があることを発表したが,質疑応答では,血清糖蛋白質の糖鎖を蛋白質から切り離してから解析する手法には,疑問が投げかけられた。


糖鎖はDNA,蛋白質に次ぐ第3の生命鎖
糖鎖は,核酸,蛋白質に次ぐ「第3の生命鎖」と言われる。
糖鎖は,分泌蛋白質に結合して血液などの体液中,あるいは膜蛋白質や脂質に結合して細胞表面に多く存在している。
糖鎖構造は,約10種類の単糖が枝分かれもある構造を取るため,構造多様性があり,細胞,組織,生物種により構造は異なる。
 
さらに,細胞の分化の程度や活性化の状態などを鋭敏に反映することから,がん,免疫,感染症,再生医療などにおいて,重要な役割を果たしている。
特に,がん細胞が産生する糖蛋白質の糖鎖構造が大きく変化することがわかっているため,有望な新規腫瘍マーカーになると期待されている。


日米共通の悩みは偽物腫瘍マーカー研究の蔓延
腫瘍マーカーを発見したという報道は十何年も前から数多くあるのに,血液検査で早期がんを発見できる腫瘍マーカーがほとんど実用化されていない。
本当に診断に役立つ腫瘍マーカーの開発は,人々の期待も大きいだけに,小さな発見でも大きく報道されやすいが,実際にはとても簡単にはできないことは,実は専門家でなくても理解できる。
初期のがんはごく小さいので,腫瘍マーカーになる物質もごく微量なはずである。
 
がんが存在することによって,炎症反応などで周辺組織がつくるような物質は大量なので発見されやすいかもしれないが,がん以外の原因でもつくられる可能性が高い。
例えば,直径1cmほどのがんを見つけたいとすると,がん細胞は由来する臓器の1%程度しかないと考えられ,そのがん細胞から血中に分泌される物質の量は臓器全体から分泌される量と比べると1%に満たない。
 
早期がんの発見には,超微量の糖蛋白質分子を区別して検出する必要がある。
逆に言えば,血中の全糖蛋白質の糖鎖の変化を検出しているのは,全身症状あるいは臓器の全体的な変調を見ているにすぎない。
 
医学になじみの薄い研究者が犯している間違いの1つに,患者と健常者の血清を比較して,がん患者を区別できる腫瘍マーカーを発見したといって,大々的にマスコミに発表することである。
素人目にはだまされてしまう。どこが間違っているのかすぐに気が付かない人が,実は研究者のなかにも大勢いる。
 
ここでいう患者とは,既にある疾患と診断されてさまざまな症状が現れている人たち,健常者とは医学生のボランティアなどである。
患者と健常者の違いは,医者でなくても両者を区別できるし,血清中の糖鎖構造に大きな違いがあったとしても不思議ではない。
 
しかし,そのような研究が発表され,マスコミにより報道されているのが現状である。
そのような腫瘍マーカー候補をいくつ発見したところで,決して本物の診断マーカーの開発にはつながらないのである。
 
われわれが期待している診断マーカーとは,健康診断などで一見健常者のように見える人のなかから,疾患の存在を見つけ出すことである。
そのためには,疾患の本体の細胞がつくる特異的な分子を見つけ出し,その超微量の分子を検出可能にする測定感度を達成する必要がある。
 
しかしながら,そういう状況を認識しないで,全身症状を反映しているとしか考えられない血清中の糖蛋白質から切り離した糖鎖を解析するという不適切な方法のまま腫瘍マーカー探索をしている発表が日米ともにいまだにあるのである。
そのような研究者に対して,どうしたらきちんと理解し,科学的な研究をしてもらえるかについて,質疑応答以外でも,会場内のあちこちで議論されていた。


http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view/perpage/1/order/1/page/0/id/M42350451/year/2009
出典 日経メディカル 2009.8.27
版権 日経BP社



<きょうの一曲>
The Beatles - And I Love Her
http://www.youtube.com/watch?v=96YQdiMV-Jc&feature=related



<診察椅子>
最近、40代の男性(?)が来院しました。
主訴は軽度の左下腹部痛と下血です。
彼(?)は性同一性障害(MTF性転換症)という、ある大学病院で発行された診断書を持参して来ました。
その診断書には、「職場では出来るだけ女性として処遇するように」と書かれていました。
新鮮血ということでIBDを疑いましたが、当院では注腸検査は出来るもののCFはやっていません。

早く原因を知りたいということでCFの出来る無床診療所を紹介しました。

翌々日には検査が出来たようで、検査結果が郵送されてきました。
UCかクローンを疑って紹介したのでしたが、返書をみて愕然としました。


診断 アメーバ性大腸炎
生検の結果、上記と診断しました。
追伸 ア○○セ○○○の既往あり。


いい勉強をさせていただきました。
結構きれいな方でした。



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

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by wellfrog3 | 2009-09-04 00:11 | その他

若年性認知症の原因疾患

##若年性認知症の原因疾患は脳血管性が最多
若年性認知症の原因疾患は脳血管性認知症(VaD)が約4割と最も多く,次いでアルツハイマー病(AD)が多いことが茨城県で実施された実態調査で明らかにされ,Stroke(2009; 40: 2709-2714)に掲載された。
男女別では,男性はVaD,女性はADがそれぞれ最も多かった。
VaDの内訳は,脳出血,脳梗塞およびくも膜下出血で9割以上を占めており,ラクナ梗塞が多い老年性認知症とは異なる特徴が示された。

#人口10万人対の推定有病率は42.3
この研究は,厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」(研究代表者:筑波大学精神病態医学・朝田隆教授)として,2006〜08年度に,茨城県,群馬県,富山県,愛媛県,熊本県,徳島市,横浜市港北区の7か所で実施された調査の1つ。
同研究事業による前回の調査(1996年度実施)でも原因疾患はVaDが最も多く,その傾向は今回も変わらないことが確認された。
 
一連の調査では,「発症年齢と調査時の年齢がいずれも65歳未満」を若年性と定義し,米国精神医学会の「精神障害の診断と統計の手引き第3版改訂版(DSM-III-R)」で認知症の定義に適合する若年性の患者について,郵送法による一次・二次調査でデータを収集した。
 
今回発表された茨城県(人口296.6万人)の調査は,筑波大学大学院人間総合科学研究科の池嶋千秋氏らが解析した。同県内2,475の保健・医療・福祉の事業所や相談窓口すべてに一次調査票を送付し,2,202通の回答を得た(回収率89.0%)。
そのうち,2006年4〜10月に若年性認知症患者に対応したと回答してきた285の機関に二次調査票を送付し,245の機関(回収率86.0%)から717例が報告された。
重複例を除き,診療録のみ(331例)あるいは画像所見(286例)を照会し,最終的に若年性認知症患者617例を確認した。
 
患者の年齢は56.9±7.3歳,発症時年齢は53.4±7.9歳。茨城県の年齢階層別人口をもとに推定した人口10万人対の有病率は20〜64歳で42.3(95%信頼区間39.4〜45.4),45〜64歳で83.3(同77.4〜89.6)と,欧米の報告に比べて大きな差はなかった。原因疾患は, VaDが42.5%と最も多く,次いでADが25.6%,頭部外傷が7.1%,レヴィ小体型認知症(DLB)/認知症を伴うパーキンソン病(PDD)が6.2%,前頭側頭葉変性症(FTLD)が2.6%,その他が16.0%となっていた(図1)。

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#脳出血,脳梗塞,くも膜下出血で9割
VaDの内訳は,脳出血,脳梗塞およびくも膜下出血で9割以上を占めていた(図1)。
また,原因疾患の頻度には性差があり,男性ではVaD,女性ではADが最も多かった。
年齢階層別に両疾患の有病率を見ると,50歳代以上が圧倒的に多いADに比べて,VaDは男性を中心に30〜40歳代が多かった(図2)。

c0183739_1762316.jpg


また,介護保険制度を利用できない40歳未満の若年性認知症の頻度も明らかにされた。
原因疾患別に,20〜24歳,25〜29歳,30〜34歳,35〜39歳の10万人対の有病率を見ると,AD,FTLD,DLB/PDDはそれぞれ0〜1.0未満ときわめてまれだが,頭部外傷はそれぞれ1.5,4.0,4.2,4.9,VaDはそれぞれ0,0,1.3,3.5で,茨城県での40歳未満の患者数は20〜40人前後と推定される。
 
なお,1990年代半ば以降に診断基準が示されたDLBやFTLDは,前回調査よりも頻度が増加した。その他の原因には,アルコール性認知症,感染性脳症,脳腫瘍/脳動脈瘤術後のほか,神経難病やエイズ脳症など多彩な疾患が含まれていた。


#COMMENT 筑波大学大学院人間総合科学研究科 池嶋 千秋 氏
1996年度の前回調査と同様に,若年性認知症はVaDが最多で,その上位3疾患を脳出血,脳梗塞,くも膜下出血が占めていた。
VaDの背景病理は高齢者とは異なり,脳動静脈奇形やもやもや病など先天性疾患が関与し,予防不可能なケースがある。
さらに加齢に伴い,男性を中心に生活習慣の影響が強まり,発症が増えると考えられる。
 
また,別途実施した家族会へのアンケートの結果から,若年性認知症は,高齢者の場合と比べて経済面の問題が大きいことが浮かび上がっている。
介護保険制度を利用できず,社会的支援の枠組みから取り残される患者もいることから,病態に応じてリハビリテーション目標を設定し,就労や福祉の支援を行う体制づくりが求められている。

出典 Medical Tribune 2009.8.27
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
#<路上生活者>6割以上が精神疾患 池袋周辺で医師らが調査
国立病院機構久里浜アルコール症センター(神奈川県横須賀市)の森川すいめい医師らが昨年末~今年1月上旬、池袋駅周辺で路上生活者の支援に取り組むNPO法人「TENOHASI(てのはし)」(清野賢司事務局長)の協力を得て実施。
駅1キロ圏内に寝泊まりする路上生活者約100人に協力を求め、応じた80人を診察した。

それによると、うつ病が40%、アルコール依存症が15%、統合失調症など幻覚や妄想のあるケースが15%。複数の症状を発症しているケースもあり、不安障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)なども含めると63%(50人)が何らかの精神疾患を抱えていた。
失業してうつ病になったり、疾患が原因で職に就けないなどの理由が考えられる。重症者は調査に応じられないため、実際はより高い割合になるとみられる。

一方、約半数が「死んだほうがいい・死んでいたらよかった」などと考え、「自殺リスク」があることも判明した。路上生活歴は平均5年8カ月だったが、6カ月未満が20人で最も多く、森川医師は「公園や河川敷と異なり、家を無くしたばかりの路上生活者が多く、自殺につながりやすい」と懸念する。

http://www.excite.co.jp/News/society/20090902/20090902E40.073.html
出典 毎日jp 2009年9月2日 15時02分
版権 毎日j新聞社
<コメント>
解決には社会的・医学的問題としていろいろな壁がありそうです。



<きょうの一曲>
Marilyn Monroe - What A Wonderful World
http://www.youtube.com/watch?v=2tpN2U6Y17M&feature=related
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by wellfrog3 | 2009-09-03 00:02 | 認知症

ワクチン輸入慎重論

ワクチン輸入慎重論

新型インフルエンザA/H1N1
乏しい情報の中、勢い増すワクチン輸入慎重論

新型インフルエンザワクチンの開発が本格化している。欧米では、既に複数の企業が、健常人や小児などを対象とした治験をスタート。国内でもノバルティスファーマが、近く新型インフルエンザワクチンの治験をスタートさせる。一方で、輸入ワクチンについての議論も活発化しているが…。


 国内では、化学及血清療法研究所、北里研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の4法人が、孵化鶏卵で新型インフルエンザワクチンを製造する。新型インフルエンザワクチンは、季節性インフルエンザワクチンと同様に、ウイルスを不活化して、エーテル処理によってウイルス粒子の形態を壊したスプリットワクチンだ。これらの新型インフルエンザワクチンは、季節性インフルエンザワクチンと同様の扱いとなり、承認を受けるための治験は必要ない。「ただし、ウイルスの遺伝子が異なるので、薬事法に基づかない臨床研究などを行う可能性がある」(阪大微研)という。

 4法人の新型インフルエンザワクチンは、10月下旬にも接種が可能になる見込みだが、10月時点で何人分が確保できるかは不明。厚労省は、年内に1300万〜1700万人分(0.5mlを2回接種した場合を1人分として換算)のワクチンが確保できると試算している。しかし、ワクチン接種の優先順位が高い妊婦や基礎疾患患者(慢性呼吸器疾患患者、透析患者、造血器腫瘍患者など)、医療関係者を合計すると千数百万人。就学前の幼児も合わせると1800万人となり、国産ワクチンだけで国内の需要を賄うのは難しいとみられる。そこで、検討されているのがワクチンの輸入だ。


27日に開催された新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会。新型インフルエンザワクチンの是非について議論された。

意見交換会で輸入ワクチンへの慎重論が続出
 厚生労働省は、8月20日、27日に「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」を開催し、ワクチンを接種する優先順位やワクチン輸入の是非について、日本小児科学会、日本産婦人科学会など14学会や患者団体、薬害被害者団体などからヒアリングを行った(2009.8.28 「医療関係者、基礎疾患患者、妊婦を優先 ワクチン接種の優先順位で大筋合意」)。27日の意見交換会では、厚労省健康局長の上田博三氏が「新型インフルエンザワクチンを輸入することについて、意見を聞きたい」と呼びかけた。

 各学会からは、ワクチンの輸入は必要だとしながらも、人種差などを考慮して安全性を確かめるべきとの慎重な意見が相次いだ。薬害被害者団体からは、「安全なものがあればいいが、国産ワクチンがある程度確保できる中で、そこまでしてワクチンを輸入する必要があるのか」といった声も上がり、“輸入ワクチンの安全性は、国産ワクチンよりも低い”という前提で議論が終始した。

 ただし、意見交換会において、輸入ワクチンの安全性について議論できるほどの情報は、厚労省から提示されていない。実際、輸入ワクチンに関して厚労省は、「海外のワクチンは、アジュバントを使用しているものがあり、今までの日本のものとは違う。入手可能なものは数社あると思われるが、調査中だ」と説明するにとどまり、輸入に積極的な姿勢はうかがえない。

 しかし、ワクチンの安全性は、アジュバントの有無だけで決まるわけではない。また、海外で開発されている新型インフルエンザワクチンの中には、アジュバントを使っていないものもある。ウイルス粒子を不活化した全粒子ワクチン、全粒子ワクチンをさらにエーテル処理してウイルス粒子の形態を壊したスプリットワクチンなど異なるタイプの製品があり、精製度合いもさまざま。孵化鶏卵ではなく、培養細胞を使って生産しているものもある(表1)。

 現在、これらのワクチンは欧米で数百人規模の治験を行い、安全性や有効性を確認している段階だ。とはいえ、「海外の多様な製品をひとくくりにした上で、『国産ワクチンよりも安全性が低いので、輸入には慎重になるべき』との主張は、あまりにも乱暴」(あるメーカーの担当者)。そもそも、国産ワクチンの安全性、有効性については、薬事法に基づかない臨床研究で確認される見込みだ。

 通常の季節性インフルエンザワクチンよりも大きな需要があるとすれば、ワクチンの輸入は不可避。求められているのは、十分な量のワクチンを輸入した上で、国産ワクチン、輸入ワクチンとも、使用するまでにできる限りの安全性、有効性の情報を蓄積する、ということではないだろうか。

出典 日経メディカル 2009.9.1
版権 日経BP社





<番外編>
レボフロキサシン(商品名 クラビット)が1日1回投与(500mg)の方向になってきました。

従来100mg1日3回だったわけですから、1日量としては増量になります。
今後100mg錠は発売中止という計画も聞いています。

500mg1日1回投与の目的は耐性菌の出現を抑制することにもあるようです

私は従来からニューキノロンの中枢性副作用として、頭痛やめまい、ふらつきが気になっていました。
副作用が増えるのではないかとても心配です。
現時点では100mg錠をそのまま使っています。

広告ではフロキサシン
■レボフロキサシン500mg1日1回投与は、123の国または地域で承認されています。
(2008年3月現在)
■2009年4月、日本で500mg1日1回投与が承認されました。

話は変わりますが、爪白癬の治療としてのイトラコナゾール添付文書を読む限りは、いつの間にやらパルス療法がファーストチョイスとなりました。
エビデンスははたしてどうかはよくわかりませんが、どうやら投与回数は少なくする傾向にあるようです。



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21? http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
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by wellfrog3 | 2009-09-02 00:22 | 感染症

腰椎椎間板ヘルニア・内視鏡手術

東京大学病院整形外科の竹下克志講師の、腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術が本当に低侵襲性で合併症や有効性の点で問題ないのかという問題提起の記事で勉強しました。


#腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術は本当に患者に優しいのか?
#顕微鏡手術とのRCTから

#研究の背景:
#患者の期待はきわめて高いが,合併症や再発の懸念も
腰椎椎間板ヘルニアなど脊椎外科の領域でも,消化器外科,脳外科,泌尿器科などと同じく内視鏡手術がさかんに行われている。
生検など検査目的で始まり,次いで神経除圧や腫瘍摘出,最近では固定手術にまで応用されてきた。
特に罹患患者数が多い腰椎椎間板ヘルニアへの内視鏡手術への期待は高く,1997年に米国のFoleyらが開発したMED(Microendoscopic Discectomy)は大きな注目を浴びて瞬く間に世界中に広まり,特に韓国と日本,ドイツではこうした内視鏡手術がさかんである。

“創が小さい”,“早く退院できる”といった触れ込みもあり,患者さんの内視鏡手術への期待はきわめて高い。
一方で内視鏡手術はラブ手術と呼ばれる一般手術よりも技術的な難易度が高いと言え,合併症発生率や再発率に対する懸念は依然から指摘されていた。
しかし,本当に患者に優しい手術なのか?という課題に真正面から取り組んだ研究は多くはない。今回これまでの報告とは次元を異にする,従来の顕微鏡手術とのランダム化比較試験(RCT)がJAMA(2009; 302: 149-158 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19584344)に掲載されたので,この研究をもとに脊椎外科領域の内視鏡手術について考えたい。

#研究のポイント:
#合併症,再発,治療効果で顕微鏡手術のほうが良好な傾向
Artsらは腰椎椎間板ヘルニアの患者に内視鏡手術あるいは顕微鏡手術を行った手術成績を比較分析した。
このRCTはオランダの7つの脳神経外科で行われた。
調査項目は疼痛,機能,患者が感じた回復度である。
ユニークな点として症例を選択する際に小さめの椎間板ヘルニアで神経根への圧迫がはっきりしない症例は除いている。

可変ブロックスケジュールでランダム化を行っており,患者と評価者には内視鏡手術と顕微鏡手術のどちらが行われたかは調査期間中に知らされていない。
したがって“最新の手術法”などといったプラセボ効果は消されている。
一次評価項目としたのは,腰痛の評価では代表的な指標であるRoland-Morrisの坐骨神経評価版(RDQ)である。
二次評価項目は,visual analogue scale(VAS)での下肢痛と腰痛,患者評価による回復の程度,腰椎疾患術後評価として代表的なProlo scale,SF36のいくつかのドメイン,Bothersomeness Index scaleおよび合併症率と再手術率で,術後52週まで調査している。
RDQのMinimally clinical important difference(MCID)を4点として必要サンプル数を300症例と設定し,結果的に328症例を分析している。

追跡期間中,91~99%の症例のデータが有効で,クロスオーバーもきわめて僅かであり,以前紹介したSPORT研究(「腰椎椎間板ヘルニアに対する手術治療の優位性が示される」
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090405.html?ap)と対照的である。

術中合併症は内視鏡手術12%,顕微鏡手術8%,術後合併症は内視鏡手術11%,顕微鏡手術9%と,いずれも有意差はないが内視鏡手術で多かった。
1年目での再手術も内視鏡手術10%,顕微鏡手術7%と,有意差はないが内視鏡手術で多かった。
多くは再発による再手術である。

術後52週で判定した治療効果は,RDQで見ると内視鏡手術4.7,顕微鏡手術3.4で内視鏡手術のほうが有意に高かった(低いほど正常)。
VASで見た下肢痛は内視鏡手術18.3,顕微鏡手術14.1,同様に腰痛は内視鏡手術23.2,顕微鏡手術19.7と,いずれも内視鏡手術のほうが有意に高かった(図)。

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患者評価による完全回復は内視鏡手術2.0週,顕微鏡手術2.1週で差がなかったが,52週で完全回復した割合は内視鏡手術で69%,顕微鏡手術で79%とオッズ比0.59(0.35~0.99)と差があった。総じて見ると,両手術間に大きな差はなかったが,顕微鏡手術のほうが多くの項目で若干よい傾向にあったと言える。

#東京大学病院整形外科 竹下克志講師の考察:
#内視鏡手術には技量と経験が必要,顕微鏡手術の可能性について再検討する必要も
内視鏡手術には2つの利点がある。
1つは内視鏡を操作することで,視野と手術操作部位を変更できるので,小さな空間での手術という制約から若干解放される。
もう1つは腰部の筋肉を分けて入れるので,一般的な手術や顕微鏡手術のように筋肉の骨の付着部への侵襲がなく,さらに筋挫滅が少ない可能性が高いため,術後回復も早いのではないかと期待されてきた。

一方,欠点として顕微鏡のように立体視ができず,深部感覚がなく,組織の判別や操作にかなりの慣れを要求する問題がある。
今回の研究では顕微鏡手術のほうが回復は若干よい傾向があるばかりでなく,下肢痛や腰痛の残存が内視鏡で若干多いことは顕微鏡手術に比べて除圧操作の不完全性を疑わせる結果といえる。

この報告では,結果の最後に統計的有意差はなかったなどとexcuseしているが,施設間格差がかなりあることも示されている。
つまり,一貫性の高い介入が可能である薬物試験と異なり,外科医の技量格差という本質的な問題が残っているのではないだろうか。

そもそも内視鏡手術と顕微鏡手術を全く同等に行える脊椎外科医がどれだけいるのだろうか? さらに,内視鏡手術は技量と経験のいずれが欠けても望ましくない分野と言え,医療統計学が本来馴染みにくい領域ではないかと筆者は思うのである。しかし,この報告はサンプル数の多さや研究デザインの周到さからかなり信頼性の高い研究と言え,内視鏡手術が顕微鏡手術に対する優位性がほとんど示せないばかりか若干成績が劣るという結果は,顕微鏡手術の可能性について再検討する必要性を示している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090803.html?ap

出典 MT pro 2009.8.10
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog3 | 2009-09-01 00:11 | 感染症