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ホルモン補充療法と卵巣癌

JAMA2009.7.15に掲載された「50−79歳のデンマーク人女性全員909,946人を1995−2005年まで追跡したところ、閉経後のホルモン剤治療により上皮性卵巣がん(2,681例)のリスクが1.44倍に上昇した」という論文で勉強しました。
「50−79歳のデンマーク人女性全員」というところがすごいところです。
1960年に導入された国民総背番号を使い、薬剤処方登録、地域がん登録など7種類の全国登録を組み合わせて行った、巨大な疫学研究ということです。

#ホルモン補充療法と卵巣癌のリスク
Hormone Therapy and Risk for Ovarian Cancer
いくつかの観察研究において、ホルモン補充療法(hormone therapy:HT)は、卵巣癌のリスクの上昇と関連付けられてきた。
この新しい研究では、デンマークの研究者らは、卵巣を少なくとも1個有し、ホルモン感受性癌の認められない女性900,000人(年齢範囲50~79歳)をプロスペクティブにフォローアップした。
卵巣癌の発症を薬局登録データと関連付けた。

平均8年のフォローアップ期間中、上皮性卵巣癌2,681件が診断された。
多くの人口統計学的因子および生殖関連因子で補正後の解析では、上皮性卵巣癌のリスクは、何らかのHTを使用中の者で44%(高度に有意)、過去の使用者で15%(かろうじて有意)上昇した。HT中止後はリスクが低下し、2年後にベースライン時の値に近づいた。
estrogen単独療法とestrogen+progesterone併用療法の間にリスクに差は認められず、使用期間とリスクの間に関連性は認められなかった。
持続的療法と周期的療法のリスクはほぼ等しく、異なるprogesterone薬物のリスクもほぼ等しかった。
経皮的estrogen投与では13%、経膣的estrogen投与では23%リスクが上昇したが、いずれのリスクも、経口投与のリスクと比較して、統計学的な差は認められなかった。
絶対リスクは、HT使用者8,300人につき約1件の卵巣癌症例の超過であった。

コメント:
バイアスや交絡の原因が多様に存在するため、HTと卵巣癌を関連付ける観察研究は、ランダム化研究ほどの重みはない。
しかし、いくつかの大規模研究がほぼ同じ結論に達したことから、患者とHTについて話し合う際には、たとえ絶対リスクが低いとしても、卵巣癌のリスクを伴う可能性がある点を盛り込むべきである。
今のところ、期間、用量、HTの種類に基づいてリスクを解析する試みは、ほとんど価値がないようである。

— Thomas L. Schwenk, MD
Published in Journal Watch General Medicine July 28, 2009

Citation(s):
Mørch LS et al. Hormone therapy and ovarian cancer. JAMA 2009 Jul 15; 302:298.


http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW09-0728-01.html

2009 July 28


ホルモン補充療法により卵巣癌(がん)リスクが増大
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20090723hj001hj



以下は2007年Lancet誌に報告された、今回と同規模(948,576人、卵巣がん2,273例)の英国の追跡調査です。
<関連研究>
#ホルモン補充療法で卵巣癌リスク上昇
#罹患リスクは1.2倍、死亡リスクは1.23倍に
ホルモン補充療法(HRT)と卵巣癌リスクとの間には相関関係があるのだろうか。
英国Cancer ResearchのValerie Beral氏らは、大規模コホート研究により、HRT経験のない女性に比べ、HRT中の女性の卵巣癌罹患リスクは1.2倍、卵巣癌による死亡リスクは1.23倍であることを示した。
詳細は、Lancet誌2007年5月19日号に報告された。

英国で行われたUK Million Women Studyは、長期的なHRTと乳癌の関係を示したことでその名を知られている。
この研究に登録され、1996年から2001年に乳癌のスクリーニングを受けた130万人の閉経女性のうち、HRT歴などに関する情報が揃っており、癌の既往がない、両側卵巣摘出術を受けていないなどの条件を満たした約95万人について、卵巣癌と卵巣癌死のリスクを調べた。

コホート研究では、卵巣癌と診断されるまで、または卵巣癌死まで追跡し(卵巣癌罹患が平均5.3年、死亡については6.9年)、それらイベントが発生しなかった女性については、試験期間終了まで追跡した。

卵巣癌の相対リスクは、年齢と子宮摘出の有無で患者を層別化し、居住地域、社会経済的要因、閉経からの年数、出産経歴、BMI、飲酒、経口避妊薬の使用で調整し、Cox回帰モデルを用いて算出した。

計94万8576人(登録時の平均年齢は57.2歳)のうち、HRT歴に関する質問を最後に行った時点で、28万7143人(30%)が治療中、18万6751人(20%)が過去に治療経験ありと回答した。
治療経験なしは47万4682人(50%)。

5億人-年を超える追跡において、2273人が卵巣癌を発症、1591人が卵巣癌で死亡した。
そして、治療経験なし群に比べ、治療中群では、卵巣癌、卵巣癌死ともに有意に多かった。
卵巣癌の相対リスクは1.20(1.09-1.32、P=0.0002)、卵巣癌死の相対リスクは1.23(1.09-1.38、P=0.0006)となった。
さらに、治療中群の卵巣癌罹患率は治療期間と相関しており、5年以上治療継続で有意なリスク上昇が見られた。

なお、治療に使われた薬剤のタイプ(エストロゲンのみが30%、エストロゲン・プロゲステロン併用が59%、その他が11%)、投与法等によるリスクの差は認められなかった。

このほか上皮性卵巣癌と非上皮性卵巣癌の患者の間で、相対リスクに有意差はなかった。
しかし、患者の95%を占めた上皮性卵巣癌の中では、腫瘍の組織学的分類によって、リスクに有意な差が認められた(P<0.0001)。
治療経験なし群に比べ、治療中群の相対リスクは、粘液性腺癌(1.53、1.31-1.79)で大きかった。
それ以外については、漿液性腺癌(0.72、0.52-1.00)、類内膜腺癌(1.05、0.77-1.43)、明細胞腺癌(0.77、0.48-1.23)となった。

なお、過去に治療経験あり群では、卵巣癌、卵巣癌死ともにリスクに有意な上昇は見られなかった。

卵巣癌の5年間1000人当たりの標準化罹患率は、治療中群2.6人(2.4-2.9人)、治療経験なし群2.2人(2.1-2.3人)。
卵巣癌死については、それぞれ1000人当たり1.6人(1.4-1.8人)と1.3人(1.2-1.4人)だった。

以上の結果に基づいて、著者らは、「1991年以来のHRTの適用により、英国では、2005年までに、卵巣癌罹患者が1300人、卵巣癌による死者が1000人増えたと推算できる。
さらにHRTにより、乳癌と子宮体癌のリスクも上昇すること、これら3つの癌は英国人女性の癌の39%を占めることから、HRTのリスクを重く感じている。
これら3つの癌の罹患者率は、5年間1000人当たりで、治療中群31人、治療経験なし群19人になる」と指摘している。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200706/503393.html

原題「Ovarian cancer and hormone replacement therapy in the Million Women Study」
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673607605340/abstract


<きょうの一曲> All My Life
Karla Bonoff - All My Life
http://www.youtube.com/watch?v=2xUCHcM9duw&hl=ja


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by wellfrog3 | 2009-08-23 00:10 | 産婦人科